ハイスクールD×D【魔を滅する転生魔】   作:月乃杜

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第15話:指導×始動

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「貴方の妹を喚ぶのに依代が必要なのは理解したわ。だけどそれで何故、私だけでなくソーナとレイナールが居なければならないのかしら?」

 

「ちょっ、リアス・グレモリー! しつこいわよ?」

 

「あら、ごめんなさい」

 

 リアスは、全く反省の色の無い謝罪をする。

 

「まあ、レイナー……」

 

 キッと夕麻に涙目で睨まれてしまい、苦笑をしながら続きを話す。

 

「夕麻は見届け人として、リアス部長とソーナ会長にもこれは、知っておいて貰わないと困るからね」

 

「どういう意味よ?」

 

「カラワーナは元が夕麻の仲間の堕天使だし、知っておきたいだろ? 死体の使い方をさ」

 

「あ……」

 

 意外という訳でもないが気配り屋なユート。

 

「さて、始めるかな」

 

 ユートが何事か呟くと、カラワーナの死体の置いてある床に魔方陣が展開し、光を放ち始める。

 

 そしてユートは招喚の咒を唱えた。

 

「汝、我が仮初めたる使徒に名を列ねし存在。造りたる者、虚無の担い手、永遠なる連理の枝・比翼の鳥よ……我が言之葉に応えて来よ!」

 

 激しく回転しながら発光は益々強くなっていく。

 

 ともすれば悪魔では目も開けていられない程に。

 

「汝が名は祐希!」

 

 輝きは最高潮にまで達し漸く光も治まりつつある。

 

「な、何が?」

 

 ゆっくりとリアスが眩んだ目を開くと、其処にはまるで別人の様な人物が漆黒の翼を広げて、欠伸をしながら起き上がっていた。

 

 背が高くて、胸も大きかったカラワーナの肉体は、すっかり縮んでいる。

 

 青い髪の毛を背中まで伸ばして、マリンブルーの瞳で辺りを見回していた。

 

「久しぶりだね、ユーキ」

 

「ああ、兄貴か。確かに、久しぶりだね」

 

 ポーッとした表情となりユートを見つめ、微笑みながら挨拶を交わす。

 

 まだ寝惚け眼らしい。

 

 自分が素っ裸なのも気付かないで、大事な部位を隠しもせずに立ち上がった。

 

 寧ろ慌てたのはリアスとソーナで、直ぐに生徒会室に備え付けてあったタオルケットを、ユーキの肩から羽織らせてやる。

 

「ああ、ありがとう」

 

「いえ……」

 

「あれ? 貴女はソーナ・シトリー?」

 

「? そうですが……」

 

 シパシパと瞬きをしつつもう一度ソーナを見る。

 

「ハイスクールD×Dか」

 

 生徒会室に居た者達は、一様に戸惑う。

 

 特に初顔合わせにも拘わらず名前を言い当てられ、ソーナは首を傾げた。

 

「何故、私の名前を?」

 

「ああ、まあ。ちょっと」

 

 ユーキは頬を掻きながら曖昧に誤魔化す。

 

「会長、仕事がおわ……」

 

 匙がノックもせず入って来て、タオルケットを一枚羽織った素っ裸のユーキを見て固まった。

 

 青くて長い髪の毛はサラサラとして且つ、艶やかな光沢を放っている。

 

 背は低めで胸もお世話にも大きいとは言えないが、プックリとささやかながらも慎ましい膨らみがある。

 

 肌の色は細雪が降り積もる地面の如く白い。

 

 一つ一つは好みの問題もあるし一概に云えないが、全体的に視れば間違いなく美少女にカテゴライズされるユーキ。

 

 何しろ解り易く容姿を例えれば、髪の毛を背中まで伸ばした【ゼロの使い魔】に於けるタバサである。

 

 ルックスさえ気にしなければ成程、可成りの美少女なのは間違いは無い。

 

 ユーキはそんなタバサの双子の妹の、ジョゼットが魂の宿る胎児の前より憑依転生をしており、その為に現在は魂もジョゼットの姿に固定され、憑依招喚を行うと魂の形──ジョゼットだった頃の姿を執る。

 

 カラワーナの肉体は魂と同化して、完全にユーキのハルケギニアでの姿だ。

 

「ブハッ!」

 

 それがタオルケット一枚の姿で立っている、女体に慣れない匙は思わず鼻血を噴いてしまう。

 

 そして意識すら女性となっているユーキは、ユートならまだしも他の男に裸体を視られて喜びはしない。

 

 寧ろ、嫌悪感を催す。

 

 それ故に、ユーキは……

 

「死ね、変態! 爆発(エクスプロージョン)ッ!」

 

 チュドーン!

 

「のわぁぁぁぁぁっ!」

 

 爆発(エクスプロージョン)で匙をブッ飛ばした。

 

 胸を左腕で隠し、内股になって大切な秘部を隠した上で右腕を掲げ、爆発(エクスプロージョン)の魔法を一小節のみで放った。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……」

 

 表情は匙に対する怒りに染まっている。

 

「待て、ユーキ!」

 

「兄貴、どいて! ソイツ殺せない!」

 

「ネタに走ってまで殺そうとするな!」

 

 スパカーン!

 

 何処からともなく取り出したハリセンでどつく。

 

「痛いよ、兄貴……」

 

 涙目になり恨めしそうな声で訴える。

 

「ったく、これでも羽織ってろ。このおバカ」

 

ユート自身が羽織っていたマントをタオルケットの上から掛けてやり、匙に復活(リザレクション)の魔法を使ってやる。

 

 ダメージは抜けたが未だに意識が無い匙を運ぶと、ソファーに寝かせてやるとユーキが匙の顔を見てからふと呟く。

 

「あれ? よく見たら……匙 元士郎。ヴリトラか」

 

「ヴリトラ?」

 

「龍王の一角で、【黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)】ヴリトラの力を宿した神器(セイクリッド・ギア)の【黒い龍脈(アブソーブション・ライン)】の持ち主なんだよ」

 

「へえ?」

 

「へえ? って、兄貴……知らなかったの?」

 

「知らない。ユーキの言う【ハイスクールD×D】は読んでなかったからね」

 

 原作を識らない以上は、この手の情報は持たない。

 

「そっか。原作知識無しは大変だよね」

 

「まあね。処で、ヴリトラが神器(セイクリッド・ギア)ってのは?」

 

「神器(セイクリッド・ギア)はね、何らかの生物を封じたタイプが在るんだ。本来のヴリトラはシャブラ・ニグドゥみたいにバラバラに引き裂かれてるんだ。匙も今はまだ、ヴリトラの一部しか使えないね。他の能力が欲しけりゃアザゼル辺りに頼んで、【神の子を見張るもの(グリゴリ)】が保管してる残りの神器(セイクリッド・ギア)を融合する事だね」

 

「成程、そう言えば一誠の【龍の手(トゥワイス・クリティカル)】も龍を封じたタイプだっけ?」

 

「は?」

 

「いや、一誠の神器(セイクリッド・ギア)……」

 

「一誠って、兵藤一誠?」

 

「ああ。そうだけど」

 

「そう言えば、何故か夕麻モードのレイナーレが此処に居るけど、ひょっとして未だ覚醒してないの?」

 

「どういう意味だ?」

 

 ユーキは少し思案するとユートに質問をぶつけた。

 

 問1

 兵藤一誠は悪魔?

 

 答え

 イエス。

 

 問2

 ドーナシークとミッテルトとカラワーナはいったいどうなった?

 

 答え

 ドーナシークって誰? ミッテルトは家でメイド。カラワーナは死亡、ユーキの身体はカラワーナの物。

 

 問3

 アーシアは悪魔?

 

 答え

 ノー、違います。

 

 問4

 アーシアは何処で暮らしている?

 

 答え

 我が家。

 

 問4

 フリードはどうなった?

 

 答え

 誰それ? キャロ・ル・ルシエの召喚竜の事?

 

「それはフリードリヒ」

 

 問5

 教会で行った戦闘メンバーは誰?

 

 答え

 自分だけ。

 

 問6

 レイナーレが生きているのは何故?

 

 答え

 トドメを刺そうとしたら一誠が庇ったから。

 

 問7

 リアス・グレモリーの新しい僧侶は誰?

 

 答え

 天野夕麻(レイナーレ)。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユーキは溜息を吐いた、識らない癖に思い切り原作ブレイクしているのだ。

 

 取り敢えずユートにだけ教えておく。

 

 先ずはアーシアと出逢うのは一誠だったし、その後はアーシアが連れ去られて神器(セイクリッド・ギア)を抜かれ、それが故に死ぬ筈だった。

 

 木場と小猫を伴い一誠が教会に殴り込みを掛けて、一誠の神器(セイクリッド・ギア)が覚醒。

 

 【赤龍帝(ブーステッド・ギア)の籠手】であると判明する。

 

 最終的にリアスがレイナーレを滅ぼして終了。

 

 これが一連の流れだ。

 

 それをユートが突っ走った為にアーシアは人間で、一誠も覚醒していない。

 

「ふむ、リアス部長」

 

「何かしら?」

 

「【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】ってさ、知っている?」

 

「【赤龍帝の籠手】っていったら、十秒毎に力を倍々にしていき、最終的に神や魔王すら凌駕すると云われる十三種類の神滅具(ロンギヌス)の一つじゃない。二天龍と呼ばれた【赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)】のドライグが封じられているわ。それがど……真逆」

 

「その真逆(まさか)ってヤツみたいだね。一誠の神器(セイクリッド・ギア)は、【赤龍帝の籠手】だ」

 

「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」

 

 リアスもソーナも夕麻も驚愕の余り叫ぶ。

 

 只のありふれた神器である【龍の手(トゥワイス・クリティカル)】だと思われたモノが、真逆の伝説の【赤龍帝の籠手】だとなれば驚きもしよう。

 

「然し、成程ね。神器(セイクリッド・ギア)って、生き物の魂を封じたタイプなんかも在るのか……」

 

 ユートが見た事のあるのはギャスパーの様な、五感と一体化したタイプだけ。

 

 これは俄然、神器に興味が湧いてきた。

 

「あら? ユウ、どうしたのかしら」

 

「ああ、兄貴の悪い癖がでたかな?」

 

「悪い癖?」

 

「ボクも他人の事は言えないんだけどね、兄貴は研究者気質な処があるんだよ。自分で造れそうなものは、造ってみたいって……ね」

 

 リアスの疑問に答える。

 

 ユートは今までにも様々なアイテムを造った。

 

 本人は紛い物だと自嘲しているが、出来映えは本物と比肩している。

 

 只のマジックアイテムでは飽き足らず、宝具や神具などの類いも製作した。

 

 科学が必要ならユーキの手を借りてまで造るのだ。

 

 正に【模倣者(イミテイター)】といった処か。

 

「今度は神器(セイクリッド・ギア)を造る心算だ」

 

「ウソ……」

 

 流石のソーナも呆然だ。

 

 既にユートの中ではプランが出来ている。

 

 そして正史と同様に起こるであろう、ユートにとって初めてのレーティング・ゲームで完成したソレを渡す事になるだろう。

 

 塔城小猫に。

 

 人工神器──【山猫の爪(リンクス・ブリンクス)】という銘の鉄甲を……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ああ、シャブラ・ニグドゥを家に使ってるんだね」

 

 一旦、解散したユート達は放課後という事もあり、ユーキ、ミッテルト、アーシア、夕麻の編入手続きをソーナとリアスに頼んで、家に帰ってきたのだ。

 

「ユーキの部屋はその侭にしてあるから、其処を使ってくれれば良いよ」

 

「ん、了解。彼女は目覚めたの?」

 

「いや、未だだ。男の堕天使に負の感情をタップリと吐き出させて始末したんだけどね、全然足りないよ。夕麻は殺せなかったから、大したエネルギーにはならなかったし、カラワーナはユーキの躰にする為にも、傷つけられなかったしね。ミッテルトは気絶している間に終わったから」

 

 ユートが余りに残酷だったり残忍だったり残虐だったりするのは、別にユートの人格が破綻しているのではなく、目覚めさせるべき家族が居るからだ。

 

 その家族は人間でなく、嘗てハルケギニアで喚び出した使い魔である。

 

 その使い魔は生物の負の感情を食料とする存在。

 

 故に敵が恐怖し後悔し、絶望に喘ぐ様に殺す。

 

 ミッテルトは本来だと、その為の生贄にする予定だったのだ。

 

「処で、身体の調子は?」

 

「悪くはない。カラワーナの肉体だから堕天使な訳だけどさ、普通の人間よりは可成り丈夫だから」

 

「そっか、カラワーナを使った甲斐はあったね。良かったよ」

 

「小宇宙は魂から湧き出る力だから、身体が違っても使えるし便利だね」

 

「そうか、それなら聖衣石(クロストーン)を渡しておくよ」

 

 預かっていたユーキの為の聖衣石(クロストーン)、銀色の腕輪に灼熱色の宝玉が填まる腕輪を、ユートは手渡してやる。

 

「ありがと」

 

 右腕に聖衣石(クロストーン)填め、腕を振ったりして具合を確かめた。

 

「ん、良いね」

 

 前回から数年の刻を経て再びその手にした聖衣石(クロストーン)は、それでも確りと馴染んだ。

 

「さあ、帰ろうか。僕達、家族の家に……ね」

 

「うん、兄貴!」

 

 扉を開き二人は言ったものだった。

 

「「ただいま」」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 アーシアはユーキと友達になり御満悦な様子だ。

 

 那古人との再会も悪くないものとなり、ミッテルトは『ユーキお嬢様』と呼んで萌衣奴(メイド)な自分を噛み締めていた。

 

「アーシア、ミッテルト、ユーキもだけど、一週間か早ければ三日くらいで編入は出来るらしいから、その心算でね」

 

「はい!」

 

「判ったけど、ウチら学年はどーなんの?」

 

「アーシアと夕麻が二年生に編入、ミッテとユーキは一年生に編入だね」

 

「まあ、レイナーレ姉様が二年ならウチは後輩か……って、ミッテ?」

 

「ミッテルトの愛称なんだけど、嫌だったか?」

 

 ミッテルトは、少し考える素振りを見せるとニパッと含羞(はにか)みつつも、頬を紅潮させて言った。

 

「何か、悪くないかも」

 

「ミッテはアーシアの妹という設定だから、名前の方もミッテルト・アルジェントとなるから。夕麻の事は夕麻先輩と呼ぶように」

 

「判ったじゃん」

 

 ミッテルトとの話が終わると、クイクイと裾を引っ張られる。

 

「兄貴、ボクは?」

 

「僕の義妹だから、こっちでは緒方祐希になるね」

 

「うん、了解♪」

 

 当たり前だがやはり確認はしておきたかった。

 

 前回の生活では、ユートには双子の兄貴が居たし、居場所を盗られたみたいで悔しい思いをしたから。

 

「後、那古人も妹として通ってるから、ユーキと双子という事で書類は出しておいたから」

 

「へ?」

 

「宜しくお願いしますね、〝祐希お姉様〟」

 

「あ、うん……」

 

 何だかユーキの与り知らぬ処で、かおかしな事になっていた。

 

「それと那古人、ミッテの萌衣奴(メイド)修業に加え戦闘訓練もしてくれ」

 

「イエス、マスター」

 

 那古人は一礼して了承をするが、慌てたのはミッテルトだ。

 

「ちょ、ちょっと! 何でウチが戦闘訓練なんて?」

 

「アーシアを除けば、この中で最弱だからだよ」

 

「うっ!?」

 

 ミッテルトはジト目で睨まれて怯む。

 

「そして、アーシアは基本的に回復要員だ。ある程度の戦闘能力は付けて貰うとしても、現状では目立った能力の無いミッテが最弱という事になる」

 

「うう……」

 

 最早、ミッテルトは涙目となってしまう。

 

 実際に彼女の能力なんて堕天使なら当たり前に持っている黒い翼での飛行と、光の槍くらいしか無い。

 

「少なくとも属性くらいは使える様になって貰う」

 

「はーい」

 

 ガックリと肩を落とし、返事をするミッテルトであった。

 

「アーシアにも訓練は受けて貰うよ」

 

「は、はい!」

 

「ある程度、地力を付けたらクラスカードで能力の底上げをするから」

 

「クラスカードですか?」

 

 ユートはテーブルの上に数枚のカードを置く。

 

「これがクラスカード」

 

 絵柄に名前らしきモノが下の方に書かれたカード。

 

 【剣騎士セイバー】

 

 【槍騎士ランサー】

 

 【弓騎士アーチャー】

 

 【乗騎兵ライダー】

 

 【銃闘士ガンナー】

 

 【魔術師キャスター】

 

 【狂戦士バーサーカー】

 

 【暗殺者アサシン】

 

 【修道女シスター】

 

 【調教師ブリーダー】

 

 【格闘家アタッカー】

 

 【霊媒師アストライアー】

 

 【精霊師エレメンター】

 

 【一兵卒ソルジャー】

 

「ねえ、兄貴……」

 

「何かな?」

 

「やっぱりさ、一兵卒は無いんじゃないかな?」

 

「三文字括りにしたくて」

 

 漢字三文字+片仮名という括りで名前を入れた為、ソルジャーは一兵卒という有り難く無い名前である。

 

「でも、このカードって……どう使うんですか?」

 

「カードを身体にインストールして、能力の上昇と、技能(スキル)の発現をするんだよ」

 

 ユートはアーシアの質問に答えた。

 

 精霊輝石や精霊魔石──これらの後継のマジックアイテムであり、あの石の致命的欠陥を克服した物。

 

 それがクラスカードだ。

 

 内臓に内蔵するタイプではなく、皮膚からインストール出来るタイプとなる。

 

 初めからそう造れよと思われるが、実は造ってから気が付いた欠陥で、それから後に試行錯誤してこれを完成させたのだ。

 

 所謂処の若気の至りというヤツである。

 

「ま、使うのは地力を確りと上げてからだから」

 

「はい」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「あの、アーシア・アルジェントです。宜しくお願いします」

 

「天野夕麻です」

 

 数日後、4人の転入は割とトントン拍子に決まり、ユートと一誠のクラスへと入った。

 

 普通ならバラけさせるものだが、ユートと一誠が居るクラスの方が良いだろうと捩じ込んだらしい。

 

 転校生特有の質問責めも猫を被りに被った夕麻が、アーシアと対処していた。

 

 因みにアーシアは日本語を話せなくてイタリア語な訳だが、首に着けたチョーカーが翻訳機となって言語変換をしてくれている。

 

 そしてユートはこの数日で二回程、ギャスパーと会って訓練を手伝っていた。

 

 また、眷族となった夕麻は当然だとして、アーシアとユーキもオカルト研究部へと入部する。

 

「小猫、手を出して」

 

「……はぁ」

 

 訝しみながら小猫は素直に手を出した。

 

 ユートは小猫の手を取りペタペタと触り始める。

 

「……ユウ先輩、セクハラですよ?」

 

 金に輝く瞳が冷たい視線でユートを見据えていた。

 

 然し若干、頬が赤い。

 

「優斗、なんつー羨ましい真似を!」

 

 一誠が嫉妬の気炎を上げ木場は苦笑いになる。

 

「彼がただのセクハラ行為を働くとも思えないよ」

 

 ユートは小猫の滑らかな腕や、スベスベとした白い手を撫で回していた。

 

 つまり、やっている事は立派にセクハラである。

 

「うん、ありがとう」

 

 漸く終わったのか、満足気に御礼を言って放す。

 

「……何がやりたかったんですか?」

 

「今は内緒。いずれ判る」

 

 ユートは右人差し指で、内緒のポーズを執りながらウインクをした。

 

「はい、おやつ」

 

 直ぐにおやつのチロル的なチョコを出すと、小猫の口元へと持っていく。

 

「……ユウ先輩、そんなのじゃ誤魔化されません! ムグムグ……」

 

「ほーら、美味しいよ?」

 

「はく、ムグムグ……」

 

 結局は誤魔化されて小猫がハッと気が付いたのは、正に契約取りの仕事に行く前だったとか。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 兵藤一誠が転生悪魔となってから約一ヶ月。

 

 そして、一誠の神器(セイクリッド・ギア)がありふれた【龍の手(トゥワイス・クリティカル)】ではなく、伝説の十三種の【神滅具(ロンギヌス)】の一つたる【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】だと判明し二週間ばかりが経つ。

 

「えくれーるっ!」

 

 謎の叫び声と共に吹き飛ぶ一誠、吹き飛ばしたのはユートである。

 

「くっそ! 【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】さんよ、俺に力を貸しやがれっ!」

 

《Boost!》

 

 一誠の左腕に顕現するは赤い籠手、甲の部分の緑の宝玉が光を放ち、電子音声が鳴り響くと一誠の力が、それに伴い倍加される。

 

「うぉぉぉぉぉおおっ! りゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 GON!

 

「はれ?」

 

「いつも言ってるよね? 一の力を倍加しても所詮はニにしかならない。一誠の元々持つパワーを倍加した処で、僕には傷一つ付けられないよ……っと!」

 

 拳を揮いその重たい一撃を鳩尾へと打ち込んだ。

 

「りゅみえーるっ!?」

 

 空を舞う一誠。

 

「イッセー!?」

 

 見ていたリアスが悲鳴を上げながら駆け寄った。

 

「ユウ、やり過ぎよ!」

 

「同じ事を敵にも言う心算かな?」

 

「それは……だけど、敵なんてそうは」

 

「甘いね、いつ闘いは起きるとも限らない。その時、自身の力の及ばない相手だったら?」

 

「うっ……」

 

 強さ、力とは相対的なものである。

 

 上には常に上が居るし、怠れば常に下が駈け上がっていってしまう。

 

「今の一誠だと、ブーストに耐えられる回数は高が知れている。そんなんじゃ、万が一にも上級と闘う事になれば、アッサリと殺されるぞ?」

 

 ムクリと立ち上がる一誠は一目散に逃げ出した。

 

「もう嫌だぁぁぁぁっ! 何で俺がこんな目に!?」

 

 理不尽な暴力を揮われ、ただ只管(ひたすら)に逃げるが、直ぐに立ち止まらざるを得ない。

 

 何故なら目の前にユートが回り込んでいたから。

 

「あ、あわわ……」

 

 ユートの腕の動きが一三の星の軌跡を描き……

 

「喰らえ、流星拳っ!」

 

「なでしこっ!?」

 

 一秒という僅かな時間に八五発もの拳を放った。

 

 亜音速の拳を身体中に受けた一誠は宙を舞い、地面に墜ちるとゴロゴロと転がっていく。

 

 訓練を始めて二週間。

 

 目標が無く、いまいちやる気に欠ける一誠は、自分の持つ【赤龍帝の籠手】の力を引き出せずにいる。

 

 基礎体力作りはリアスがやらせていたのだが、実戦を想定した模擬戦闘訓練も平行して行ってきた。

 

 ユーキが言うには本来、一誠はレイナーレとの戦いでアーシアを救うべく動き覚悟や信念を得る。

 

 残念ながらその機会を、ユートが奪う形になってしまい、これではこの先での戦いではユートの引き立て役ならまだしも、足手纏いにしかならないだろうと。

 

「一誠、お前はこれから先の人生? で闘いが無いとか思ってるのか?」

 

「そりゃレーティングゲームの事か? 部長がそれに出れるのは成熟してから、少なくとも数年後だろ? 今から無理する必要なんてねーじゃんかよ!」

 

「龍という強い力は異性を惹き付けるが、それと同時に厄介事(トラブル)をも惹き付ける。お前がニ天龍の一角である限り、すぐにも新たな闘いは起こる」

 

 ユーキ情報だが……

 

「か、考え過ぎだぜ!」

 

 原作を識らないといえ、平和な日本に暮らすとはいえ余りに楽観視が過ぎる。

 

 裏に関わるという事を、全く理解していない。

 

 ユートは苦々しい表情を浮かべると、直ぐに諦念したのか一誠に言い放つ。

 

「判ったよ、もう良い」

 

「え?」

 

 一誠は愚かにも喜ぶ……

 

「どの道、やる気の無い奴は伸びない。この二週間、どうやら時間の無駄だったようだね……」

 

 それは見放されたのと、同義だというのに。

 

「他のグレモリー眷族にしてもそうだ。この二週間というもの、碌に鍛えようともしないなんてね」

 

 深夜まで悪魔の仕事をしていて大変なのは判るが、幾ら何でも修業をしなさ過ぎるのではないか?

 

 大っぴらに言える事ではないのだが、ユーキが曰く兵藤一誠を中心とした物語はもう始まった……

 

 ならば、一誠が望む望まぬに拘わらず厄介事の方からやって来るだろう。

 

 その時、厄介事が手に余るモノだったなら?

 

 それを考えれば今からでさえ遅い。

 

 とはいえ本人達にやる気が無ければユートのスキル【教導官】も意味を為さないのだ。

 

 一誠の訓練を切り上げ、ユートがベンチに近付く。

 

 其処には、全身から汗を噴出させつつ酸素を求めてパクパクと口を開閉して、グッタリしている夕麻の姿があった。

 

 夕麻もまた、この二週間で訓練をさせられている。

 

 毎日が死ぬか死なぬかの境界線上に在り、勉強にも余り身が入っていない。

 

 食事は人一倍食べてる、身体が栄養を求めているのであろう。

 

 此方は、ユートが恐いのか素直に従っていた。

 

 毎日が筋肉痛だが筋肉痛は筋肉の断裂によるモノ、アーシアの【聖母の微笑】なら、疲労は無理でも筋肉痛は治療が可能なのだ。

 

「大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫……に、見えるんなら……眼科……に、行く……のを、お奨め……する……わっ!」

 

 息も絶え絶えに答える。

 

「ほれ、いつもの疲労回復の薬だよ」

 

 ユートが、どう見てもドロップキャンディにしか見えないモノを投げ渡す。

 

 夕麻は薬を受け取ると、即座に口へと放り込んだ。

 

「あむ……」

 

 口の中で薬を転がして、唾液と口内の熱で溶かす。

 

 別にガリガリと噛み砕いても良いのだが、この薬は見た目通りドロップキャンディであり、疲れた身体にはゆっくり舐めていたい。

 

「ホント、いつも思うんだけど美味しい薬よね」

 

 効き目もバッチリだし、あっという間に疲労が抜けていく。

 

「ま、そういう薬だから」

 

 人間の姿で地力を上げておけば、堕天使や悪魔へと転身した際の力も上がる。

 

 地味だが着実なステップアップが可能だ。

 

「イッセー君は?」

 

「向こうでダウンしてる。やる気が無いみたいだし、どうでも良いけどね」

 

「……そう」

 

 訓練後はいつもの日常が始まった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 夜中……一誠がいつもの通り過ごしていた。

 

 そう、いつもの通り……

 

 今頃、夕麻はシャワーでも浴びている筈で、それを一誠は想像して妄想が加速していた。

 

 夕麻は体型こそスレンダーボディだが、胸は部長には一歩を譲るものの結構、タユンタユンに大きい。

 

 健全なる男子高校生としては、アレを妄想するなと言うのは拷問に近かろう。

 

 来たばかりの頃は瞳に力も無かった、だが今は笑顔をイッセーにも見せてくれている。

 

 何しろ元カノだと思っていた夕麻が『イッセー君、私の事を許してとは言わないわ。でも、イッセー君の事を想っても良いよね?』とまで言ってくれたのだ。

 

 嬉しくない訳がない。

 

 だけど余り締まりの無い顔は出来ないイッセーは、心とナニを鎮める為にお経を読み始め……

 

「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄……って、痛い痛い! アホか俺、こんなもん唱えたら自分を成仏させるわっ!」

 

 般若心経により頭痛を起こして自滅する。

 

 そんな事をやっていると突如として顕れる魔方陣。

 

 その紋様は、グレモリーの紋章であった。

 

「誰だ?」

 

 魔方陣が一際、光を放ったかと思うと粒子が人の形を取り始める。

 

 最初に目に付いたそれは長いストロベリーブロンドの髪の毛、鮮烈なグレモリー家の遺伝形質。

 

「……部長?」

 

 そう、駒王学園で一番の人気を誇るお姉様。

 

 リアス・グレモリー。

 

 リアスは一誠の姿を確認すると、切羽詰まった表情でズカズカッとベッドの上に座った一誠へと付くと、とんでもない衝撃的な発言をした。

 

「イッセー、すぐ私を抱きなさい。私の処女を貰って頂戴、至急頼むわ!」

 

「はい?」

 

 余りの超展開に、付いていけない一誠は間抜けな声を上げるのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 翌朝、昨夜の衝撃覚めやらぬ感じで夕麻と共に登校をしていると、松田と元浜の襲撃を受ける。

 

 先達て紹介したミルたんで地獄を見たらしい。

 

 一誠が美少女がいっぱいのオカルト研究部に入り、夕麻やリアスに囲まれていると知った二人が、自分達にも女の子を紹介しろと言ってきたのだ。

 

 それで紹介したのが以前ユートと共に願いを叶えたミルたん、悪戯気分もあったのだが彼──を紹介してやったのである。

 

 相当、怖い目に遭ったらしくマジ泣きしていたが、怒り狂った松田と元浜からのダブルブレーンバスターを喰らった。

 

 放課後、ユートと木場と共に部室に向かう途中で、昨夜にあった部長の様子の事を相談してみる一誠。

 

「部長のお悩みか。多分、グレモリー家に関わる事じゃないかな」

 

 木場が答える。

 

「早速、新しい厄介事って訳か。まあ興味無いな」

 

 素気無いユート。

 

 結局、昨夜は最後までいく事も無い侭に、新たなる闖入者により止められた。

 

 グレイフィアと呼ばれてた銀髪にメイド服の女性、よく解らなかったが破談がどうの、貞操がどうのと話していたみたいだが、事情まで一誠に計り知れない。

 

「誰か居るな。静謐な気配……これ、グレイフィアのものか?」

 

「「え?」」

 

 突然のユートの言葉に、一誠と木場は驚く。

 

 部室の扉前まで近付くと木場にも判った様だ。

 

「……僕が此処まで来て、初めて気配に気付くなんてね!」

 

 目を細めつつ顔を強張らせる木場は、警戒心も露わにして部室を睨む。

 

 一誠が扉を開けてみると部室内にはリアス、朱乃、小猫、夕麻、ユーキの五人が居た。

 

 更には銀髪のクールビューティなメイド──グレイフィアが居る。

 

 アーシアとミッテルトは那古人と家での自主訓練、その為に来てはいない。

 

「サーゼクスの女王(クイーン)が何故、此処へ?」

 

「これは御久し振りです、ユート様……」

 

 グレイフィア・ルキフグスは、ユートに声を掛けられ恭しく頭を下げてきた。

 

「ユウ、グレイフィアを知っているの?」

 

「セラに連れられてアッチに言った時、サーゼクスにも会っているからね」

 

 その時、同席している。

 

「そう。まあ、其処は後で良いわ。全員揃った様だし部活の前に、私から少し話があるわ」

 

「お嬢様、私からお話し致しましょうか?」

 

「良い、自分で話すわよ。実はね……」

 

 リアスが事情を話そうとしたその時、灼熱色をした魔方陣が顕れた。

 

 それはグレモリーの紋章から別の紋章へと変わる。

 

「フェニックス!」

 

「……え?」

 

 木場の口から出た言葉に一誠は驚愕した。

 

 魔方陣から炎が巻き起こり熱気が室内を満たすと、炎の中に男のシルエットが浮かび、腕を横に一薙ぎすると周囲の炎が一斉に振り払われる。

 

 赤いスーツを着崩して、ネクタイもせず胸まで開いているスタイル。

 

 見た目には二十代の前半だが、悪魔ならば三桁でもおかしくはあるまい。

 

 金髪を短く切り揃えた少しワル系のイケメン。

 

 即ち、ワルメンだった。

 

「人間界は久しぶりだな。愛しのリーアス、会いに来た……」

 

 パチン!

 

 バッシャーンッ!

 

 何か言っていたワルメンなホストが、行き成り頭上から大量の水を浴びせられ濡れ鼠となる。

 

「焼き鳥が濡れ鼠とはこれ如何に……」

 

『『『『ぶふっ!』』』』

 

 呟くユーキの言葉を聞いた部員は疎か、グレイフィアまでが噴き出す。

 

「室内で火を起こすなよ、非常識な!」

 

 呆れた表情のユートは腰に手を添え、ワルメンホストに言ったものだった。

 

 

 

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