ハイスクールD×D【魔を滅する転生魔】   作:月乃杜

3 / 34
第2話:決闘×政経

.

 結界を張り、特殊空間を造り出して準備を行う。

 

「この空間は?」

 

「我々が催す大会などで使っている空間だ」

 

「へー?」

 

 ちょっと興味が沸く。

 

「さて、始めようか」

 

 豪華なローブやマントを脱ぎ去り、それをグレイフィアに預けたサーゼクス。

 

 魔力で戦闘衣を生み出したサーゼクスは、ユートへと向かい合う。

 

「私は本気で闘おう。君も本気で闘ってくれ給まえ」

 

「本気……か。それは外付けの力でも構わない?」

 

「それは神器(セイクリッド・ギア)の事かな?」

 

「セイクリッド・ギア?」

 

「ふむ、若しかして知らないのかい?」

 

「言ったよね? そもそも僕は異世界から来たって。この世界の特有アイテムは知らないよ」

 

「成程、神器(セイクリッド・ギア)は我々の世界にのみ存在するのか……」

 

 得心がいったサーゼクスが頷いている。

 

 まあ、良いかと考えて、ユートは腕を天高く掲げて人差し指を立て……

 

「此処に来て僕の身を鎧え……我が聖衣よ!」

 

 稲光が迸り、平行異世界の聖域に存在する黄金の鎧──双子座の黄金聖衣が、浮かび上がると双児宮から消失した。

 

 双子座の黄金聖衣が頭上に顕れ、カシャーンッ! と甲高い音を響かせながら分解されると、各パーツがユートの肉体に装着され、黄金に煌めく闘士となって顕現する。

 

「平行異世界はギリシア、その神話体系に謡われるは智慧と伎芸の女神アテナ。それを守護するはアテナの聖闘士」

 

「アテナの聖闘士?」

 

 この世界にもギリシア神話体系の女神としてアテナがいるが、ユートが言う様な戦力は有していない。

 

「双子座(ジェミニ)の黄金聖闘士・ユートだ!」

 

 彼の闘い以来、久方振りに双子座の黄金聖衣を纏うユートだったが、本来とは幾つかの相違点が在った。

 

 髪の毛と瞳の色、聖衣の色彩などである。

 

 これは、未だに那古人とのユニゾンを継続している影響で、現段階ではユートの最も強い──黄金の暴龍神を除く──形態だった。

 

《DQより抜粋、スカラ、ピオリム、バイキルト……合体、スピオキルト!》

 

 ユートの内部の那古人が編纂され、書に記載している魔法から使えそうなモノを抜粋して行使する。

 

 対してサーゼクスの方は那古人の声に驚きながら、相手(ユート)を見遣りつつ紅色の魔力球を右掌に顕現させた。

 

 ユートはその紅い魔力球を確りと視る。

 

 【叡智の瞳(ウィズダム・アイ)】という魔眼となったユートの瞳によって、サーゼクスの紅い魔力球に関する情報を読み取った。

 

 否、現在進行形で今も読み続けている。

 

 この瞳は元々が転生特典のギフト、【よく視える瞳】に過ぎなかったが、魔法の探知(ディテクト・マジック)を常に掛けて併用をしている内に、多少の精神力を消費しながらあらゆる事象を見通す魔眼へと進化してしまった。

 

 既に仕合は始まったというのに、ユートもサーゼクスも全く動かない。

 

「? これはあれですか? 先に動いた方が敗けるとかそういう……」

 

「いや、違うよ」

 

 グレイフィアの疑問に、アジュカが首を横に振って否定を入れつつ答える。

 

「先に動いた方が敗けるというのは、単に焦って動いてカウンターを──後の先を取られる事への比喩だ。彼らは戦っているんだよ、まるでチェスの様にね」

 

 相手が兵士(ポーン)を進めたから、此方は騎士(ナイト)を配置しよう……

 

 そんなレベルでの静かな読み合いをしていて、派手さは無いが悪魔が熱狂しているレーティングゲームに於ける、玄人好みの戦い方の謂わば終極形態。

 

 端からは全く動きが見えない為、一種の娯楽であるレーティングゲームでやったら顰蹙を買う戦いだ。

 

 何しろ本人達は、目の動きや僅かな筋肉の収縮や、空気の変化などから情報を得て、相手がどの様に動くのかを予測しながら、自分の行動を決めつつもそれを覚らせぬ様にしなければならない。

 

 ほんの僅かでも読み違えた瞬間、敗北するのは必至である為に緊張感に満ちた戦いが繰り広げられている訳だが、謂わばこれは究極の妄想バトル。

 

 頭の中ではお互いに凄いバトルを繰り広げながら、その力を揮っているのだろうけど、現実ではショボいチャンバラをやっているという中二戦闘(バニッシュメント・ディス・ワールド)と変わらない。

 

 ただ、この二人の性質が悪い処は現実に力を揮い、天変地異レベルの破壊を齎らす事が出来る点だろう。

 

「それではこの侭、動かないのでしょうか?」

 

「いや、ただの読み合いで済みはしないだろう」

 

 本来の実力を知らない者同士、相手の力を見てみたいのだから。

 

 そして更なる読み合いの末に……

 

「征けっ!」

 

「村正抜刀(エクスカリバー)ッ!」

 

 互いに撃ち合った。

 

 サーゼクスの紅色の魔力が複数飛び回り、ユートに向けて飛翔をするが、同時にユート自身が放つ絶断の刃が僅かな刹那に重なった時を狙い澄まし斬り裂く。

 

「素晴らしいね、私の消滅の魔力を斬り裂く刃かい」

 

「消滅の……魔力ね」

 

「私は【紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)】という二つ名を持つ。そして今の技は【滅殺の魔弾(ルイン・ザ・エクスティンクト)】ていって、消滅の魔力を使った技さ」

 

「随分と親切に教えてくれるんだな?」

 

「フフ、折角の愉しい一時なんだからね」

 

 それは、まるでデートに興じる乙女の如く熱に浮かされた表情。

 

「それなら、借り物の技で当たるのは貴殿(あなた)への侮辱になるのかな?」

 

「借り物とは?」

 

「今の技の名前は村正抜刀(エクスカリバー)。黄金聖闘士・山羊座のシュラより習った技。双子座の技でもなければ僕個人の固有技でもない……」

 

「ほう?」

 

「小宇宙という魔力とは異なる──他のエネルギーを融合昇華はしているが──力を薄く鋭く研ぎ澄ませた絶断の刃だ」

 

「聖剣(エクスカリバー)とはね……」

 

「? 何か聖剣に思う処でもあるのか?」

 

「三大勢力の大戦は教えたよね?」

 

 ユートは、サーゼクスの言葉に首肯をする。

 

「あの大戦で同胞の生命を脅かしたのが聖剣。取り分けエクスカリバーだ」

 

「成程ね」

 

 ユートの世界では、聖剣エクスカリバーはアーサー王が湖の貴婦人から選定の剣カリバーンが折れた際、与えられた剣。

 

 王の死後は湖の貴婦人に返還されたとある。

 

 一応、ユートはグレートブリテン──イングランドとウェールズとスコットランド──の生まれ。

 

 本場と言えば本場だ。

 

 因みに、北アイルランドを加えてイギリス連合王国としている。

 

 また、ユートが再転生をした世界のアーサー王とはアルトリア……つまりは、セイバーの事だった。

 

 セイバーのエクスカリバーは確かに聖剣と呼ばれているが、実際には聖なる力を持っているのではなく、星の素子を鍛えた切れ味の高い、真名を解放したなら凄まじいエネルギー刃を放つ剣の事。

 

 光の奔流故に悪魔に効きそうだが、刃そのものには聖なる力は宿してない。

 

 これは世界の違い故に、差違が生じたのだろう。

 

 悪魔が跳梁跋扈している世界だから、聖なる力を宿す聖剣が必要とされた。

 

 アーサーの敵は人間で、エクスカリバーの刃に掛かるのは悪魔ではないから。

 

「世界が違えば……か」

 

 ユートが右人差し指を立てると、赤、黄、翠、青、紫の煌めきが周囲を舞う。

 

「この煌めきは……?」

 

 サーゼクスも驚愕に目を見開いていた。

 

「中国の瑞獣を知っているかな?」

 

「麒麟の事かい? 勿論、知っているさ。私の眷属には麒麟の炎駒が居るしね」

 

「へぇ? その麒麟は常に五色の燐光を纏うという。この五色の煌めきは僕が纏う燐光……」

 

「? 何故、君が麒麟の如く燐光を纏うんだい?」

 

 伸ばされた人差し指を、天高く掲げて……

 

「北極星(ポラリス)の程近くに存在する星座の名は、カメロパルダリス。元来は草食動物のジラフを意味しているが、誤用で麒麟として紹介される事もある……イレギュラーたる僕が名乗るには相応しい」

 

「優斗君は先程、双子座を名乗った筈だが……?」

 

「今は双子座の黄金聖闘士を名乗っているけど、元はといえば麒麟星座の青銅聖闘士なんだよ」

 

「成程、それでその燐光はどの様に使うのかね?」

 

 収束されていく燐光。

 

「五つの燐光はそれぞれ、属性に当て嵌められる」

 

 赤は火で黄は土で青は水で翠は風で紫は雷。

 

「だけど僕の燐光は麒麟と似て非なるモノ。更に二色の燐光を放つ」

 

 白き燐光と黒き燐光……

 

「故に僕の燐光は虹を意味した言葉でこう呼ぶ」

 

 其処には七色の煌めきを従える双子の麒麟のオーラを背負ったユートの姿が、強大な小宇宙となって揺らめいていた。

 

「アルカンシェル……と」

 

 収束された七色の燐光を湛え、ユートはそれを攻撃へと転じる。

 

「燐虹七破(アルカンシェル・セットブリゼ)!」

 

「ぐっうう! 滅殺の魔弾(ルイン・ザ・エクスティンクト)!」

 

 七色の燐光が一時に襲い掛かり、サーゼクスは自らの滅びの魔力を全力で放って押し止めた。

 

 互いの威力が削り合う。

 

「くっ、読み合いによって高度な心理戦を仕掛けて来るだけでなく、これ程の力をも有するのか!」

 

 【滅殺の魔弾(ルイン・ザ・エクスティンクト)】を複数ぶつける事により、ユートの燐虹七破(アルカンシェル・セットブリゼ)を何とか相殺したサーゼクスは汗だくとなり呟く。

 

 闘いは終わりの様相を見せず肉弾戦に移行した。

 

 金色の光と紅色の闇のぶつかり合いは、そのどちらも決して劣るものではなかったが、ユートには理解が出来ている。

 

 黄金聖衣を纏い、強化の魔法で地力を引き上げて、それでも互角だという事は生身では敵わない。

 

 まだ力が足りないのだと云う事を、サーゼクス・ルシファーにまざまざと見せ付けられている。

 

 そして、この場の四人は程度の差こそ有れど、皆が互角の実力者だ。

 

 人間を舐め切り、ユートに絡んで門番としての役割を果たそうともしなかった悪魔など、それを考えれば吹けば飛ぶ程度の弱者だったのだと理解が出来る。

 

 相手は魔王の客人だと、直ぐにも解りそうなものを〝人間だから〟と侮って、〝客人〟に対する礼に失したあの門番、あれは基準にすらならない。

 

 実は中級悪魔だったが、魔王の居わす建物だからこそ中級悪魔を配したのか、それとも中級悪魔のクセに実力が無いから門番をしていたのか。

 

 いずれにしても、門番が魔王の連れてきた〝客人〟に絡むという事は、政治への越権介入だ。

 

 本来ならその場でセラフォルーに断罪されても文句は言えず、結果的にではあるがある意味ではユートに救われた事になる。

 

 気分屋な処のある彼女とはいえ、同胞を簡単に消すとも思えないが、少なくとも不穏な空気を醸し出していたし、左遷とか最前線送

りみたいな閑職に独りで回されるくらいはした可能性も否めない。

 

 まあ、それは兎も角……

 

 ユートの姿が金色の軌跡と共にブレ、上下左右へと掻き消えてしまった。

 

「──っ!? 速い!」

 

 だが、そうは言うもののサーゼクスは着いてくる。

 

 【滅殺の魔弾(ルイン・ザ・エクスティンクト)】の魔力を操りながら的確に放って、ユートを着実に追い込んでいた。

 

 そして遂には……

 

「しまっ!」

 

 完全に追い詰められている事に気付く。

 

「チェックメイト……だ。サーゼクスはチェスの如く詰め切った」

 

 アジュカは瞑目つながら言う。

 

「そんな〜」

 

 セラフォルーも残念そうに呟くが……

 

「──っ、スペル・インターセプト!」

 

「な、なにぃ!?」

 

 ユートは、有らぬ方向へと魔弾を逸らしてしまう。

 

 この事実には、魔弾を撃ったサーゼクスも観ていたアジュカも、そればかりかセラフォルーとファルビウムまでが驚愕した。

 

「今のは……覇軍の方程式(カンカラー・フォーミラ)だとでも云うのか?」

 

 取り分け驚いたのはお株を奪われたアジュカ。

 

 無様に過ぎない程度だとはいえ、自身の使う技と似たモノだったからだ。

 

 スペル・インターセプト自体は【とある魔術の禁書目録】に出てくる技だが、ユートもまだ直接には目にした事が無かった事から、上手くいくか判らなかったのだが術式へと自身の式をハックにより割り込ませ、何とかサーゼクスの魔力を逸らす事に成功したのだ。

 

 直には視た事が無いし、漫画やアニメ二期で観たのを基に構築したが、それが偶然ながら覇軍の方程式(カンカラー・フォーミラ)と似ていたらしい。

 

 ユートは両腕を掲げて、十字に組むと小宇宙を燃焼すると、圧縮をして一気に解放する。

 

「銀河をも鳴動する双子座(ジェミニ)最大の拳、銀河爆砕(ギャラクシアンエクスプロージョン)ッッ!」

 

 特殊空間と結界すらも揺る爆発が、サーゼクスへと撃ち込まれた。

 

 爆煙が広がって消えていくと、サーゼクスが銀河爆砕を両腕でガードする姿が露わとなる。

 

 銀河爆砕を防いだ所為か爛れた両腕、だが然しそれだけでしかない。

 

「防ぎ切った!?」

 

「いやいや、滅びの魔力で相殺しなければ腕が無くなっていたよ」

 

 つまりは防ぎ切れなかった余剰分のみ、サーゼクスの両腕を焼いたらしい。

 

「チィッ! ならば、麒麟星座の優斗が最大の拳!」

 

 両腕が描くは麒麟星座の星の軌跡、激しく燃え上がる小宇宙に呼応するかの如く煌めきを弥増す燐光。

 

 燐光は燐虹となり収束、増幅、圧縮を繰り返す。

 

「此処が正念場か……!」

 

 ユートの小宇宙が究極にまで高まる。

 

「輝光新星(ブリエ・エトワールノヴァ)!」

 

 嘗ては五燐でしかなかった燐光が、今や七燐ともなって銀河爆砕並の爆発力を発揮し、サーゼクスへ襲い掛かった。

 

 ある意味で銀河爆砕すら越えるエネルギーの奔流、それがサーゼクスを呑み込まんとする。

 

「これはっ!? くうっ、已むを得ないか!」

 

 ズガァァァァァンッ!

 

 大爆発によって一時的に視界を封じられ、ソッと目を開けてみるとグレイフィアが見たのは、全身を紅色に輝かせるサーゼクスと、双子座の黄金聖衣をボロボロにして倒れ伏すユートの姿であったという。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユートがゆっくりと閉じられていた瞼を開く。

 

「知らない天井だ……」

 

「ネタに走れるのでしたら大丈夫ですね」

 

「グレイフィア?」

 

「はい」

 

 ユートとしては、ネタが理解出来た事に吃驚だ。

 

 澄まし顔のグレイフィアに顔を向け……

 

「ひょっとしなくても敗けたみたいだね」

 

「その通りです。とはいっても、よもやサーゼクス様が真の姿を晒さなければ勝てない相手とは、ユート様も充分にお強いですよ」

 

「敗けた事に違いないよ」

 

 身体をベッドから起こしながら自嘲する。

 

「お茶でも如何ですか?」

 

「ありがと」

 

 冥界産の紅茶だろうか、味わいも香りも記憶に無いモノだが、割と美味しいと思えるから安物という訳ではなさそうだ。

 

 ユートが紅茶を飲む仕種を見ながら、グレイフィアが美しい銀糸の如く髪の毛を揺らして首を傾げた。

 

「何かな?」

 

「いえ、行き成り門兵を殴り飛ばす荒っぽさを見せるかと思えば、サーゼクス様を相手に高度な読み合いを繰り広げ、紅茶の飲み方はまるで王候貴族様に優雅。不思議なものですね」

 

「ふむ? 荒っぽさは双子の兄の影響、読み合いに関してはそのくらい出来ないと僕の敵は奸知に長けているからね。王候貴族の優雅さは……前世の記憶かな」

 

「前世……ですか?」

 

「うんそう、解る?」

 

「一応、概念くらいは」

 

「僕は死んでも記憶を引き継いで生まれ変わる。転生ってやつだね。前世では、これでも最終的に大公だったし、この程度には作法がなっていないと恥を掻く」

 

「な、成程……」

 

 今はメイドの格好だが、これでもルキフグス家という旧ルシファーに仕えた家の令嬢であり、今は元来ならグレモリー家に嫁いでいる夫人、作法などは当たり前に習熟しており、そこら辺は誰であれ厳しく躾る。

 

「これなら我が主の御実家に招かれても大丈夫です。一安心致しました」

 

「主の実家? サーゼクスのって事?」

 

「勿論で御座います」

 

「何でまた?」

 

「本来なら貴方を冥界へと連れてきた、セラフォルー様が面倒を見るべきなのでしょうが、サーゼクス様がすっかり貴方を気に入られまして、それでサーゼクス様が今宵はユート様を家に招きたい……と。魔王様方も御一緒という事でセラフォルー様にも我慢をして頂く事になりました」

 

「そう、判った。処でさ、聖衣と那古人は?」

 

「聖衣でしたら其処に」

 

 指差された方を見遣れば確かに、オブジェ携帯へと戻った双子座の黄金聖衣が鎮座していた。

 

「那古人様というのが貴方の中から出てきた少女の事でしたら、隣の御部屋で眠っておいでです」

 

「そっか……」

 

 ユートは思い出す。

 

 紅色に輝くサーゼクス、その攻撃を受ける瞬間……

 

『DQより抜粋、スカラ+スカラ……スカラルッ! テイルズから抜粋、バリアッ!』

 

 那古人がフル回転で魔法──といっても、魔力ではなく小宇宙を使用──を使って護ってくれていた。

 

 黄金聖衣の防御力も相俟って、サーゼクスの魔力を何とか防いだのだろう。

 

「(その結果が殆んど無傷の僕と、前面が消失している双子座聖衣……か)」

 

 神話の時代より、完全破壊された事が無いとされ、実際にハーデスとの聖戦でタナトスに砕かれるまで、多少は破壊されても完全に粉砕なんて無かったくらい高い防御を誇る黄金聖衣、それが前面だけとはいえど消失したのだ。

 

 サーゼクスの力は少なく見積もってもタナトス級、下手をすればそれを越えるのではなかろうか?

 

「兎に角、那古人を起こしてから聖衣を修復だね」

 

 この侭で双児宮に還して

しまうと、貴鬼が悲鳴を上げてしまいそうだ。

 

 寧ろ泣く、慟哭レベルに泣いてしまうであろう。

 

 取り敢えず、隣の部屋へ向かうと那古人を起こす。

 

「マスター」

 

「大丈夫か?」

 

「はい。申し訳ありませんマスター、私が不甲斐ないばかりに敗北を喫してしまいました……」

 

「そんな事はない。敗けたのは僕の未熟だ、那古人は精一杯のサポートをしてくれていたよ。ゴメンな? 無理させた」

 

「ん……」

 

 頭を撫でてソッと唇を重ねてやると、甘い吐息を漏らしながら受け容れた。

 

 頬を上気させながらも、目を閉じて口内に侵入してきたユートの舌に、自身の舌を積極的に絡ませる。

 

「うん、んん……っ!」

 

 幾ばくかの時間が過ぎ、タップリと堪能した二人は口が寂しいが、余り魔王達を待たせる訳にもいかず、唇を離す。

 

「ふわ……」

 

 トロンと蕩けた表情で、物足りなさそうにしながらベッドに座ると、那古人は書へと戻った。

 

「御苦労様」

 

 【ナコト写本ラテン語意訳】の表紙を撫で、脇に抱えながら自分が寝かされていた部屋に戻り、双子座の黄金聖衣を修復しておく。

 

 聖衣は一時的に聖衣石に仕舞い、魔王達が待ってるであろう部屋に向かった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 サーゼクスの邸に移動、グレモリー家の人々? に挨拶をする。

 

「初めまして、緒方優斗と云います」

 

「うむ、連絡は受けているよ緒方君。いや、ユート君と呼ばせて貰っても構わないかね?」

 

「これはグレモリー卿……光栄です」

 

「ハッハッハッ! 気軽におじさんとでも呼んでくれて構わんよ!」

 

 豪快に笑うグレモリー卿だが、流石にユートもそこまで不遜にはなれないし、苦笑いをした。

 

「アナタ、彼が面食らっていますわよ? ごめんなさいねユートさん……で宜しかったかしら。私はグレモリー家現当主の妻、ヴェネラナ・グレモリーですわ」

 

 にこやかに挨拶をしてきたのは、亜麻色の美しい髪の毛に翡翠の如く瞳を持つ少女と見紛うばかりの若さの女性だが、現当主の妻だというからにはそれなりの年齢なのだろう。

 

 尤も、悪魔の見た目など当てにはなりそうにない。

 

「初めまして、ミズ・グレモリー。ユートで構いませんよ」

 

 自身も見た目と実年齢にギャップがあり、特に気にせず挨拶を交わした。

 

 最後に控えるのは紅色の髪の毛を短くしている以外では、サーゼクスをミニチュア化すればこうなるという見本の様な少年。

 

「初めまして、ミリキャス・グレモリーと云います。サーゼクス・ルシファーの息子に当たります。宜しくお願いしますね? ユートさん」

 

 丁寧且つ礼儀正しい彼、ミリキャス・グレモリーがサーゼクスの息子……

 

 氏より育ちか、はたまた将来は〝ああ〟なるのか。

 

 是非とも今の侭の君で居て欲しいと、ユートが思っても罪ではあるまい。

 

「初めまして、ミリキャス・グレモリー殿」

 

「あ、あの! ミリキャスで結構ですので」

 

「じゃ、ミリキャスだね。宜しく」

 

「はい!」

 

 久し振りのお客様だったらしく、嬉しそうに笑顔を浮かべるミリキャス。

 

 その後は夕餉を呼ばれ、食後にはお茶を飲みながらお互いに情報を交換し合うかの如く話をした。

 

 明らかにまだ子供であるミリキャスには、面白おかしく冒険譚などを披露し、眠ってしまうまで話す。

 

 とてもきにいったのであろうか、ミリキャスからはいつの間にやら【兄様】と呼ばれていた。

 

 また、それに触発されてセラフォルーもユートの事を愛称(ニックネーム)で呼びたいと言い出す。

 

「愛称……ねぇ……」

 

「ダメぇ?」

 

 などと甘えた声で訊ねてくる魔王少女様。

 

「ダメとは言わないけど、愛称……エセルドレーダと再会した時に、ユウっていう愛称を付けられたけど」

 

「エセル……ドレーダ? それって女の子?」

 

「そうだけど? 那古人の原典(はは)に当たる」

 

 見た目には少女ではあるのだが、生きた永さは数百億もの死すらも死せる永劫なる刻。

 

 再会するまでには自分を満足させる技巧を身に付けなさいと言われ、どうにか及第点を頂いたと同時に、愛称も貰ったのだ。

 

「むう……なら私はユウ君って呼ぶね☆」

 

「別に構わないけど……」

 

 何故だか膨れっ面をしているセラフォルーに、溜息を吐きながら応じた。

 

 グレモリー卿とは政治・経済、更には領地経営などの話をしている。

 

 何しろユートも嘗ての昔は貴族であり、何も無かったハルケギニアに色々と、自分の居た世界のエンターテイメントを再現し、活気を与えていったくらいだ、グレモリー卿もこの話で獲るものは多い。

 

 冥界には何と言っても、娯楽が極端に少ない所為で活気が無かった。

 

 殆んど唯一だと云っても過言ではない娯楽、それがレーティングゲーム。

 

「レーティングゲームか。面白そうだね」

 

「ユウ君、レーティングゲームに興味津々ですか☆」

 

「まあね。命懸けの闘いを繰り返していたし、ゲーム感覚で闘うのも楽しめそうだよ」

 

「だったら私の所でチームを作らない?」

 

「おいおいセラフォルー、魔王はゲームに参加出来ないだろう」

 

 サーゼクスが苦笑する。

 

「そうなのか?」

 

「ああ、魔王は基本的には最強レベルの悪魔から選ばれるんだよ。そして【王】が強ければ眷属も強い者を得られるからね。例えば、最初は弱くて眷属に出来なかった者でも、王が強くなって眷属化が可能となる事も有り得るよ」

 

「成程……ね」

 

 サーゼクスから説明を受けたユートは納得するが、今度はセラフォルーの方が気になった。

 

 よもやルールを知らない訳でも、況してや魔王ともあろう存在がルールを無視はしないだろう。

 

「う〜ん、直接は確かに出られないけどね☆ 私が選んだ王が眷属を集めてね、セラフォルー・レヴアたんの擁するチームって事で、出場をするの☆」

 

「要するにセラフォルーがオーナーとなって、チームを別に作るって事?」

 

「うん☆」

 

 確かにそれなら魔王たるセラフォルーも、彼女が擁する眷属も出てはいない。

 

 ユートを王として、眷属を集めてからセラフォルーのチームという名目による出場なら、問題は出ないのだろう……ユートが人間でさえなければ。

 

「僕は悪魔じゃないしね、王は無理じゃないかな?」

 

「それなら試しに悪魔へと転生するかな?」

 

「──は?」

 

 アジュカが行き成りとんでもない事を言いだして、【悪魔の駒(イーヴィル・ピース)】を手にする。

 

「此処に【悪魔の駒(イーヴィル・ピース)】が在るんだし、悪魔に成ってみないか?」

 

「悪魔ねぇ、僕からすれば余りメリットが無いな」

 

「そうなのか?」

 

「明確に光という弱点が出来るし、誰かの眷属に収まると自由が利かなくなる。それに悪魔の寿命は一万年らしいけど、僕はそもそも初めから寿命が無いから。これもメリットにならないかな。身体能力は上がるかも知れないけど、僕の鬼札(ワイルド・カード)すら越える札は、光か闇のどちらかに偏重すると使えなくなってしまうだろうし、遠慮したい処だね」

 

 ハッキリ言うと、メリットがデメリットを越えず、悪魔に成る理由が全く見付けられない。

 

「そうか、残念だな」

 

 本気とも冗談とも付かぬ口調で、アジュカは苦笑いをしながら言った。

 

「という訳で、答えは保留かな? セラフォルー」

 

「む〜☆ 良い考えだと思ったのにぃ……」

 

「レーティングゲーム自体は面白そうだし、出来るのならやってみたいけどね」

 

 苦笑をしながら言う。

 

 レーティングゲーム……詳細を聞く限りでは単独で強くても必ず勝てる訳ではないし、王だけが勝っても評価は上がらないとか。

 

 中々に興味深い。

 

「ま、問題は悪魔の体質……いや、何処の世界であっても変わらない体質というべきかな? 他者を蔑み、自身を最良であると宣う。これだと人間がゲームへと参加するってのは難しいかもね。取り分け【王】としての参戦は」

 

「む、痛い処を突くね」

 

「例外は何処にでもある。問題なのは、その例外というのが窮めてマイノリティだって事だろう」

 

「元の世界でもあった事なのかい?」

 

「まあねぇ……」

 

 ユートは辟易した表情となり、これまでに見てきた事を思い出した。

 

 それを話すと、魔王達やグレモリー卿、ヴェネラナも困った表情となる。

 

「それでそういう事を言う輩が嫌いなんだね」

 

「実力が伴っているなら、まだ解らないでもないさ。だけど、今朝の門番なんて明らかに雑魚の癖に種族で実力を見誤るとか、有り得ないだろうに」

 

「雑魚って、あれでも彼は中級なんだけど……」

 

「え、あれで? てっきり只の雑兵かと思った」

 

「まあ、私を追い詰めたくらいだしね。君は少なくとも魔王級なんだろうから、中級悪魔では敵わないのだろうが……」

 

 基本的に上級悪魔とは、下からの叩き上げ以外では貴族である。

 

 故に、魔王が集う会議場の門番には中級が最大だとも云えた。

 

 決して雑兵という訳ではなかったが、今回は喧嘩を売った相手が悪かった。

 

「そういえば、あの力って何なんだ? グレモリー家はみんな『私はあと一回、変身出来る』みたいな切札(ジョーカー)を持っていたりする訳?」

 

 某・寒そうな名前を名乗る宇宙で最強(笑)の種族の如く。

 

「いやいや、あれは息子にしか備わっておらんよ」

 

 グレモリー卿が言う。

 

 つまり、ミリキャスにすら無い特殊な能力らしい。

 

「あれが何なのか、それは私自身にも理解は出来ないんだ。だけど、私に現状で対抗出来る悪魔はアジュカくらいしか居ない」

 

「そうだな、サーゼクスが暴発したら止められるのは私以外には居まい」

 

 其処はアジュカも肯定、セラフォルーとファルビウムも頷いている。

 

 その後も会談は続いて、VRMMO技術に関しての話に及んだ。

 

 ユートが修業の一環で、ヴァーチャル空間を応用する事により、様々なシチュエーションや敵を出して、仮想世界でリアルな闘いが出来て、それが娯楽に使えるというのに食い付いた。

 

 主にアジュカとグレモリー卿が……

 

 先のサーゼクスとの闘いに使った戦闘空間とも違う仮想世界、電脳空間というのは興味が沸いたらしい。

 

「どうだろうか? グレモリー領の一部をユート君に割譲するから、娯楽施設を我がグレモリー領に設置して貰えないかな?」

 

「領土を?」

 

「ユート君は領地経営にも明るいみたいだし。この様に無駄に広いというのに、我が領土はまるで活用されてはおらんからな」

 

 グレモリー卿が空中へとモニターを出す。

 

 マップが映し出されて、幾つか赤い部分が点在していた。

 

「赤い部分は既に手が入っているが、それ以外ならば何処でも上げよう。本来は私達は眷属に領土を割譲するのだが、君を手元に置けば色々とやってくれそうだからね。収入の何割かを、税金として納めて貰えればそれで構わないよ」

 

「はぁ。確かに領地経営は前世でやっていたから出来るけど……ではこの地を」

 

 ユートが指した部分は、グレモリー領とシトリー領の謂わば境界沿い。

 

「シトリーは確かセラフォルーの実家だよね?」

 

「そうだよ☆ そんでね、サーゼクスちゃんの妹であるリアスちゃんと私の妹のソーナちゃんは、幼馴染みで親友なの☆」

 

「私もシトリー卿とは仲良くさせて貰っている」

 

 セラフォルーがニコニコしながら言い、グレモリー卿も頷きながら言う。

 

 領土が隣り合いお互いに仲が良好な様だ。

 

「それは重畳だね。この地を開発したら可成りの盛況を見せる筈。やるなら徹底的にやりたいから」

 

 こうして遅くまで話し合いは続いていく。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユートがグレモリー家の邸に滞在して二週間。

 

 貰った領土に手を付けるには充分な時間だった。

 

 必要な土地を整地して、既に在るシステムを置くだけで済む。

 

 建築物に関しては、ハルケギニア系魔法の【錬金】を改良した【錬成】で全てを賄えるし、エンターテイメントパーク・フォンティーヌ開園の宣伝も確りとやっている。

 

 御試しという事と、折角だからという二重の意味で四大魔王+αを呼び実際に遊んでみて貰った処、あの冷静な面持ちなクールビューティのグレイフィアまで少し瞳を輝かせていた。

 

 特に子供であるミリキャスは若干、興奮気味に遊んでいたのはやはり冥界には娯楽が殆んど無いが故の、謂わば反動だろう。

 

「凄いよこれ☆ これならお金を掛けずに【魔法少女マジカル☆レヴィアたん】の撮影とか出来そう☆」

 

 ヴァーチャル・シチュエーション・クリエイト・システムを体験して、大燥ぎをするセラフォルー。

 

 ある意味では中二病患者にとって夢のシステムで、言ってみれば妄想を具現化して映像化するモノだ。

 

 敵もアイテムもヴァーチャル・シチュエーション・システム内に限られるが、好きに生み出す事が可能となっており、更には個人認証札を使って記録してしまえば、次回からもっと簡単に再現が出来てしまう。

 

 正に爆ぜろリアル! 弾けろシナプス! 的な。

 

 しかも、黒歴史(それ)の記録映像も作れるという、中二病には正しく妄想具現化システム。

 

 それこそ、【魔法少女マジカル☆レヴィアたん】だろうが、【魔法少女まどか☆マギカ】であろうが、【魔法少女リリカルなのは】であろうが自由自在に。

 

 他にも、ローグダンジョン的な【太っちょオジサンの大冒険】をVRMMO−RPGで行う筐体や、それこそレーティングゲームを仮想世界で行える筐体などが存在しており、レーティングゲームに関しての監修をアジュカに頼んだりもしていた。

 

 人型機動兵器に乗って、異星人と戦う【超機動兵器大戦】などは、サーゼクスが大喜びで遊んでいる。

 

 カスタマイズがオリジナルに比べて自由度が高く、まるで本物に乗っている様な気分にさせてくれた。

 

 ファルビウムはリラクゼーション・ルームで寝ていたが、それでも必要な部分は監修をしてくれている。

 

 また、手が足りない分は遍在(ユビキタス)や使徒の招喚、使徒ではないが知り合いなども呼び込んだ。

 

 財団法人【OGATA】が抱える技術開発部門……【超技術】のトップと技術開発顧問の二人を喚べたのは大きく、一気に領土開発も進んだものだった。

 

「ユート君」

 

「何? サーゼクス」

 

「このゲームなんだけど、【聖闘士星矢】というのはどんなものなんだい?」

 

「名前の通り自分が聖闘士となって進めていくゲームでね、青銅聖衣から好きな物を選んで銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)を勝ち抜くのが目的になる」

 

「銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)とは?」

 

「彼方側の世界のアテナ、城戸沙織が城戸光政の遺志を継いで開催した、聖闘士同士が闘う格闘大会だよ」

 

 尤も真の目的は、聖域の邪悪たるサガを白日の下に晒す為の囮だったが……

 

「うん? 選べない聖衣が有るのは何故だい?」

 

「天馬星座、アンドロメダ星座、白鳥星座、龍星座、鳳凰星座、大熊星座、一角獣星座、小獅子星座、海蛇星座、狼星座、カメレオン星座に関してはゲーム中のNPCとして登場するから選べないよ」

 

 ストーリーの進行上で、どうしてもこの十一人だけはNPCにする必要があったのだ。

 

「このゲームモードというのは?」

 

「要は難易度のセレクトが出来るんだ。最初に選べるのは、ベリィ・イージーとイージーとノーマルのみ。ベリィ・イージーの場合、敵の強さが十分の一程度。イージーで二分の一程度、ノーマルで通常の強さって事になる」

 

「ほう、ではノーマル以上となると?」

 

「ハードモード、敵の強さは五割増し。ベリィ・ハードモードで二倍、オーガーモードで五倍、無理ゲーモードで十倍になるよ」

 

「無理ゲーモード?」

 

「一番弱い青銅聖闘士だと動きがマッハ10、パワーや防御力なんかも有り得ないくらい強い」

 

「マッハ10だって?」

 

 サーゼクスやアジュカといった魔王や、最上級悪魔なら対処も可能だろうが、上級悪魔ではもう手が付けられなくなる。

 

「白銀聖闘士の最低速度がマッハ2、最高でマッハ5だからね。十倍ともなると最低速度でもマッハ20」

 

 何処ぞの触手先生の如く速度だった。

 

「その青銅とか白銀というのはいったい?」

 

「聖衣の階級。悪魔や天使や堕天使にも在るよね? 上級悪魔とか中級天使とか云うのが」

 

「な、成程……」

 

「聖闘士は雑兵を一番下に持っていけば、下級が青銅聖闘士で中級が白銀聖闘士で上級が黄金聖闘士という事になるけど、門番が確か中級悪魔だったっけか?」

 

「そうだね」

 

「残念だけどあれが中級だとしたら、一般的な中級には青銅聖闘士で充分に対処が可能だよ」

 

「う、む……そうかね?」

 

 何処にでもマイノリティな例外はあれど、ユートが殴った中級悪魔であれば、二軍青銅聖闘士の五人でも斃せるレベルだ。

 

「処で、白銀聖闘士というのは出てくるのかい?」

 

「ノーマルモードで銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)を勝ち抜けば、次には暗黒聖闘士が登場してくる【黄金聖衣争奪戦】に進む事が出来る。次の【聖域の刺客篇】に進めば白銀聖闘士が登場するよ」

 

「暗黒聖闘士とは?」

 

「悪魔にも【はぐれ悪魔】というのが居るそうだね、それと同じで、聖闘士としての表面的な破壊力しか身に付けられなかった者や、掟に従わない様な荒くれ者がドロップアウトをして、デスクイーン島に封印された暗黒聖衣を身に纏っているのが暗黒聖闘士」

 

「ふむ、そういう事かね」

 

 【はぐれ悪魔】は冥界でも問題となっており時折、主の元から逃げ出してしまう者が居る。

 

 とはいえ、そのはぐれは基本的にら無理矢理に眷属にされた者や、主に無茶を要求され続けたり虐待されたりした者だ。

 

 中には当然、自分勝手な者が【はぐれ悪魔】となるケースも多々ある。

 

 そんな【はぐれ悪魔】は三大勢力にとって危険という事で、どの勢力も討伐の対象としていた。

 

「暗黒聖衣には諸説様々にあってね、最後に造られた鳳凰星座の青銅聖衣と共にデスクイーン島で発見された事から、正規の聖衣を獲られなかった者が纏う影の聖衣というのや、インチキな紛い物だと云う説とか、色々とあるんだ。理由として暗黒聖衣は正規の聖衣と違って、神秘金属──流白銀、神鍛鋼、神金剛、銀星砂など──だけではなく、通常の金属も混ぜて量産性が上がっているんだ」

 

 その分、青銅聖衣に近い強度ながら脆い。

 

 だから量産型聖衣なのか紛い物なのか、どちらとも取れて判断に困るのだ。

 

「まあでも、正規の聖闘士は勿論の事、雑兵すら纏わなかったからねぇ」

 

 理由はどうあれ、暗黒を思わせる黒は好かれなかったらしく、纏う物好きは居なかった様だ。

 

 それこそ、はぐれ聖闘士だとでも云うべき連中が、自分達の象徴として纏うくらいである。

 

 サーゼクスは取り敢えずノーマルで……

 

「ふむ、巨嘴鳥星座にするかな」

 

 オブジェ形態はでっかい嘴の鳥で、余り格好良くはなかったりするが、装着をするとそれなりのモノ。

 

「まあ、なんだな。魔王が青銅聖闘士とか、そっちの方が無理ゲーだよね」

 

 若しもサーゼクスが銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)に参戦していたら、恐らくは目の前の状況になるだろう事は想像に難くないと、ユートは頭を押さえながら首を左右に振った。

 

 【銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)篇】を圧倒的な実力で終わらせてしまったサーゼクスは、次なる【黄金聖衣争奪戦】へと駒を進めている。

 

 通常モードのサーゼクスでも、黄金聖衣を纏って闘ったユートと互角な訳で、初期の星矢達では敵う筈もなかった。

 

 所詮はプログラムに過ぎないとはいえ、この分なら黄金聖闘士をも降してしまう勢いのサーゼクス。

 

「ミリキャスだと今はまだこうはいかないか」

 

 分類上は上級悪魔だが、その中でも下の実力でしかないミリキャスは、青銅は兎も角としても白銀聖闘士には勝てそうにない。

 

「滅びの魔力を当てさえすればいけるのかな?」

 

 これは流石に本物と戦ってみなければ判らないし、相性の問題もあるだろう。

 

「あ、一輝も殺られたか」

 

 ストーリーの問題から、別に死んではいない。

 

 直に闘ったから解るが、サーゼクスはタナトスをも凌ぐ戦闘力だ。

 

 真の姿とやらを晒したならば、冥王ハーデスとさえ闘えるかも知れない。

 

「そういや、この世界ではハーデスとかどんな感じなんだろう?」

 

「ハーデスがどうかしたのかい?」

 

「アジュカにファルビウムか……いや、僕の世界では既に斃してるけど、此方側でのハーデスってどういう感じかなとね」

 

 ユートの疑問に答えたのは意外にもファルビウム。

 

「ハーデスはこの世界でもトップテンに入る実力だ」

 

「トップテン? 十指に入るって事?」

 

「ああ。他の神話体系をも含めた全勢力から敢えて、最強の十人を決めたものがトップテンだよ」

 

 ファルビウムがズラリと名前を挙げる。

 

・無限の龍神オーフィス

 

・破壊神シヴァ

 

・調和神ヴィシュヌ

 

・創成神ブラフマー

 

・雷帝インドラ

 

・雷神トール

 

・神喰狼フェンリル

 

・冥府の王ハーデス

 

・太陽王アテン

 

・光神ルー

 

「インドラは帝釈天と名乗っているね。それと神喰狼の代わりにテュポーンという声もある」

 

「ってか、ヒンドゥー教の三神一体(トリムールティ)が全員かよ。しかも帝釈天もってさ、インドの神ってどんだけ?」

 

 恐るべし、インド神。

 

「然し、あれだけの力があってもサーゼクスがランクインしないのか。この世界って実は凄まじいのか?」

 

「ああ、いや。サーゼクスのあれを解放すれば普通にランクインするよ」

 

 アジュカが言う。

 

 そして本気のアジュカは真サーゼクスと互角。

 

 ユートが決して届かない世界ではなかった。

 

「やれやれ、取り敢えずは十二宮とやらまで進める事が出来たな」

 

「父様、凄いです!」

 

 ミリキャスに誉められ、ニコニコと上機嫌になっているサーゼクス。

 

「サーゼクス、何なら攻守逆転モードを試してみないかな?」

 

「うん? 攻守逆転?」

 

「海皇ポセイドンや冥王ハーデスになって、聖闘士と闘うモードだよ」

 

「ほう?」

 

 面白そうだと思ったのかキラキラと瞳を輝かせて、嬉々としてテストをする。

 

 神聖衣を纏う星矢達。

 

 サーゼクスは冥王の冥衣を纏い、そんな星矢達──ユートは除く──と闘い、苦戦をしながら何とかかんとか斃せた。

 

 サーゼクス曰く、単なるプログラムだから斃せただ

けであり、HPが無くなれば斃せるのでなければヤバかったとか。

 

 ゲーム故のルール、即ちHPが存在する。

 

 実際の闘いにはHPなど存在しないが為、生きてさえいれば幾らでも立ち上がって闘えるが、ゲームでは設定されたHPさえ0にしてしまえば終わりだ。

 

 サーゼクスはそのルールを適用しなければ、間違いなく敗けたという。

 

 現状でのサーゼクスは、ハーデスより強くない。

 

 タナトスやヒュプノスよりは強く、一撃で殺られたりはしなかったが……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 有意義な休日を過ごし、英気を養った魔王達。

 

 アジュカはユートの協力を得て色々とやれると喜んでおり、若しもセラフォルーのオファーを受けるのならば……否、受けなくとも有って困る事もないとし、特別な【悪魔の駒(イーヴィル・ピース)】を造って渡すと約束してくれた。

 

 悪魔に転生せず、駒の力──戦車なら力と防御が上がってキャスリング能力を持って、兵士ならプロモーション能力を獲るなど──だけを取り込めるらしい。

 

 編入の準備も整ったし、ユートと那古人は駒王学園への転校も恙無く済んだ。

 

 セラフォルーとの仲も、何故だか深まってユートもセラフォルーを愛称で呼ぶ事となった。

 

 そして……

 

「此処だな」

 

 ユートは学園近くの手頃な空地を紹介されて、其処へ次元航行艦船シャブラニグドゥを家代わりに降ろしておく。

 

 これで全ての準備が終わって、ユートと那古人の新しい学園生活が始まった。

 

 

.

 




 暗黒聖衣の解釈は独自の設定であり、決して公式ではありません。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。