ハイスクールD×D【魔を滅する転生魔】   作:月乃杜

23 / 34
第22話:終盤×決着

.

 少し時間を遡り……

 

 空中で対峙しながら激しい戦闘を繰り広げる二人の女王、リアス・グレモリー側の姫島朱乃と、ライザー・フェニックスの側であるユーベルーナ。

 

 片や【雷の巫女】であり片や【爆発王妃】。

 

 戦いをし始めてから十分ばかり経つが、もう二人共が服と云わず体と云わず、ボロボロとなっていた。

 

 纏った衣装は千切れ飛び黒く焦げているし、肉体もそこかしこが火傷の痕が痛々しく残っている。

 

 二人の実力はほぼ互角であって、事此処に至っては体力も魔力ももう底を尽いていた。

 

「ハァ、ハァ……中々やるじゃない、【雷の巫女】」

 

「あらあら、まだわたくしは往けますわよ【爆発王妃(ボム・クイーン)】さん」

 

「チッ、その二つ名は好きではないと……」

 

 ユーベルーナはを舌打ちして、なけなしの魔力を掌へ集中すると、朱乃に向けて大きく揮う。

 

「言っているでしょう!」

 

 放たれた魔力を防ぐ為、朱乃も魔力によって障壁を展開した。

 

 爆発が起こり、爆煙が巻き上がって爆音が辺り一帯へと鳴り響く。

 

「天雷炮!」

 

「なにぃ?」

 

 爆煙の中から声が聞こえたかと思えば、煙を突き破ってまるでビームの如く収束された雷撃がユーベルーナの肩を撃ち抜く。

 

「ぐあっ!」

 

「残念、少し外してしまいましたわ」

 

 さっきの砲撃の所為か、爆煙が晴れて朱乃の姿が露わとなった。

 

「グッ!」

 

 とはいえ、ユーベルーナの右肩は焼け爛れて最早、使い物になりそうにない。

 

「うふふ、それにしても……ユウ君の言っていた通りですわね」

 

「……?」

 

 頬を紅く染め、恍惚とした表情の朱乃は独白する。

 

「技を放つ時は、必殺技の名前を叫ぶと気合いが入って良いと聞いた時は、半信半疑でしたが……」

 

 朱乃の両手に魔力が収束されていく。

 

 それを見てユーベルーナも直ぐに魔力を集めた。

 

「轟雷覇!」

 

「征け!」

 

 放たれる雷の塊と爆発がぶつかり合い、その余波によって朱乃とユーベルーナは互いに吹き飛ぶ。

 

「くっ!」

 

「うぐっ!」

 

 態勢を立て直してから、再び対峙するが痛みにどちらも呻き声を上げた。

 

「本当に、憎たらしいくらいにやるものね……」

 

「光栄ですわね」

 

 どちらも限界に近くて、軽口を叩く余裕も殆んど残ってはいない。

 

「だが、攻め切れなかった時点でお前の敗けだ、【雷の巫女】!」

 

 何処からともなく取り出したのは、何やら液体の入っている小瓶。

 

 ユーベルーナはその小瓶の中身を一気に煽った。

 

「それは、まさか……?」

 

 朱乃はあれに心当たりがあり、如何なる傷も消耗してしまった魔力さえも回復させてしまうアイテムで、悪魔をも回復出来る貴重な代物だ。

 

 その名を【フェニックスの涙】という。

 

 それを飲んだユーベルーナの傷付いた肉体が、見る見る内に回復していく。

 

「フェニックスの涙……ですか」

 

「ウフフ、正解よ」

 

 ほぼ完全に回復してしまったユーベルーナを、朱乃は悔しげに睨む。

 

「さあ、覚悟なさい【雷の巫女】」

 

 両腕を天高く掲げると、頭上で軽く交差させて魔力を高め、朱乃に向かって解き放った。

 

 朱乃を爆発が襲う。

 

「キャァァァァァッ!」

 

 これなら完全に決まっただろうと、ユーベルーナは確信をする。

 

 朱乃には最早防ぐだけの魔力も、躱すだけの体力も無い筈だから。

 

「終わったわね。それにしても流石は【雷の巫女】。切札だった【フェニックスの涙】を使わされた……」

 

「いいえ、それ程でも」

 

 ギクリ!

 

 自らの浮いている場所より更に上、其処から朱乃の声が響いた。

 

 見上げれば見間違いなどありえないくらいハッキリとしたシルエット、緋袴の女性……姫島朱乃。

 

「ば、莫迦な……」

 

 もう全て尽きていた筈、体力も魔力も。

 

「うふふ……これ、何だか判りますか?」

 

 朱乃は空っぽになっている小瓶を指先で摘まむと、ユーベルーナに対して見せびらかした。

 

「空っぽの小瓶……まさかそれはっ!」

 

「そう……【フェニックスの涙】ですわ」

 

「よもや、手に入れていたというの? 高額で数も少ないフェニックス家の方々のみ造れる秘薬を」

 

「少し違いますわ。これはわたくしの仲間が造った物ですから」

 

「なっ!?」

 

 驚愕するユーベルーナ。

 

 そう、これは正確に言うと【フェニックスの涙】などではない。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 それはレーティングゲームの前の事、朱乃はユートから呼ばれて待ち合わせの場所で待っていた。

 

「朱乃先輩!」

 

「ユウ君。いったいどうしたんです? ゲームの前にこんな所に呼び出して……もしや、ゲーム前にわたくしの温もりが欲しくて?」

 

「違うから!」

 

 キッパリと言う。

 

「そんなにキッパリと言わなくても……」

 

 右手を頬に添えて朱乃は苦笑いした。

 

 ユートは懐中から小さな小瓶を取り出すと、それを朱乃に手渡す。

 

「これは?」

 

「こないだ、ライザーが使っていたアイテムを解析、再現した物だよ」

 

「え? 【フェニックスの涙】をですか?」

 

「尤も、どうにも手に入らない成分があってね。違うの物で代用しているから、回復力は精々が三分の一って処だから、使う場合は気を付けてね」

 

 フェニックス家の悪魔が流した純然たる涙、名前の由来となった成分が手には入らなかったのだ。

 

「心得ましたわ♪」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「そんな……解析した? 【フェニックスの涙】を」

 

 自分だけのアドバンテージを奪われ狼狽する。

 

 あの爆発を隠れ蓑にし、朱乃はユーベルーナの上空へと向かったのである。

 

 とはいえ、回復力が足りない朱乃は可成りギリギリの状態だ。

 

 先手必勝とばかりに逸早く朱乃が魔力を練る。

 

「くっ!」

 

 それを見てユーベルーナも魔力を練り始めた。

 

「天雷炮!」

 

「させない!」

 

 二つの魔力がお互い無防備な朱乃とユーベルーナを穿って大爆発が起き、二人は意識を失って墜ちた。

 

 その爆音を聞きユートは取るものも取り敢えず朱乃の許へと飛ぶと、ユートは墜ちて行く朱乃の身体を優しく抱き留める。

 

「朱乃先輩!」

 

「う……ユウ……君……? わたくし、敗けてしまいましたか?」

 

 その問いにユートはニコリと微笑み、ゆっくりと首を横に振った。

 

「引き分けかな。よく頑張ったね朱乃先輩」

 

「きゃわ?」

 

 頬を撫で回された朱乃は思わず可愛い悲鳴を上げ、羞恥と歓びから頬を紅潮させてしまう。

 

「後は任せてくれれば良いから」

 

「はい、ユウ君」

 

 はにかみながら光の粒子となり、朱乃の姿が徐々に消えていく。

 

 そんな消え逝く朱乃を見送って、ユートは再び一誠達の所へ戻った。

 

〔ライザー・フェニックス様の女王一名、リタイア。リアス・グレモリー様の女王一名、リタイア〕

 

 その直後、グレイフィアによるアナウンスが響く。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

〔ライザー・フェニックス様の兵士二名、騎士二名、僧侶一名、リタイア〕

 

「あれ?」

 

 どうやら、ニィとリィの兵士コンビとカーラマインとシーリスと美南風が墜ちたらしく、グレイフィアのアナウンスが響いた。

 

 レイヴェルだと考えなかったのは、彼女もフェニックスである以上はそんな直ぐに墜ちるとは思えなかったからだ。

 

 というか、レイヴェルを墜とせるのならライザーも同じく墜とせるであろう。

 

 思った通り、レイヴェルだけしか残っていない。

 

「木場と一誠は?」

 

「お兄様とリアス様の居る屋上ですわよ」

 

「そう……」

 

「貴方も行きますの?」

 

 レイヴェルが訊いてくるその声色には、『莫迦な事を』と言わんばかりの半ば呆れの色があった。

 

「残っているのはレイヴェル・フェニックス……君とライザーの2人だけだし、此方は一応、リアス部長を含めて五人だ。形勢は逆転していると思うが?」

 

「確かにそうですが、どうせお兄様の勝ちですわよ。不死身とはそれだけ大きなアドバンテージですもの」

 

「どうかな?」

 

「え?」

 

「まあ、良いか。それで、何があったんだ?」

 

 ユートは話題を変えて、レイヴェルに此処で起きた出来事を訊く。

 

 レイヴェルは語る。

 

 一誠がライザー眷族に囲まれた状況で【赤龍帝の籠手】が新しい力に目覚め、増幅した力を木場に譲渡をすると、木場は最大限の【魔剣創造】をしてカーラマイン、シーリス、美南風、ニィ、リィの五人を一気に墜としたらしい。

 

 想定の範囲内だ。

 

 ドライグの意識体と接触をした際に、譲渡については聴いていた。

 

 これまでの戦闘経験に加えて、部長の為にも敗けたくはないという気持ちが、一誠の中の潜在力を引き出したのであろう。

 

 ユートはそう見ていた。

 

「それで、貴方もライザーお兄様の所に行きますの? 私達はフェニックス……不死鳥ですわよ。この身は最も死に遠い」

 

 ユートはニヤリと口角を吊り上げて、レイヴェルに自信の程を伝える。

 

「問題は無いよ。不死身だというなら、それはそれでやり様は在るものだ」

 

 思わず息を呑むレイヴェルだったが、それでも不敵に微笑むと忠告した。

 

「そうですか、ならば精々無様を晒さない事ですわ」

 

「ああ、留意しよう」

 

 頷くと、ライザー達が居るであろう新校舎の屋上へと向かう。

 

〔リアス・グレモリー様の騎士一名、僧侶一名、リタイア〕

 

 然し無情にもグレイフィアのアナウンスが、木場と夕麻がライザーに墜とされた事を教えてきた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ぐあっ!」

 

 吹き飛ばされる一誠。

 

 木場と夕麻も頑張ってはいたが、悪魔として闇の槍を造って牽制する夕麻の力は通じないし、どれくらい速く動けても瞬間再生するライザーには致命傷を与える事も叶わず、最終的には炎に焼かれてリタイア。

 

 そして一誠も、激情に駈られて六回の増幅をした拳を揮ったが、逆に殴り飛ばされてしまったのだ。

 

「リアス、これで理解しただろう? 俺の可愛い眷族達をリタイアさせた事は、驚嘆に値するさ。だがな、俺は倒せないんだよ。不死身のフェニックスは落とされたりしない。投了(リザイン)しろ、リアス!」

 

 ライザーは勝利を確信して高らかに言い放つ。

 

「くっ!」

 

 悔しそうに睨み付けるが現状では手が無い。

 

 フェニックスだとて絶対に倒せない訳ではないが、その為には神すら屑る一撃を見舞って一気に斃すか、相手が精神切れを起こすまで叩き続けるかしなければならず、木場も夕麻もそれが出来なかった。

 

 とはいえリアスもそんな一撃など放つ事は叶わず、下手に手数を増やそうとも逆に墜とされる。

 

 木場や夕麻の様に。

 

 一誠まで吹き飛ばされてしまって、進退窮まった訳だが簡単に投了(リザイン)は出来ない。

 

 こうなっては、ユートを信じる以外この状況を打破する手段は無かった。

 

 その一方で、地上にまで落とされた一誠はユートに拾われていたりする。

 

「随分とボロボロだね」

 

「うっせーよ」

 

「憎まれ口が叩けるなら、まだ大丈夫かな? 一誠、望むならもう少しだけ戦わせてやれるけど、ライザーに一発くらい拳を叩き込んでから消えるのと、此処で消えるのを待つのとどっちが良い?」

 

 ユートから与えられたのは選択肢。

 

 一誠は迷わず答える。

 

「あの焼き鳥野郎の顔面に一発ぶち込んでやるぜ!」

 

「良いよ、だったら先ずは立ち上がろうか」

 

 気力を取り戻した一誠、ガタガタになった身体を押して立ち上がった。

 

「良い? もう今回は一撃を見舞ってやるのが精一杯だろう、だから色気は出さずに一意専心……一撃に全てを懸けろ。後は僕が何とかするから」

 

「応よ!」

 

 一誠は屋上のライザーを睨みながら、ユートの言葉に力強く返事する。

 

「それじゃあ、少し背中を向けてろ。クトゥグア!」

 

 ユートが叫ぶと、術式が編まれて赤と黒の重厚な雰囲気を持つ拳銃が顕れる。

 

「待て、激しく待てい! それをどうする気だ?」

 

「ハハハ、やだな。拳銃は誰かに向けて撃つ物に決まってるじゃないか」

 

「誰に!?」

 

 昔、アル・アジフから貰った【暴君】の魔銃の記述の写本、故にユートはこの自動拳銃を自由に使う事が出来る。

 

 マガジンをグリップから抜き取って、赤色の弾丸を一発だけ籠めた。

 

 弾丸には儀式魔術により【Welsh Dragon over booster】と記載されている。

 

「ちょっと擽ったいよ……なに、痛みは一瞬だ!」

 

「ちょっ! マヂか?」

 

 BANG!

 

 少し間抜けな音を響かせながら、背中から弾丸に撃ち抜かれた一誠、だが然しダメージは一切無くそれ処か力が沸いてきた。

 

《Welsh Dragon over booster!》

 

 左腕に装着された赤い籠手から電子的なドライグの音声が響き、赤色の光に包まれた一誠の肉体を硬質の赤い鎧に覆われていく。

 

「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 自分の突然の変化に驚きを露わに、天を衝かん絶叫を上げる一誠。

 

「一時的な禁手化(バランス・ブレイク)。前以て籠手の欠片を貰って造り上げた弾丸。それを撃ち込んで強制的にその姿……【赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)】を顕在させたんだ」

 

「撃たれた時はどうしようかと思ったけど、こいつはスゲーや」

 

「但し、一分も保たない。急いでライザーをぶん殴ってこい!」

 

「応っ!」

 

 一誠は鎧の力を使うと、文字通り飛んで行った。

 

 その昔、ハルケギニアの時代の事である。ユートがアルビオン王国の危機に際して戦った時に使ったのがクトゥグア神獣形態。

 

 それを呼び水とし招喚された異世界のクトゥグア、というよりクトゥグア星人のクー子。

 

 クー子の要望で、神獣弾を放った時にクー子の力を引き出した形態へと変化させたのだ。

 

 それと同じ理屈でユートは【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】の一部から弾丸を造り、儀式魔術を以て特殊弾頭とした。

 

 これを一誠に撃ち込めば一時的だが一誠の中に在るドライグと共鳴、その力を引き出せると考える。

 

「うん、上手くいったな」

 

 ユートは嘆息しながら、リアスの許へと向かった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「さあ、投了(リザイン)をしろリアス! そうすりゃお前の可愛がっている下僕がこれ以上、傷付く事もねーんだぜ」

 

「くっ、断るわ!」

 

 リアスは紅色の魔力を紡いでライザーに放つ。

 

 ライザーの頭が消し飛ばされるが、直ぐ再生してしまいダメージにならない。

 

「無駄だ、リアス。不死鳥たる俺は決して死なない……ん? 何だ?」

 

 強い魔力の高まり、それが近付いてきた。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

「あれは、さっきの兵士の小僧か? あの姿……何があった?」

 

 赤いオーラを放ち、ドラゴンの姿を模した全身鎧。

 

《相棒……この力は本当に一時的だ。決めるなら奴の言う通り、一撃に懸けろ》

 

「判った!」

 

 ドライグからのアドバイスを受けて頷く一誠。

 

「一誠、その姿は?」

 

 まるでリアスを庇う様に立つ姿、そんな一誠の格好に驚愕して訊ねた。

 

「部長、俺はもうすぐ消えます。だからせめて一発、ぶん殴って来ます! 後は優斗に任せれば大丈夫」

 

 顔まで覆われ、表情は見えなかったものの、何故だか笑顔だった気がする。

 

「見せてやる、ライザー! これが龍帝の力……禁手(バランス・ブレイカー)赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)】──俺を止めたきゃ魔王様にでも頼め! 何しろ、『禁じられし忌々しい外法』らしいからな!」

 

 そう叫ぶと一誠は背中のノズルから魔力を噴出し、一気にライザーの居る所まで翔んだ。

 

 両の掌を手首の辺りで合わせて、魔力を集中し爆発させる。

 

「ドーラーゴーンー」

 

 一誠の好きなバトルアニメである【ドラグ・ソボール】の主人公、空孫悟の必殺技であるドラゴン波の構えであった。

 

 掌に集中させた魔力が迸りスパークすると、両腕を突き出しながら一誠は最後の一言を叫ぶ。

 

「波ぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 放たれた極太の魔力砲。

 

「なっ! でかい……」

 

 ライザーは防御するのは厄介と感じたか、ドラゴン波を躱しにいく。

 

 一誠はその僅かな隙を突いてライザーより上空へと飛翔をすると、体当たりをするかの如く勢いで背部から魔力のフレアを噴出させつつ、高速で突っ込んだ。

 

「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「ハッ!」

 

 ライザーが気が付いたがもう遅い、たったの一撃に懸ける一誠の拳がライザーの顔面を打ち抜いていた。

 

「ゴバァァアッ!」

 

 防御も出来ず避ける事も叶わなかったライザーは、勢いの侭に地面へと高速で激突をする。

 

 固い地面だがライザーが激突した部分が抉られて、クレーターが出来ていた。

 

「ハァ、ハァ……や、やった……ぜ……」

 

《Burst》

 

 体力、気力、魔力の全てが完全にエンプティとなってしまい、鎧が解除されて落ちる。

 

「一誠!」

 

 リアスは地上に落下する一誠を受け止めた。

 

「ゴフッ! 部長、取り敢えずライザーの野郎を一発だけでもぶん殴りました」

 

「ば、莫迦……無茶するんだから」

 

 涙がポロポロと零れて、震える声で力無い叱責をすると一誠の頬に触れる。

 

「今回は俺、此処までですけど、いつか貴女を護れる最強の兵士になります……だから、後は優斗を信じて……安心し……て、見ていて……だ……い」

 

「一誠! 一誠、一誠!」

 

 気絶し光と消えた一誠、其処に声が掛かる。

 

「やってくれたなあのクソ餓鬼が」

 

「ラ、ライザー!」

 

「あの力、アイツが赤龍帝だったとはな。だが、これまでた。赤龍帝も消えて、残ったのはお前とあの人間のみだ! もう一度言う、投了(リザイン)しろ!」

 

「その必要はないな」

 

 声がした、リアスの背後にはいつの間にかユートが立っている。

 

「てめえ!」

 

「ユート!」

 

「ライザー・フェニックスとその眷族は、良い具合に踏み台になってくれたよ。これで一誠達はまた強くなれるだろうね。だけどもう用は無いし、役目を終えた役者には舞台を疾く、降りて貰おうか」

 

 ユートは、不敵な笑みを浮かべつつ大口を叩いたものだった。

 

「さて、これから始まるのは闘いなんて上等なモノじゃない。割と一方的な蹂躙というヤツだ」

 

 それは剰りにも傲然とした物言いであったという。

 

「ほう、言ってくれるじゃねえかよ。それはあれか、俺が一方的に敗けるってぇ宣言か? 人間風情が!」

 

「それ以外のどんな風に聴こえた? 悪魔如きが!」

 

 お互いに不敵な笑みを浮かべて相手を睨み合う。

 

 ユートは基本的に相手の態度に準じ、畏敬の念を持って接するならばユートもリスペクトするだろうし、逆に傲慢な態度で接するのならば、此方も傲然とした態度で接していく。

 

 とはいえど、相手をよく知りもしない間に侮る様な莫迦な真似はしない。

 

 ユートは既にライザーの実力を正しく計っていた、身体能力は生まれついての上級悪魔故に可成り高く、素のユートでは互角に持っていくのがやっと、向こうは魔力で自然と強化もされるだろうし、対処法として小宇宙を使う。

 

 あれは陰陽合一之法で、六十四卦の一つたる咸卦によって得られる強化と同じ理屈であり、効率や強化倍率に関しては咸卦以上だ。

 

 フェニックス特有の属性は炎だが、これは殆んど効かない筈である。

 

 ユートは地水火風という四属性全ての精霊王と契約して、契約者(コントラクター)の力を如何無く発揮出来た。

 

 故にこそライザーが精霊に頼らず自らの魔力で炎を生成していても、ドラゴンの鱗さえ燃やすという彼の炎も効力が激減する。

 

 そんな威力の弱まってしまった炎など、小宇宙を張り巡らしておけば防げてしまうだろう。

 

 問題となるのは、やはりフェニックス最大の特徴、不死性……精神力が許す限りの謂わば瞬間再生能力。

 

 だけど、ユートはそれに──不死性へと対応をするだけの作戦が在った。

 

 詰みだ。

 

 ライザー・フェニックスに更なる引き出しでもない限りは、全てに対処してしまえるのだから、既に詰んでいた。

 

 後は、作戦を実行に移す……それだけである。

 

「ライザー・フェニックス……上級悪魔であるお前に少しだけ敬意を表して僕の力の一端を見せてやろう」

 

「力の一端……だと?

禁手化(バランス・ブレイク)でもするのか?」

 

「いや、僕は神器(セイクリッド・ギア)を持っていないからね、そもそも禁手化(バランス・ブレイク)は出来ないよ」

 

 人工神器(アーティフィカル・セイクリッド・ギア)は造ったが、それは小猫に譲渡しているから使いようが無い。

 

 ユートは右腕を掲げる。

 

「白銀の石より来よ……」

 

 銀色の腕輪を手首に装着しており、腕輪に黄金色、白銀色、闇翠色、三色の石が填め込まれていた。

 

 ユートの言葉に反応し、白銀色の石が輝きを発するとユートの頭上に星座が顕れる。

 

 星座は白銀色のオブジェを顕現させ、ユートの意志に応じてオブジェが分解、ユートの肉体に装着されていった。

 

「な、何だその鎧は?」

 

「彼方側の世界に於ける、ギリシャの大いなる遺産……聖衣」

 

「聖衣?」

 

「僕は杯座・クラテリスの白銀聖闘士、ユート!」

 

 ユートがハルケギニアの時代に獲たのは、麒麟星座(カメロパルダリス)の青銅聖衣と、暫定的な双子座(ジェミニ)の黄金聖闘士としての資格。

 

 杯座(クラテリス)の白銀聖衣は再転生後に、とある事件を切っ掛けにして手に入れた物だ。

 

 つまりはユートは都合、三つの聖衣を使い分ける事が出来る。

 

 まあ、杯座(クラテリス)はとある理由から黄金聖衣は動かせず、然りとて青銅聖衣では格好付かないからとアテナが与えた【儀礼用】の聖衣だったりするが。

 

 戦闘に使うのは実はこれが初めてのことだった。

 

「さあ、始めようか」

 

「良いだろう……それが何なのかは知らんし、聖闘士なるモノは聴いた事すらないが、それが貴様の自慢というならこの俺が焼き尽くしてくれるわ!」

 

 互いの言葉を引き金としユートは飛び上がり、逆にライザーは降下して思い切り拳を揮い、小宇宙の拳と魔力の炎の拳が互いの拳を通じてぶつかり合う。

 

 その反発力により二人の拳が弾かれたが、透かさず第二撃目を放つ。

 

 ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ……

 

 小宇宙と炎を宿した拳と拳の応酬が続く。

 

 勿論、蹴りも交えて。

 

 言ってみれば、一誠が好きな【ドラグ・ソボール】の世界である。

 

 空孫悟とデルが行う空中戦を思い出せれば、或いは理解も出来るだろうか。

 

 拳と拳が衝突する度に、衝撃波が周囲に伝播する。

 

 お互いが同時に後ろへ下がり大技を炸裂させた。

 

「おおおおお……ペガサス流星拳っっ!」

 

「死ねよやぁぁぁっ!」

 

 ユートが天馬星座の一三の星の軌跡を描くと千にも及ぶ拳を放ち、ライザーは膨大な炎を拳に収束させて放った。

 

 剰りに膨大過ぎる炎は、壁の如く強度を以てユートの拳を防ぐが、ユートの拳はやがて一つへと纏まる。

 

「な、何だこれは? 流星が……流星が一つとなり、これではまるで彗星!?」

 

 今まで分散して撃っていた流星拳を、ユートは一ヶ所へと集約させたのだ。

 

 これこそペガサスの星矢が切札として使った大技。

 

「ペガサス彗星拳っっ!」

 

 炎の壁をぶち抜き、煌めく粒子を拳に纏いライザーの胸部を打ち貫いた。

 

「ガハッ!」

 

 堪らず吹き飛びながら、喀血をするライザー。

 

 新校舎の屋上にぶつかり床を砕き、更に下へと転がり墜ちていく。

 

 普通の人間なら胸部を打ち抜かれた時点で即死しているだろうし、それでなくとも墜ちた衝撃により五体がバラバラとなる筈だ。

 

 悪魔や堕天使であれど、即死は無いにせよ並の者ならば先ずダメージで死は免れまい。

 

 然し相手をするは不死身を標榜するフェニックス、身体がボロボロになりながらも、傷を炎と共に再生しつつ空を浮かぶ。

 

「くっ、やってくれたじゃねえかよ。だがな、この俺は不死鳥……フェニックスなんだよ! この程度で死んでやれる程、柔に出来ちゃいないんだぜ!」

 

 不死鳥は炎の中より甦るというが、正に今のライザーは伝説に謳われる不死鳥そのもので、リアスは真っ青になり絶望を感じた。

 

 先程のユートの一撃が、仮に防御に専心したとしても自分が受けたら只では済まない、そんな一撃でさえもやっぱり【圧倒的な力で押し通す】とまではいかなかった。

 

 ライザーのダメージは既に癒えている。

 

 今のを何十と、何百回と繰り返したらライザーの精神を疲弊させられるのか、考えるだに憂鬱になった。

 

「はっ! 一方的な蹂躙とやらはどうしたよ?」

 

 ライザーは始まった際のユートの言葉を、嘲笑うかの如く鼻で嗤い飛ばすが、ユートは余裕の表情を崩さないで口を開く。

 

「それはこれからだ。既に種子は蒔いた。そして一つの切っ掛けで芽吹くさ」

 

「だったらそれを、やってみやがれ!」

 

 再び炎を拳に纏いユートに攻撃を仕掛けるライザーだったが、ユートが両腕を突き出して防ぐ。

 

 炎を相殺する障壁が展開されたかの様に、ライザーの攻撃が通らない。

 

「なにい? これは水……水気だと!?」

 

「この杯座(クラテリス)の本来の持ち主、水鏡という男が使っていた技だ」

 

 NDに登場した天雄星ガルーダの水鏡は、本来ならば杯座(クラテリス)の白銀聖闘士で、水気を操る術を持っていた。

 

 そして、この水気を昇華させて凍気と成す。

 

「ライザー、僕はさっき言ったな? 既に種子は蒔いたのだと……それは比喩でも何でもなく、文字通りの意味だ」

 

「何だと?」

 

「お前に彗星拳をぶち込んだ際に、氷結唐櫃(フリージングコフィン)を凝縮させた凍気の種子を体内へと入れさせて貰った」

 

氷結唐櫃(フリージングコフィン)?」

 

 氷結唐櫃(フリージングコフィン)とは、対象の周囲にある空気中の水分を急速に凍結させ、一瞬で氷の塊の中に封じ込める技だ。

 

 その強度は、黄金聖闘士が数人掛かりでっても砕けないし、如何なる事があっても溶けないと云う。

 

 尤も白鳥星座の氷河は砕いたし、天貴星グリフォンのミーノスも変形した氷結唐櫃(フリージング コフィン)を容易く砕いたが……

 

氷結唐櫃(フリージングコフィン)はお前の体内に在っても溶けない。そしてそれは、ある刺激を与えれば僕が設定した本来の大きさと形に、爆発的な速度で戻る」

 

 正に氷の種子。

 

「刺激……まさかっ!?」

 

「そう、氷結唐櫃(フリージングコフィン)と同じ属性の力だ。体内の種子は、余りにも小さいからぶつかり合いはしないが、外部から凍気の塊を刺せばどうなると思う?」

 

 流石のライザーも青褪めてしまう。

 

「よ、よせ……やめろ! 判っているのか? 俺達の婚姻が悪魔の世界にとってどれだ……」

 

「どうでも良いよ。僕だって元々は人間の世界で貴族をやってたからね、理解は出来るんだ。だけどお前は間違った」

 

「な、何をだ!?」

 

「それくらい、自分で考えろよ。こんの甲斐性無しのマダオがっ!」

 

 水気が凝縮されて凍気へと昇華していく。

 

氷槍百牙閃嵐(ひそうひゃくがせんらん)っっ!」

 

 百本の氷の槍がライザーの五体を貫き、氷結唐櫃(フリージングコフィン)の種子を刺激した。

 

 その種子は凍気を帯び、急速に芽吹いてライザーの体内から突き破る様に成長をする。

 

「うがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 連鎖的に他の全ての種子が芽吹くと、ライザーは正に体内から生えた氷が柩へと変わり、閉じ込められてしまうのであった。

 

 

.

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。