薄暗い部屋を月の明かりだけが青く照らしている。逢瀬を見つめるスポットライトの内側で、二人の影が一つに重なった。
視線を落とし、いつもどおりの不機嫌そうな霞ちゃんと目が合う。しかしその瞳は艶めかしく潤み、こくんと白い喉が動いたのを見た瞬間、私の心臓はこれでもかと激しく動き出した。
しかし
しかし
「はい?」
霞ちゃんの言っている意味が分からず、私は思わず素っ頓狂な声を上げていた。「なんかしなきゃ」とは?何故不機嫌そうな表情で顔を赤くしているのか。
私は霞ちゃんのほっぺをふにふにと弄んだ後、ぐっと指先に力を込めて頬をつねった。
霞ちゃんの顔が突っ張った様に歪む。
「にゃによ、くぢゅ」
「こっちの台詞だよ、マセガキ」
私はそのまま霞ちゃんをベッドの上に投げ飛ばした。
「おりゃあああ!」
霞ちゃんは無抵抗のままごろごろと転がると、ベッドの上に仰向けに停止し、ガバっと上半身を垂直に上げて起き上がった。
「何すんのよ!」
私はツッコミをするのも忘れて大声でどなり散らした。
「勘違いするのも甚だしい!この期に及んで私が君に対価を要求すると思っていたのか!?私を侮辱するのも大概にしろ!」
「はぁ!?じゃああんた漣のナカに出して無いっていうの!?」
「入れてすらいないわっ!発言が不健全だぞ3才児!」
「3才児言うなっ!「建造三年目」よ!」
ムキになって立ち上がろうとする霞ちゃんのおでこに、私は人差し指を一本つきたてた。霞ちゃんはムッと眉にしわを寄せるが、立ち上がる事ができずにすとんと垂直にベッドに座り込んだ。
「君が何をしようと私は咎めんが…。私を懐柔したければ、せいぜい幼児体型は卒業してくる事だな」
「おっぱい星在住のクズ司令官」
「黙れAAA(トリプルエー)カップ」
「こ、このあたしが被弾するなんて…ガク」
霞ちゃんは胸を抑えて、再びパッタリと倒れ込んだ。私はベッドの上に仁王立ちになり、放心している霞ちゃんを上から見下ろした。
「ほら、明日も早い。今日はもう帰れ」
「私が言った事忘れたの?霰が部屋に入れてくれないのよ」
ぼんやりと天井を眺めている霞ちゃんの呟きに、私は少し驚いて返した。
「嘘じゃなかったのか」
「霰に「部屋に鍵をかけて寝るように言った」のよ」
霞ちゃんがふうと一息ついて目を瞑る。私はその顔を見下ろして、ぼりぼりと頭をかいた。
「真面目なんだか、不真面目なんだか…」
覗き込む月が、まるで二人に興味をなくしたかのごとく雲の中に身を潜めた。