魔法苦手なんで殴ります 作:マッキー
iOS版Dies iraeが配信されたら、ダウンロードしましょう。ファーブラ版持ってる?CSプレイした?2007年版で見放した?関係ない!正田卿の爪牙であるならば、どんな理由があろうと即刻ダウンロードし、全ルートを購入せよ!
ジークハイル!
私の子を産みなさい、テレジア(発言者:神父様)
「お前は何を考えているんだ?お前が腕を振るだけで、どれだけの被害が出ると思っている?」
家に帰ってくるなり、いきなり説教を始めるお兄ちゃん。恐らく、一科生との揉め事を言ってるのであろう。
「いや、ちゃんと手加減したって!」
「ウソを吐くな。完全に滅尽滅相しようとしてただろ」
「それは……その」
滅尽滅相。それは、俺が心の底から滅しようと決めた相手に向ける言葉。俺がこの言葉を向けて、身体の原型を留めたものはいない。ただ一人、あの一科生を除いて。
「お前が壊したり、傷つけたものは、俺の『再成』でも戻せない。それを忘れるな」
「はい」
そう、俺が破壊したモノはお兄ちゃんの再成をもってしても、戻す事が出来ない。それが、俺に壊されたモノの末路。抗うことの出来ない
○
気がつくと、そこは暗闇だった。
——気持ちが悪い。
俺ではない、何者かの感情が流れんでくる。
気持ちが悪い。
否、
気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い——。
——圧倒的な闇。
——どうしようもない絶望。
——底知れない黒。
今尚、俺を満たす黒という絶望色。そんな空間で、まず目に映ったのは、三つの光。
それは目だった。
三つ目という異形の容姿。木乃伊のように細く窶れた身体。
『気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い』
これが俺の内側を満たす正体。もう一つの俺の
『なぜ消さなかった?なぜ殺さなかった?お前は、アイツが邪魔だったんだろ?』
唐突に何を言っているのだろうか、コイツは。いったい、なんの話をしているのか、皆目検討もつかない。
『消せば良かっただろう。己以外は全て邪魔なんだ。俺だけがいい。俺さえ在ればいい。俺以外の何もいらない』
「おい、何の話をしている?」
俺が言葉を放つと、三つ目の悪性は全ての目を見開き、首を傾げる。
『何の話だと?お前があの塵を消さなかった事だ。ああ、何だったかな、思い出すのも億劫だ。少しは自分で考えたらどうだ?』
ここまで言われて俺は漸く気づいた。この下衆は、俺が森崎を殺さなかった事を問いただしているのだと。
「殺す必要がなかった。森崎は確かに、俺を不快にさせたが、殺す程ではない。それに、俺はお前とは違う。決して、一人が良いなどという自己愛に溺れていない!」
そう、俺は俺だ。決して目の前にいる外道とは違う。
『いいや、お前は俺と同じだ』
「違う!俺には大切な家族が、友達がいる!お前とは違う!」
俺の怒号を聞いた木乃伊は、愉悦な笑みを浮かべ、腹立たしい程の笑い声を上げる。
『ふふ、くわはははははははは——ッ!いいや、違わない。お前があの屑共と戯れているのは、俺とは違うと自分に言い聞かせる為だ』
——違う。
『俺には
違う。
『そうやって、お前は自分に暗示をかけて悦に入る。——これの何処が違う?これ以上自己愛に狂っている奴が何処にいる?お前だけだろう?』
違う違う違う。
『俺はお前だ。お前は俺だ。だから、俺の自己愛はお前まで吞み込む。わかるだろう?』
——
○
凄まじい吐き気と不快感を抱きつつ、俺の意識は覚醒する。これほど目覚めの悪い朝はいつ以来だろうか。既に記憶にないが、この感覚は決まって一つの現象によって引き起こされる。
——あの三つ目に出会う事。
それが、不快感の正体。俺の中の俺。決して外には出ない引き篭もり。そいつは常に一人でいたいが故、絶対に俺の中から出ようとはしない。
憂鬱だ。
「とりあえず、学校に行く準備をしないと」
寝床から体を起こし、自室を出てリビングに向かう。リビングには既に、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいた。
「おはよう、二人共」
まずは二人に挨拶をして、テレビに目を向けた。画面には、いつもの情報番組が映っており、何ら普段と変わらなかった。
「おはよう、刀夜——って、刀夜、顔色が悪いわよ?大丈夫?病院、病院に連れて行かないとっ!」
俺の入室に気付いたお姉ちゃんが、心配そうに尋ねる。
『では続いて、形成(笑)天気予報です』
テレビのアナウンサーの声が耳をくすぐる。
「大丈夫だよ。すぐに良くなる」
とりあえず、お姉ちゃんを落ち着かせる為に声を掛けるが、その瞳には、まだ薄っすらと動揺を残していた。
『テレビをご覧の皆様、おはようございます。形成(笑)天気予報担当、朝の顔役、シュピーネです。では本日も、イエエッッツラアアア!ジークハイル・ヴィクトォォォォリア!!」
画面が切り替わり、テレビに映るのは細い体の白人の男性。ドイツ人のシュピーネさんだ。朝の顔役、お茶の間の大御所。日本人なら誰もが知る有名人。
だがしかし、今はゆっくりとシュピーネさんの天気予報を聞いている余裕は無さそうだ。
「……アイツか?」
今度はお兄ちゃんが、俺の状態を見て判断したのか、ただ一言『アイツか?』という問いを発した。
それに対する俺の答えは肯定。ただ黙って、首を縦にふる。
「そうか。アイツに何を言われたか知らないが、あまり気にするな。お前はお前だ」
何も知らない人からすれば、何を言っているのかサッパリわからないお兄ちゃんの言葉だが、今の俺の精神には、この言葉がいちばん馴染んだ。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
「お兄ちゃんと呼ぶな」
特にどうという事のない日常的な会話が、何よりも幸せに感じた。
ち、違うんだよ。決して、波旬じゃないんだよ?た、ただのソックリさんだからね?
一応確認はしましたが、誤字などございましたら教えてください。