魔法苦手なんで殴ります   作:マッキー

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今話も刀夜は変態全開です(タグに恥じないよう)


天道、飛翔、そして唯我

 

 

 

入学式も終わり、IDも受け取った。つまりは、あとは帰るだけ。わざわざホームルームを覗くという物好きも少なくはないが。

 

「雫は、何組だった?」

 

「A組」

 

「やった!同じクラスだ」

 

「うん」

 

などという、先程入学式の会場で出会った少女二人の会話が聞こてくる。よほど嬉しかったのだろう。無理もない。小学校からの付き合いだ。ずっと二人一緒だったのだと、容易に想像できる。

 

「刀夜は何組だった?」

 

「Eだな」

 

「同じクラスじゃないんだ。残念」

 

わざとか?わざと言ってるのか?お前らは一科で俺は二科だぞ?

 

「なに、これが生涯の別れという訳でもないだろう。もとよりこうなることは、目に見えていたと思うがな。俺は二科生で、二人は一科生だ。同じクラスになるなど、あり得ん事だ」

 

「知ってる。わざと」

 

あ、やっぱり?

 

「では、俺はそろそろ帰るとしよう」

 

「ん、じゃあね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雫とほのかと別れ、お兄ちゃんとお姉ちゃんを探す俺。二人には『帰る』とは言ったものの、それには先ず、お兄ちゃんとお姉ちゃんを見つけなければならない。故、俺は廊下を歩く。

 

そして、見つけた。目的の人物ではないが、それに劣らぬ影。真由美先輩だ。が、もう一人、隣に男がいる。

 

まさか、彼氏か⁉︎

 

「あら、司波くん。お兄さんをお探しですか?それなら、彼方でお友達と一緒でしたよ。女の子ばかりなのが気になりましたが」

 

なに?入学早々、女友達を作ってやがるのかアイツ。あの女誑しが!

 

あ、俺も至高と抱擁、二つのむnげふんげふん。もとい、雫とほのかと知り合ったな。ならば良し、少しも問題ないな。

 

それはいい。問題なのは、真由美先輩の隣にいる男。真由美先輩が俺に話しかけた途端、顔を歪ませ、鋭い眼差しで俺を射抜く。そこに有る感情は憎悪、はたまた怒りか。それとも、嫉妬か。

 

どちらにせよ、歳上とはいえ、初対面の相手にそのような感情を向けるなど、認められんな。

 

「本当ですか?兄は女っ気が無いと思っていたのですが……いやはや、兄のもとに向かうのが楽しみです。ところで、其方のお方は?」

 

「ああ、副会長のはんぞーくんよ。私の付き人をしてくれてるの」

 

「これは驚いた。まさか、副会長ともあろうお方が、初対面の、しかも歳下に睨みを効かせているとは、なんたる愚行か」

 

これを聞いたはんぞーくん副会長は、さらに目つきを鋭くした。

 

おいおい、これ以上細くしてどうすんだよ。まともに前見えて無いんじゃないの?

 

が、それも直ぐに収まった。理由は簡単。俺の言葉を聞いた真由美先輩が、はんぞーくん副会長に顔を向けたからだ。

 

「はんぞーくん?」

 

「違うんです、会長。これは……!」

 

「言い訳は後で聞くわ。ごめんなさい、司波くん。彼に代わって私が謝ります」

 

え、いや、別にそこまでは……てか、真由美先輩が謝る必要は無いと思うんだが。なんか、俺が悪いみたいじゃない?

 

「い、いえ。謝罪までは求めません。ただ、罪悪感の一つでも至りはしないのかと思いまして。それに、真由美先輩が謝ることではありません」

 

「貴様!誰の許可を得て名前で呼ぶ!会長と呼べ!」

 

「私が許可しました。はんぞーくん、この場は黙ってて貰えないかしら?」

 

真由美先輩の言葉に、はんぞーくん副会長は驚愕する。

 

ああ、わかる。わかるぞ、その気持ちが。俺のような男に、愛しの君が名前で呼ばれているなどと、認めたくないのだな。許せないのだな。俺も同じだ。貴様のような男が、真由美先輩の隣に座しているなど、認められんし、許せない。もとより、俺達は相容れぬ存在なのかもな。

 

「真由美先輩、どうか俺の無礼をお許しください。いかに、副会長殿の行動が琴線に触れたとはいえ、いささか失礼が過ぎました。申し訳御座いません」

 

「いえ、悪いのは此方です。それこそ、司波くんが謝る事ではありませんよ」

 

「ありがとうございます」

 

この場はこれで落ち着いだが、副会長と俺の溝が埋まったわけではない。いや、この溝が埋まることは、永劫ないだろう。恐らく、これからも副会長とは幾度となく衝突するだろう。その度に溝は深くなり、やがて谷となる。

 

「では、私達はこれで。またね、司波くん」

 

それでも俺は思う。その谷にはやがて、橋が架かると。同じ価値観を持つもの同士、いずれその価値観を共有できる日が来ると。

 

–––––なんだよ、お前も俺と同じじゃないか。

 

と、いずれそう言い合える日が来る。そう願う。故にその時こそ、俺が誰よりも真由美先輩に近い存在である。きっと、そう思う。

 

これで副会長が真由美先輩に恋心を持ってなかったら、俺は唯のイタイ人だけどね。

 

「あ、司波くん。一つ聞いてもいいですか?」

 

去り際に語り掛ける真由美先輩。何処かで見た光景。何処かで聞いたセリフ。

 

「聞きたい、と言うより、お願いなのだけれどね。刀夜くんと呼んでもいいかしら?」

 

ああ、そうか。見覚えのある光景だも思いければ、他でもない、俺だったのか。

 

–––––お聞きしたい、というか、お願いに違いでしょうが、真由美先輩と呼んでもよろしいでしょうか?

 

「朝のお返しよ」

 

悪戯にウインクをする彼女は、とれも美麗かつ妖艶に見えた。なればこそ、俺の答えは一つ。

 

「構いませんよ」

 

真由美先輩は嬉しかったのか笑みを浮かべ、副会長は何も喋らず、動かぬ。きっと彼女に忠実なのだろう。私情を抜けば、とても誠実と言える。大した男だ。このような出会いでなければ、どれ程良かったことだろうか。

 

「じゃあ今度こそ行くわね。またね、刀夜くん」

 

そして、真由美先輩と副会長は、俺とは別の、真逆の方向に歩いって行った。

 

さて、真由美先輩もいなくなった事だし、もう我慢しなくてもいいだろう。故、俺は頬の筋肉を緩ませる。それにより訪れる変化。

 

名前で呼ばれて、めっちゃニヤけるんだけど。やべえやべえ、ニヤけ顔が治まらない。

 

「ねえ、見てあの人。すごいニヤけてる」

 

「気持ち悪」

 

「今こっち見た!キモいキモい!」

 

そして、ニヤている顔とは別に、涙も流れていたのは別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真由美先輩と別れ、廊下を歩き続ける。そして見つけた。目的の人達。そして、それから成る人だかりを。

 

「お兄ちゃ––––」

 

「それじゃあ、帰ろうか」

 

俺がお兄ちゃんを呼んだ瞬間に聞こえた声。お兄ちゃん達が俺に気づいている様子はない。もしかして、俺忘れられてる?

 

「ちょっと待ってちょっと待って、おにさん?ちょーっと、お兄さん、俺の事忘れてるんとちゃいますの?」

 

「なんだ刀夜、いたのか」

 

え、酷い。弟を平気で忘れる兄ってどうよ。

 

「お兄様、幾ら何でも刀夜が可哀想です。大丈夫よ刀夜、お兄様が貴方を置いて行こうとも、私は貴方を待ち続けるわ」

 

ああ、お姉ちゃん。お姉ちゃん程、お姉ちゃんという名に相応しいお姉ちゃんはいない。だからこそ、俺はお姉ちゃんの事をお姉ちゃんと呼び、お姉ちゃんと讃美し、お姉ちゃんを讃え、お姉ちゃんを祭り上げよう。ああ、お姉ちゃん。お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん。

 

「お姉ちゃん!」

 

故に、俺はすぐさまお姉ちゃんに飛び付いた。お姉ちゃんを超えし、究極のお姉ちゃんの抱擁を受けるべく!

 

「やめて刀夜!」

 

が、お姉ちゃんはヒラリと身を躱した。それにより、俺は床とキスをする。

 

ああ、俺のファーストキスが……。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

ふと、俺の真上から声が聞こえた。それにより、俺の視線は自然と上を向く。そして、俺は見た。

 

あ、エベレストが二つある。とても登りきれそうにないや。

 

「今、エベレストとか考えませんでした?」

 

その声を聞き、俺は更に上を見る。現代にしては珍しく、眼鏡かけた少女。あのエベレストは彼女の所有物だったか。

 

「全然思ってないよ。むしろ、君がそう感じたのは、大きすぎるその胸に、コンプレックスが有ったからでは?複合的感情は安定しない。故に、強く思え。無意識下のその感情を打ち消すのだ。私のこれこそ神世界。誰も及びつかぬ、天道であると」

 

「神世界、天道……変態さんですか?」

 

「グハッ⁉︎まさか、北山雫以外に、俺の精神にダメージを与えるものがいようとは⁉︎御身、名はなんと?」

 

「えっと、柴田美月です。私の足元の少年曰く、神世界天道です」

 

神世界天道……なんという神聖だ!天道が自己紹介をしたのだ。なれば、おれも自己紹介で応えよう。

 

「俺は司波刀夜。貴様が見抜いた通り、変態、なのかもしれん」

 

そして俺は、漸く立ち上がる。今までうつ伏せの状態で会話してたからね?想像してよ。少女美月に男がうつ伏せの状態で会話してる状況を。変態以外の何者でもない。

 

「ごめんなさい、刀夜!わたしが貴方を拒んだせいで、変態という汚名を!そればかりか刀夜の顔に傷まで……!わたしはなんて酷いことを」

 

あのねお姉ちゃん。そのなりふり構わず情緒不安定になるのやめてくれない?俺が悪いみたいじゃん。

 

「大丈夫だって。全然痛くないし。それに、俺に傷なんてつく筈がない」

 

「そ、それもそうね。でも本当にごめんなさい、刀夜。別に貴方が嫌いだから避けた訳じゃないのよ。只、いきなりだったから……」

 

「わかってるよ、お姉ちゃん」

 

「ねえ、深雪。その子が、さっき深雪が言ってた双子の弟?」

 

突如として訪れる声。神世界天道のとは別のものだ。つまりは新たな人物。俺はその声の持ち主を見る。赤毛が特徴的で、如何にも活発そうな少女だ。そして、視線を下げる。神世界天道と比べると見劣りするな。しかし、そこにはまだ成長の兆しが見える。

 

–––––まだだ。こんなものではない。あたしはまだまだ発展途上だ。

 

そんな声が聞こえたような気がした。何処までも高みを目指し、飛び続けよう。そんな意志が。

 

その少女、咒をつけるなら

 

「飛翔天」

 

「?何か言った?」

 

「いや、何でもない」

 

あっぶね。もし今の聞かれてたら、また変態呼ばわりだよ。

 

「ひしょう……じゃなくて、君にはまだ名乗りを上げてなかったね。司波兄妹が末、司波刀夜だ。刀夜で構わない。よろしく」

 

「千葉エリカよ。それじゃあ貴方のことは、遠慮なく刀夜くんって呼ばせてもらうわね。司波くんと一緒になっちゃいそうだし。あれ?それだと、司波くんのことも達也くんって呼んだ方がいい?」

 

「俺はそれで構わない」

 

飛翔天の言葉にお兄ちゃんが頷く。それはそうだろう。同じ性を持つ者が、同学年に三人もいるんだ。名前で呼んだ方が合理的だ。

 

「さて、刀夜も来たことだし、今度こそ帰ろう」

 

お兄ちゃんの言葉を合図に、皆んなで帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家にて。

 

「ねえ刀夜。美月が神世界天道で、エリカが飛翔天なんでしょう?なら、わたしはどうなの?」

 

家に着くなり、お姉ちゃんが速攻で聞いてきた。てか、エリカの飛翔天、聞こえてたのかよ……。まあ、本人じゃないだけマシか。

 

「お姉ちゃん?お姉ちゃんは……そうだなぁ」

 

はっきり言って、お姉ちゃんは既に完成されている。これ以上でも、これ以下でもない。この状態が最良だ。その美貌。その容姿。向かう所敵なし。

 

黄金に光り輝く姉に咒をつけるなら

 

「唯我黄金」

 

「ゆいが……おうごん……」

 

誰よりも優れ、誰よりも輝く。正しく唯我黄金!

 

「ふ、ふふ。ありがとう刀夜。すごく気に入ったわ」

 

それは良かった。なんか、シリーズみたいになったな。

 

第一天 、慈愛の女神(真由美先輩)

第二天、至高の君(雫)

第三天、抱擁の光(ほのか)

第四天、天の道(美月)

第五天、飛翔の渇望(エリカ)

第六天、唯我の輝き(お姉ちゃん)

 

ふっ、我ながら中々の完成度じゃないか。因みに、第○天っていうのは、俺があだ名?をつけた順番な。

 

高校初日は、女の子にあだ名をつけるという、変態かつ厨二全開という、幕引きを迎えた。

 

さいっこうだね!(変態)

 

 

 

 

 

 

 

 




独自設定その1。女の子に厨二的あだ名がある。

七草真由美 慈愛

北山雫 至高

光井ほのか 抱擁

柴田美月 神世界天道

千葉エリカ 飛翔天

司波深雪 唯我黄金

うん、美月が一番イタイな。
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