ハイスクールD×D【魔を滅する転生魔】   作:月乃杜

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第20話:ゲーム×開始

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「お、お前が赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)、籠手に封じられたドライグ……なのか?」

 

『そうだ小僧! 忌々しい神の封印の中に在る、それがこの俺だ!』

 

 一応は確認をしてみた、そうしたらドライグは一誠の問いに答えると心底に、忌々しそうに表情を歪めながら答える。

 

『小僧……貴様は何故、こんな所まで来た?』

 

「俺もよくは判らないよ。けど、優斗がドライグの魂に会っておけって」

 

『ほう?』

 

「意志を持つのなら、その意志と心を通わせるのは、将来的にプラスになる」

 

『成程な……』

 

 確かに意志を持った武器ならその意志と意見統一しているのといないのとで、使い熟しにも違いが何処かで出て来るものだ。

 

 それは何処ぞのツンツン頭の勇者が、自分の剣との意志統一に失敗した結果、大魔王どころかその部下にさえ敗れた事を鑑みても明らかだろう。

 

 一誠の籠手がただの籠手ならば兎も角、ドライグの意志を宿すなら必要な事。

 

『で? 貴様は何の為に付いて来たのだ?』

 

「【赤龍帝の籠手】に一番詳しいのはドライグだし、ちょっと訊きたい事があったんだよ」

 

『訊きたい事? 何だ?』

 

「【赤龍帝の籠手】の能力って、僕の認識だと一〇秒毎の力の倍化と、その力を留める能力みたいだけど、他に何か無い?」

 

『その小僧が使えるかは知らんが、サポート系の能力も在るな』

 

 ドライグがユートの問いに答えた。

 

「え、マジに?」

 

「その能力はどんな?」

 

『溜めた力を他人に譲渡する能力だ。対象が一人なら一〇〇%、二人ならだいたい八〇%前後って処か』

 

「へえ、使える様になれば戦術に広がりが出来るね」

 

『実際、俺の宿主の中にはこの譲渡の力で最強を名乗る者も居た』

 

 前線で戦うだけでなく、仲間の能力を引き上げる事も可能なら、場合によっては一誠を下げつつ仲間が護るという事も出来る。

 

『後は、神器(セイクリッド・ギア)にほぼ共通する禁手(バランス・ブレイカー)という奴だ。亜種でなければ基本的に赤い龍の鎧を纏う【赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)】になる』

 

「亜種?」

 

『時々、現れる変わり種というモノだな』

 

 当然、ユートは知らない事ではあるが、一誠も最初こそ普通の禁手(バランス・ブレイク)だったのに、物語が進むとそれが進化を遂げている。

 

 主にリアスのおっぱいによって。

 

『まあ、『禁じられし忌々しい外法』などと呼び倣わされているがな』

 

「成程ねぇ……」

 

『もう一つ在るが、これは成らない方が賢明だ』

 

「若しかして、禁手化(バランス・ブレイク)に上でもあるのか?」

 

『いや、神器(セイクリッド・ギア)の究極は禁手化(バランス・ブレイク)だ。これは俺の力を宿主が獲るモノで、宿主の生命と引き換えになるだろう』

 

「え゙?」

 

 ドライグの『生命と引き換え』という言葉に、一誠は血の気が一気に引いてしまい青褪める。

 

『その名を【覇龍(ジャガーノート・ドライブ)】。ある特定の呪文を詠唱し、俺の力を引き出す力。歴代の宿主達を死に至らしめた莫迦げた力さ……」

 

 自嘲する様な、何処か寂しそうな口調だった気がしたのは気のせいだろうか?

 

「【覇龍(ジャガーノート・ドライブ)】とやらには成らない様にしないと危険って訳か。それじゃ、最後にもう一つ」

 

『何だ? 今代の宿主と逢わせてくれた礼だ。訊きたい事があるなら、俺が知る限りは教えてやる』

 

「今のドライグの本体となっている籠手、あれは僕の攻撃が僅かに当たって罅が入っていた筈。自己修復が出来るみたいだけど、少し砕いても平気?」

 

『? まあ、平気だが』

 

「砕けた欠片はどうなるか判る?」

 

『時間が経てば粒子に還ると思うが……』

 

「ふむ、ありがとう。現実に戻ったら少し砕いて欠片を貰うけど良い?」

 

『さっきも言ったが、直ぐに消えるぞ』

 

「其処は大丈夫。固定化って能力が在るからね」

 

 ユートが何を考えているのかは判らないし、一誠とドライグは一様に首を傾げてしまう。

 

「さてさて。序でだから、少し此処で修業をして行こうか?」

 

「……へ?」

 

「一誠、五日間の合宿を経て自分とリアス部長達を比べてどう思った?」

 

「俺が一番、弱かったよ」

 

 ユートからはダメ出しされていたし、ユーキにまでボコボコにされれていた訳だが、一誠は決して弱い訳ではない。

 

 然し、【赤龍帝の籠手】の力があるとはいえ、一誠は成り立ての悪魔に過ぎないのである。

 

 元々の人間だった頃の力にしても、一般的な男子高校生の平均的な身体能力しかなかったし、特筆するべく能力も無かった。

 

 悪魔に成って身体能力だけは上がったが、それを使い熟せるだけの経験も圧倒的に足りていない。

 

 せめて、格闘技の一つでもしていれば話は違っていただろうが……

 

 剣を持たせればその速度も相俟って、驚異的な能力を見せ付ける木場祐斗。

 

 高い格闘能力に、それを生かすパワーとディフェンスを持つ塔城小猫。

 

 圧倒的な魔力値と、様々な属性を使い熟せる上に、特に雷の力は特筆に値するものがある姫島朱乃。

 

 何だかんだで堕天使の力と悪魔の力を交互に使い、能力を伸ばす天野夕麻。

 

 強大な上級悪魔としての魔力を以て消滅の力を持つオカルト研究部の部長の、リアス・グレモリー。

 

 レーティング・ゲームとは関係ないが、そんな自分も含む全員を相手に戦え、勝利した緒方優斗。

 

 その優斗に迫る力を持つ緒方祐希。

 

 そんな錚々たるメンバーを見ると、自分が余りに弱いと理解出来た。

 

「実際に五日間、頑張ってきたとは思うけど、本当に強くなってんのか判らないんだよな。優斗は言っていたよな、高が一〇日の訓練で身に付くのは根拠の無い自信と付け焼き刃だって」

「……言ったね」

 

「今なら解る気がする」

 

「まあ、劇的に変わる何かが在れば一〇日でも充分なパワーアップは出来るよ。それは在ったかな?」

 

 一誠は弱々しく首を横に振った。

 

「一応、俺の子供レベルの魔力を全て使って、新しい技は作れたけどな……」

 

「新しい技?」

 

「まあ、それは本番でのお楽しみって事で」

 

 尤もその技を開発した事によって、ユーキから汚物を視る目で睨まれたが……

 

 ユーキ自身、ユートとは違い識っていたとはいえ、余り気分の良い技ではなかったのだろう。

 

 元は男だったといっても今は、その心身共に女性のそれであるが故に。

 

「まあ、ともあれだ。此処での修業で身体能力は上がらないだろうけど、戦闘をすれば経験は積める。更に言えば、此処は鳳凰幻魔拳の影響もあって、中の時間と現実の時間にはズレが出ている。この中である程度の時間が経過しても、現実では殆んど経っていない」

 

「へえ、便利だな」

 

「ドライグ、少し騒がしいとは思うけど、構わないかな?」

 

『構わん。小僧……いや、相棒が強くなるのだ、止める理由など無いな。寧ろ、俺も協力をしてやろう』

 

「はい?」

 

 ドライグからの申し出、それに一誠はタラリと大粒の汗を流してしまう。

 

 嫌な予感しかしない。

 

『ほ〜ら、先ずは軽く一発目だ!』

 

 豪っ!

 

 ドライグが炎を吐く。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「熱そうだな、涼しくしてやるよ!」

 

「げっ、遠慮しとく……」

 

「遠慮は要らない。そら、極小氷晶(ダイヤモンドダスト)ッ!」

 

 ブローを放つと同時に、凍気をも放つ。

 

「えうれかっ!?」

 

 ヒットした場所を凍らせながら、吹っ飛ばされてしまう一誠。

 

「兎に角、避けろ。今は、それだけでも構わない!」

 

「む、無茶苦茶だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 深層意識内で約一ヶ月、現実では僅か一時間の戦闘訓練が始まった。

 

 主に逃げる……否、回避の為の訓練ではあったが。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「これ、何かしら?」

 

「ヴァーチャル・リンク・バイザーだよ」

 

 ユートが亜空間ポケットから出したのは、バイザーの形をしたナニか。

 

「何に使うの?」

 

「これは集合無意識に創り上げた仮想空間に接続し、所謂処のRPGをする為の道具だよ。ゲームタイトルは【インフィニット・ブレイヴァー】と云う」

 

『『『RPG?』』』

 

 ユーキを除いた全員が、驚愕に目を見開き叫んだ。

 

「どういう事だよ? 遊んでいる暇なんて無えぞ!」

 

「そうですわ。イッセー君の言う通りですよ?」

 

一誠と朱乃の突っ込みに、リアス達も頷く。

 

「久しぶりだねぇ。どんな風になってるかな?」

 

「祐希ちゃん? 真逆とは思うけど、本当にこれで遊ぶ心算?」

 

 いそいそとゲームの準備をするユーキを見て、流石にどうかと思う一誠。

 

「このゲームはね、VRMMORPGなんだよ」

 

「は? VRMMORPGなんて開発されてない筈なのに……」

 

 VRMMORPGとは要するに、実際に仮想世界へとダイブして行われるオンラインゲームの事。

 

 然し、この世界では未だに開発はされてはおらず、このオンラインゲームは、ユートがハルケギニアに居た頃の学生時代に造り上げたモノで、人の集合無意識をネットワークに見立て、仮想世界を構築したモノ。

 

 ハルケギニアにはそもそも娯楽が非常に少なくて、このVRMMORPGは飛ぶように売れ、今でもプレイが為されている。

 

 だが然し、残念な事に同じジャンルのゲームはハルケギニアに現れていない。

 

 何しろ、造れる人間が居ないのである。

 

 集合無意識は正しく無限の拡がりを持つネットワークであって、ハルケギニアでは人間もエルフも翼人も吸血鬼もなく、ある意味で平等にアバターを創ると、レベルも1から始める事になるが故に、貴賤の別無くゲームを遊べた。

 

 また、クリア特典や技能完熟者(スキルマスター)特典も在って、誰もがハマったものである。

 

 とまあ、説明をした。

 

 飽く迄も説明をしたのはゲームの概要であり、ハルケギニアの事などは決して話してはいない。

 

「このゲーム、【インフィニット・ブレイヴァー】については理解したわ」

 

 リアスは額を押さえながら言う。

 

 表情には半ば呆れたモノが映っているが……

 

「だから、ゲームをしたからどうだと云うの?」

 

「あれ?」

 

「どうしたのかしら?」

 

「集合無意識? 若しかして鳳凰幻魔拳の時みたいな事が出来る?」

 

「一誠、正解だよ。こいつをプレイすれば、こないだ一誠がやった幻魔拳でトリップしてたのと同じ理屈で修業出来るんだ」

 

「そういう事か! 部長、やりましょう!」

 

「へ? え?」

 

 先程まで難色を示していた筈が、いつの間にか理解してプレイ派となる一誠の態度に戸惑うリアス。

 

「このゲーム……プレイ中に獲た戦闘経験は現実でも反映されるんですよ!」

 

「そ、そうなの?」

 

「成程、残り僅か一日だと大した事も出来ないから、せめて経験だけでも積もうって訳かい?」

 

 木場が、いつもの穏やかなスマイルで訊ねてきた。

 

「そういう事。ゲームモードをアクセルにする事で、狩りのみを短時間で行えるからね」

 

 アクセルモードとは……体感時間を加速する事で、一時間を二十四時間に引き延ばす事が可能なモード。

 

 忙しい人間はこのモードを使って、経験値だけでも獲ている訳だ。

 

 但し、アクセル可能時間は七時間まで。

 

 一度アクセルが解除されたら、一ヶ月間はアクセルは不可能となる。

 

 理由の一つが集合無意識でのゲームとはいえ処理をするのは個々人の脳故に、加速され引き延ばされた刻の負担を軽減する為。

 

 もう一つはハルケギニアは基本的に八日で一週間、その為に七日間が稼働時間に宛てられ、最後の一日を休みとした為だ。

 

 リアルで一ヶ月間の冷却期間を設けたのは、安全対策とハルケギニアの暦的な世情故である。

 

「じゃあ、バイザーを装着したらチュートリアルに従ってアバターを制作して」

 

 アバター制作の一連の流れはこうなる。

 

 名前の入力

 ↓

 種族選択

 ↓

 職業の選択

 ↓

 ボーナスPの割り振り

 ↓

 アバターの姿の作成

 ↓

 完了

 

 アバターの作成では現実とリンクをするか、或いは別に創るかを選択出来る。

 

 現実とリンクした場合、ゲーム内アバターは現実と同じ容姿となるのだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 種族選択では……

 

 【人間】

 

 【エルフ】

 

 【ドワーフ】

 

 【魔人】

 

 【翼人】

 

 から選ぶ。

 

 職業選択では……

 

 【剣士(ソーディアン)】

 

 【魔術師(メイガス)】

 

 【騎士(ナイト)】

 

 【闘士(ファイター)】

 

 【狩人(ハンター)】

 

 【騎兵(ライダー)】

 

 【神官(プリースト)】

 

 【暗殺者(アサシン)】

 

 【侍士(サムライ)】

 

 この中から選ぶ。

 

 上級職も存在してるが、これは一種のブースト。

 

 一時的に上級職に変化しステータスが上がる。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「そうだ……クリア特典とか技能完熟者(スキルマスター)特典っていうのは何なのかな?」

 

 木場が訊ねてきた。

 

「クリア特典は、ゲーム中に獲たアイテムを現実に持ち帰る事が出来る。技能完熟者(スキルマスター)特典はやっぱり、現実に技能を反映出来るんだよ。勿論、各々が一つずつね」

 

「へ? これって所謂さ、脳内ゲームな訳だろう? それでどうやってアイテムや技能を現実に持ってくるんだよ?」

 

「勿論、GMがそれを可能にしてるんだけど」

 

 ユートは然も当然の如く一誠の問いに答える。

 

「GMって誰だよ?」

 

「兄貴に決まってるよ」

 

「マジ?」

 

 クリア者が出た場合は、ユートがプレイヤーの選んだアイテムを製作し、それを渡している。

 

 だからこそ、現実には造れないアイテムはゲーム内にも存在していない。

 

 技能に関してはプレイヤーが選んだ技能を、頭のとある部位に焼き付ける事で修得させている。

 

 当然ながら、それはあるカードに術式を組んだものであり、現実には不可能な技能は存在しない。

 

「まあ、いずれにせよ永い時間をプレイして初めて獲られる特典だし、気にする必要は無いよ」

 

「確かに……ね」

 

 木場は苦笑いをしつつ、ゲームをスタートさせた。

 

 一日が経過してゲームを終了というか、セーブして中断したリアス達。

 

 イベントなどはガン無視して、即アクセルモードを使用したリアスパーティ。

 

 兎に角、近くのアクセル用のダンジョンに篭って戦い続けた。

 

 取り敢えず全員のレベルが八〜一〇程度に上がる。

 

「成程ね、実際に身体を動かす訳じゃないから肉体的には鍛えられないけれど、経験は活かされる訳ね」

 

 リアスは漸く得心がいき微笑んだが、これもやはり付け焼き刃に過ぎない訳なのだが……

 

「下山して一休みしたら、レーティングゲームに備えようか」

 

「そうね、それじゃあ直ぐにも戻りましょうか」

 

 こうして、レーティングゲーム当日がやってきた。

 

 ライザーとの決戦は深夜零時ジャストで行われる。

 

 ほぼ全員が多少の差違こそ有れ、駒王学園の制服姿であるのに対して、ユートの服装は候補生時代の星矢の出で立ちで、ほぼ全員とは姫島朱乃が巫女装束だったからだ。

 

 木場は制服の上から手甲や脛当てを装備して、西洋剣らしき物を腰に着けての佩刀としていた。

 

 小猫もオープンフィンガーグローブを手に着けて、今は本を読んでいる。

 

「あれ、朱乃先輩は一瞬で着替えられるから、ゲーム中にコスチュームを換えるのかと思ったけど?」

 

「今回は私も気合い充分ですのよ」

 

「成程……」

 

 ユートは納得した。

 

「そうだ、小猫」

 

「……はい?」

 

 見ていた本から視線をずらすと、顔を上げてユートの方を見遣る。

 

「右腕を出して」

 

「……?」

 

 ユートに言われるが侭、小猫は右腕を出す。

 

「……ユート先輩、またセクハラですか?」

 

「う〜ん、小猫は僕に触られるのは嫌?」

 

「……嫌ではないです」

 

「じゃあ、ハラスメントにはならないよね?」

 

「……そうですね」

 

 ユートは小猫の白い肌の腕を取り、その手首に白い腕輪を装着させる。

 

「……これは?」

 

「人工神器……【山猫の爪(リンクス・ブリンク)】」

 

「……人工神器?」

 

「発現させれば手甲爪として使えるし、任意に加速が可能。更に体内エネルギーを爪撃として飛ばせる」

 

 今回は不可能だろうから言わなかったが、禁手化(バランス・ブレイク)さえも可能となっていた。

 

「……あ、ありがとうございます先輩」

 

 手に触れるユートの温もりと、手ずから着けて貰った腕輪への喜びから頬を朱に染めて御礼を言う。

 

 試合開始十分前になり、部室の中の転移用魔方陣が輝きを放つ。

 

 そこから銀髪のクールビューティ・メイド、グレイフィアが顕れた。

 

「皆さん、準備はお済みになりましたか? いよいよ開始十分前です。開始時間になりましたら、此処の魔方陣から戦闘フィールドに転送されます。場所は異空間に作られた戦闘用世界。其処ではどんなに派手な事をしても構いません。使い捨ての空間なので思う存分にどうぞ」

 

 即ちユートが聖闘士の力を以て空を切り裂こうが、大地を割ろうが現実の世界には如何なる影響も与えないという事だ。

 

「あの、部長」

 

「何かしら?」

 

「部長にはもう1人、僧侶が居ますよね? その人は参加しないんですか?」

 

 ふと疑問を感じたのか、一誠がリアスにその疑問をぶつけてくる。

 

 だけど参加しようにも、リアスのもう一人の【僧侶(ビショップ)】は封印されていて参戦出来ないのだとユートは知っていた。

 

「残念だけど、その子は参加出来ないわ。いずれは、その事についても話す時が来るでしょうね」

 

 果たしてリアスは、少し俯きながら一誠と目を合わせずにそう言った。

 

 グレイフィアは更に恭しく話す。

 

「今回のレーティングゲームは、両家の皆様も他の場所から中継でフィールドでの戦闘をご覧になります。更に、魔王ルシファー様を始めとする四大魔王様方も今回の一戦を拝見されておられます。努々、お忘れの無き様に」

 

 その言葉にはユートも含めて全員が驚愕する。

 

 高が御家同士で執り行われる非公式な【レーティングゲーム】に、リアスの兄であるサーゼクス・ルシファーは兎も角、【セラフォルー・レヴィアタン】、【アジュカ・ベルゼブブ】、【ファルビウム・アスモデウス】の三人まで来るとは思わなかったのだ。

 

「う、うぉぉぉぉぉぉ! マジっすか? セラフォルー様が来てるって!」

 

「はい、魔王様方は両家の方々とは別の場所にて観戦をなされております」

 

 何故かテンションがただ上がりな一誠に、グレイフィアは冷静に返答した。

 

「なあ、木場……アイツは何を盛り上がってる?」

 

「ハハハ……イッセー君はセラフォルー様に会いたがってたからね。ほら、あの方は美人と名高いし」

 

「美人……ね。まあ、確かにそうだけど、イッセーの好みってあんなじゃないと思うんだけどなぁ」

 

 とはいえ、ユートの好みには割とドンピシャ。

 

 そういえば、身長の割には胸が大きかったから意外と一誠も好みなのかもと、『セラ』のおっぱい──服越しだけど──を思い出しながら考えた。

 

「ああ、そう言えば緒方君はセラフォルー様とお会いした事があったんだよね」

 

「魔王全員との出逢いの切っ掛けが、セラと会った事にあるからさ」

 

 一般的常識から見れば、ブッ飛んだ服装をして出歩いて迷子になっていた。

 

 それで声を掛けてみて、えらく気に入られて……というより懐かれてしまい、最終的に冥界に連れて行かれて、四大魔王全員と会う事になってしまったのだ。

 

 セラフォルー曰く、魔法少女には可愛いマスコットか格好いい騎士様らしい、騎士様かどうかは兎も角にしても、旧魔王派の連中をぶちのめして助けたというのは確かだった。

 

 因みに、全ての現象とは計算によって成り立つと嘯くアジュカ・ベルゼブブとは話が可成り合い、特に仲好くなったものである。

 

「お兄様が……? それにソーナのお姉様まで直接見に来られるのね」

 

「へ? 今、何だかとんでもない事を聞いた気がするんですが……」

 

 リアスの何気無い呟きを聴いて、一誠はセラフォルーの話で興奮していた時と別人なくらい驚いている。

 

「イッセー君は知らなかったの? リアス・グレモリーの兄は四大魔王の一角、サーゼクス・ルシファー……様なのよ」

 

 昔の癖で呼び捨てにしそうになりつつ、夕麻が一誠に説明を入れる。

 

「え、けどファミリーネームが違う……」

 

「数百年前に終わった戦争の後、死んでしまった前の魔王の名前を受け継いで、新しい魔王を立てたのよ。現魔王は、グレモリー家からルシファー。シトリー家からレヴィアタン。アスタロト家からはベルゼブブ。グラシャラボラス家からはアスモデウスを輩出しているのよ」

 

「な、成程。ありがとう、夕麻ちゃん」

 

「う、うん……」

 

 素直に満面の笑顔で礼を言われて少し赤くなる。

 

 今更ながら、夕麻も一誠に惹かれ始めているのかも知れない。

 

「補足すると、三陣営の中で一番力を持っていないのは悪魔なんだよ。結構、危ない状況なんだけど、現魔王様が先代魔王様に負けず劣らずなんで、どうにか保っているんだ」

 

「じゃあ、最上級悪魔として部長のお兄さんが魔王に選ばれた訳か?」

 

「サーゼクス・ルシファー──【紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)】、それが部長のお兄様であり、最強の魔王様だよ」

 

 夕麻から引き継ぎ、木場が説明をしてくれた為に、一誠も大体の構図は理解する事が出来た。

 

「グレモリーでなくルシファーか。……だから、部長は家を継がないといけないんだな。うん? って事は部長の甥子さんのミリキャス様? は、魔王様の息子なのか?」

 

「そうだよ、現魔王は役職名になるから世襲制じゃないからね、ミリキャス様はグレモリーなんだよ」

 

 ミリキャス・グレモリー……以前にライザーが部室へ現れた際にユートが言っていたリアスの甥であり、リアスの次の当主候補だ。

 

 それは扨置き、リアス達はバトルフィールドの方へと転移、移動をする。

 

 移動をした筈が、其処は部室その侭であり一誠は、すわ転移に失敗かと思ったものだったが、バトルフィールドそのものが駒王学園のレプリカであると知り、その凄まじさを実感した。

 

〔皆様、この度グレモリー家とフェニックス家によるレーティングゲームの審判役(アービター)を担う事となりました、グレモリー家の使用人グレイフィアでございます」

 

 校内放送なのか、バトルフィールド中にグレイフィアの声が響き渡る。

 

〔我が主、サーゼクス・ルシファーの名の許、御両家の戦いを見守らせて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します。今回のバトルフィールドはリアス様とライザー様のご意見を参考にし、リアス様が通う人間界の学舎【駒王学園】のレプリカを異空間にご用意致しました……〕

 

 リアス達が転移したのは旧校舎──【オカルト研究部】の部室が今回の本陣となり、ライザー達は新校舎にあるであろう生徒会室を本陣とした。

 

 またチェスの駒をルールにも取り込んでいる為に、駒には特殊な能力が与えられている。

 

 即ち戦車の【キャスリング】と、兵士の【プロモーション】だ。

 

 【キャスリング】とは、戦車と王の位置をその一手で一度限り、入れ換える事が可能な能力。

 

 つまりは、いざとなれば小猫とリアスの居る場所を入れ換えて、ピンチを凌いだりする事が出来る。

 

 【プロモーション】は、相手の本陣に【兵士】が入った際に、クラスを【王】以外に変更する能力。

 

 これを使えば【兵士】の一誠は相手の本陣──今回だとライザーの居る新校舎──に到達をしたならば、【王】以外の駒へと変化する事が可能だ。

 

 基本的に最強の駒である女王に成るのが常道だが、場合によっては戦車や騎士に成るのもまた戦術の一つであろう。

 

「リアス部長、無様だけは晒さないで欲しい。幾ら僕でも王が敗けを認めては、勝利なんて不可能だから」

 

「……まるで、ライザーは敵じゃないみたいに聞こえるわね」

 

「彼には残念な話だけど、種族特性だけで僕に勝とうなんて、ちょっと無理だと思うよ?」

 

 フェニックスの種族特性とは、風と炎の力と精神力の許す限りの瞬間再生だ。

 

 瞬間再生は仮令、腕を吹き飛ばされようが頭を撃ち抜かれようが死ぬ事なく、再生を続けられる能力だ。

 

 これが割かし厄介な能力であり、レーティングゲームを中心とした社会構造になってから、他の悪魔達はフェニックスの脅威を知る事となった。

 

 何しろ、如何なる攻撃を仕掛けても再生するのだ、普通に考えれば敵わない。

 

「僕は、センターの体育館を制圧するオープニングで少し闘った後、基本的には見に徹する。勿論、ライザーの眷族が仕掛けてくればその限りじゃないけどね」

 

「判っているわ」

 

 ユートの物言いは余りに傲岸不遜である、普段ならこんな事は言わない。

 

 少なくとも、相手の態度が普通ならばであるが……

 

 リアスの態度にはユートを嘲る含みは無いし、本来ならユートがこんな態度を取る相手ではない。

 

 これはユーキの指示だ。

 

 原作をある程度だが識っているユーキは、ユートが残っていても一誠を斃されてリアスが投了(リザイン)する可能性を考え、少し突き放す様に言ったのだ。

 

 原作に於いては確かに、あれから逆転は不可能だと云えたから、リザイン自体は仕方ないだろう。

 

 だけどゲーム──実戦の最中に在って、若し万が一にリアスが一誠が斃され、それだけでゲームを諦めてしまい、ユートが残っていてもリザインなどしたら、その時は容赦なく見捨てるだろうから。

 

 だが、アーシアがリアスの陣営に居らず、十字架などを調達出来ない一誠は、原作の通り婚約発表の式場に乗り込んでも、勝てない可能性が非常に高い。

 

 つまり此処で勝てなかったなら、完全に詰んでしまい終わるという事だ。

 

 そもそも、ユートが急に五日間だけなら訓練に付き合うと言ったのも、ユーキの入れ知恵である。

 

 今回のユートの作戦も、ユーキはある程度を原作通りに進める事で、一誠達の戦闘経験を得る機会を奪わない方向性で行く心算だったからだ。

 

 夕麻の時の様に、ユートが一人で無双してしまっては先行きに不安が残る。

 

 とはいえユートがまるで闘わないのも不自然だし、オープニングで何人か斃して見に回る様に頼んだ。

 

 元より、参謀役のユーキなだけにユートもその指示に従っている。

 

 正に、ユーキこそ裏番というか黒幕というか……

 

 リアスはユート以外の、自分の眷族達の動きを指示していく。

 

 夕麻はリアスの傍で護衛をして、木場と小猫は森にトラップを仕掛ける。

 

 朱乃はそのトラップ周辺に幻影を。

 

 それが済んでゲームが始まったら、ユートと一誠と小猫で体育館(センター)を取りに行く。

 

 指示に従って三人が動き始めると、直ぐにリアスは一誠を呼んだ。

 

「一誠、此方へ」

 

「はい?」

 

「頭を此処に乗せなさい」

 

「へ?」

 

 リアスが指示したのは、自身の太股。

 

 即ち、膝枕である。

 

「よ、よ、宜しくお願いします!」

 

 一誠は真っ赤になって、リアスの絶対領域から伸びる白い太股に頭を乗せた。

 

「う、うう……」

 

「って、何を泣いてるの」

 

「うぅ、部長に膝枕して貰えるなんて感動で涙が止まりません。この感触を俺は一生忘れません。うう……生まれてきて良かった」

 

「膝枕くらいまたして上げるわ。本当に大袈裟ね」

 

 膝枕の感触に泣く一誠、そんな彼にリアスは苦笑いをしながら言う。

 

「一誠、貴方はライザーの本陣に赴き、プロモーションをしなければならない。だから、貴方に施してある封印を少しだけ解くわ」

 

「ふ、封印?」

 

「貴方を転生させるのに、兵士の駒を八つ全て使った事は教えたわね?」

 

「は、はい」

 

 一誠本人は兎も角、神器(セイクリッド・ギア)の方が規格外だった為、兵士を全部使ってしまった。

 

「転生時、貴方は悪魔として未成熟過ぎたから、兵士の力に制限を掛けたのよ。只の人間から転生したばかりの貴方では、兵士八個分の力に耐えられない。単純な話、朱乃の次に強力な力となるのだから」

 

 女王の駒の価値は兵士の駒の九個分、兵士八個分の駒を持つというのはつまりそういう事だ。

 

 そんな力、一般男子高校生に過ぎなかった一誠に受け止められる筈もなくて、下手すれば一誠を壊してしまう羽目になる。

 

 だから、リアスは兵士の駒に何段階かの封印を施しておいた。

 

 一誠が肉体を鍛えれば、それを順次解放出来る。

 

 そしてその分、一誠も力を獲られるのだ。

 

 封印解放後、沸き上がり溢れる力を感じる一誠。

 

「さあ、みんな。準備はいいかしら? もう引き返せないわ。敵は不死身のフェニックス家の中でも有望視されている才児、ライザー・フェニックスよ。さあ! 彼らを消し飛ばしてあげましょう!」

 

『はい!』

 

「了解」

 

 【王】であるリアスの激に全員で返事をして、一斉に駆け出した。

 

「じゃあ、先に行って待っているよ!」

 

「ああ、先で待ってろ!」

 

 互いに別れの挨拶を済ませて散開、ユート達は体育館へと向かった。

 

「どうせ向こうも同じ事を考えてるだろうし、此方の動きもバレてる。一気に雪崩れ込むぞ!」

 

「お、応よ!」

 

「……了解」

 

 ユートの提案に頷くと、三人で体育館へ侵入する。

 

「【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】!」

 

《Boost!》

 

「……【山猫の爪(リンクス・ブリンク)】!」

 

 一誠の左腕に赤い籠手が装着されて電子音声が響き渡り、小猫も人工神器である白い手甲爪が顕現した。

 

 ライザー側は兵士が三人と戦車が一人で、白襦袢に赤い服の少女は、ユートに顎を砕かれた挙げ句に失禁をしてしまった娘だ。

 

 それに緑の髪の毛の双子とチャイナドレスの娘。

 

「双子……か。一誠は棍使いを、小猫は戦車を相手しろ! 僕は双子を潰す!」

 

「応っ!」

 

「……了解です」

 

 今回、ユートは双子として生を受けた。

 

 ネギ・スプリングフィールドと二卵性双生児。

 

 とはいえど、ユートには下手に知識がある分、やっぱり壁と溝がどうしても出来てしまう。

 

 その為、アンチだと言われようともぶつかり合う事も有ったのだ。

 

 その前の生に於いては、双子座・ジェミニのサガと闘ったし、今生では海龍(シードラゴン)のカノンとも闘っている。

 

 敵として闘った訳だが、この二人も一卵性の双子。

 

 前々世のユートも死産でこそあれ、本来なら一卵性の双生児だった筈。

 

 双子に対して何かと因縁があるユートは、目の前の双子が琴線に触れてもおかしくは無い。

 

 小猫がチャイナドレスを着た戦車、雪蘭を……一誠が棍使いのミラと対峙する中でユートは小柄な双子に向かって往く。

 

 双子──イルとネルは、小型のチェーンソーをニコニコ顔で手にし、ユートの方へと突貫する。

 

「チェーンソーか。神殺しとも名高い必滅の武器」

 

 それは某・塔を登り詰めた者の世界の噺だったが、そういえばタイトルは……

 

 当然、双子のチェーンソーにそんな概念は附与されてはいない。

 

「解体しまーすっ!」

 

「バラバラでーすっ!」

 

 どちらがイルでどちらがネルかは知らないが、双子はチェーンソーを振り回してユートを襲う。

 

 勿論、そんな攻撃に当たってやる義理立てなどありはしないのだから、大振りな一撃を軽く避けてやる。

 

「むむ、ちょこまかと!」

 

「さっさと当たって、バラバラになってよ〜!」

 

 平然と物騒な物を振り回して物騒な事を言う双子に対し、ユートは胡乱な表情で話し掛けた。

 

「そうか、バラバラに解体したいのか?」

 

「そうだよ!」

 

「で、ライザー様に褒めて貰うんだ!」

 

 双子はハイテンションになっていたからだろう気付かない、ユートが口角を吊り上げて凶悪な笑みを自分達に向けている事に。

 

「良いよ、だったら好きなだけバラバラに解体させて上げよう……」

 

 右人差し指を立て、叫びながら双子の間をすり抜ける様に駆けた。

 

「幻朧魔皇拳!」

 

「はう?」

 

「ひあ!」

 

 脳への軽い衝撃に、思わず呻くイル&ネルはすっかり立ち止まり、顔を伏せてしまう。

 

「さあ、愉しい愉しい解体の時間だ。思う存分切り刻むと良い。互いに……ね」

 

 放たれた幻朧魔皇拳。

 

「うわぁぁぁぁぁっ!」

 

 下された命令。

 

「がぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 きっと仲の良い筈の双子の姉妹は今、お互いに凶器(チェーンソー)を向け合って殺し合いを始めた。

 

 

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