ハイスクールD×D【魔を滅する転生魔】   作:月乃杜

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 約一年振りに……





第28話:物乞い×奢り

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「貴様ら、何という事をしてくれたんだ!」

 

 怒りを露わにゼノヴィアが【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】を構えると、そいつを全力で以て振り被る。

 

「くっ!」

 

 同じくバルムンク・レプリカを構える木場だけど、ユートが右腕を伸ばし動くなと制した。

 

「緒方君?」

 

「僕が()るよ」

 

 殊更に強い言葉ではなかったが、そこには強烈なる強制力が見受けられる。

 

 木場もその雰囲気に圧されてしまい、動き出していた脚を止めてしまった。

 

「真逆、君は素手で戦る気なのかい?」

 

 刀──【妙法村正】は既に仕舞っており、ユートの手には武器が無い。

 

「問題は無いだろ。激昂に任せた攻撃なんて、隔絶した力が無ければ意味を成さないんだよ。一誠の好きなアニメ、ドラグ・ソボールの空孫悟みたいにね」

 

 この世界に併せて言ってみたが、ユート的には怒りにより覚醒したDBに於ける超サイヤ人の孫悟空や、超サイヤ人2の孫悟飯が例に挙がる。

 

 だが、残念ながら聖剣こそ持っているが、それ以外はただの人間のゼノヴィアとユートでは、ユートの方が実力的に格上だ。

 

 そんな相手に激昂し単調となり、本来の動きが出来ない状態のゼノヴィアが勝てる訳も無い。

 

 何も考えず力任せに振り降ろされる【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】の刃だけど、ユートは掌で包み込む様に簡単には受け止める。

 

「な、なにぃ!?」

 

「破壊とか物騒な銘が付いてる割には、どうという事もないんだなこの剣は」

 

「き、貴様ぁぁぁっ!」

 

 どれ程激昂していようが所詮は只人に過ぎない為、聖剣のオーラで強化されてはいても押せど引けどビクともしなかった。

 

 まるで空間に固着でもされたかの如く。

 

「くっ、放せっ!」

 

「はいよ!」

 

 手を放し、指先で刃を弾いてやったら引いていた力と相俟ってゼノヴィアは無様にひっくり返り、地面に転がってしまう。

 

「ぎゃん!」

 

 頭でも打ったのか、変な声を上げて倒れたが直ぐに起き上がった。

 

「おのれ!」

 

 相も変わらず単調な大振りな一撃、ユートはブンブンと振り回される【破壊の聖剣】の一合一合を軽めに紙一重で躱していく。

 

「どうした、避けてばかりでは勝てんぞ!」

 

「当たらなければどうという事も無い! ってな」

 

「ならば当ててやる!」

 

 力一杯に振り降ろされた刃を、ユートは左側へと避けると、刃が地面に当たって轟音と共に地面を抉る。

 

 足場が激しく揺れて地響きが発生し、剣先の地面には可成り巨大なクレーターが穿たれていた。

 

「見たか! これこそが私のエクスカリバーだ。有象無象の全てを破壊する! 【破壊の聖剣】の名は伊達じゃない!」

 

 そんな光景を少し離れていた位置で見てた木場は、苦々しい表情を浮かべながらも呟く。

 

「真のエクスカリバーでなくともこの威力か。七本全部を消滅させるのは正しく修羅の道……だね」

 

 尤もユートは消滅までさせる気はないらしいから、破壊するのが精々。

 

 だけど……

 

「(彼から預かったこの剣──バルムンク・レプリカなら、きっとやれる!)」

 

 バルムンク・レプリカの柄を握り締め、決意を新たにするのであった。

 

 一方ユートはと云えば、ゼノヴィアの優越感を鼻で嗤い飛ばす。

 

「フッ、エクスカリバーなんていう玩具を貰ってご満悦な処、悪いんだけどね。やっぱり【破壊】とか云う割には大した事がないな」

 

「な、何だとっ!?」

 

「いや、この場合は武器というよりも使い手が大した事ないのかな?」

 

「なっ!」

 

 玩具呼ばわり、更には使い手の弱さを理由にユートは失望を露わにしていた。

 

「【破壊の聖剣】な〜んて玩具を貰っただけで喜ぶ前にさ、せ・め・てこの程度は出来る様にしようか」

 

 ユートはそう言って拳を振り上げ、足下の地面へと叩き付ける。

 

 ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!

 

 すわ地震か? などと思えるくらいの激しい揺れ、轟音と立ち込める土埃。

 

「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 暫く時間が経過し土埃が収まった後の球技大会練習場を見ればそこには先程、ゼノヴィアがエクスカリバーで抉ったクレーターをも呑み込んで、更なる巨大なクレーターが穿たれていたのだ。

 

 尻餅を突いて得体の知れないモノを見る様な瞳で、ゼノヴィアはユートを見つめている。

 

「あ、あ……」

 

 無理もあるまい。

 

 自分が【破壊の聖剣】を使って漸く空けた穴を呑み込み、素手によって大規模なクレーターを穿ってしまったのだから。

 

「お、お前は本当に人間……なのか?」

 

「何を以て人間と定義するのかは知らないが、僕自身は人間の心算だよ。愚かで移ろい易く、心根の賎しい……それが人間だろ」

 

「ぐっ!」

 

 ゼノヴィアは絶句した。

 

 いったい、ユートの中では人間とはどれだけ下に視られているのか?

 

 しかも、それが自分だと言う辺り歪んでいる。

 

「そもそもさ、僕の知り合いの人間なら普通にこれくらいは出来るよ。地面に穴を穿つのは言うに及ばず、地面を切り裂いたり、絶対氷壁を造ったり、嵐を起こしたり、大滝を拳の一つで逆流させたり、台風を消し去ったり、銀河の星々をも砕く様な爆発を引き起こしたり……ね」

 

 どんなビックリ人間なのかと思える存在だ。

 

「ゼノヴィアはさ、自分の中に【宇宙】を感じた事があるかな?」

 

「う、宇宙……だと?」

 

「人間は自己の体内にあるその小宇宙を爆発させる事によって、超人的なパワーを生み出す。そして大地を割り、星をも砕くんだ……まあ、人間に限った事でもない訳だが」

 

「くっ、巫山戯るなっ! 何が宇宙だ、そんなものが世界を変えられるものか! 我々は神の導きに従っていればそれで良いんだ!」

 

 起き上がりエクスカリバーを揮うゼノヴィア。

 

 ユートは嘆息をすると、嘗ての仲間の星矢と同じ動きで軌跡を描く。

 

 それは日本の秋空に浮かぶ大四辺形を中心にして、一三個の星によって形成される星座……

 

「うおおおっ! ペガサス流・星・拳っっ!」

 

「な、なに?」

 

 即ち天馬星座。

 

 ユートの拳が数百にも及ぶ流星となって放たれる。

 

それを見てゼノヴィアは【破壊の聖剣】を盾に防ごうとするが、ピシリッ! と厭な音が剣から響いた。

 

「ば、バカな! 私の……私のエクスカリバーが!」

 

バキィッ!

 

 数百発の拳を刃の腹で受けた結果、エクスカリバーの刃に罅が入り、衝撃によって手から放してしまい、後から来た拳の全てをその身体で受けてしまう。

 

「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 急所はわざと外したが、ほぼまともに受けた身体はズタボロになり、空中へと吹き飛ばされて墜ちた。

 

 頭から。

 

 所謂、車田落ちである。

 

「手加減はしたから、骨が折れたり内臓が破裂したりなんて事にはなってない。だけど最早、動けないだろうからこれで終わりだ」

 

 言いたい事を言うだけ、ユートが踵を返すと【破壊の聖剣】を拾い……

 

「木場!」

 

 木場へと投げ渡す。

 

「緒方君、本当に僕が壊してしまって良いのかい?」

 

「構わないさ。どうせ本当の意味では不要なんだ」

 

 よくは解らないが木場は取り敢えず納得し、聖剣を空中へと投げると……

 

 パキィィィン!

 

 バルムンク・レプリカで斬り壊す。

 

 既に罅が入っていた【破壊の聖剣】は、軽い音を響かせて容易く砕けた。

 

 ゼノヴィアはガタついた身体を押して起き上がる。

 

「ま、待て……ちょっと待ってくれ!」

 

「何かな?」

 

「わ、私は良い。だけど、せめてイリナをアーシア・アルジェントの神器(セイクリッド・ギア)で治療してやってくれ……」

 

 懇願するゼノヴィアを見たユートは、寧ろ冷ややかな視線を向けて言い放つ。

 

「教会の人間が、自ら魔女と呼び追放した者の助力を受けようだなんて、随分と虫の良い事を言うな?」

 

「……そ、それはっ!」

 

「それに、この騒動の前に君の言った通りにアーシアが斬られていたら、そんな戯言は言えなかった筈だ」

 

「くっ!」

 

 その言葉は容赦無く正しいから二の句も継げない。

 

「教会はアーシアを要らぬと棄てたんだ。唾棄すべき【魔女】だと言ってな……それも、ミカエルがどうしてアーシアを異端として、教会を追放にしたのか考えもしないで、言われるが侭に棄てて暴言まで吐いた。それで困った事が起きたら力に擦り寄るとか、それはみっともないな。戦士として恥を知れ!」

 

「うぐっ、然し……」

 

 それでも諦めずに言い募ろうとするゼノヴィアに、ユートは冷たい瞳で科白を被せて言う。

 

「自分がそうした訳じゃないなんてのは、言い訳にしても愚かしい。言った筈、同じ法衣を纏っている組織の一員なら、同罪だと」

 

「うう……」

 

「だけどそうだね。なら、この僕に跪く事だ、そして大地に頭を擦り付けこの僕を拝め!」

 

「なっ!? お前を神と崇めよと言う心算か?」

 

「そうだ、それなら万に一つでも助かるやも知れん」

 

「ば、バカな! その様な事が出来るものか!」

 

 そうは言うけど、自分のダメージも然る事ながら、両の手首を斬り落とされたイリナは余りにも酷い。

 

 拳を握り締め屈辱に表情を歪めながら、ゼノヴィアはユートを睨み付けた。

 

 そして手を地面に付け、本当に額を大地に擦り付けながら懇願する。

 

「頼む、イリナだけで良いんだ。治療をして欲しい」

 

 先程のダメージが抜けやらぬ身体で、痛みに呻きながらひたすらに。

 

 ユートはそれを見て困っていた、よもや本当にやるなどとは……

 

 精々、対価を差し出しての交渉になると思い、折角だし【乙女座・バルゴ】のシャカごっこをしてみただけだったのだが……

 

 とはいえど、これだけの誠意を見せたゼノヴィアに無体な事も出来ない。

 

 ユートは再び嘆息しつつゼノヴィアを掴んで跳ぶ。

 

「え? うわぁぁぁっ!」

 

 クレーターの中から出てくると、ユートは振り返り柏手を打って魔法を使う。

 

「イル・アース・デル・ハガラース・ウル・カーノ・ウォータル……【錬成】」

 

 周りからはよく解らない言葉を紡ぐと、ボコリ! と行き成り地面が盛り上がりクレーターは埋まった。

 

「地面が元に?」

 

 リアス・グレモリーを始めとするオカ研の面子が、その常識から外れた現象に驚愕をする。

 

 【錬金】の魔法の上位版としユートが創った魔法、土系統のみなからず火系統や風系統や水系統の要素も含み、より完璧に色々と出来る様になっていた。

 

 寧ろ、更なる上位魔法の【創成】に比べれば児戯にも等しいのだが……

 

「アーシア」

 

「あ、はい?」

 

「ゼノヴィアの治療を」

 

「判りました!」

 

 何処か嬉しそうに返事をすると、アーシアは【聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)】を両手の指に出し、ゼノヴィアを相手に治療を始める。

 

「い、良いのか?」

 

「ダメージが入った侭だと聖剣捜しや、戦闘に差し障りが出るしね」

 

 ユートは【破壊の聖剣】と【擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)】の核となる欠片の回収をして、未だに気絶した紫藤イリナを抱きかかえた。

 

「イ、イリナをどうするんだ!?」

 

「治療を望んだのは君だろうに、ゼノヴィア。家に連れ帰って治療を施すさね。但し、腕を繋いでも今回の事件に戻る事は無理だろうけどね」

 

「聖剣の核は?」

 

「預かるだけだ。奪われでもしたら洒落にならない。その為に壊したんだから。ゼノヴィアはエクスカリバーが無くても困りはしないのだろう?」

 

「っ!? まさか気付いていたというのか」

 

 ユートは笑みを浮かべ、家族たるユーキとアーシアに声を掛けた。

 

「じゃあ帰るよ、ユーキ、アーシア」

 

「うん、兄貴」

 

「はい、ユートさん」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 帰宅後ユートはイリナの服を剥ぎ取ると、素っ裸となった彼女を治療設備たるポッドへと放り込む。

 

 当然、イリナの胸と云わず秘部と云わず全てが見えてしまう訳だが、ユートは気にしない。

 

 気にしないというのは、飽く迄も罪悪感を持たないという意味であり、神に仕えるシスターのあられもない姿を直視したら心ならずも興奮して、自らの分身が反応をすると屹立して大きくなってしまっていた。

 

 だからと言って前後不覚の相手を襲う程に堕ちてはいないし、鎮める手段にも不自由してはいない。

 

「ユート様、フェニックスの涙程ではありませんが、可成りな効力を得られたと思いますわ」

 

「有難う、レイヴェル」

 

 ユートが前に造った不完全な秘薬に、レイヴェルが手を加えた新しい秘薬。

 

 流石に【フェニックスの涙】程の効力は無いけど、レイヴェルはそれでも限界まで効力を上げた。

 

 【生命の清水】より回復の効果が高く、魔力も同時に回復してくれる新秘薬。

 

 生死の狭間からも還す事が出来そうなそれは、正しく【エリクシール】だ。

 

 ユートは先ず、イリナの右手を断たれた腕に添え、治療系の詠唱に入る。

 

 ハルケギニア大陸の水系統メイジは、スクウェアともなれば断たれた腕すらも繋ぐ事が可能とされた。

 

 但し、精霊の涙を使用した秘薬を大量に併用しなければならず、更には可成りの精神力を消耗する。

 

 ユートとてそこまでするのは簡単ではなかったが、それでも莫大なMPを持つから不可能でもない。

 

「よし、繋がったな。次は左手だ」

 

 同じ工程を経てイリナの左手も断たれた腕に繋ぐ。

 

「まったく、治療するなら初めから怪我などさせねば良いものを……」

 

 一生懸命に治療を施しているユートを見て、レイヴェルが皮肉気に呆れた口調で言う。

 

「そう言うな。闘うとなればどうしても容赦が無くなるんだよ」

 

 レイヴェルが皮肉を言ったのは、イリナの外で活動しているにしては白い肢体が中々のもので、少しばかりユートが綺麗な肌に見惚れていたからだ。

 

「よし、繋がった」

 

 ユートは酸素供給マスクをイリナの口元に着けて、万能ポッド蓋を閉める。

 

「それではフェニクシールを注入致しますわ」

 

「フェニクシール?」

 

「フェニックスのエリクシールですので」

 

 余り無い胸を張り自信満々に答えてくれたが正直、もう少し何とかならなかったのかと思った。

 

 命名センス的に。

 

「ま、良いか」

 

 ポッドを【フェニクシール】が満たして、酸素の方もイリナの肺中へと順調に供給されている。

 

「これで、放っておいたら朝までには動かせるレベルに治るだろう」

 

「ええ、そうですわね」

 

 レイヴェルも悪魔として教会の人間を治療する行為に抵抗はあったが、自分の造った秘薬の効果も見たかったし、何よりもユートが望んだからと存分に腕を揮ったのだ。

 

 治ってくれねば困る。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 翌日、ポッドの中で目を覚ましたイリナはオロオロと戸惑っていた。

 

 まあ、何が何だか判らないのに素っ裸で狭苦しい場所に閉じ込められ、水が満たされていては恐怖以外の何物でもあるまい。

 

 とはいえ酸素を供給してくれているのが判るマスクを外して溺れる程、イリナもおバカではなかった。

 

 別に溺れはしないけど。

 

 兎に角ポッドの蓋を叩いて出して貰おうと暴れる。

 

 別に閉所恐怖症でもあるまいが、それでも何故こんな状況なのか判らなければ不安ばかり煽られたから。

 

 

「やれやれ、もう少し静かにして欲しいな」

 

 耳に付けられた耳栓が実はスピーカーらしく、聞き覚えのある声が響いたと同時に水が抜かれていった。

 

 完全に水――フェニクシールが抜かれポッドの蓋がゆっくりと開く。

 

 酸素供給マスクとスピーカーを黒髪に黒瞳の少年が外して、茫然自失となった自分にバスタオルを投げて寄越され、はたと自分の今の姿に気が付いた。

 

 日本人であるが故に黄色人種ではあるが、その中でも取り分け白い肌に形の整った胸、更には本来ならば恋人か夫にでもなければ見せないであろう秘所までが露わとなって、生まれた侭の姿を男の子の前で堂々と晒している。

 

「い、い、い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!」

 

 直後、大粒の涙を浮かべてバスタオルで肢体を隠しながら身を竦めて、顔を充血させ真っ赤に染めた乙女の絶叫が部屋に響いた。

 

「エッチ、えっち、H! スケベ、変態、強姦魔(レイパー)ァァッ!?」

 

「ド喧しいっ!」

 

 パシィン!

 

「はうあっ!?」

 

 余りにも人聞きの悪い事を叫ぶイリナに対し、何処から出したのかハリセンを手にして、セブンセンシズを発揮した光速のツッコミをド頭にかます。

 

 数分後……取り敢えず、イリナはユートから渡された白いワイシャツとショーツを着込んで、マニアックな格好となっていた。

 

 一応は大事な部分が隠れたから良しとしたらしい。

 

 そして、更に十数分掛けて現状の説明をしておく。

 

 ゼノヴィアを撃破して、その後に治療の為イリナを連れ帰った事。

 

 裸なのは、よもや汚れた服でポッドに入れる訳にはいかなかっただけで、疚しい事をしてはいない事。

 

 腕は治療済みの事。

 

 イリナは事情説明を聞いた後でユートに質問する。

 

「私の聖剣は?」

 

「木場のガス抜きと万が一にもコカビエル側に渡らない様、木場に破壊させた」

 

「破壊? 真逆、消滅させちゃったの!?」

 

「いや、核となるエクスカリバーの欠片は回収した。事件が終わって、イリナが向こうに帰る時には返してやるよ」

 

 それを聞いて取り敢えず安心と、イリナはホッと胸を撫で下ろす。

 

 破壊されただけで、核が残っているなら錬金術により再び造り直せる。

 

「あれから、ゼノヴィアはどうしたのかしら?」

 

「さあ? 君らが宿泊してる場所に一旦帰ったんじゃないか?」

 

「そっか……あれ? 何だかゼノヴィアの事で何かが引っ掛かったけど、何だったっけ?」

 

 首を捻りながら考えたが思い付かない。

 

「まあ、良いか……」

 

 思い出せないなら大した事でもあるまいと、イリナは頭の片隅に捨て置いた。

 

「そ、それじゃあね、わ、私って裸にされてた訳なんだけど、ち、治療以外に何かした?」

 

 まだ疑っているのか? 或いはそれなりには自信のある肢体、その裸を晒していたのに何も無かったというのが少しプライドを刺激された様だ。

 

 これがむさい男なら嫌悪感を催し、十字教では禁じられている自殺すら図ったかも知れないが、相手は敵の悪魔と戯れている者といえ結構、整った顔をした同い年くらいの少年である。

 

『ちょっとイケナイ想像をしたとしても、きっと主だってお咎めにならないわ』

 

 ……などと、勝手な事を考えていたり。

 

 イリナは幼少時、一誠と遊んだ以外には父親か司祭くらいしか男との接触など無かった。

 

 引っ越して以降、シスターとして神に仕えたのだから当たり前ではある。

 

 まあ、正式なシスターになる前から敬虔なクリスチャンではあったが……

 

 故にこそ、逆に妄想も逞しくなる訳で……

 

 同僚のシスター達と猥談という程ではないが、その手の話にワイワイと花咲かせた事もある。

 

 丁度ハルケギニアの世間から隔絶されたセント・マルガリタ修道院で、その手の話が話題に上っていた様に……だ。

 

 無論、普段は信仰の厚い娘さんなのだが。

 

 げにまっこと、恐るべきは乙女心という事である。

 

「治療行為以外に何もしてはいないけど?」

 

「そ、そう……」

 

 されたらされたで問題だとはいえ、イタズラの一つもされないと云うのも自分に女の子として魅力が無いと言われているみたいで、やはり複雑な心境の様だ。

 

 少し膨れっ面になる。

 

 ク〜ッ……

 

 知りたい事も知れて少しは安心したからか、お腹から可愛らしい音が鳴った。

 

 その途端にイリナは顔が真っ赤になる。

 

 夕方に暴れたというのに夜は何も食べていない。

 

当然ながら、すっかりお腹が空いてしまっていた。

 

「ううっ……」

 

「ま、話も終わった訳だし……朝御飯でも食べるか」

 

 ユートは苦笑しながら言ったものだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「はあ……やっぱり故郷のご飯は美味しいわね」

 

 お腹も落ち着いてイリナはご満悦の様子だ。

 

 とは言うものの、イリナの手はまだ動かすのに支障があるらしく、箸の扱いには悪戦苦闘していたが……

 

 これもリハビリである。

 

「じゃあ、僕らは学園に行くからイリナは静かに寝ている様に。那古人、今日は自主休校をして構わないから彼女を頼んだよ」

 

「イエス、マスター」

 

 那古人は監視兼世話係として家に残す為、当然ながら学園の方は自主的に休む事となる。

 

 腕がまだまともに動かず聖剣も無い状態で下手に動き回られても困るし、彼女には留守番をしていて貰うしかない。

 

 どちらもユートの所為な訳ではあるが、ユーキは良い判断だと思っていた。

 

 何しろイリナは、まんまとエクスカリバーを奪われた挙げ句、コカビエル達との戦闘にも怪我で参加してはいなかったのだ。

 

 原作の事を思えば、怪我の功名といった処である。

 

 学園が終わって、リアスとソーナの許可の元に一誠と木場と小猫と匙を伴い、聖剣捜しに出たユート。

 

 ソーナからの正式な命令の為に、匙は不参加を表明する事が出来なかった。

 

 ユーキにレイヴェルと、夕麻やミッテルトやイル&ネルやミラは、場合によっては狙われかねない学園に待機している。

 

 暫く動いていると、見覚えのある短い青髪に緑のメッシュが掛かった少女が、街中で物乞いをしているのを見付けてしまう。

 

 飽食の国で。

 

『『『『…………』』』』

 

「えー、迷える子羊にお恵みを〜」

 

 路頭で祈りを捧げている白いローブ姿の女の子は、その珍妙な格好と相俟って非常に目立っていた。

 

 天下の聖剣使いの悲哀な姿を見た気がして、四人は何とも云えない気分に。

 

 

 その頃、おやつをパクつきながらイリナが『あっ!』と声を上げ、思い出した様に呟いた。

 

「そういえば、路銀は私が全部預かってたんだけど、ゼノヴィア大丈夫かしら」

 

 思い出して尚もおやつを口に運びながら……

 

「……えーっと、君は何をやっているのかな?」

 

「――は?」

 

 振り返る少女は、声の主の顔を見て青褪めたかと思ったら、こんどは真っ赤になってしまう。

 

「な、な、な、な、何故、き、き、君達が!?」

 

 きっと無様な姿を見られて青褪め、羞恥から真っ赤になったのだろう。

 

「何故とか訊かれてもね、この街に住んでるんだから居てもおかしくないよ?」

 

「うぐっ!」

 

 当たり前の事を答えるとゼノヴィアは口篭る。

 

「で、さっきから見てたんだけどさ、何でゼノヴィアは行き成り路頭に迷っているんだ? 真逆とは思うんだが、教会は路銀を余り出してくれなかったのか?」

 

 大事な使命を与えた割にはケチ臭いと思った。

 

「ち、違うぞ! 別に教会が路銀をケチった訳ではないからな?」

 

「うん? 顔に出てたか。じゃあ、何で? ドジって落としたとか?」

 

「いや、そうではなくて。実は、路銀は二人分纏めてイリナが管理してるんだ」

 

 頬を人差し指で掻きながら恥ずかしそうに言う。

 

 それでユートは今朝方の会話を思い出す。

 

『あれから、ゼノヴィアはどうしたのかしら?』

 

『さあ? 君らが宿泊してる場所に一旦帰ったんじゃないか?』

 

『そっか……あれ? 何だかゼノヴィアの事で何かが引っ掛かったけど、何だったっけ?』

 

 あれの意味はつまり……そういう事なのだろう。

 

「成程、今朝方イリナが言っていた引っ掛かる事っていうのは、この事か」

 

「イリナァァ……」

 

 溜息と共に名前を出す。

 

 だが、直ぐに思い出したかの様にユートに訊ねた。

 

「そう言えば……イリナは大丈夫なのかい?」

 

「ああ、腕は繋げたしね。朝食も美味しそうに食べていたよ」

 

 ピシリ……

 

 瞬間、空気が凍った。

 

「今、何と言った?」

 

「ん? 腕は繋げた」

 

「違う、その次!」

 

「朝食も美味しそうに食べていたよ」

 

「イ、リ、ナの奴〜っ! 私が腹を空かせている時に暢気に飯だとぉぉぉっ!」

 

 ゼノヴィアは世の理不尽に激昂した。

 

 その様は激しく目立つ。

 

「仕方ない。一誠」

 

「うん? 何だよ」

 

「ゼノヴィアに飯を奢ってやれ」

 

「は? 何で俺が?」

 

「一誠、お前の夢は?」

 

「ハーレム王!」

 

 何の迷いも躊躇いすらもなく、いっそ清々しいくらいに言い切る一誠。

 

 寧ろこの思い切りの良さはユートの方が吃驚だ。

 

「ハーレム王って言うが、それは何だ? 女の子を侍らせるだけの暴君か?」

 

「え? いや、それは」

 

「否、断じて否だ!」

 

 口篭る一誠に、ユートは力強く否定した。

 

「良いか、普段の何気無い行動。女の子への優しさや思い遣り、それが滲み出るオーラとなって女の子の方から寄って来るんだ」

 

「な、何だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 因みに、この会話はコソコソと周りに聞こえない様な小さな声でされている。

 

「おかしいとは思わなかったのか? 学園の女子達は一誠達をエロ三人衆と呼んで忌避するのに、同じ傍に居る僕は別扱いだ」

 

「そ、そう言えば……」

 

 ユートも基本的には莫迦やらかす一誠、元浜、松田の三人と一緒に居る。

 

 しかもユートも一誠達と普通に莫迦な会話をしていると云うのに、エロ四天王ではなくユートを除いた、エロ三人衆なのだ。

 

「ま、真逆っ!?」

 

「そうだ、そのオーラが僕から出ているとしたら?」

 

「なっ!」

 

「例えばだ、一誠が小猫の着替えや入浴を覗けばどうなる?」

 

「う、恨まれる……かな」

 

 合宿中、そんな事を実際に言われていた。

 

「なら、僕だったら?」

 

 一誠は想像する。

 

 着替えの場合……

 

『……ユウ先輩は、エッチです。でも見たいんなら、良い……ですよ?』

 

 入浴の場合……

 

『……ユウ先輩、どうせなら一緒に入りませんか? お背中、流します……」

 

 恥ずかしそうに白い頬を真っ赤にしながら、それでもユートを受け容れるだろう小さな後輩の姿が思い起こされた。

 

 そして一誠は哭く、この世の理不尽というヤツに。

 

 事実、小猫はユートのするセクシャル行為──小猫が嫌がってないからハラスメントではない──を嬉しそうに受け容れている。

 

 充分に有り得るだろう。

 

「わ、判ったぜ!」

 

 一大決心をして、一誠は拳を握るとゼノヴィアへと話し掛けた。

 

「ゼノヴィア、腹が減ってんなら一緒にファミレスに行かないか? 飯くらいは奢ってやるぜ」

 

「ほ、本当か?」

 

「応ともよ!」

 

 一誠とゼノヴィアが共に歩き始めたのを見て木場は苦笑、小猫はやれやれと呆れているが、匙は何処と無く羨ましそうにしている。

 

「ノせるのが巧いね」

 

「……ユウ先輩、詐欺師に向いています」

 

 匙は尊敬の眼差しながら不安を湛えている。

 

 最近、頓に主のソーナがユートの事を会話に交える様になったのが、そういう処からだとすれば……

 

 そう思うと気が気ではないのだろう。

 

 だが匙は会長を狙わねば実は生徒会内での評判は、決して悪いものではない。

 

『私、元ちゃんが……』

 

 と考えている娘も居るが知らぬは本人ばかりなり。

 

 とはいえユートの言った事は半ばが出鱈目である。

 

 そもそもユートはそんな打算的には動いていない。

 

 今回の話は一誠のノリの良さに期待し、ゼノヴィアを誘わせたのだから。

 

 尤も自覚こそ無いのに、全てが嘘ではないから性質が悪いとも云える。

 

 事実、原作のオカルト研究部で一誠があれだけモテたのも、その辺りが在ったればこそなのだから。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ガツ、ガツガツ! 美味いモン達が呼んでるぞ! 食えば食う程に、溢れ出るパゥワァーだっ!」

 

 可成りギリギリにアウトっぽい事を言いながらも、ゼノヴィアは昨日の昼振りの食事を摂る。

 

 ユートと小猫達は珈琲やジュースだ。

 

 ユートは紅茶より珈琲派だから、普通に珈琲を頼んで飲んでいる。

 

 これも一誠の奢りで。

 

 話は取り敢えず、ゼノヴィアの食欲が落ち着いてからでも良かろう。

 

 食事からかれこれ二〇分が経ち、ジュースを飲みながら話を始める事とる。

 

「それで、訊き忘れていたんだが、君達は何をしているんだ?」

 

「勿論、聖剣捜し」

 

「私達は動かないで欲しいと要請したんだが?」

 

「ゼノヴィア、教会と定期連絡はしているのかな?」

 

「連絡?」

 

「その様子じゃ、していないんだな。報連相は大事な仕事の一環だよ」

 

 ユートも下手に好き勝手な行動はせず、魔王に連絡をしたり、堕天使の総督に報告をしたり、ミカエルに相談したりしている。

 

 外様ではあるが、魔王と友誼を結んでいる関係上、悪魔関係者と見なされる事を鑑みて、予め報告をしたりしていたのだ。

 

 慌ててゼノヴィアは教会に連絡すると、真っ青になって戻ってきた。

 

「う、上から怒られてしまった。定期連絡を怠るな……って。それと、上層部からの命令で、現地の魔王の親族やその仲間と協力して事に当たれと……」

 

 こういう任務は性質上、半日に一回、遅くとも一日に一回は本部に連絡を取るものだ。

 

 勿論、状況的に不可能な把握は除くけど。

 

 色々とゴタゴタし飯抜きな状態ですっかり忘れていたゼノヴィアは、上司からコッテリ絞られたらしい。

 

「まあ、そんな訳で聖剣捜しは共同で行うよ。リアス部長とソーナ会長にも話はついているから」

 

 原典では一誠達がコッソリと動き、見付かってお仕置きされていたが、筋立てて動ける様にしたからそんな心配も無い。

 

「なら僕も情報を出すべきだろうね。先日、エクスカリバーを持った者に襲撃された。その際、神父を1人殺害していたよ。殺られたのはそちらの者だろうね。相手はフリード・セルゼン……この名に覚えは?」

 

「成程、奴か」

 

 ゼノヴィアには充分に覚えがあったらしい。

 

「フリード・セルゼン……元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。若干一三才にてエクソシストとなった天才だが、奴は余りにやり過ぎた。同胞すらも手に掛けたのだからね。そうか、フリードは奪った聖剣を使い私達の同胞を手に掛けていたという訳か。あの時、処理班が始末出来なかったツケを私達が払う事になるとはね」

 

 悔しそうに言う。

 

 因みにユートはフリード・セルゼンの名前を実は、未だに知らない……というか覚えていない。

 

 ユーキが名前を出した事があったくらいで、特に覚える必要性を感じなかったからだ。

 

 ゼノヴィアはペンを懐から出し、紙に連絡先を書いて寄越してきた。

 

「兎に角、共同戦線を張るなら何かあれば此処に連絡をしてくれ」

 

 携帯番号である。

 

「判った。んじゃ、俺達の連絡先も……」

 

 一誠は自分の携帯番号を教えておく。

 

 ゼノヴィアが立ち去った後に残された面々、いまいち因果関係が理解出来ていない匙に、木場は涼しく騒々しいファミレスで、過去を話すのであった。

 

 

 

.




 この作業って存外と面倒で新規を優先しがちなのですよ……


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