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「こ、金色の御許だと?」
「お前も高位の存在なら、識っているだろう……」
「なにぃっ?」
「総ての悪夢を生み出せし存在、悪夢を統べる存在……金色なりし混沌の女王」
コカビエルは目を充血する程に見開き、驚愕を露わにしていた。
「貴様! 人間風情がそれを識るというのか? 彼の無限と夢幻の源流たる其の名、暁の名の最源流を!」
「無限と夢幻? 暁の名の源流ってのはルシファーの事か?」
ユートは識らない。
この世界に於ける最強っある存在──無限と夢幻の名前を冠する龍の存在を。
(成程な、混沌の仔か……初期能力値は人間の僕とは違って可成り高い生物を象る存在)
ならその力を借りた魔法を使えそうだ。
問題はユートが原作を識らないが故、詳しい情報が無いという事。
今のコカビエルから得た分ではまるで足りない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
フリードは統合をされた輝く聖剣エクスカリバーを揮って、更には暗黒ペルセウス座の聖衣で攻撃も防御も完璧。
木場もアーシアも攻め倦ねていた。
また、ケルベロスと戦っているリアスと小猫。
一誠は増幅と譲渡を以て仲間を護る。
「赤龍帝っ! 朱乃先輩に譲渡を!」
「お、応! ブーステッド・ギア、ギフト!」
《Transfer!》
譲渡により魔力が引き上げられ、朱乃は魔力を集中して魔法を放つ。
「天雷よ、鳴り響け!」
その照準はケルベロスへと向けられて、高圧電流が雷撃となって降り注ぐ。
「赤龍帝、朱乃先輩の魔力回復に絞って譲渡!」
「えーっ? そんなの出来るのか?」
ピンポイントで能力を引き上げる譲渡、全身を上げるのとは違い精緻なコントロールを要するであろう。
「良いから、さっさとやれ赤龍帝!」
「は、はい!」
ユーキの怒鳴り声にビビった一誠は、新たに増幅をした力を朱乃に譲渡する。
《Transfer!》
「まあ、魔力が回復しましたわ!」
「神器(セイクリッド・ギア)の力は、使い手の想いとイメージ次第。ならば、ピンポイントで引き上げたい能力に限定し、魔力回復も可能な筈!」
それがユーキの考え。
原典知識から読み取り、考えた
再び朱乃は雷撃を放つ。
流石のケルベロスも連続で強力な雷撃受け、生命力が著しく低下していた。
「
聖衣石が輝きを放つと、鳳凰星座が頭上に顕れ灼熱の如き輝きを放つ不死鳥のオブジェが現界、更に分解してその肉体を鎧う。
女性型に造られた聖衣、いつの間にやらレオタード姿となったユーキの躰に、似合い過ぎる程にピッタリとフィットしていた。
「滅べ、ケルベロスっ! 天爆鳳翼翔!」
熱風が放たれケルベロスは身動きも取れずに吹き飛ばされ、更にはその全身を大爆発が襲う。
ケルベロスは悲鳴すら掻き消されて、肉片すらも遺さずに消滅してしまった。
「所詮は只の犬っころさ」
ユーキは何でもないかの様な表情で踵を返す。
単に熱風を放つ鳳翼天翔と異なり、最後に爆発を起こす天爆鳳翼翔。
爆発の規模は正にユーキの意志次第である。
ケルベロスは片付くが、未だに木場とアーシアの戦いは続いていた。
アーシアの
最初の譲渡で木場の能力は上がってスピードも更に
引き上げられてはいるが、統合されたエクスカリバーは統合した聖剣の力を全て持ち、【
幸運だったのはフリードがこんな超高速戦闘に慣れてはおらず、瞬間的に速度を上げるだけでしかないという事。
そこを突けば決して敵わない相手ではないのだ。
とはいえメデューサの盾もあるから、此方も下手に動けないのは確か。
「グキャキャキャキャ! うらぁぁ、死ねや!」
「くっ、速い!」
振り下ろされたエクスカリバーを紙一重で躱すが、木場は足を取られて体勢を崩してしまう。
「しまっ!」
「木場さん! 危ない!」
横薙ぎ一閃、振られる刃の先には木場の首……
アーシアの援護も間に合わないタイミング。
「幾らてめえが光や聖なる力に耐性を得てようが関係ねえ! 素っ首、叩き落としてやらぁ! 【
「くっ! ゴメン皆、仇は取れなかった……っっ!」
目を閉じる事も出来ず、木場は最後まで懸命に足掻こうとするも、最早どうにもなりそうにない。
「木場ぁぁぁぁっ!」
「祐斗!」
「祐斗君!」
「祐斗先輩!」
一誠が、リアスが、朱乃や小猫が叫ぶ。
だけど無情にもフリードのエクスカリバーは、木場祐斗の首を断ち切らんとして当たってしまう。
ポヨンッ!
「へ?」
間抜けな声を上げる。
フリードは思い切り振り抜いた筈であった。
どれ程に聖なる力の耐性があろうとも、金属の刃である事に変わりはない。
「アーハッハッハッハッハッハッハッハ!」
コカビエルと戦っている筈のユートが笑う。
「貴様、何をした!?」
バルパー・ガリレイは、その様子からユートが何やら細工をした事に気付く。
「ゼノヴィアは上手くやってくれたな」
「勿論だ!」
ショートカットの青髪に緑色メッシュな美少女が、満を持してとばかりに塀の上へと立っている。
「よく聞け、バルパー・ガリレイ。お前がまんまと奪った【
シーン……
戦闘が中断されて校庭内を静寂が包み込む。
アーホー、アーホー!
夜中にも拘わらず何故かアホウドリが飛んでいた。
そして一誠が静寂を破り裂いて叫ぶ。
「そうだよ! 確か【
「な、何だと!?」
その言葉に驚愕するバルパー・ガリレイ。
そう、既に【
一誠は四本目の聖剣の銘を聞いて、違和感を感じていたがこれだったのだ。
「プークススッ、元より持っていたエクスカリパーをそれっぽく形を整えただけの偽物、それが【
してやったりと、ユートは込み上げる笑いを堪え切れずに噴き出す。
全員、開いた口が塞がらないとはこの事だ。
「待てっ! だとすると、この魔法陣は?」
「フム、偽物が混じっていたからな。不具合を起こしているんじゃないか?」
バルパーの疑問にアッサリとゼノヴィアが答える。
現在、校庭には街を吹き飛ばす魔方陣が敷かれていた訳だが、それは全ての聖剣を統合した前提で展開していた。
だが若しもその中に偽物が混じっていたら?
モノに依るのだろうが、それはプログラムを侵してしまうウイルスと同義。
少なくとも、プログラムが間違いでは正しく動く事も無いだろう。
「さあ、バルパー・ガリレイにフリード・セルゼン。懺悔の時間だ! ぺテロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ……」
ゼノヴィアが言霊を以て聖句を唱えると、すぐ横の空間が歪んでいく。
歪みの中心に手を入れ、無造作に探るゼノヴィアが一気に引き抜くと、聖なるオーラを放つ剣がその手に握られていた。
「この刃に宿りしセイントの御名に於いて、我は解放する――デュランダル!」
「デュランダルだと!?」
「貴様、エクスカリバーの使い手ではなかったのか」
バルパー・ガリレイだけではなく、コカビエルさえも驚きに叫ぶ。
「私は元々、デュランダルの使い手さ。エクスカリバーに関しては兼任していたに過ぎない!」
「そうか、緒方君がエクスカリバーを喪っても平気みたいに言っていたのは?」
「そうだよ、木場祐斗……正直、驚いた。彼はこいつの存在に気付いていたんだからね」
ユートは同じ様な空間を持っているし、何より双子座の聖闘士は空間使い。
ほんの僅かにも漏れ出ていれば、それで充分に気付く事も可能なのだ。
「チィッ! 此処にきての超展開だと? 要らねえんだよ、そんなクソゲーみたいなモンは!」
フリードがエクスカリバーを【
ガキィィィンッ!
金属同士のぶつかり合う音が夜の闇に響き渡る。
デュランダルを盾代わりに防いだのだ。
「気を付けろよ、私も使い熟せている訳ではない!」
防いだ状態の侭でデュランダルを振り下ろす。
斬撃は衝撃波を生じて、傍に居たフリードを吹き飛ばしただけでなく、すぐ近くのバルパー・ガリレイにまで届いていた。
「うおっ!」
距離故に避けたが、懐が切れて中から何かが転がり落ちる。
聖なるオーラを放つ球体……そいつは木場の傍に、まるで意志を持つかの如く転がってきた。
「これは?」
首を傾げ拾い上げる。
「ふん、そいつは聖剣を扱う為の因子よ」
「因子……だと?」
バルパー・ガリレイは、詠う様に朗々と語る。
聖剣をこよなく愛してたバルパー・ガリレイだが、彼には聖剣を扱う為の適正が無かった。
それに絶望したが自らが聖剣の研究を始める。
そして聖剣を使う為には因子が必要であると判り、その因子を集める事によって研究は完成に至った。
木場を含む子供達を犠牲にして……。
木場はバルパーへの憎悪に身を焦がす。
こんな巫山戯た理由で、同士達は殺されたのかと。
「お前は、そんな事で僕らを殺したのか!」
「うん? そうか、貴様はあの時の実験体。そうだ、お前が今持っているし球体はその時のモノだ。三つ程フリード達に使ったがね。ソイツは最後の一つだ」
「ヒャハハハハッ! 俺以外の奴らは途中で因子に躰がついていけなくなって、死んじまったけどなぁ! そう考えると俺様ってさ、スペシャルだよねぇ」
憎まれっ子世に憚るとは正にこの事だ。
「バルパー・ガリレイ……自分の研究、自分の欲望の為に、どれだけの命を弄んだんだ!」
「ふん、それだけ言うのならその因子はくれてやる。設備さえ整えば量産するなで容易いからな」
「やらせると思う?」
「む?」
「お前は此処で死ぬんだ。これ以上は、お前のエゴで犠牲を出させないよ!」
「ユーキちゃん……」
木場の前に立ったのは灼熱の鎧──鳳凰星座の聖衣を纏うユーキ。
「木場先輩、いつまでも憎しみに囚われるな……なんて綺麗事は言わないけど、今はせめて同士達の声を聴いてあげて!」
「っ! そうだね……」
聖歌が聞こえる。
因子から解放された子供達の魂が、木場に優しく語り掛けてきた。
《相棒》
ドライグが一誠に話し掛ける。
《あの騎士は至った……》
ドライグは言う。
だが
所有者の想いや願いが、この世に漂う流れに逆らう程の劇的な転じ方をした時……
《神器(セイクリッド・ギア)は至る。それこそが禁手(バランス・ブレイカー)だ!》
みんなが贈ってくれる。
祝福の
一誠が、リアスが、朱乃と小猫が……
それは幸運の追い風となって木場を強く支える。
だが
「――僕は剣になる!」
同士達の魂が、意志が、因子と共に一つとなる。
木場の魂と溶け合って、今こそ聖なる力と魔の力は大いなる祝福と共に一つの形を成した。
「部長の、そして仲間達の剣となる! 今こそ僕の想いに応えてくれ、【
光と闇――聖と魔――
融合したそれは即ち……
「――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「今回は“至らなかった”みたいだね。まあ、仕方がないのかな」
ユートは木場の方を見遣りながら呟く。
そう、仕方ないだろう。
今回はどう考えて様と、木場とその同士達の独壇場だった。
ならば至るのは木場祐斗の象徴ともいえる【
「さてと……流れは完全に此方に向いている訳だが、降伏すればアザゼルからの永久冷凍刑で済むぞ?」
無駄と知りつつ一応は訊いてみた。
「巫山戯るな! 元より奴など当てにはしておらん! 始めから俺だけでもやれたのだ!」
「ならやはり、金色の御許へと還すまでだね」
「出来る心算か? 堕天使は疎か、天使でも悪魔でもない只の人間が!」
「聖闘士を舐めるなよ? これでも彼方側では神々とさえ闘っているんだ!」
この瞬間も互いに攻撃を行っている。
コカビエルは闇に光る槍を投擲して、ユートはそれを躱しつつもその拳を揮っていた。
「那古人!」
《イエス、マスター。書内の魔法から検索、ドラゴンクエストより抜粋。合体魔法スピオキルトを使用!》
ユートの身体に魔法の光が宿る。
「流星拳!」
「なにい? 先程より更に速く強いだと!?」
物質としては流石に光速が限界だが、これで少し光を越えた。
とはいえ、小宇宙で保護されている身体も光を越えてしまうと壊れかねない。
黄金聖衣とスピオキルトによる保護で、何とかダメージを緩和しているのだ。
飽く迄も最高速で闘っていればの話だが……
合体魔法はロト紋に登場した賢王の必殺技であり、【スピオキルト】は補助魔法のバイキルト、スカラ、ピオリムを合体して倍化したものだ。
ユートは【ナコト写本ラテン語意訳】をマスターテリオンとエセルドレーダから与えられた後に、何度かこの中身を編纂している。
その際幾つかのシリーズから魔法を入れてある。
前回の世界は元よりDQやFF、ウィザードリィやメガテンなどもだ。
これらはユートが使うというより、那古人がサポートで使用している。
《ドラゴンクエストより抜粋……リベホイミを使用》
肉体の損傷を徐々に癒してくれる呪文だ。
先程から受けていた掠り傷が消えていく。
《ドラゴンクエストより抜粋、火炎呪文メラゾーマと極大閃熱呪文ベギラゴン……合体、閃熱大炎メゾラゴンを使用》
ユートの攻撃とは別に、巨大な炎熱のエネルギーがユートの頭上に顕れ、辺りを焦がしながらコカビエルへと放たれ……
「お、おぉぉぉぉっ!」
膨大且つ巨大な炎熱に呑まれてしまった。
コカビエルに対して合体呪文攻勢は更に続く。
《ドラゴンクエストより抜粋、真空呪文バギクロスと極大閃熱呪文ベギラゴンを合体……真空熱波ベギラロスを発動!》
賢王ポロンが半覚醒した際に使用した、バギとギラを合体させた呪文のバギラと同じくその上級呪文であるバギクロスとベギラゴンで使った魔法だ。
その力は鳳翼天翔に近くコカビエルを真空で斬り裂きながら、傷口に閃熱エネルギーを摩り込む。
「ぐがぁぁぁああっ!」
流石のコカビエルも防ぎ切れずに喰らっていた。
チリチリと肉が焼ける音が響き、臭いが漂う。
ユートはユーキに念話を送る。
「ユーキ、無限と夢幻……どちらかの情報をくれ!」
〔良いけど、どうする心算なのさ?〕
「そのどちらかの力を借りた呪文を構築し、奴にぶつけてやる!」
〔ハハ、面白いね。とはいってもボクも詳しくは知らない。ある程度しか教えられないよ?〕
「構わない!」
スレイヤーズの黒魔術式で存在力に干渉し、そこから力を借り受ける魔法な訳だが、多少の手違いがあっても不完全ながら発動するのは重破斬などで実証されており、だから簡易的にでも知識を得れば魔法として使うくらいは可能。
これでも【魔法に対する親和性】は伊達ではない。
話を聞いてニヤリと口角を吊り上げ、ユーキは愛しい兄に伝えた──夢幻なる真龍の、D×Dの情報を。
〔夢幻を冠する龍、それは
「充分だ!」
取り敢えずグレートレッドの情報を得ると、ユートは呪文の構築を始める……コカビエルと闘いながら。
それを
「おのれ、会話をしながらこの俺と戦うだと? 人間如きが舐めるなぁあっ!」
怒りに駆られコカビエルは光の槍を投擲するが……
ガシィッ!
「こんなもんか?」
片手で受け止めた。
バキン!
その侭エネルギーが解放される前に砕き散らす。
「ば、か……な!?」
「そっちこそ、黄金聖衣を舐めないで貰いたいよね。これでも聖戦に於いて先の大戦で死の神タナトスから粉微塵に破壊されるまで、完全破壊をされた事がない……その防御力をっ!」
言い終わると同時に駆けて拳を構える。
「喰らえ、ペガサス流星拳っっ!」
その名前の如く数百……もの否、数千万発もの拳が流星の様にコカビエルへと殺到して貫いていく。
「ぐ、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおっっ!?」
一瞬、ほんの一瞬だ。
ユートがセブンセンシズを越え、更なる一歩を進める時間は。
だが、その一瞬……刹那の刻を全て攻撃に回す。
防御するコカビエルの懐に飛び込み、今度はアッパーを放った。
「はぁぁぁぁぁぁああ…………廬山昇龍覇!」
「がはぁぁぁぁぁっ!」
廬山の大瀧すら逆流させる威力の拳に吹き飛ぶ。
コカビエルが上空に吹き飛んだのに併せて、ユート自身も同じ高さまでジャンプすると、両脇を取り羽交い締めにして全身で高速回転を加えて頭から落とす。
「連撃、ペガサスローリングクラッシュッ!」
相当の高さからスピンをしながら落とした為にか、固い地面は正しく凶器と化していた。
「ガバハァァアアッ!」
ユートの構築したコンボが炸裂し、然しも聖書にすら名前が載るコカビエルとはいえどダメージは必至。
致命傷ではないが、脳天を揺さぶられぐらついた。
「い! ま! だっっ!」
ユートは透かさず混沌言語を唱えた。
其は狭間を揺蕩う赫き龍
龍の中の龍にして頂を臨む真なる神帝
混沌より生じる夢幻の王
汝、黙示録の真龍よ
其の力以て赫き吐息にて我らが敵を滅ぼさん
混沌言語に反応して周囲の力が収束されていく。
「さあ、夢幻の力で集まるが良い……星霊達よ!」
収束されゆく力はまるで夜の天空を彩る夜の星々、天球儀の如く煌めきを放っていた。
「な、何だこれは!?」
「黙示録の一撃を受けろ、コカビエル!」
「や、やめっ!」
流石に慌てたか、カラスの様な十枚の翼をはためかせて離脱を試みる。
「逃がさん、
【力在る言葉】に反応をした術式が発動。
コカビエルを押し潰さんとするべく、天球儀と化した莫大な力が墜ちてきた。
「ぉ、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおっっ!」
逃げ切れず、コカビエルは押し潰されまいと両腕を広げて堪えようとする。
それを見ていたユーキは何と無く思う。
(まるで元○玉に潰され掛けるフ○ーザみたいだ)
「こんなモノ、こ・ん・な・モノォォォォォォォォォォオオオッッ!」
ズドォォォォォォォォォォォォォンッッッ!
「ギィィィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアッッッッ!」
全開状態でのコカビエルなら未だしも、ユートとの戦闘での疲労やダメージが重なっていては、受け止め切れずに潰された。
「那古人、サーチを」
「イエス、マスター」
那古人が天球黙示録炮が墜ちた辺りをサーチする。
《コカビエルの生命反応を確認しました。ゲーム風に例えると、HPは七〇%減でしょうか》
「僕は?」
《凡そですが、ニ〇%減といった処です》
まあ、元々のHPの幅を考えればそれでもコカビエルの方が高い。
飽く迄もこれがゲームならば……だが。
「うん? さっきから誰だこの闘氣は……」
コカビエルとの闘い中盤からだろうか、ユートに対して突き刺すが如く闘氣がぶつけられていた。
殺気は感じないから放置してきたが、鬱陶しい事には変わりない。
「まあ良い、コカビエルを殺るぞ那古人!」
《イエス、マスター》
いまだに土煙が酷いが、そろそろコカビエルがその姿を現した。
「ぐ、うう……」
最早、纏う黒いローブも肉体もズタボロだ。
「何故だ、この俺が……」
「人間を、他種族を舐めすぎてるからそうなる」
「き、きぃぃさまっ!」
嘲笑うユートに対して、憎しみを以て睨んでくる。
「お前にも勝機はあった。僕がユニゾンしたり聖衣を纏ったりする前に、全力で闘っていれば生身の僕に、大きなダメージを与える事も出来たろうからね」
「ぐっ!」
「にしても、酷い様だな? “人間風情”にこ〜んなダメージを喰らっていて、実際に戦争が起きたら間違いなく殺されてるだろう、よくそれで『戦争をしよう』なんて言えたものだね」
「ぐっ、ぐぐう……!」
コカビエルは何も言えず唸るしか無い。
「若しかして、次に戦争をすれば勝てるとか思い上がってた口か? 脆弱な人間にそこまでダメージを与えられておいて? 戦争好きとか言われていても負け戦をしたがる莫迦も居まい。それとも自殺願望があったのかねぇ? クスクス」
「きっ、貴様ぁぁぁっ!」
巨大なる光の槍を一瞬で顕現させ、投擲するべく振り上げた。
「遅いっ!
斬っ!
「がっ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!」
ユートの鋭い手刀によりコカビエルの右腕は断ち斬られ、ボトリと落ちた右腕は灰となって消滅する。
「腕ぇぇぇぇぇ! お、俺の腕をぉぉぉおお……!」
「黄金聖闘士・
「エ、エクスカリバー……だと?」
「今回の騒動の一端には、エクスカリバーがあるから皮肉ってみたんだよ」
ジャリ……ユートが一歩を踏み出す。
「く、来るな!」
「どうした? 闘いはまだ終わっていない。ハハハ、戦争をしようコカビエル」
「あ、ぐっ!」
それはつい先頃リアスに自分自身が言った言葉で、まさかのブーメランとなって返ってきた。
他人に言った言葉が自分に返ってきた時の屈辱は、半端なものではない。
「お、俺を殺せば堕天使と悪魔の間で本当に戦争が起きるぞ! それでも良いというのかっ!?」
「その心配は要らないな。アザゼルからお前の処分の許可は取っているんでね」
「なっ!? 何だとぉぉ! おのれぇぇ! おのれ、アァァァザァァァゼェェルゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」
「戦争は経済効果の為か、或いは完全な殲滅の為に行われるもの。コカビエル、お前との闘いはどちらかの全滅でしか、決着は有り得ない。だから今こそお前は金色の御許へと還れ!」
「や、やめろぉぉぉっ!」
十枚の翼を拡げて空へと上がろうとするが……
斬っ!
片側の五枚の翼が
「ガハッ!」
「お前の望んだ戦争だろ? 最後まで楽しめよな」
「ち、違う……違うっ!’俺がぁ……俺が望んだのはこんなぁぁ、こんな結末じゃあ……」
「さあ、銀河の星々が砕け散る様を見るが良い!」
ユートは両腕を頭上高く掲げて、十字に組み小宇宙を集中していく。
コカビエルは今、ユートの周囲に煌めく宇宙の星々を幻視しているだろう。
「双子座の最大の奥義……
「ウギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
打ち合わされた両腕から最大限に圧縮された小宇宙が一気に解放され、星々をも砕く力の奔流となって、コカビエルを呑み込んだ。
無傷なら兎も角、酷い傷を負ったコカビエルは
「くっ!」
《マスター!》
「流石に堕天使の幹部だ、言う程には容易くないね。面倒だったけど封印、解けば良かったかな?」
この闘いは決して楽勝だった訳ではなく、肉体的、精神的に疲労が激しい。
「あっちも終わったか?」
どうやら一誠達の戦闘も終わったらしく、彼方も静かになっている。
ユートはコカビエルが居た場所を、一瞬だけ見つめてから重たい身体を引き摺りながら皆と合流するべく歩き出した。
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