ハイスクールD×D【魔を滅する転生魔】   作:月乃杜

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第12話:教会×襲撃

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「何の用だ? 堕天使」

 

「何の力も無い人間が、話し掛けないでくれる?」

 

 堕天使はユートを完全に見下した態度で言う。

 

「その子、アーシアは私達の所有物なの。返して貰うわよ」

 

「渡すと思うのか?」

 

 ユートはアーシアを背中に隠し堕天使を睨んだが、そんなユートを鼻で嗤ってアーシアに話し掛ける。

 

「アーシア、逃げても無駄なのよ? 貴女の神器(セイクリッド・ギア)は私達の計画の要。これでも可成り捜したのよ? 今、素直に戻って来るならその人間を殺さないであげるわ」

 

 ユートは背後のアーシアが肩を震わせたのに気付かなかった、アーシアは先日の一件で、堕天使や悪魔祓い達が悪魔や悪魔に通じた人間を、情け容赦無く殺す事を理解させられている。

 

 折角、友達になれたというのにユートが殺されるのは嫌だったから、アーシアはユートの背後から出ていく事を選んだ。

 

「アーシア?」

 

 ユートの窺う様な声に振り返り、決意を籠めた瞳を魅せて笑顔を造る。

 

「ユートさん、ありがとうございます。こんな私なんかとお友達になってくれて……嬉しかったです」

 

 直ぐに理解した。

 

 アーシアが自らを犠牲にして、自分を救おうとしているのだと。

 

 アーシアは知っている。

 

 堕天使が、人間という種を遥かに超越している存在であるという事を。

 

 アーシアは知らない。

 

 ユートがどれ程の力を持っているのかを。

 

 一方で、ユートもこんな所で真っ昼間から戦闘をする訳にもいかない。

 

 堂々と堕天使としての姿を晒している辺り、結界を張っているのだろうが……

 

 何より此処であの堕天使を潰し、他の堕天使に逃げられるのも面倒だ。

 

 それに下手を打てば悪魔側と堕天使側での戦端が開かれかねない、仮に人間である自分が殺したにせよ、堕天使側が言い掛かりを付けてくる事も考慮に入れると此処で下手に仕掛けるのは分が悪いのである。

 

「(せめて色々と確認しないと……)」

 

 ユートが思考している間に堕天使は降りてくると、アーシアを鴉の様な翼で囲って羽ばたいた。

 

「アーシア!」

 

「ユートさん?」

 

「必ず助ける、だから決して希望を捨てるな!」

 

 それを聞き涙を浮かべて何度も頷く。

 

「は……い、はい!」

 

 そんなやり取りすら鼻で嗤って、堕天使は空高く飛び立った。

 

 その瞬間、光の槍を顕現すると約束を破りユートに投げ付ける。

 

「……え?」

 

 呆けるアーシア。

 

 槍が左胸を貫き、ユートはそのまま俯せに倒れた。

 

「クックッ、助けに来るなんて莫迦な事を言う奴なんて此処で果てなさい」

 

「そ、そんな……約束が違いますレイナーレ様!」

 

「後顧の憂いは断つもの。貴女を助けようなんて言ったあの人間が愚かなのよ」

 

 その表情は、元が天使だとは思えないくらい邪悪であったという。

 

「いや、いや、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 手を伸ばしてアーシアは泣き叫んだ。

 

 そんなアーシアを他所に堕天使は本拠地に飛ぶ。

 

 辺りに静寂が訪れ、結界を張った地には光の槍に貫かれたユートが、血を流して倒れ伏すのみ。

 

 だけどそんな静寂な空間が甲高い音を響かせ、更には罅が入って割れた。

 

 結界も同時に破壊され、周囲の喧騒が戻ってくる。

 

「ニトクリスの鏡……」

 

 そして倒れていたユートは姿を消し、無傷で立っているユートが其処に居た。

 

 幻影を見せる術式──【ニトクリスの鏡】を使い、堕天使の目を誤魔化したのである。

 

「簡単に引っ掛かったな。所詮は下級堕天使の纏め役程度の、実力的には雑魚なだけの存在でしかないな」

 

 ユートが見た限り、先程の堕天使の実力は下級の中でも上位くらい。

 

 普通の下級より強いが、中級に至るには実力が足りないといった処だ。

 

「さて、先ずは……」

 

 心の中は怒りを燃やしながらも頭の中は氷の如く。

 

 ユートは端末を操作し、とある人物へと連絡する。

 

 一〇分ばかり話をして、【オカルト研究部】の部室へと向かった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「駄目よ! 判ってるの? 貴方が向かおうとしている場所は、はぐれ悪魔祓いと堕天使の巣窟なのよ!」

 

 報告の為に一度、部室へと戻ってきてリアスに事の次第を伝えて、アーシアの救出に向かう旨を言うと、開口一番で反対してくる。

 

 理屈は判るのだ。

 

 あの廃教会が敵の本拠地ならば、敵の最大の戦力があそこには集っている筈。

 

 そんな場所にノコノコと出向けば、普通はフルボッコにされるだけだろう。

 

 普通なら……だが。

 

「悪いけどね、僕はリアス部長に許可を求めている訳でも、協力を要請している訳でもないんだ。これから僕がする事を伝えに来ただけなんだよ」

 

「っな!?」

 

 リアスが絶句する。

 

 そう……ユートはリアスからの援護など、そもそも初めから期待していない。

 

 既にやるべき事が定まっている以上、後はやるだけでしかないのだ。

 

 ユートがリアスに期待するのは唯一、邪魔をしない事のみであった。

 

「アーシアは助ける、あの堕天使は殺す、ただそれだけの事だよ」

 

「ま、待ちなさい! 貴方はオカルト研究部に所属しているし、この駒王学園の生徒なのよ? 下手に戦ったりしたら悪魔と堕天使の戦争になりかねない!」

 

「それは無いね。今回のは奴らの独断専行だ。一誠の監視と殺害までは兎も角、この地であんな好き勝手を許されてる訳もない」

 

 お互い一歩も引かない。

 

 因みに、一誠が何故だか落ち込んでいたが、それはどうでも良い事だ。

 

「義理で報告はしたから、僕はもう行くよ。何をする気かは知らないけど、連中を放っておけばアーシアの生命に関わりそうだし」

 

「ユウにとって、アーシアとかいうシスターは何だと云うの?」

 

「……友達になると約束をした。友達が危なければ、助けるのが当たり前だろ。那古人、後は頼んだぞ?」

 

「はい、お兄様」

 

 ユートは那古人に一言、伝えると部室を出ていく。

 

「あ……! 小猫、祐斗、イッセー、すぐにユウを止めなさい!」

 

「はい!」

 

「……はい」

 

「了解です、部長!」

 

 三人が勢いよく立ち上がって、駆けようとしたその瞬間……

 

「「「っ!?」」」

 

 身体が動きを止めた。

 

「な、何?」

 

 リアスが驚愕しながら、ふと那古人の方を見た。

 

 那古人はまるで白魚の様な右の人差し指を伸ばし、木場達へと向けている。

 

 その指先には凍気が発生していた。

 

 更によく見れてみれば、木場達の身体の周囲には氷の結晶が渦巻いている。

 

「な、何なの? この氷の結晶は……」

 

「氷結輪(カリツォー)……貴方達の動きはその氷の輪に封じられました。マスターの邪魔はさせません」

 

 氷の結晶が徐々に増え、更に動きが制限された。

 

「こんなもの!」

 

 リアスは軽く魔力をぶつけて氷の結晶を消し去る。

 

 御得意の消滅の魔力だ。

 

「こんな小細工で、私達を完全に足留めした心算なのかしら?」

 

「別に、お兄様が教会に行くまでの間、大人しくしていて欲しかっただけです」

 

「くっ、行くわよ!」

 

 結局、全員が教会へと赴く事になってしまう。

 

 一方で、ユートは驚異的な速度を以て教会へと走り抜けていた。

 

「此処に来たのは二度目になるな」

 

 だが、三度目はない。

 

 仮に来ても、それは既に教会ではなくなっている。

 

「さて、あの堕天使の言っていた事と彼の意見から鑑みて、目的はアーシアの持つ神器(セイクリッド・ギア)を抜き取る事。それには霊脈を使った儀式が必要になる」

 

 レイナーレがこの教会を本拠地としたのには二重の意味があった、一つは悪魔の支配地域故に教会は隠れ蓑として最適だという事。

 

 もう一つは教会は基本的に霊脈の上に建てられる事が多く、儀式をするのには打って付けだという事。

 

 これは教会には限らず、神社や仏閣などもそうだ。

 

「それなら、霊脈を乱してやれば連中も慌てて出てくるだろうね」

 

 ニヤリと口角を吊り上げ人の悪い笑みを浮かべる。

 

 ユートは地面に右の掌を当てて、小宇宙を用いた念動力を使い無理矢理に霊脈を弄ってやった。

 

 ほんの少しだけ、後で戻し易い様に大胆且つ繊細な作業となる。

 

「これで佳し……っと」

 

 儀式はこれで失敗して、少し刺激を与えてやったら黒光りするGの如く地下から沸き出て来るだろう。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 レイナーレは、いよいよ目的が叶うのだと歓びに打ち震え、恍惚とした表情で己が身体を両腕で掻き抱くが如く……

 

「ああ、これで私は至高の堕天使となり、アザゼル様とシェムハザ様の愛を戴いて私達をバカにしてきた奴らを見返せるのよ!」

 

 クネクネと科を作りつつ天を仰ぐ。

 

 その瞬間ユートがキュッと捻る様に霊脈を動かし、力の流れを強引に変える。

 

「……え?」

 

 今、正にアーシアの神器(セイクリッド・ギア)である【聖母(トワイライト・ヒーリング)の微笑】を抜かんとしていたが、行き成り力が不安定になって磔にしている十字架の光が消えてしまった。

 

 先程まで恍惚としていたレイナーレは唖然となり、ミッテルトとカラワーナも訳が判らず呆然となる。

 

「な、何故? ミッテルト……何故、儀式が急に中断されたのよ!?」

 

「へ? いや、ウチに言われても……」

 

「カラワーナ?」

 

「わ、私にも何が何やら」

 

 その時、レイナーレ達の脳裏には殺した筈の少年の声がリフレインした。

 

『必ず助ける、だから決して希望を捨てるな!』

 

「ま、真逆……ね。殺した筈だもの」

 

 頭を振って浮かんだ言葉を振り払う。

 

レイナーレは確かに見た、投げた光の槍に心臓を抉られて、無様に血を噴き出して斃れ伏した人間を。

 

 原因を調査させようと口を開く直前、低い轟音と共に大きな振動が地下聖堂全体を襲って揺るがせた。

 

「な、何なの!?」

 

「じ、じ、じ、地震?」

 

「真逆、そんな予兆は」

 

 レイナーレもミッテルトもカラワーナも、次々と起こる不測の事態に情緒不安定になりつつある。

 

 はぐれ悪魔祓いの神父達も同様で、地下聖堂の中は俄に荒れていた。

 

「っ!? 何、この魔力」

 

 突然、感じられた強大なる魔力にレイナーレは戦慄して、先程は振り払った筈の言葉が甦る。

 

『必ず助ける、だから決して希望を捨てるな!』

 

「そ、そんな……まさか、生きていたというの?」

 

 この時レイナーレには、悪魔が関与する可能性など過る訳もない。

 

 あの人間の男だと何故か確信出来た。

 

「敵、なら屠るだけよね。行くわよ! ミッテルト、カラワーナ!」

 

 

 仲間と神父達を引き連れると、地下聖堂を出て教会の庭先に上がる。

 

 果たして、其処には思っていた通りの人物が居て、レイナーレは苦々しい表情になった。

 

「生きていたとはね」

 

「生きているさ。攻撃なんて喰らってないからね」

 

 ニトクリスの鏡により、鏡に写った幻覚を刺したに過ぎないが、レイナーレに判る訳もない。

 

「さて、はぐれ悪魔祓いの神父諸君に朗報だ」

 

 ユートが両腕を開いて、まるで演説するかの如く語り始める。

 

 その行動に戸惑いを隠せない数十人の神父達。

 

「僕の目的はアーシア・アルジェントの奪還。故に、君達を殺す事は二の次でしかない。今すぐ此処から立ち去るなら、生命だけは助けてやるから何処へなりと失せるが良い。但し、一度でも切り結ぶというなら、その時こそは……」

 

 温厚な目が鋭く細まると眼光が神父達を射抜く。

 

「容赦はしないっ!」

 

 それは脅迫でも恫喝でもない……そう、只の宣言。

 

 殊更、声を荒げる必要など無いし、殺気を放つ意味も皆無である。

 

 ユートにとって神父達はその程度で充分な相手でしかない、だからこそ殺気を放ってすらいない。

 

 だけど折角の厚意だというのに……

 

「逃げない……か。愚かと断じはすまい。只、哀れではあるけどね。相手との差を計れない様では、生き残れはしないのに」

 

 【はぐれ悪魔祓い】である神父達は、誰一人として逃げなかった。

 

 それはレイナーレに殉ずるとかの忠誠心ではなく、偏に人数で勝るが故の慢心でしかないのだ。

 

 ユートがパチン! と指を鳴らすと、周囲が幾何学模様に塗り替えられた。

 

「結界?」

 

「そうだよ、堕天使。この結界はCockroach Prisonと呼ぶ……転移での出入りは不可能、出るには術者である僕を殺すしかない。普通に入る事は自由だけどね」

 

 直訳すればゴキブリ刑務所という嫌な名前、つまりゴキブリほいほいである。

 

 レイナーレ達は表情を歪めてしまう。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 その頃リアス達はユートを追うべく走っていた。

 

「部長、転移した方が良くないですか?」

 

「そうね、教会に直接転移は少し怖いけど、これでは追い付けないわ」

 

 木場からの提案にリアスも肯定する。

 

「やめた方が懸命ですよ、リアス・グレモリー」

 

「どういう意味?」

 

「お兄様が結界を展開しました。Cockroach Prisonという名前で普通に入る分には問題はありませんが、出る事は出来ない作りになってます。転移は出入り共に不可能となっています」

 

 その考えを否定したのは那古人であった。

 

「はぁ? こっくろーち・ぷりずん?」

 

「ゴキブリ刑務所ですの? 余り好きになれない名前ですわね」

 

「……あんなの滅べば良いです」

 

 リアスが顔を歪め、朱乃も笑顔が凍り、小猫に至っては嫌悪感を露わにする。

 

 やはり黒光りするGは、何処の世であっても女性の敵である様だ。

 

「まあ、ゴキブリほいほいと同じ事ですね。あれは、ゴキブリが入口から入る事は出来ても、出る事は不可能ですから」

 

 それが故に、名前が【Cockroach Prison】なのだ。

 

 本来の使い方は展開をしておいて敵を誘き寄せて、閉じ込めた後に爆縮させる事により、一網打尽に始末する術である。

 

 ユートが初めてこの術を使ったのは、レコン・キスタを相手にニューカッスル城での事。

 

 その時はニューカッスル城に攻めてきた千人弱が、一瞬にしてこの世から消えたものである。

 

 今回はアーシアが居るし術者のユートも結界内。

 

 出られないのはユートも同じで、単に逃がさない為に……そう、正に閉じ込める目的で張ったのだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「これから始まるのは闘いなんて上等なモノでなく、単なる殺戮でしかない。

さあ、掛かって来い!」

 

 その言葉を合図に呆けていたレイナーレが気付き、命令を下す。

 

「と、兎に角……奴を殺しなさい!」

 

 上役のレイナーレの命令を受け、眼光で金縛りに遭っていた神父達が、光剣や光銃を手にユートへと襲い掛かる。

 

 ハラハラと天より降ってくる白いナニか。

 

「何? 氷の結晶?」

 

「氷の結晶が直接、降ってくるなんて?」

 

 レイナーレとミッテルトが驚く。

 

「東シベリアでは、余りの極寒に水蒸気が過冷却されてしまい、氷の結晶が直接降ってくるそうだ」

 

 敵が迫る中、呑気に解説をしているユート。

 

「それは光を反射して美しい反面、人の生命を奪う。人々はその現象に畏怖を籠めてこう呼ぶ……」

 

 言い放つと拳を構えて、神父へとブローを放つ。

 

「極小氷晶(ダイヤモンドダスト)ッッ!」

 

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 ユートの拳から凍気が放たれて、神父を一瞬の内に凍結させる。

 

 一人だけではなく、傍に居た数人を巻き込んで……

 

 絶対零度と云わない迄も窮めてそれに近しい極低温の拳の威力で、神父の数人が血液まで凍結された。

 

 ちょっと衝撃を加えれば粉々に砕け散るだろう。

 

 神父達の足が止まる。

 

「聖剣抜刀(エクスカリバー)!」

 

 その隙を突き、手刀を揮うと神父をやはり数人ばかり斬り裂いた。

 

「ヒ、ヒィッ!」

 

 息を呑み、逃げようとする者が現れるが、結界に阻まれて出られない。

 

「言った筈だよ? 一度でも切り結ぶならその時こそは……容赦はしないと」

 

「廬山昇龍覇っ!」

 

「ぶべらっ!」

 

 逃げようとした神父に、猛烈なアッパーを放つ。

 

 顎は砕け散り、首の骨が折れ、胴体と首を繋ぐ皮が破れて首のみが吹き飛び、胴体は勢いよく血を噴き出して倒れる。

 

 相手は神父とはいえど、鍛え上げて小宇宙で防御が出来る神の闘士ではない。

 

 廬山の大幕布を逆流させる技など喰らえば、こうなるのは必定。

 

 ユートは噴水の如く溢れ出る返り血を、ベッタリと浴びて真っ赤になった。

 

 神のシステムで悪魔を滅する事が出来るとはいえ、所詮は只人に過ぎない。

 

「鳳翼天翔!」

 

「ぐぎゃぁぁぁぁぁっ!」

 

 聖衣を纏わずとも簡単に蹴散らせる。

 

「星屑革命(スターダスト・レボリューション)!」

 

「あぎゃぁぁぁっ!」

 

「ぷぎゃあっ!?」

 

「へぶし!」

 

「あじゃぱーっ!」

 

「ぎゃびりーん!」

 

 風と炎で敵を消し飛ばす鳳翼天翔。

 

 星屑の如き煌めく小宇宙が敵を襲う、星屑革命(スターダスト・レボリューション)。

 

 惜し気もなく使う技は全てが必殺。

 

 喰らった神父達は漏れ無くぐちゃぐちゃになって、全員が死んで逝った。

 

 流石に、此処まで殺られれば自分達が如何に無謀な事をしていたか理解して、皆が皆青褪める。

 

 だが、ユートは決して止まらない。

 

 選択肢は与えた。

 

 後はどれ程に後悔しようが道は二つに一つ。

 

 ユートを殺すか、ユートに殺されるかだけだ。

 

「消えろ、星明識廷(スターライトエクスティンクション)!」

 

「ヒィッ! 消える、消えてしまうーっ!」

 

 光に呑まれて冥府へと消えていく神父。

 

「威風激穿(グレートホーン)ッ!」

 

 全速力の新幹線と正面衝突した方がマシと思える、そんな高威力の衝撃が神父達を粉々に吹き飛ばす。

 

「な、な、な、何なの……何なのよアンタはぁっ!」

 

 数十人は居た筈の神父達が全滅して、レイナーレは青褪め苛立ち紛れに叫ぶ。

 

「【聖母の微笑】は闇に属する悪魔や、神の加護を喪った堕天使をも回復させてくれる。あれさえ手に入れれば、私は至高の堕天使となってアザゼル様やシェムハザ様に愛して頂けるわ。私を見下していた連中を、見返してやれる筈だったのに……っ!」

 

 随分と手前勝手な妄想を口にする。

 

「フッ」

 

 だがユートはレイナーレの妄言を鼻で嗤った。

 

「な、何が可笑しいの?」

 

「いやあ、何ね……妄想も其処までくれば滑稽を通り越して、憐憫すら感じてしまうな……ってね」

 

「な、何ですって?」

 

「僕がこないだ始末した男の堕天使や、其処の二人もそれに乗っかって連袂したって訳か」

 

 益々以て嗤える話だ。

 

「始末したって、それじゃドーナシークが戻らなかったのは?」

 

 レイナーレもミッテルトとカラワーナも驚愕に目を見開く。

 

「今頃、地獄の釜で煮られてるんじゃないかなぁ? 鴉モドキなんざ、煮ても焼いても食えないだろうが」

 

 クスクス嗤うユートを、三人の堕天使は異様なモノを見る目で見た。

 

 少なくともドーナシークを始末したというのが真実ならば、同程度の実力でしかないカラワーナとミッテルトでは敵わない。

 

 そして情け容赦無く同胞たる人間を殺し尽くした処を視ると、こちらを始末するのに躊躇いなど持ちはしないだろう。

 

「こうなれば、三人で一斉に槍を投げるわよ!」

 

「判った」

 

「りょ、了解だし!」

 

 手の内に色とりどりの槍を顕現させ、一斉にユートへと投げ付けた。

 

 だが然し、投げ付けた槍が手前で弾かれてしまう。

 

「っな!?」

 

 よく見れば、透明度の高い壁がユートの前に鎮座している。

 

「残念。結晶障壁(クリスタルウォール)」

 

 牡羊座・アリエスのムウから教わった防御の技で、その障壁は如何なる攻撃をも跳ね返す。

 

 勿論、限度はあるが……

 

「本当に、無駄な努力だったな? 堕天使」

 

「い、一度くらい攻撃を跳ね返したくらいで!」

 

「そんな事じゃないさ」

 

「……?」

 

「此処に来る前に、冥界のサーゼクスに連絡をした。ある人物に渡りを付けて貰う為だ」

 

「サーゼクス? それって魔王!」

 

「そう、冥界の悪魔を束ねる四大魔王の一角だ」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

〔やあ、こないだ振りだねユート君。それで、今回はどうしたんだい?〕

 

「サーゼクス……堕天使のボスに連絡は付かないか。至急、確認したい事があるんだけど……」

 

〔んー、不可能じゃないけどねぇ? 緊急事態?〕

 

「ああ、急いでいる」

 

〔判ったよ。少し待っていなさい〕

 

 真面目な表情のユート、何かを感じ取ったのだろうサーゼクスはそう言って、何かを操作する。

 

 魔王と天使と堕天使。

 

 敵対関係にあるとはいえ今は戦争中でもない。

 

 末端なら兎も角として、勢力を束ねる立場としては各勢力との連絡手段くらい在った。

 

 尤も、まず使われる事など無かったりするが……

 

〔お待たせ。アザゼルとの回線を繋げたから、話をするといい。私も聞く事になるけど構わないね?〕

 

「当然だろう。感謝する、サーゼクス」

 

 ユートの目の前のモニター越しに、黒い髪に金髪のメッシュが入ったワルメンが現れる。

 

 顔は良いが、木場祐斗とベクトルの違うイケメン。

 

 正に不良っぽいイケメン……ワルメンだった。

 

「貴方が堕天使のボスか」

 

〔応よ。俺はアザゼルってんだ。んで? お前さんがサーゼクスの言ってた人間かい? 俺に何の用よ〕

 

「失礼した、僕は緒方優斗という。今回は確認したい事が有ったので、サーゼクスに頼んで連絡をした」

 

〔確認?〕

 

「グレモリーとシトリーが共同で管理する土地、駒王を知っているかな?」

 

〔そりゃ、知ってるが?〕

 

 レイナーレの様な下っ端は知らなかったらしいが、四大魔王のサーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタンの妹が暮らす街の事だ。

 

 各勢力のトップが知らない筈もない。

 

「其処に末端の堕天使を送った記憶は?」

 

〔んー? 確かにシェムハザに言って神器(セイクリッド・ギア)持ちを見張る様に命令はしたが……〕

 

「見張る? 殺害の間違いじゃないのか?」

 

〔莫迦言え。確かに暴走でもすれば始末するしか無いだろうが、俺らは飽く迄も【神(グリゴリ)の子を見張る者】であって、殺し屋でも何でも無いんだぜ?〕

 

 【神の子を見張る者】

 要するに神が造った器(ギア)を宿す人間を見張るストーカーである。

 

 神器(セイクリッド・ギア)持ちを、神の恩寵を受けた子供と定義し、自分達に敵対しないか、或いは暴走しないか見張っていた。

 

「最近、その神器(セイクリッド・ギア)の持ち主が殺された。上が危険視しているからって理由でね」

 

〔んな命令は出して無ぇんだがな……そいつの神器(セイクリッド・ギア)は、結局何だったんだ?〕

 

「リアス部長は【龍(トウワイス・クリティカル)の手】っていう、ありふれた物だと言っていた」

 

〔【龍の手】だぁ? 本当かよそれ?〕

 

「さあ? 僕は詳しくないからね」

 

〔【龍の手】は龍の因子を埋め込まれ、持ち主の力を倍化するモンだ。確かに、ありふれた神器(セイクリッド・ギア)だな〕

 

「その反応から察するに、まともな報告を受けてないみたいだね」

 

〔チッ! どうやら、下の連中が勝手な事をしてるっぽいな〕

 

 アザゼルは舌打ちしながらぼやく。

 

「もう一つ、教会を追放された元聖女に関して、何か心当たりは?」

 

〔何だそりゃ? 確かに、その話は知ってるがな……【聖母の微笑】はレアな代物だが、あれは危険性の無い神器(セイクリッド・ギア)だぜ? 自勢力に加えりゃ使えるが、殺したりはしねえぞ〕

 

「報告が入ってないなら、これも独断か?」

 

〔どうやら、マジにアホが居るみてえだな〕

 

 恐らく、上には嘘の報告を上げていたのだろう。

 

〔その連中、グレモリーやシトリーと事を構える気かよ? ったく、余計な事をしやがって!〕

 

「現在、その元聖女が捕らえられてるけど、連中が何をする気か判るかな?」

 

〔神器(セイクリッド・ギア)を抜き出して、自分の物にする心算かもな〕

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユートが軽く話をすると三人共、ガタガタと恐怖に震えている。

 

「そ、そんな。魔王を通してアザゼル様と話した?」

 

「どうしよう、レイナーレ姉様? これじゃあ……」

 

「……」

 

「そ、そうよ! 【聖母の微笑】さえ手に入れれば、アザゼル様だって解って下さるに違いないわ!」

 

「残念だが、総督殿の決定はお前らがノコノコ帰って来た場合は、サーゼクスの前で八つ裂きにして仁義を貫くか、永久凍結刑に処するかのどちらかだそうだ」

 

 レイナーレは固まった。

 

「少なくとも、二度に渡ってグレモリー眷族の一誠を襲った以上、処罰無しで済む訳が無いだろ?」

 

「な! 二度?」

 

「一度目は眷族になったばかりの時、男の堕天使が襲撃している。二度目は白髪のはぐれ悪魔祓いによるモノだ。おまけにグレモリー領域内で、好き勝手やらかしてるしな」

 

「そ、そんな……」

 

「だからさ、総督殿は僕がお前らをどうしようが黙認するってさ」

 

 煮て食おうが焼いて食おうが自由、三人を始末したても誰も文句は言わない。

 

「そういう訳で、喰らえ! ペガサス流星拳っ!」

 

「「「きゃぁぁっ!」」」

 

 絶望からか茫然自失となっていたレイナーレ達に、問答無用で数百発もの拳を叩き付ける。

 

 レイナーレとカラワーナは何とか最低限は、躱してダメージを減じたのだが、まともに流星拳を喰らったミッテルトは気絶した。

 

「流石に人間と違って丈夫だね」

 

 普通の人間が喰らったらそれだけで全身の骨を砕かれて、内臓をグチャグチャに潰されていただろう。

 

「そうだ、お前の身体を貰おうか」

 

 カラワーナを指差して、何やら不穏な事を言う。

 

「ど、どういう意味だ?」

 

「その侭の意味さ。なに、他人の神器(セイクリッド・ギア)を奪おうなんて事を平然とやるんだ。当然、自分が魂を抜かれても文句は無いよな?」

 

「あ、あるに決まっているだろう!」

 

「アーシアだって、神器(セイクリッド・ギア)を抜かれたい訳じゃない!」

 

 ニヤニヤと笑いながら、カラワーナに近付いた。

 

「ヒッ! く、来るな!」

 

「さあ、冥府へと堕ちるがいい。積尸気冥界波!」

 

 右人差し指を立てると、天へと掲げて青白い燐気がカラワーナを取り巻いて、不可思議な圧迫感が肉体を押し潰し、カラワーナには訳の解らない浮遊感が襲ってくる。

 

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

 

 行き成り悲鳴を上げたかと思うと、糸が切れたかの如くカラワーナがバッタリと倒れてしまう。

 

「カ、カラワーナ? え……真逆、死んでる? でも私達が死ねば、羽を遺して消える筈……」

 

 震えながらカラワーナに触れると、曲がりなりにもある筈の脈が無かった。

 

「積尸気冥界波、魂魄を分離して冥府に送る技だよ。悪党だった男の技でイメージが悪いけど、地獄の痛みを受けずに逝けてラッキーだったな。後、消えないのは固定化という魔法を同時に掛けたからだ」

 

 ハルケギニアに於ける、土系統の魔法の固定化。

 

 生命力を喪失して、単なる物質となったカラワーナに掛ける事により、状態を維持していた。

 

「あ、嗚呼……」

 

 尻餅を突き、徐々に後ろへと下がる。

 

「わ、私は、私は……至高の堕天使に……!」

 

「あの世で、至高の堕天使ゴッコでもしてろ」

 

「た、助けて……」

 

「アーシアが若し、そう言ったら助けたのか?」

 

「う、あ……」

 

「それが答えだよ。さて、終わりにしようか。今までの鬱憤を晴らさせて貰う」

 

 レイナーレに一誠が殺された事に始まり、アーシアが連れ去られた事に至る、それらが既に鬱憤となって溜まりまくって最早、爆発寸前であった。

 

 此処にユートによる私刑(リンチ)が始まる。

 

 

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