ハイスクールD×D【魔を滅する転生魔】   作:月乃杜

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第25話:生徒会×球技

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 一種の反省会は真面目に粛々と行われている。

 

 ユートもこの時ばかりは小猫に対するセクハラ? もやめて、話し合いに参加をしていた。

 

 今回は反省をすべき点は数在れど、一番の反省をすべき点は小猫の油断から来る撃墜。

 

 力及ばず撃墜されたのなら未だしも、戦闘中に無駄話をしていて不意を討たれたのは看過出来ない。

 

 聞けば小猫と一誠は拓けた場所で全周警戒もせず、会話に興じていたとか。

 

 常在戦場を意識すべく場で有り得ない油断。

 

『常に戦場に在るの心を持って生き、事に処す』

 

 処の話ではなく、ゲームとはいえ其処は戦場そのものだったのだ。

 

 呑気に話などしないで、小猫は気配の一つも探るべきだった。

 

「勝てるレベルだったから良かったけど、木場も彼処で出ていく必要は無かったと思うよ?」

 

「うーん、騎士のサガってヤツかな。尋常な打ち合いを望んでしまったんだ」

 

 カーラマインの挑発に対しアッサリと乗り、一対一の斬り合いを始めてくれた木場には、ユートも文句の一つを言いたかった。

 

 木場自身、反省してるが後悔は無いという感じだ。

 

「ま、結果オーライって事で良いんじゃないかな?」

 

「逆に言えば、結果が伴ってなければぶっとばしてたけどね」

 

「は、ははは。恐いな」

 

 木場は頬をヒクつかせながら笑顔を浮かべる。

 

「朱乃先輩は良く出来ましたってトコかな」

 

「うふふ、頑張った甲斐がありますわ」

 

 柔らかく、然れど妖艶な笑みを浮かべて喜ぶ朱乃。

 

「僕の渡した劣化不死鳥の涙の回復率で、ライザーの女王をよく落とせたよ」

 

 昔に造ったダメージのみを治癒する秘薬、精神力のみを回復する秘薬では二つを併用せねばならず致命的な隙を生んだであろうが、回復率こそ低いが両方共を一緒に回復出来る秘薬は、女王のユーベルーナを落とすのに一役買った。

 

「そうです、ユート様! 朱乃様が使用なされた薬は何なのですか?」

 

「だーかーらー、劣化版のフェニックスの涙だよ」

 

「それは前に聞きました。ですが、フェニックスの涙の製法は秘中の秘。おいそれと知られる筈は……」

 

「僕の前で一度でも使ったのは失敗だったね」

 

「一度、使った……あっ! ミラを治療した時!」

 

 ライザーの命令により、ミラが棍を揮って襲撃して来たが、彼女の顎を打ち抜き天井にぶら下がるオブジェと化す。

 

 その結果、ミラの顎は砕かれてしまい、失禁までするという大失態を晒した。

 

 ミラがユートを恐れるのも無理は無いのだ。

 

 そのミラを治療する為、ライザーはフェニックスの涙を使用。

 

 現物を視て、治療の過程を視たユートは【叡智の瞳(ウィズダム・アイ)】により組成などある程度を理解してしまう。

 

 成分が特殊──フェニックス一族の純粋なる涙──なモノを除きその全てを用意したユートはフェニックスの涙劣化版を【錬成】したのである。

 

 足りなかった上に、根幹を成す成分が【錬成】不可能だった為、代わりのモノで造ったからだろうか? 効力が激減。

 

 劣化版と言わざるを得ない代物となった。

 

 そんな物でも朱乃が勝利をもぎ取る礎となり、その役目は充分に果たしたと云えよう。

 

「な、何という事……」

 

 よろけるレイヴェル。

 

「まあ、あれだよ。戦いの前に情報を出し過ぎたね」

 

「因みに、足りなかったという成分について、解ってはいるのですか?」

 

「まあね。君が手伝うのなら完全版を造れるさね──君の涙でね」

 

 最後は小声で言う。

 

「そう……ですか」

 

 フェニックスの涙と呼ばれて且つ、フェニックス家にしか造れないとされるこの秘薬……

 

 少し目端が利くなら直ぐに理解も出来る。

 

「別にレイヴェルに涙の製造機をやらせる心算は無いから、心配はしなくても良いよ?」

 

「は、はい」

 

 此処から効力を上げる為に色々と実験をする気だ。

 

 答えを訊いたり、造らせたりなんて面白くもない。

 

 ユートには娯楽みたいなものなのだから。

 

「次に夕麻……まあ何だ、実力を出せる前に潰されたのは御愁傷様」

 

「シクシク……」

 

夕麻はさめざめと泣いた。

 

「で、一誠は……」

 

「うんうん!」

 

洋服崩壊(ドレス・ブレイク)は程々にな」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「え? そんだけ?」

 

「そうだよ。他に何か見るべきは在ったっけ?」

 

「いや、ほら……禁手化(バランス・ブレイク)

 

 確かに一誠はライザー戦に於いて、禁手(バランス・ブレイカー)を披露している訳だが……

 

「そういうのはせめて自分で至ってから言え。話はそれからだよ」

 

「……はい」

 

 正論を言われてガックリと肩を落とす。

 

「そう言えば、どうやって赤龍帝の力を引き出しましたの?」

 

 レイヴェルとしては涙と同じくらいの謎。

 

「赤龍帝弾を造っておいたんだよ」

 

『『『赤龍帝弾?』』』

 

 これには一誠以外、全員が唱和した。

 

「昔の話だけど、クトゥグアって判る?」

 

「確か、南の魚座の一等星……フォーマルハウト星に棲まう炎の神性」

 

 ユートの質問染みた言葉に応えたのは木場だ。

 

「へえ?」

 

「色々とヒントは貰っていたからね、その手の言葉にパソコンで検索を掛けて、其処から関連書籍を知ったんだよ」

 

「なら、話は早いね。そのクトゥグア……クトゥグア星人のクー子を一時期、傍に置いていた事があって、その時に件の敵のナイアルラトホテップと戦う羽目に陥ったんだ。その際、彼女を招喚した【神獣弾】と呼ばれる弾丸で、クー子からの要請を受けて彼女に撃ったんだ」

 

 息を呑む一同。

 

「結果、彼女の……クー子の力を引き出した」

 

 ちょっと擽ったくて痛みは一瞬的に。

 

「それじゃあ……」

 

「そう、それと同じ事をしたって訳だよ」

 

 【赤龍帝の籠手】の一部を砕き、固定化で消滅しない様に保存したユート。

 

 その籠手の一部から削り弾丸を造り出した。

 

 咒を刻んで祝福がされた弾丸は、正に【赤龍弾】と呼ぶに相応しい物となる。

 

 その弾丸に籠められた力が一誠を禁手(バランス・ブレイカー)へと導いた。

 

 つまりはそういう事だ。

 

「クトゥグアというのは、味方なのかな?」

 

「木場、クトゥグアは基本的に人類の敵でも味方でもない、興味が無いからね。だけどね、クトゥグアには不倶戴天の敵が存在する」

 

「君の敵……這い寄る混沌だよね?」

 

「その通り。奴を討つ目的でなら、人間の招喚に応じる事もあるんだよ。ただ、世界が変われば理も変わるものでね。別世界だと邪神は異星人という扱いだ」

 

 それはそれで間違いではないのだ。

 

 旧支配者とは別の星から地球に降り立った存在で、そんな邪神達が人型を採る世界が存在し、クトゥグア星人とかニャルラトホテプ星人と呼ばれているのだ。

 

 ユートが喚んだのはその世界のクトゥグア星人で、その中の一個体がクー子という訳だった。

 

 形は変われど、能力までは変化はしないみたいで、力に関しては本物。

 

 制限が付いていたが……

 

「あの時の経験を活かし、一誠とドライグの許可を得て欠片を貰って、赤龍帝弾を造ったんだよ」

 

 一誠の力を引き出して、話に聞く【禁手(バランス・ブレイカー)】に仮初めながら至らせる為に。

 

 仮初めでも一度、至ったら自然にも至れる可能性が高くなる事も見越して。

 

「赤龍帝弾の話はこれにてお仕舞い。それで、最後にリアス部長」

 

「な、何?」

 

「滅びの魔力とやらが強力なのは判るけど、それ一辺倒だと通じなかった場合、アッサリとピンチになる」

 

「うぐっ!」

 

 痛い所を突かれてリアスは嫌そうに呻く。

 

「そこら辺、ライザーを見れば理解出来るよね?」

 

「そ、そうね……」

 

 不死身を封じられて良い様に落とされたライザー、血筋伝来の魔力に頼るだけでは、決して大成出来ないと解らされた一幕である。

 

「滅びの魔力がいつでも切れる札なら、他に切札(ジョーカー)鬼札(ワイルドカード)となる奥の手を持つべきだと思うよ?」

 

 某狐さんは言っていた、『切り札は先に見せるな。見せるのなら更に奥の手を持て』……と。

 

「確かにライザーは不死身という札、私は滅びの魔力という札が在るけど、切札や奥の手は無いわ。でも、貴方はどうなの?」

 

「聖闘士の力は見せ札……他に幾らでも札は在るよ」

 

 元より引き出しは多い。

 

 クスクスと笑うユート、そんな彼の姿にユーキ以外の一同は背筋が冷える思いだったとか。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 一誠の生活は悪魔になってから激変していた。

 

 駒王学園三大美女。

 

 その中でもナンバーワンと目され、【二大お姉様】と呼ばれるリアス・グレモリーとキスをした。

 

 ライザー戦後、自分の為にライザーを一発ぶん殴ってくれた一誠に感窮まり、リアス自らファーストキスをくれたのである。

 

 しかも元は敵の堕天使であり、一誠を殺そうともしていたレイナーレ──天野夕麻がホームステイと称して一つ屋根の下で暮らし、ラッキースケベなハプニングなどが起きていた。

 

 今では本当に思慕の念を持つ夕麻は、そんなハプニングでも恥ずかしそうに身体を隠し、『イッセー君が見たいなら……』などと言ってくれる程だ。

 

 一度完全に人間によって心を折られた夕麻は、人間を嘲る気持ちは最早無く、必死に救おうとしてくれた一誠に想いが向いていた。

 

 とはいえあんな事をしと間もない事もあり、今一つ仲が進展していない。

 

 そして今度は何とリアス・グレモリーがホームステイする事に……

 

 レーティングゲーム以来リアスは、一誠を手の掛かる出来の悪い弟分や、単なる下僕ではなく〝男の子〟として見る様になった。

 

 正史とは違ってアーシアは同居をしてはいない為、女同士の鞘当てみたいな事態にはまだ陥っていない。

 

 そんな状況で、オカルト研究部の会議を何処で開催するかという話になる。

 

 リアスが曰く、旧校舎の清掃の為にいつもの部室を使えないからだ。

 

 結果、一誠の部屋を使うという話になった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 真面目な会議……の筈であったが、いつの間にやら一誠の小さい頃の写真で盛り上がる。

 

 冷静なのはユートと一誠に興味の無いユーキくらいであろうか? アーシアはこの世界では普通に一誠と友達である為、興味深く見ているだけだ。

 

 そしてリアスと夕麻はと言えば……

 

「幼いイッセー、幼いイッセー、幼いイッセー、幼いイッセー、幼いイッセー、幼いイッセー、幼いイッセー、幼いイッセー、幼いイッセー、幼いイッセー!」

 

「部長、イッセー君の幼い姿が素晴らしいわ!」

 

「そう、夕麻。貴女にも解るのね? 嬉しいわ」

 

 二人だけの世界にトリップしていた。

 

「ああ、木場! てめえはみるな!」

 

「ははは、良いじゃないか……もう少しイッセー君のアルバムを楽しませてよ」

 

 取り戻そうとする一誠だったが、木場は簡単に避けてしまう。

 

 ニコニコとしている木場だが、それが急に険しい表情となって一誠に訊ねる。

 

「イッセー君、これに見覚えは?」

 

 写っていたのは幼稚園時代の一誠と茶髪の男の子、それに模造刀なのか壁には立派な西洋剣。

 

 木場が興味を示したのはこの西洋剣らしい。

 

「うーん、いや。何分ガキの頃過ぎて覚えてねーな」

 

「こんな事があるんだね。思いも掛けない場所で見掛けるなんて……」

 

 一人ごちて苦笑する木場だったが、その瞳はゾッとするくらいに憎悪で満ち、暗い炎が燃えていた。

 

「これは聖剣だよ」

 

 それが今回の事件のフラグだったのかも知れない。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 球技大会を来週に控え、オカルト研究部も練習をしていた。

 

 どんな球技になるのかは当日まで判らない為、色々と手広くやっている。

 

 今日は白球に青春を懸ける野球であった。

 

 先日のライザー戦では、切札(ジョーカー)処でない全てをひっくり返してしまう【デウス・エクス・マキナ】のお陰で勝利を拾い、悔しい思いをしている。

 

 それ故か、少し勝利に対して貪欲になっていた。

 

 そこはユート的に視て、良い傾向だと思う。

 

 問題があるとすれば……

 

「次、祐斗! 行くわ!」

 

 カーン!

 

 ポコン!

 

「……え?」

 

 何故か最近、もっと云うなら一誠の家で聖剣が写った写真を見てから、ボケーッとしている事が多くなっていた事だ。

 

 明らかに聖剣に対し何かがあるみたいだが、ユートは木場との付き合いが長くはない為、過去に纏わる事は判らない。

 

 途中までの原作知識を持つユーキなら、恐らくは知っているのだろうが、今回はそれに頼らないのを基本的な方針としている。

 

 原作知識は毒にも薬にも成り得る為、知識無しで動く事も出来ねばならない。

 

 星騎士(ワールドガーディアン)たる者、原作知識が通用しなければ動けませんでは困るのだ。

 

 それに上司の上司兼旦那様──【朱翼の天陽神】は基本、原作知識など皆無で動いていたらしいし。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 其処に居たのは駒王学園生徒会長、黒髪をボブカットに刈っており、眼鏡を掛けてスレンダーで凛とした立ち居振舞いの美女。

 

 【二大お姉様】のリアスと朱乃には流石に一歩を譲るものの、学内では第三位の人気を誇っている。

 

 残念ながら目を惹く容姿であり、活動的なリアスと朱乃に勝てないのは仕方がないのかも知れない。

 

 後、どうにも胸部的な脹らみが足りなかったし……

 

「何だ、ソーナ会長か」

 

「はい、こうして顔を付き合わせて話すのは、貴方が合宿に行く前にお手伝いをして頂いて以来ですね」

 

 ニコリと、普段は周囲に余り見せない柔らかな笑顔をユートに向ける。

 

「うえ? 優斗って生徒会長と知り合いなのか?」

 

「ああ、まあね」

 

 一誠が少し驚愕しながらユートに訊ねると、簡潔に答えるユート。

 

「よう」

 

「何だ、匙も居たんだな」

 

「応よ。処でよ、さっきの話は何なんだ?」

 

「気になるか?」

 

「うっ、そりゃ……」

 

 支取蒼那に惚れている匙であるが故に、やはり今のは気になるのだろう。

 

「匙、今日の用事を忘れましたか?」

 

「は、はい!」

 

 ソーナに言われて背筋を伸ばす匙。

 

「用? また変質的な行為をしに来たの?」

 

「その節はすいませんでしたぁぁぁぁっ!」

 

 何気にユーキへ恐怖を懐いているのか、嫌味に対してジャンピング・スパイラル土下座をかます。

 

「ユーキ……わざとじゃないんだし、いい加減で許してやれよ」

 

「やっ!」

 

 ユーキがその柔肌を晒すのを良しとするのは、今は亡きコルベール、愛する兄ユート、後は同性くらい。

 

 そんなユーキの肌を見てしまった匙は、彼女によるフルボッコを喰らった。

 

 だが、それでチャラにしない辺りがユーキである。

 

 勿論、匙に悪気は無かったのだが……

 

「まったく……今日の来訪はリアスの新しい下僕となった兵藤君と天野さんを、私の下僕の匙と合わせるのが目的です」

 

「へ? それじゃあ、若しかして生徒会長さんは?」

 

「ソーナ会長、椿姫副会長を始めとする生徒会一同、その全員が悪魔だよ」

 

 よく解っていない一誠にユートが説明する。

 

「げっ、マジか?」

 

「ああ。少し安直だけど、支取蒼那は仮の名前で本当の名はソーナ・シトリー。元七十二柱第十二位であるシトリー家の次期当主だ」

 

「へえ……」

 

「因みに、ライザーのフェニックス家が第三十七位、部長のグレモリーが五十六位だね。で、前にアーシアが滅ぼしたガイオルシュ・ヴァラクの家が六十二位」

 

「へ? ヴァラク?」

 

 一誠はその辺の事を聴いていなかった為、知る由もなかった。

 

「ライザーが来た日にね、ヴァラク家の一応、直系の上級悪魔がアーシアを無理矢理に下僕にしようとして返り討ちに遭ったんだ」

 

「んな事があったんかよ。つーか、アーシアって凄くねえか?」

 

 手放しに誉められて紅くなるアーシア。

 

「後でヴァラク家が荒れましたけどね」

 

 現当主の次男の次男という窮めて微妙な立ち位置ではあるが、元より数の少ない上級悪魔が一人、それが滅びたのだから当然だ。

 

 難しい話は其処までに、一誠と夕麻はリアス・グレモリーの下僕悪魔として、ソーナ・シトリーの下僕悪魔の匙 元士朗と握手を交わす。

 

 尚、人間のユートにぶちのめされた挙げ句、不意討ちに近かったとはいえど、ユーキからフルボッコにされた匙は驕った態度を見せる事もなく粛々と自己紹介をしていたりする。

 

「お互いのルーキーの紹介はこれで充分でしょうね。では、私達はこれで失礼します。お昼休みに片付けたい書類仕事がありますし」

 

「会長……いえ、ソーナ・シトリーさん。いや、様、これからも宜しくお願いします!」

 

「宜しくお願いします」

 

 一誠と夕麻が改めて挨拶をすると、ソーナ会長は微笑んで……

 

「ええ、宜しくお願いしますね」

 

 と、そう返す。

 

「リアス、球技大会が楽しみね」

 

「ええ、本当に」

 

 ソーナの言葉にリアスは笑顔で答えた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 球技大会、それは生徒達が球技を通じて青春を謳歌しつつ、競い合う歓びを分かち合う大会。

 

 テニスコートにはリアスとソーナが立っていた。

 

 一誠はリアスとソーナのテニスウェア姿に萌えて、目玉を爛々としている。

 

 テニスウェアというのは何気に露出度が高く、ミニスカートから覗く白い太股に一誠の目は決して外れず釘付けだった。

 

「征くわよ、ソーナ!」

 

「よくってよ、リアス!」

 

 リアスのサーブがソーナ側のコートに突き刺さり、バウンドしたボールを打ち返すソーナ。

 

「お喰らいなさい! 支取流スピンボール!」

 

 高速回転を加えられて、リアス側のコートに突き刺さるボール。

 

「甘いわ! グレモリー流のカウンターを喰らいなさい!」

 

 だが、ラケットに当たる事もなくボールが軌道を変えて急落下した。

 

 ボールはその侭、背後にあるフェンスに刺さる。

 

「一五−三〇!」

 

「なあ、ユーキ」

 

「何? 兄貴」

 

「今のってさ、魔力を籠めてなかったか?」

 

「籠めてたねぇ」

 

 まあ、お互いに魔力を使える者同士が納得ずくでやっているなら、其処の問題は無かろう。

 

 あの二人とて一般人相手に魔力を使う程、大人気なくはあるまいし。

 

 結果は二人のラケットが壊れてしまい、同位優勝という事になった様だ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 部活対抗戦はドッジボールである。

 

 球技大会、それは生徒達が球技を通じて青春を謳歌しつつ、競い合う歓びを分かち合う大会。

 

 そんな建前など、何処吹く風よと一誠は男子より狙われていた。

 

 事前に親友の二人が変な噂をバラ撒いていた効果もあり、ものの見事にドッジボールで一人狙いである。

 

 血みどろの闘球(ドッジボール)、そう呼ぶのが似つかわしいであろう。

 

 正確にはユートもターゲットの一人だったのだが、憎しみと共に投げ付けた球を軽々キャッチ、投げてきた張本人に投げ返したら、弾丸も斯くやの剛球に肋骨を砕かれて、退場を余儀無くされてしまってから全員が戦慄し、狙えなくなってしまったのだ。

 

 では、他の面子は何故に狙われないのか?

 

 【駒王学園二大お姉様】のリアスと朱乃に投げる、学園のアイドルを相手に? その瞬間、味方すら敵に回しそうだ。

 

 小猫に投げる、学園のマスコットなロリっ子少女、当てたら可哀想。

 

 アーシアに投げる……? 二年生ナンバーワンの癒し系天然美少女故に当てた瞬間、罪悪感に苛まれる。

 

 夕麻に投げる……無垢な笑顔に脱いだら凄いお胸、意外と人気な夕麻に当てるなんてとんでもない話であった。

 

 木場に投げる……全男子──ユートを除く──の敵だが、当てたら女の子を敵に回す事必至。

 

 祐希に投げる、小猫ちゃんと別の意味でロリっ子、長い青銀髪が太陽に照り映えており、ボクっ子トークが萌える美少女、こいつは当てられねー!

 

 ミッテルトに投げる……あの小悪魔ちっくな笑顔に罵られたい、そんな笑顔を曇らせたくないから当てられない。

 

 レイヴェルに投げる……お嬢様然とした金髪ドリルヘア、当てたら罪悪感しか残らない。

 

 ユートに投げる……当てて良いのは当てられる覚悟のある奴だけだ……とばかりに投げ返されたら、間違いなく死ねる。

 

 一誠に投げる……リアス先輩と夕麻ちゃんと同棲疑惑有り、殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 

 

「兵藤一誠に死の鉄槌を、奴を逃がすなっ!」

 

『『『『応っ!』』』』

 

「アーシアちゃぁぁぁん! ブルマ最高ぉぉぉ!」

 

「其処をどいて、兵藤を殺せない!」

 

「夕麻ちゃん、夕麻ちゃんの胸……兵藤に汚される前に奴を討て!」

 

「出てこなければ殺られなかったのに!」

 

「力だけでも、想いだけでも……」

 

「こ、こ、小猫ちゃん……ハァー、ハァー!」

 

「兵藤一誠、残機の貯蔵は充分か?」

 

『殺せ!』『殺せ!』『殺せ!』『殺せ!』『殺せ!』『殺せ!』『殺せ!』

 

『キル!』『伐る!』『切る!』『ぶった斬る!』

 

『奴のアレを!』

 

『奴のナニを!』

 

『奴の全てを!』

 

 コート内処か、ギャラリーからすら殺せコールだ。

 

「巫山戯んなぁぁぁっ!」

 

 今、一つとなる駒王学園の男子生徒と女子生徒の心に対し、一誠は憤怒と悲哀に暮れた叫び声を上げたという。

 

「イッセーにボールが集中してるわ! 戦術的には【犠牲(サクリファイス)】って事かしら? イッセー、これはチャンスよ!」

 

「部長ぉぉぉ! 俺、頑張りますぅぅぅっ! くそ、遊びでやってんじゃないんだよ! 当たらなければ、どうという事は無い!」

 

 リアスから期待を受け、一誠は奮戦した。

 

 

 結局の処、一誠は一人で捌いていたが中々、当てられない現実に焦りを覚え、木場を狙った者が居た。

 

 木場の顔面に目掛けて球が投げられるが、ボーッとしている木場は動かない。

 

 球が当たる直前、その球を捕獲する手が……

 

「あ?」

 

「何をポケッとしてる? らしくもないな」

 

「ご、ごめん……」

 

 球を捕ったのはユート。

 

 ユートは木場に球を投げた生徒へジャンプ一番……

 

「おりゃぁぁっ!」

 

 思い切り投げてやった。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 下手に捕球をすれば腕がへし折れかねず、胸で球を受けて吹き飛ばされてしまう男子生徒A。

 

 それはもういったい何処のドッジボール漫画だと、そう謂わんばかりの吹っ飛びっぷりであった。

 

 炎が上がっていた気もするが気のせいか?

 

 気絶した男子生徒を運ぶ為にタイムが掛けられる。

 

 その空き時間を利用し、ユートは木場に話し掛けてみた。

 

「木場、こないだからずっとポケッとしてるけどさ、何かあった?」

 

「別に何も……と言っても信じないかな?」

 

「まあね。付き合いは短いけど、少しはみんなの人となりを把握した心算だよ。ハッキリ言えば、らしくもないな」

 

「……」

 

「普段は飄々として笑顔を貼り付けてる癖に、それだけ木場にとって〝聖剣〟というワード、重要な位置を占めてるみたいだね」

 

「っ!?」

 

 木場は正鵠を射た言葉に驚愕して目を見開く。

 

「気付いていたんだね」

 

「気付かれていない心算だった訳? おかしくなったのは先日、一誠の家で聖剣の写った写真を見てから。これなら誰だって判るよ」

 

「……そうだね」

 

「取り敢えずさ、今は目の前の事に集中しようか? どうせ近い内に聖剣に関する厄介事が、一誠に惹かれてやって来るんだし」

 

「イッセー君に?」

 

「何しろほら……一誠って伝説のドラゴンだろ?」

 

「成程、伝説のドラゴンは異性を惹き付けると云うけれども、同時に厄介事をも引き寄せる……か」

 

「その時はきっと直ぐにも訪れる」

 

「うん、判ったよ。今は考えても仕方ないしね」

 

 いつもの笑顔にて頷いた木場の表情に、もう陰鬱な陰は見当たらなかった。

 

 その後は木場の破竹の勢いを得、相手チームを圧勝してしまう。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 大会後、ユートは木場に体育館裏に呼ばれた。

 

「で、話ってのは?」

 

「うん、緒方君には僕の中の闇を教えておこうと思ってね」

 

「僕だけに?」

 

「一応ね、部長さんは知っているよ」

 

「みんなに話して、いざって時には協力を仰いだ方が良くないか?」

 

 木場は苦笑する。

 

「そうかもね。取り敢えず君は自分で気付いちゃったから、こうして話しておこうと思ったんだよ」

 

「そうか」

 

 ユートが木場から聴いたのは【聖剣計画】という、神をも恐れぬ人体実験。

 

 それを行ったのが他ならない教会だという。

 

 散々、実験をして木場達は【失敗作】であるとして毒ガスによる処分を敢行、次々と死んでいく同士達。

 

 最後に残った木場もまた死に掛けていたのをリアスが見付け、【騎士(ナイト)】の駒を与えて生かした。

 

「その時から僕は部長の為に生きてきた。だけどね、やっぱり駄目なのさ。聖剣の話を聞いただけで、心がざわついて仕方ないんだ」

 

「聖剣計画……ねぇ。その聖剣の銘は?」

 

「エクスカリバーだよ」

 

「は?」

 

 それは余りにも有名過ぎる聖剣である。

 

 アーサー王が選定の剣を折ってしまった後、湖の貴婦人より与えられた聖剣エクスカリバー。

 

 ユート的にはやはり型月が判り易い。

 

 セイバー、アルトリア・ペンドラゴンが、湖の貴婦人より与えられた星の素子を鍛えて造った神造兵器。

 

 ユートは本物を視る機会に恵まれ、同じ造りの紛い物を造って持っている。

 

「復讐をしたいのか?」

 

「無意味だと笑うかい?」

 

「いや。僕だって大切な者を傷付けられたりしたら、何を以ても復讐を誓うだろうし、虐げられた者が反旗を翻すのは当然の権利だ。まあ、リアス部長は別の生き方をして欲しかったんだろうけど……ね」

 

「アハハ、そうだね」

 

 何処かでケジメを着けなければ、前には進めないという事なのだろう。

 

 体育館の裏で、剣呑ながら和やかという矛盾した笑いが響いた。

 

 尚、二人が仲良く体育館裏から現れたのを見た腐女子により、【木場×ユート】若しくは【ユート×木場】の噂が立ったという。

 

 

 

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