ハイスクールD×D【魔を滅する転生魔】   作:月乃杜

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第26話:頂上×会談

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「聖剣計画……?」

 

 一誠が鸚鵡返しに訪ねると木場が首肯する。

 

「僕はね、その計画の……恐らくは唯一の生き残り」

 

「木場達以降、非道な実験はされていないそうだし、そういう意味で確かに唯一の生き残りだよね」

 

 ユートが追従するかの様に木場の言葉を肯定した。

 

「どういう意味だい?」

 

「木場の組が抹殺されて、その後も聖剣計画は継続されていたらしいよ。但し、木場までの組を担当していた奴は、教会を追放処分にされたとか。残ったデータを基に聖剣計画は続いて、近年になって成功。聖剣の担い手も少ないながら居るそうだよ」

 

「緒方君、その情報は何処から?」

 

 ユートに聖剣計画を話して一日、幾らなんでも情報を得るのが早過ぎる。

 

「冥界のトップに言って、現在の天界のトップに渡りを付けて貰った」

 

 その時、此処に居る全員の心が一致した。

 

『(魔王様をパシリに?)』

 

 勿論、単にパシらせる事はしていない。

 

 この世の中にはギブ&テイクであり、原則としては等価交換で成り立ち。

 

 況してや相手は魔王だ、無償で動いてはくれない。

 

 等価となる情報を渡す、或いは造っているマジックアイテムを渡すか、若しくは魔王が欲しい何かを対価にしていた。

 

 因みに今回、サーゼクスに渡したのは【リーアたんのテニスウェア・バージョン写真五枚セット】だ。

 

随分と御安い魔王様だ。

 

 因みに当然ながら盗撮ではない。

 

 ちゃんと理由を話して、恥ずかしがるリアスに写真を撮らせて貰った。

 

 最初は嫌がっていたが、木場の精神的なケアの為と真面目な表情で言われて、リアスも渋々ながらに協力をしたのである。

 

 本来なら、(キング)たるリアスがせねばならない事であるが故に。

 

 なので……

 

「あれ? 部長、どうしたんッスか。顔が紅いんですけど」

 

「な、何でも無いわ一誠」

 

 魔王に相談したとユートが暗に言った際、いったいナニを対価にしたかを理解していた為、リアスは思わず紅潮してしまう。

 

「それで?」

 

 身を乗り出す木場。

 

「現在、聖剣──エクスカリバーの事だけど、それぞれカトリック、プロテスタント、正教会に二本ずつが存在している」

 

「へ? エクスカリバーって一本じゃねえの?」

 

「僕もそう思ってたんだけどね、どうやらエクスカリバーは昔の喧嘩で折れたらしいんだ。で、折れた聖剣の欠片を核に七振りの複製を造った」

 

「それだとよ、今度は一本足りなくないか?」

 

 首を傾げる一誠にユートは苦笑いをして続ける。

 

「最後の一振りは戦争後期に行方不明らしいね」

 

 つまり、教会側が管理しているのは二振りずつの、合計で六振りだけだったという訳だ。

 

「まあ、エクスカリバーはと注釈は付くけど……」

 

「? エクスカリバーは……って?」

 

「別に、聖剣の名を冠する剣はエクスカリバーだけって訳じゃない。日本に伝わる叢雲……いや、今は草薙かな? あれも聖剣の一種だろうし、デュランダルや竜殺しのアスカロン、天羽々斬剣、他にも天之尾羽張十拳剣、コールブランド、布都御魂……等々」

 

「沢山、在るんだな」

 

「世界に名だたる聖剣魔剣や神剣、神槍、魔槍、聖弓何てのは各地に伝わってるからね」

 

 真偽の程は扨置くが……

 

「で、この手の武器は基本的に誰でも扱えるって訳じゃない。だから人体実験をして、聖剣の使い手を量産しようとした。近年に於ける教会最大の闇部だねぇ。尤も、これは一部の幹部と研究者の暴走って事だよ」

 

「暴走?」

 

 ビキリ……

 

 目で見ても判るくらいに木場の殺気が膨れ上がる。

 

「抑えろ木場。お前が復讐したいのは教会全部か? それとも……」

 

「ふぅ、言われなくても判ってるよ。続きを」

 

 十字教の全てを憎んでもそれは詮無い事。

 

 だが、木場は仲間や自分をマウスの如く扱い、虫けらの如く殺した当時の計画の推進者は決して赦さないのが今の彼だ。

 

 誰が何と言おうがソイツだけは、斬り裂いて十七分割にしてすら飽き足らないのだから。

 

「まあ、そういう訳でね。若しもエクスカリバーの使い手が居たら、それは多くの犠牲の果てに手に入れた力と言う事だろうね」

 

「本当に一日でよくこれだけ調べられたね」

 

「そういうのは知ってるのに訊けば良いんだ。それと……だ、天界上層部からの依頼が入ったんだ。僕個人に対してね」

 

「っ!? それは訊いても良い事かい?」

 

 普通ならば否であるが、今回に限れば是であった。

 

 ユートは小さく首肯。

 

「各十字教本部から三振りのエクスカリバーが強奪された。万が一、犯人と接触出来たならエクスカリバーを奪取、乃至は破壊してくれとの事だよ」

 

「緒方君、僕も手伝って良いかい? 主に破壊方面でなんだけど……」

 

 木場はここぞとばかりに即座に提案してきた。

 

「ちょっと……止しなさい祐斗!」

 

「構わない、リアス部長。木場、手伝うのは良いけど出来得る限り指示には従って貰うよ?」

 

「判っているよ」

 

 これは木場が過去を振り切る良い機会。

 

 忘れるななどと口幅ったい事を言う心算は無いが、もう少し前を向いて欲しいというのが心情だ。

 

「それにしても、聖剣を奪うなんて誰が?」

 

 リアスが難しい表情となり思案を巡らす。

 

「堕天使の幹部コカビエルらしいよ」

 

『『『は?』』』

 

 そんな彼女の呟きに答えるユートが挙げた名前に、思わず元堕天使組を見る。

 

 当然だが、夕麻もミッテルトも両手を挙げて首を横に振った。

 

「聖書にも名を残している堕天使の幹部か、いったい何を考えてるのよ?」

 

「言っただろ? 判らない事は知ってる奴に訊けば良いって」

 

「……それって?」

 

「そう、堕天使の総督であるアザゼルに訊いた」

 

 リアスを始め全員が驚愕をする。

 

「え? ご主人様、どうやってよ?」

 

「ミッテルト貴女、すっかりメイドが板に……」

 

「レイナーレ姉様、放っといて欲しいじゃん!」

 

 元堕天使組は咽び泣く。

 

「夕麻とミッテは置いといてだ、元々は天界上層部、魔王、堕天使幹部はホットラインを持っているんだ。万に一つ、嘗ての戦争の時の二天龍みたいに共通の敵が現れた場合、繋がりを持っていないと危険だしね」

 

 数百年前に終結したとされる戦争は実の処、二天龍の乱入によるダメージが有ったのと、とある理由にて堕天使側が手を引いたのが理由で、結局は済し崩し的に終わった。

 

 その後は遺恨による小競り合いこそ在れど、大規模に戦争が起きる事は無かったのだ。

 

 それは悪魔側からしても数が減り、七十二柱の御家が半減した事から現魔王達が戦争を嫌っているといった事情があった。

 

 天界側もとある理由から天使が増えなくなった為、戦争は回避したい。

 

 堕天使は総督からして、戦争をしたくないと言わしめ一番最初に手を引いた。

 

 二天龍の所為でグダグダになっていた戦争は、こうして終結をみたのである。

 

 その後再びこんな事態が起きた場合に備え、上層部同士で連絡が出来る様に、手配されていた訳だ。

 

 尤も、ユートが積極的に活用してなければ、この回線も使われず仕舞いだったのだろうが……

 

 少なくとも、ユートの識らない原作では第四巻に至るまで使われなかった。

 

 堕天使側の動きが余りにも怪しいから駒王学園で話し合おうと考えるまでは、互いに連絡などしてはいなかったのだ。

 

 魔王も天界も堕天使も、何の為の回線か判らないなと苦笑いをしたという。

 

「堕天使側は、少なくとも総督アザゼルと副総督シェムハザの一派は戦争を望まない。向こうさんも手の者を探索に遣わしたらしい。若しも先に接触した場合、斃したとしても構わないと言ってきたよ」

 

「幹部のコカビエルを殺しても良いと?」

 

「戦争を望むコカビエルと望まないアザゼル、何れにしてもコカビエルは捕まったら軍法会議で重罪決定。永久封印は免れないとさ」

 

「そう……」

 

 リアスは沈痛な面持ちで呟いた。

 

「ユウ君、堕天使側からの遣いは誰だか聴いてます? 例えば、同じ堕天使幹部だとか……」

 

「誰……とは聴いてない。ただ、堕天使幹部は動かせないから個人戦力らしい」

 

「そう……ですか……」

 

 朱乃はホッとした様な、或いは残念な様な、複雑な表情となって俯く。

 

「それとサーゼクス曰く、戦争を望むなら魔王の妹が二人も居る駒王学園に現れる可能性もある、充分注意する様にとの事だよ」

 

 本当はまだ伝えていない事もあるが、取り敢えず話を終わらせた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「……」

 

 今、一誠はリアスに抱き締められている。

 

 ユートはその光景を茫然と見つめていた。

 

 先日、一誠の家に教会関係の者が現れたらしい。

 

 青髪をショートカットにして前髪が緑のメッシュになった少女と、栗色の髪の毛をツインテールに結っている少女の二人組だ。

 

 その内の一人が、実は先の写真に写っていた聖剣使いの男性の娘で、再会するまで一誠は男の子だと思っていたとか。

 

 名前は青髪で金メッシュの少女がゼノヴィア、一誠の幼馴染みが紫藤イリナ。

 

 同じ教会関係者でも所属が違うらしく、ゼノヴィアがカトリックで紫藤イリナはプロテスタントらしい。

 

 昨日は生徒会長のソーナ・シトリーに呼び出され、リアスは帰りが遅くなってしまった。

 

 その為、帰って来た時に漂う聖なる力に青褪めてしまったという。

 

 しかも、帰る前にソーナから聞かされたというのが最悪な話で、聖剣を手にしている教会の者が街に潜り込んでいるというもの。

 

「で、その教会関係者ってのは何の為に此処へ?」

 

 いい加減で焦れたユートが続きを促す。

 

「昼間に彼女達と接触したソーナの話では、彼女達は私……この街を縄張りにしているリアス・グレモリーと交渉したいそうなのよ」

 

「ふーん、悪魔も堕天使もトップは兎も角、他は無駄に傲慢だし、自分達で解決するから手を出すなとか? 或いは、悪魔と堕天使が手を結ぶかも知れないから静観しろとか、声高に命令しに来たのかな?」

 

「命令じゃなくて依頼……だと思うけど」

 

 皮肉るユートに対して、大粒の汗を流しつつリアスが訂正をした。

 

「どういう心算かまでは判らないけど、明日の放課後に彼女達はウチを訪問してくる予定よ。勿論、此方に対して一切の攻撃をしないと神に誓ったらしいわ」

 

「それ、信じられるんですか?」

 

「其処はまあ、信じるしかないわ。彼女達の信仰を」

 

 フリードの例を挙げるまでもなく、教会の者は悪魔を嫌悪している。

 

 それでも神に誓ったのなら無為に攻撃はすまい。

 

 【はぐれ】というのならばいざ知らず、正式な教会の人間であれば信仰対象に誓った言葉を反故には出来ない筈だから。

 

 翌日、件の二人がオカルト研究部にやって来た。

 

 木場の雰囲気が少し悪いのは仕方ない、彼女らは正に木場にとって憎悪の象徴なのだろうから。

 

 緊張をした空気の中で、長い栗毛のツインテール──紫堂イリナという少女が口を開く。

 

 内容は前にも話した聖剣強奪に関するもの。

 

 それによれば、十字教会の三派によって保守管理されていた聖剣エクスカリバーが盗まれたという事。

 

 予め知っていた内容だが教会の人間が言うと真実味があるが、どういう管理体制を敷いていたのかがちょっと気になった。

 

 むざむざエクスカリバーを三ヶ所から盗まれてしまうというのは、教会の失態は余りにも大きいのではないだろうか?

 

 そいつを踏まえた上で、教会はどんな要求を悪魔側にしてくる心算なのか?

 

 一応は人間の身として、恥知らずな要求だけはして欲しくない処である。

 

 話が進んで、ゼノヴィアが巻き付けた布を取り背負っていたエクスカリバーの姿を晒す。

 

「大昔の戦争で四散してしまったエクスカリバー……折れた刃の破片を集めて、錬金術によって新たな姿となったのさ。その時七本造られた。これがその一つ。私の持っているエクスカリバーは【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】。七つに分かたれた聖剣の一つだよ。カトリックが管理している」

 

 再び布でエクスカリバーを覆うと、待っていましたとばかりに懐から長い紐らしき物を取り出す。

 

 紐は意思を持つかの如く動き出し、その形を変えて日本刀と化した。

 

「私の方は【擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)】といって、こんな風に形を自在に出来るから持ち運びにスッゴく便利なの。こんな具合にエクスカリバーはそれぞれ、特殊な力を有しているわ。此方はプロテスタント側で管理しているのよ」

 

 イリナはエクスカリバーを持つ力を、何処か自慢気に語る。

 

「盗まれたのは【天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリイ)】、【夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)】、【透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)】の三振りに間違いないね?」

 

「「なっ!?」」

 

 ゼノヴィアとイリナが、驚愕しながらユートの方を見る──というか睨む。

 

「どうして盗まれた聖剣の銘を知っている? 真逆、貴様が……!」

 

「脳筋かお前?」

 

「な、何だと!?」

 

 呆れた表情でゼノヴィアを視る。

 

「エクスカリバーを盗んだのが僕なら、何でこんな所で追っ手の相手をする? 銘を知ってる理由なんて、向こうに確認を取ったからに決まっているだろ?」

 

「ぐっ!」

 

「だいたい、盗んだ相手が誰なのか知らずに捜してるんじゃないよね?」

 

「確かに奪った犯人は判っているが、当然ながら単独犯ではない。部下みたいなのが居る筈だ。若しも奴が悪魔と手を組んだなら」

 

「随分と安く見られ、侮辱されたものだね。グレモリー家というのも」

 

 呆れた表情は更に白い目に変化した。

 

「自分達の失態を棚に上げて他人に冤罪を押し付けるとは、堕ちたもんだな」

 

「な、何だって?」

 

「教会は保守管理していた大事な大事な聖剣を、まんまと強奪されるという失態を演じて、今度はありもしない悪魔と堕天使の共犯説をでっち上げる。最早恥知らずを通り越してるな」

 

「貴様、言わせておけばぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 ガタン! と、座っていた椅子を跳ね転ばせると、激昂しながら勢いよく立ち上がるゼノヴィア。

 

「事実だろ? エクスカリバーを盗まれたのがどれ程の失態か理解出来てる? 少なくとも、管理者とその日の警備員辺りはクビ確実な話だろ?」

 

 手刀で首を掻き切る真似をしながら嘲笑う。

 

「くっ!」

 

「まあ、確かに人員総入れ替えな雰囲気だったけど」

 

「イ〜リ〜ナ〜、余計な事は言うな!」

 

 流石に自分達の失態は、ゼノヴィア・クァルタとて理解していたらしい。

 

「それが、申し訳なさそうにしてるなら兎も角、偉そうに要請とか出来る立場でもないだろう? 寧ろ悪魔側から見れば、聖剣強奪は狂言で堕天使と教会が一時的に手を組み、悪魔を殲滅さすようとしていると思われても仕方ない状況だ」

 

 勿論、そうでない事は知っているユートだが、聖剣を盗まれたという反省がまるで見当たらないゼノヴィアに、少し苛立っていた。

 

 別に盗まれたのは彼女達の所為ではないが……

 

「堕天使と手を結ぶだと? 余りにも酷い侮辱だ! 貴様、許さんぞ!」

 

「先に堕天使と手を組んだとか言ったのはそっちだ。自分が言われて嫌な事なら他人に言うなよな」

 

「チッ!」

 

 バツが悪そうに、舌打ちしながらそっぽを向く。

 

「で、貴女達は何をしに来たのかしら?」

 

 話が進まない為にリアスが先を促した。

 

「わ、私達の依頼……というより注文は、私達と堕天使のエクスカリバー争奪の戦いに、この街に巣食っている悪魔が一切介入してこない事。つまり、そちらに今回の事件に関わるなと言いに来た」

 

「だが断る!」

 

「な、何だと!?」

 

 ユートのまるで身も蓋もない言葉に絶句する。

 

「おかしいとは思わなかったのか? 僕らは聖剣強奪を聴いても特に慌てる様子もない。当然だ、僕らは既に知っていたからね」

 

「どういう事だ?」

 

「君らが何処の命令系統に在るのか知らないけどね、僕は僕で先日、聖剣が強奪された事を知らされ、依頼を請けている。内容は聖剣の奪取か若しくは破壊」

 

「なっ!? 誰からそんな依頼を請けたんだ!」

 

「天界の指導者の熾天使、大天使長ミカエル」

 

 絶句、呆然……

 

 そして遂には顔を真っ赤に染めてキレた。

 

「ふ、巫山戯るなぁっ! 高が悪魔に仕える人間が、選りに選ってミカエル様からの依頼だとっ? 貴様はもう許さん! 貴様の様な人間の恥晒しは天罰をくれてやる! 表に出ろ!」

 

 破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を掲げ、ユートに尖端を突き付けると怒鳴り散らす。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 少し前。

 

〔やあ、どうしたね?〕

 

「フェニックス家とはその後ゴタゴタしてない?」

 

〔ハハハハ、大丈夫だよ。フェニックス卿も父上も、あの縁談はやり過ぎたって反省しているくらいだ〕

 

 紅色の髪の毛を背中まで伸ばしている黒衣の男が、ユートの目の前のモニターへ一杯に映っている。

 

「そうか、少しヤっちまったかな〜と思ったけど」

 

〔君に関しても概ね好意的に受け入れられているよ。特にフェニックス卿はお礼を言いたいそうだ〕

 

「お礼? サーゼクス……それってお礼参りの間違いじゃね?」

 

 彼の男性の名前はサーゼクス・ルシファーといい、冥界と呼ばれる世界を統べてる四人の魔王の一角だ。

 

 つまり冥界のトップ。

 

 駒王学園へと通う前に、別の魔王であるセラフォルー・レヴィアタンと出逢ってどういう訳か気に入られた事により、冥界へと御招待を受けた。

 

 その際に偶々他の四大魔王達も揃っており、ノリの良い彼らはユートを歓待したのだ。

 

 何と、面白いからという理由で。

 

 サーゼクスとはそれ以来の付き合いで時々、連絡を取り合っていた。

 

 前回の天野夕麻──堕天使レイナーレの事件に於いては、彼を通じ堕天使総督アザゼルと話をしている。

 

 全く使われていないが、どうやら魔王と堕天使総督と大天使長達との間には、ホットラインが形成されているらしい。

 

 いざという時互いに連絡を取り合える様に。

 

 何度も言うが、使われてはいないのだが……

 

 実は初めて使われたのがレイナーレの時、サーゼクス→アザゼル間だったり。

 

〔いや、お礼で間違いじゃないよ〕

 

「息子をフルボッコにした挙げ句、大切な娘を奪っていった僕は恨まれる要素しか無いんだけど?」

 

〔まあ、レイヴェル君に関しては少し……ね。ユート君が悪魔なら良かったんだけど流石に人間だからね、生まれる孫はハーフという事になるし〕

 

「待て、激しく待てい! 孫って何だ?」

 

 何やら不穏当な言葉を聴いて待ったを掛けた。

 

〔孫とは自分の子供が作った子供の事だよ〕

 

「誰が孫の意味を訊いた? 何で僕とレイヴェルの間に子供がデキる前提で話してるんだと言っている!」

 

 少しキレ気味に怒鳴る。

 

 然し、サーゼクスは堪えた風でもなくサラリと爽やかな笑顔で言う。

 

 いっそ、掴み掛かって殴り衝けたくなる程に。

 

〔男の許に娘を送るんだ。そう考えてるに決まっているだろう?〕

 

「いや、そんな意図で連れ帰った訳じゃ……」

 

 そもそも、ユーキの提案であってユートが意図した事ではない。

 

〔アハハハハ、君にどんな意図があったかは兎も角、フェニックス卿は割と苦渋の決断だったんだ。孫くらい見せないと、卿がキレてしまうよ?〕

 

「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 ユートの叫び声が通信室に谺した。

 

 よもや純血主義っぽかったフェニックスが、そんなのを前提で送り出していたとは思わなかったのだ。

 

 少し時間を置き、ユートが冷静になってから更に続けるサーゼクス。

 

〔ライザー君も種族の能力に頼り過ぎな感があったからね、今では随分と修業に集中しているそうで、其処も感謝しているらしいね〕

 

「へえ、なら次に戦う時は期待出来るかな?」

 

 ユートは将来のライバルを思うと、ニヤリと口角を吊り上げる。

 

 元より身体的スペックはライザーの方が上だ。

 

 若し小宇宙無しに一発でも拳を受けたなら、ユートはそれだけで致命傷となってしまう。

 

 とはいえライザーは自らの肉体を動かすより、種族特性を活かして戦うタイプだった。

 

 即ち精神力が続く限りの瞬間再生と、ドラゴンの鱗すらをも傷付ける業炎だ。

 

 だが炎は余り効かないし不死身張りの瞬間再生とて封じる術を持っていた為、ライザーは反撃も出来ない侭に斃された。

 

 ライザーが若し自らを鍛え抜き、その能力を十全に使えたならば、白銀聖衣のユートを討つ事も不可能ではなかったかも知れない。

 

 尤もユートには他に切札(ジョーカー)鬼札(ワイルドカード)となる力を有しているから、むざむざとやられる気は無いのだが。

 

〔それで、今日は何の用事だったんだい?〕

 

「ああ、ゴタゴタしていて忘れていたけど、アザゼルに夕麻──レイナーレ達に関する報告をしたいから、またホットラインを繋いで貰いたいんだよ」

 

〔成程、判ったよ。何なら君の所にもホットラインを繋げるかい?〕

 

「僕が独自にラインを持ったら、それはそれで問題だと思うよ」

 

〔ハハハ、そうだね〕

 

 サーゼクスは通信機を弄りながら、ユートとの談笑を楽しむ。

 

〔よし、繋がったよ。私も聴いて大丈夫かい?〕

 

「前にサーゼクスには話した内容を、アザゼルにまた話すだけだからね。退屈でなければ好きにして」

 

〔そうかい? それじゃ、そうさせて貰うよ〕

 

 サーゼクスもユートを疑ってはいないが、他勢力への通信だけに監視くらいはしておかないといけない。

 

 セラフォルーとアジュカとファルビウムの三魔王、彼らとてユートが堕天使の総督と話している事は知っている。

 

 事後承諾という形だったが既に、ユートの人となりは知っていた3人は、特に咎め立てもしていない。

 

 その代わり、サーゼクスの書類が少し増えたが……

 

 モニターが分割されると悪型のイケメン……通称、ワルメンな男が映る。

 

〔サーゼクスか、いったい何の用だ? こっちは少し立て込んでんだがよ!〕

 

 普段のアザゼルを知っているだけに、サーゼクスは驚いてしまう。

 

 表情に余裕が無くて何処か焦っていた。

 

「アザゼル、何かあったのかな?」

 

〔うん? おう、お前さんは確か……ユートだっけ? 何でお前さんまで……〕

 

「いや、元は僕がアザゼルにレイナーレの一派の事で報告があったから、ラインを繋いで貰ったんだよ」

 

〔ああ、そういう事か!〕

 

 本当にアザゼルには余裕が無かったのか、漸く思い出してくれたらしい。

 

 というか今まで忘れられていたとか……レイナーレ無惨なり。

 

「忙しいみたいだし、手早く報告するよ」

 

〔ああ、わりいが頼むわ〕

 

 ユートは、四人の堕天使がどうなったかを告げる。

 

 レイナーレ──基本形態を人間とし、堕天使と悪魔の形態に進化する形を採り人間界でリアス・グレモリーの僧侶(ビショップ)となった。現在は赤龍帝の家にリアスも含め、居候中。

 

 ミッテルト──ユートの家でメイドとして雇用中。

 

 カラワーナ──魂を抜き肉体は義妹のユーキを憑依させて活用。カラワーナの魂は保護し、新しい肉体が完成後に復活予定。

 

 ドーナシーク──完全に死亡している為、どうにもならない。

 

〔ああ、何だか色々と突っ込みてえ処はあるけどよ、まあ何だ……そいつらん事は宜しく頼むな〕

 

「了〜解」

 

 報告も終わり、気になっていた事を訊ねてみる。

 

「で、アザゼル。そっちで何があったのかな?」

 

〔ふむ、まあ良いか〕

 

 アザゼルも意を決して話し始めた。

 

〔実はな、ウチの戦争継続派の幹部の一人が、教会に喧嘩を売る算段をしていたらしいんだわ〕

 

〔なにっ!? それは本当なのか、アザゼル?〕

 

 サーゼクスは驚愕を露わにしてアザゼルに訊く。

 

〔ああ、間違いねえよサーゼクス。何を仕出かすかはまだ判らねえが、既に動き出してやがった!〕

 

 アザゼルを表向きは大人しくしていて欺き、裏側では虎視眈々と戦争を吹っ掛ける準備をしていた。

 

「ソイツの名前は?」

 

〔コカビエル。上級堕天使の一人で、嘗ての戦争では継続してりゃ勝てたと吹く戦争バカさ〕

 

 ユートの質問に、苦々しくアザゼルは答える。

 

「アザゼル、悪魔側じゃなくて教会──天界に喧嘩を売る方向なんだな?」

 

〔ん、ああ。いずれは悪魔にもちょっかい掛けるだろうが、現在は天界だな〕

 

「それじゃ、天界のトップに確認してみようか」

 

〔〔は?〕〕

 

 ユートの言葉を聴きいて冥界のトップ堕天使の総督はポカーンと大口を開け、間抜けた声を上げた。

 

〔いや、確認ってよぉ〕

 

「アザゼル、このラインはそもそもこういう時の為に設置したんだろ? 堕天使だけで唸ってないで、天界に連絡するべきだよ。報連相って知ってる?」

 

〔……チッ、判ったよ〕

 

 真逆、十数年しか生きていない人間の若造に諭されるとは思わず、舌打ちしつつバツの悪そうな表情となり天界とのラインを繋ぐ。

 

 暫く時間を置いて天界側のアクションがあった。

 

〔アザゼルと魔王殿が何のご用ですか? 此方は立て込んでんいるのですよ〕

 

 モニターに映るアザゼルとサーゼクスを睨み、皮肉を言ってきた。

 

 相当に機嫌が悪い。

 

〔あのよ、何と無く想像は付くんだが、いったい何があったんだ? ミカエル〕

 

 ミカエル──天界に於いて大天使長とされる熾天使である。

 

 神の右腕として、【神の如き者】という字を持つ彼は金色の翼を広げていた。

 

〔アザゼル、貴方がそれを訊きますか? なら教えましょう、コカビエルが我が旗下の教会からエクスカリバーを盗み出しました〕

 

〔んだと? 奴め、既に事を起こしてたのかよ!〕

 

 完全に出遅れた。

 

〔貴方の指示……という訳ではなさそうですね〕

 

〔たりめえだ! 俺は戦争なんてしたくねえよ〕

 

〔貴方は神器(セイクリッド・ギア)を集め、更には白龍皇すらその内に囲っていると聴きますが、確かに戦争を仕掛けるでもなく、静観し続けていた〕

 

〔俺は単に神器(セイクリッド・ギア)の研究がしたいだけだからな〕

 

〔……判りました、貴方の言を信じましょう。それと一つ訊ねますが、この場に居る彼は誰ですか?〕

 

 先程から居たユートが気になったのだろう。

 

〔彼は人間だよミカエル。ただ、上級悪魔すら倒せる実力を秘めた……ね〕

 

「緒方優斗。宜しく、大天使長殿」

 

〔そうですか、私は熾天使が一人でミカエルです〕

 

 互いに挨拶を交わす。

 

〔処で先程、サーゼクスが上級悪魔すら倒せると言っていましたが、それは事実でしょうか?〕

 

「一応、フェニックス家の三男をレーティングゲームでの一騎討ちで倒したし、事実だと思うよ」

 

〔成程……それ程の力を有するなら頼みがあります〕

 

「対価を貰えるなら構わないけど?」

 

〔コカビエルより、奪われた聖剣を取り戻して欲しいのです。最悪、破壊しても構いません〕

 

「場合によったら、消滅するかも知れないよ?」

 

〔出来たら核となる聖剣の欠片を回収して下さい〕

 

「? 核って……?」

 

 ユートは首を傾げた。

 

 確か、ミカエルはエクスカリバーが奪われたと言っていたが、そもそも欠片とか核の意味が解らない。

 

〔ユート君、エクスカリバーはその昔に折れたんだ。その欠片を回収、核とする事で錬金術を用いて新しく七本のエクスカリバーを造り出した。それが現代に於けるエクスカリバーという訳なんだよ〕

 

 サーゼクスが補足する。

 

〔コカビエルに盗まれたのは【天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリイ)】に【夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)】、【透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)】です〕

 

 どうやらこの世界では、ユートが知るのとは状況が随分と変わってるらしい。

 

 ユートが知るエクスカリバーとは当然、型月に登場するセイバーの持つ黄金に輝く聖剣──【約束された勝利の剣】の事である。

 

「(世界が変われば理も変わるって、良い例だね)」

 

〔どうでしょう? サーゼクスが此処まで持ち上げ、三勢力のトップが会談する中で平然とする貴方なら……と思ったのですが〕

 

「そちらから追っ手は?」

 

〔聖剣の使い手と悪魔祓い(エクソシスト)を送り込みました〕

 

「此方は独自に動くかも知れないよ?」

 

〔貴方は教会の者ではありませんので、私に命令権はありません。依頼さえ達成されればお好きに動いて下さい〕

 

「判った。その依頼、確かに請けた!」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ひょっとして、ミカエルからの連絡が行き届いてないのかな?」

 

 ユートは図らずも行われた三勢力会談を思いだし、首を傾げるのであった。

 

 

 

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