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「彼女は存在していたわ。まあ、念入りに自分が貴方の周囲に居た証拠を、消した様だけど」
リアスが指をパチンと鳴らすと直ぐに朱乃が写真を一枚、懐から取り出す。
その写真に写っていたのは明らかに天野夕麻。
「その子よね? 天野夕麻ちゃんって」
前に携帯電話で写したものですら消えていたのに、これにはハッキリと写っている上、背中にまるで烏の如く漆黒の翼が有った。
「やっぱり堕天使か」
「ええ、これは堕天使……イッセーを襲ったモノと、同質の存在よ」
一誠は信じられないという表情で、天野夕麻が写った写真をガン見する。
だが思い返せばあの時の天野夕麻にも、確かに写真と同じく漆黒の翼が生えていたのだ。
「この堕天使はある目的から貴方に接触し、目的を果たしたから貴方を殺して、周囲から自身の記憶と記録を消したのよ」
「目的……ですか?」
「そう、貴方を殺す事」
「っ!? な、何で俺が……そんな!」
一誠は余りにも理不尽な理由を聴いて、つい語気を荒げてしまう。
「落ち着きなよ、一誠」
「これが落ち着いてられるかよ! どうして俺が殺されなきゃならないんだ?」
「よく判らないけど、神器(セイクリッド・ギア)と呼ばれるモノを一誠がその身に宿しているかららしい」
「神器(セイクリッド・ギア)?」
「多分運が無かったのでしょうね、殺されない所持者も居る訳だし」
「運が無いって……」
だが、はたと気付く。
自分はこうして生きているのに、何故か死んだ事を前提で話している事に。
自分は生きている。
そもそも、生命を狙われる謂われも無い、神記(セイクリッド・ギア)なんて聞いた事も無いのだ。
「けど俺、今も生きてるっスよ? 大体、神器(セイクリッド・ギア)って何なんですか?」
「神器(セイクリッド・ギア)とは、特定の人間に宿る規格外の力。例えば歴史上に残る人物の多くが神器(セイクリッド・ギア)の所有者だと言われてるんだ」
「現在でも躰に神器(セイクリッド・ギア)を宿す人は居るのよ。世界的に活躍する方々がいらっしゃるでしょう? あの方々の多くも躰に神器(セイクリッド・ギア)を有しているの」
木場と朱乃が懇切丁寧に説明してくれる。
「ふむ、つまりは一誠にも神器(セイクリッド・ギア)が宿っていて、その中身が堕天使にとって危険なモノと判断された訳だ?」
「ユウの言う通りよ」
リアスが肯定した。
身勝手な理由、理不尽な動機で殺されたという一誠は可成り落ち込んだ。
だが、確かに夕麻は似た様な事を言っていた。
「イッセー、腕を上に翳してちょうだい」
「は?」
「良いから早く」
急かされ、一誠は左腕を上に挙げる。
「目を閉じて、貴方の中で一番強いと感じる何かを心の中で想像してみて」
「い、一番強い存在……? ド、ドラグ・ソボールの空孫悟かな……」
「(な、何だそりゃあ? この世界でのDBみたいなものか?)」
ユートはそのタイトルを聴いて思わず唖然となる。
「では、それを想像して、その人物が一番強く見える姿を思い浮かべるのよ」
「…………」
一誠は目を閉じて言われるが侭に、何かを思い浮かべ始めた。
「ゆっくりと腕を下げて、その場で立ち上がって……そして、その人物の一番強く見える姿を真似るのよ。強く、軽くじゃダメ!」
即ち、いい年してアニメの真似っこをしろと云う事なのだろうが、ユート的にはアリだと思う。
何しろ基本的にユートの使う技にしろ武装にしろ、真似っこなのだから。
オリジナルも存在してはいるのだが、やはり模倣したモノが圧倒的に多い。
「ドォォォラァァァゴォォォン…………波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
両手首の付け根同士を合わせて、掌を開いた状態で両腕を突き出すポーズ。
勿論、闘氣を操る術を持たない一誠が何かを出せる筈もなく、恥ずかしさの余り頭を抱え見悶えていた。
だが然しよくよく見てみれば、一誠の左腕には赤い籠手が顕現している。
「一誠、目を開けてよく見てご覧なさい」
「へ? って、うぉぉぉぉぉぉぉっ! 何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
リアスに促されて、一誠が目を開けると左腕に何故か装着されている籠手……これで驚かない筈もない。
籠手本体は、割と凝った装飾が施されて手の甲には翠色の宝玉。
「それが貴方の神器(セイクリッド・ギア)よ。一度でも発動が出来れば、後は自分の意志でいつでも発現可能な筈」
「これが……」
「貴方はその神器(セイクリッド・ギア)を危険視されて、堕天使──天野夕麻に殺されたの」
その後、リアスは殺された筈の一誠が今も生きている理由について教える。
堕天使の光の槍に貫かれ瀕死の重症を負った一誠、その朦朧とした意識の中でリアスを喚んだ。
一誠が繁華街で受け取っていたチラシ。
これには『あなたの願いを叶えます!』と謳い文句がある。
チラシには魔方陣が描かれており、その図形は部室に描かれているモノと同じであった。
リアス曰くこのチラシは街で配っている召喚陣で、人間はこれを使ってリアス達を喚び出すらしい。
死の間際、チラシに一誠は強く願いを籠めた。
本来なら朱乃達、眷族を喚び出す筈だったのだが、願いの強さがリアス本人を喚んだらしい。
元々目を付けていたが、一誠が死に間際であったが故に、それと判る程に力を視る事が出来た。
だからこそリアスは一誠の生命を救う事を選んだ。
自らの眷族悪魔として。
リアスは背中から漆黒の蝙蝠の如く羽根を出す。
それに倣う様に、木場、朱乃、小猫の3人も一斉にリアスと同じ漆黒の羽根を展開した。
それに触発されたのだろうか? 一誠の背中にまで羽根が展開される。
当たり前の事だがユートと那古人は悪魔ではない、だから羽根など出さない。
「改めて紹介するわね」
リアスが言うと、木場がスマイルを浮かべながら、自己紹介を始める。
「僕は木場祐斗。兵藤一誠君や緒方優斗君と同じく、二年生。えーと、僕も悪魔です。宜しく」
「……一年生。……搭城小猫と言います。宜しくお願いします。……悪魔です」
小さく頭を下げる小猫。
「私は三年生、姫島朱乃ですわ。一応、研究部の副部長も兼任しておりますの。今後とも宜しくお願いしますね。こう見えても悪魔ですわ。うふふ」
礼儀正しく深々と頭を下げて挨拶する朱乃。
「そして、私が彼らの主であり悪魔でもある、グレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵……宜しくね、イッセー」
最後に、紅い髪の毛を揺らしながら堂々と名乗る。
「あれ? 優斗と那古人ちゃんは?」
「僕と那古人は一応、このオカルト研究部に所属しているけど、悪魔って訳じゃないからね」
「そうなんだ……」
「ま、一応は自己紹介させて貰おうか。二年生、緒方優斗。人間のカテゴリーにギリギリ入る……かな?」
実際は人間とも言えないかもだが、肉体的に見れば確かに人間……の筈。
「正確には、ユート・S・オガタかな」
「Sって何だよ?」
「諸般の事情で訊くな」
「……?」
プイッと視線を逸らされ意味が解らず首を傾げる。
「私は一年生、搭城小猫のクラスメイト。緒方那古人と云います。悪魔でも人間でもありませんが」
「へ?」
「私は精霊に当たります」
「精霊? まあ、悪魔が居るなら精霊が居てもおかしくはないのかな?」
リアス達も初耳だった、とはいえ初めから那古人が人間ではないというのも、また判っていたし特に驚きはしない。
小猫に到っては、ページが人型を執るのを目撃しているのだから。
一誠は思う。
どうやら自分は、とんでもない状況に放り込まれてしまったらしい……と。
自己紹介も終わって再び口を開くリアス。
「さて、ユウ。折角だし訊きたい事があるわ」
【ユウ】とは、ユートの愛称であり、嘗て再会したとある人物から貰った大切な名前だ。
このオカルト研究部にはユウトという名前の者が居る為、紛らわしいしユートも祐斗も互いに呼び難い。
そこで、ユートは自分の事は【ユウ】と呼ぶように言ったのだ。
それ以来リアスはユウ、朱乃はユウ君、木場は苗字で緒方君、小猫はユウ先輩と呼んでいた。
因みに、ユートはリアスをリアス部長、朱乃を朱乃先輩、木場を木場、小猫を小猫と呼んでいる。
どうでも良いが、那古人はユートをマスターと呼ぶかお兄様と呼ぶが、リアス達の事は基本的にフルネームを呼び捨てにしていた。
閑話休題……
「訊きたい事?」
「ええ。貴方、堕天使を始末したって言ってたけど、どんな感じだった?」
一誠を殺そうとしていたスーツ姿の堕天使、ユートからしたらアレは雑魚でしかなかった。
恐らく二軍の青銅聖闘士である邪武達でも、易々と討ち斃せる程度の存在。
「弱かったよ。真逆、あの程度の力で人間を下賤だの下級だの言うなんてさぁ、身の程知らずにもよく吹けたよね」
「そう、下級堕天使ね」
「だろうね。リアス部長の方が力も強いしさ、あれが上級なら流石に酷いよ」
まあ大概はそうで、他人を戦う前から下級とか下賤と呼ぶ者は、負けフラグを踏んでいる。
特に敵が組織立って動いていた場合、最初に出て来ると負けてしまい、仲間に言われる事になるのだ。
『奴は我らの中でも最弱だからな』
古式床しい様式美というやつである。
本当に強いのならばまだ良い、だがあの名も知らぬ堕天使は明らかに弱い。
「あれだね、自分より弱い相手でなけりゃ威張れない小者臭タップリの雑魚……種族的な差別なんて愚かでしかないのにさ」
実際、命乞いをしそうな勢いだった。
「生身の僕が軽く捻れた。僕は聖衣さえ纏わなかったのに。Yigの分体の方がよっぽど強かったね」
「そう……だとすればこの地に来てるのは、上層部の許可を得た者じゃないかも知れないわね」
考え込みながら呟く。
「序でだから訊きたいのだけれど、前に小猫を救った時に貴方が斃した蛇は何だったの?」
「Yigの事? Yigは旧支配者の一柱で、蛇神と呼ばれる存在だよ。蛇を敬う者には加護を、蛇を殺したり虐めたりすると祟りを与える神だね」
「神? 小猫がザッと描いた絵を見た限り、只の怪物にしか思えないわ!」
「旧支配者、外なる神々、奴原が人間の形態を執る事は少ないよ。勿論、高位の神なら人型も執るけどね。そして、連中を我々は総じて【邪神】と呼んでいる」
〝我々〟とは【討つべき邪悪】と相対する者達で、ホラーハンターや旧神などがそれに当たる。
つまりは、大十字九郎とアル・アジフ、ミスカトニックの三賢人、ラバン・シュルズベリィ、聖闘士などもそれに含まれるだろう。
勿論これは相対的なものであるし、立場を変えてみれば逆転も有り得る。
邪神を奉ずる者達からしたならば、ホラーハンターは歴とした大量虐殺者とも言えるのだから。
ユートは当然これに曖昧な価値基準で当たらない。
それでは、正義だの信仰だのと口にする狂信者と何ら変わらないからだ。
ユートは狂信者の悍ましさをよく識っている。
故にこそ常にパッシブ、いつも後手に回るのは可成り痛いが、それでも何もしていない乃至は、する心算の無い者を滅する訳にはいかない。
そう……それでは妄信的な狂信者と一緒なのだ。
「討つべき邪悪と戦うのは僕の使命だし、何処の莫迦が喚んだか知らないけど、Yigは斃さないとならなかったからね」
「討つべき邪悪? それの定義は?」
リアスの疑問も尤もだ、そしてユートはその答えを用意してある。
「無辜なる者を害する者」
無辜なる者──罪無き者を害する者こそ、ユートにとって【討つべき邪悪】。
【黒の聖域】が邪神などを崇拝する事自体は別に構わないが、崇拝している神を招喚する為に、普通に暮らす民草を生贄にするのは完全にダウト、つまりそういう事だ。
そしてYigもそういう連中に招喚されたと視て、間違いなかった。
「無辜なる者……ね」
「Yigを招喚したのが、何処の誰かは扨置いて……旧支配者の招喚となれば、多数の生贄を要する筈」
「っ! 確かに、この街から少し外れた街で女子高生や女子中学生が大勢、失踪しているわ!」
駒王学園の生徒ではなかったが、他人事と笑っていられない事件故に、注意されたのは記憶に新しい。
「女子学生ね……それは、全員が処女?」
「は?」
何を言い出すんだといった顔になるリアス。
朱乃も表情はニコニコしているが、目が笑ってはいなかったし小猫もジト目でユートを睨む。
木場は苦笑し一誠は鼻血を押さえていた。
一誠がナニを考えたかは丸判りだ。
「それ、関係あるの?」
「う〜ん? 最近の悪魔は重要視してないのかな? よくある話だよ、生贄に穢れ無き乙女を使うのは」
日本も昔はやっていたとユートは認識している。
日照りが続いて作物が枯れ果てるのを防ぐ為、乙女を生贄に捧げるとか、都を脅かす妖物に乙女を差し出して鎮まって貰うなどの、謂わば生贄信仰は普通の事ですらあった。
恐らく大した知識も無い人間であれば、未通の少女を浚って生贄に捧げたのではなかろうか?
それがユートの考えだ。
リアスは少し考えユートの目を見ながら口を開く。
「一応、そこら辺も調べて貰っているわ。ユウの言っている通り、失踪していた娘の全員が処女だったらしいわね」
「ならやっぱり素人か」
分体にしてもあのYigは弱かった。
強力な術を行使したとはいえ、ああも簡単に斃せた事が解せなかったが、不完全な招喚だったのであれば納得も出来る。
実の処、大神級を招喚する為に未通の少女を使う事はあっても、供物となる者は男でも女でも構わない。
必要なのは生命エネルギーであり、肉体ではないのだから当然だ。
生命エネルギーというか某・ゲーム風に云うなら、生体マグネタイトだ。
勿論、性経験の有無など問う事も無い。
「素人?」
「大神級招喚で、申し子を孕ませるのに処女であるのは必要なんだけど、供物にまでそれは求められない。だから素人なんだよ。招喚した奴は真っ先に喰われただろうね」
全員がゾッとしたのは言うまでもあるまい。
事実、ユートがデモンベインの世界に関わった際、ダゴンを招喚したインスマウスの民は、不完全な招喚に怒り狂ったダゴンに生命エネルギーを吸われ、全員が死んでいる。
星辰も揃わずに、供物も足りない状態で無理矢理に招喚したのだから、これは自業自得であろうが……
「何か斃す術は? 小猫の攻撃は効かなかったらしいんだけど……」
「神を斃す方法なんてね、それより強い力を以て挑むのみだよ」
「正論ね。でも、個人ではそんな力を獲られないわ」
「その場合、その神の敵対者を喚ぶとかかな?」
「敵対者?」
「火之神が暴れるのなら、水之神を喚ぶ」
クトゥグアが招喚されたならば、クトゥルーを喚べとか本末転倒ではあるが、これもまた正論だ。
「まあ、無いとは思うけど……また出るようなら僕が戦うから」
「それしか無さそうね」
或いはリアスの魔力特性ならいけるかもしれない、嘆息しながらも、プランを練ってみた。
「まあ良いわ。イッセーは何を頭を抱えてるの?」
「だって、下僕って……」
転生悪魔という存在は、転生をさせた上級悪魔の下で下僕として動かねばならない。
これは悪魔の社会に於いてルールなのだ。
これに従えない転生悪魔が主を殺す乃至は、主から逃亡するなどして【はぐれ悪魔】となる。
場合によれば、主の悪魔の方が悪いという事もあるだろうが、それでも立場が下の転生悪魔が割を喰う。
稀に居るのだ、下僕だからと転生させた相手に酷い扱いをする上級悪魔が。
本当に稀にだが……
イッセーとしては、美女の下僕というのも悪くはないと思うが、やはり納得が出来ない部分もあった。
「イッセー、私の下に来れば貴方の新たな生き方も、随分と華やかになるかも知れないのよ?」
リアスはウインクしながら言う。
「華やか……ですか?」
「悪魔には階級があるの。爵位っていうのがね。私も持っているわ。これは生まれや育ちも関係するけど、成り上がりの悪魔だって居るし、最初は皆素人だったのよ」
「何処ぞの学校のCMみたく言わないで下さいよ! つーか、それ本当ですか? いまいち信用出来ない」
言い方がセールストークに近い分、どうにも胡散臭いと感じていた。
「取り敢えず、悪魔社会に昔の人間社会の封建制度の様な爵位が存在しているのは本当だよ、一誠」
「爵位って、さっき先輩が言ってた公爵とかか?」
「そ、男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵、大公。他にも複雑なものは有るけどね、簡単に言えばこんな感じ。それて上手く働けば上にも往ける筈だよ」
勲爵士、準男爵、辺境伯など複雑に考えれば、色々とあったりする。
一誠を混乱させない為、特に言う心算も無いが……
ユート自身ハルケギニアでは子爵の息子だったし、勲爵士(シュヴァリエ)の位を与えられたし、最終的には大公にまで成っている。
だから昇格も在るだろうと考えていた。
少し悩み始めた一誠。
そんな一誠に、リアスがソッと耳打ちする。
顔の直ぐ近くに、リアスの顔があり、髪の毛が首筋を擽ってきた。
ほんのりと香る匂いに、熱い吐息が耳に掛かる。
一誠は顔を真っ赤に染めドギマギしてしまった。
「やり方次第なんだけど、モテモテな人生を送れるかも知れないわよ?」
「どうやってですか?」
言葉が脳に染み込む前に本能? からか、一誠はすぐに訊ねていた。
スケベ心も此処までくれば特技かも知れない。
リアスは説明をする。
嘗ての三界大戦──悪魔や天使や堕天使が軍勢を率い戦争をしたのだという、天使は神様の威光を以て、悪魔は魔王の威厳を知らしめる為、堕天使は己が自由と冥界の覇権の為に。
その戦いは、聖書の体系の彼らを激減させた。
次に同規模の戰が起こったならば、確実に滅亡するであろう事は誰の目にも明らかな程だ。
故に彼らは、話し合いの末に互いを不可侵とした。
熾天使のトップ、堕天使の総督、魔王は三方共合意を以て戦争が終結、現在に至っている。
悪魔は激減してしまった人数の補強をしなければならなくなり、頭を悩ませる事となった。
悪魔も性別がある以上、男女が交じり合い子を成す事も可能だったが、人間を遥かに越える寿命の弊害かから出生率が低い。
其処で起死回生となったのが現在のシステムだ。
【悪魔の駒】を使って、違う種族を悪魔へと転生させ自分達の幕下に置く。
昔の様な軍団は持てないとしても、勢力の拡大自体は再び可能となった。
そして人間から悪魔へと転生した転生悪魔も、爵位を得る機会を与えられる。
力を示せば、魔王の名の許に爵位と【悪魔の駒】を与えられて、其処から鼠算式に増えていく訳だ。
実際、悪魔に転生した者が最上級悪魔にまで成り上がって、領地すら貰ったという話もある。
「つまりね、一誠もこれから頑張っていけばいずれ、爵位を貰って自分の下僕を持てるかも知れないのよ。勿論、それなりに年月は掛かるでしょうけどね」
下僕を持つ、ならばそれを女の子で固めれば?
「そ、それって……若しやハーレムを作れるって事なのでは!? エ、エッチな事もして良いんですか?」
「貴方の下僕になら良いんじゃないかしら?」
「うぉぉぉぉぉぉぉっ! マ、マジっスか? 悪魔って最高じゃねぇかよ!? 何これ、何これ? テンション上がってキター!」
「フフ、面白い子ね」
「あらあら、うふふ」
「……変態先輩」
「あはは」
リアスも朱乃もユートも小猫も木場もテンションMAXになっている一誠に、生暖かい視線を送り、序でに那古人は興味無さげな顔で本を読んでいた。
否、小猫は寧ろ絶対零度の視線かも知れないが……
一頻り叫んで落ち着いた一誠にリアスが言う。
「そういう訳で、私の下僕で良いわね? 大丈夫よ、実力があればいずれ頭角を顕すわ。そして爵位も貰えるかも知れない」
「はい、リアス先輩!」
「違うわ、私の事は部長と呼ぶ事!」
「部長ですか? お姉様では駄目ですか?」
リアスは暫らく悩むが、直ぐに首を横に振る。
「うーん、それも素敵ではあるんだけど、私はこの学校を中心に活動してるからやはり部長の方がシックリくるわ。一応、オカルト研究部だから。その呼び名でみんなも呼んでくれるし」
「判りました。では部長、俺に【悪魔】を教えて下さい!」
嬉しそうな笑みを浮かべリアスは満足気に頷いた。
「良い返事ね、イッセー。いいわ、私がイッセーを男にして上げるわ」
一誠は、どうせ人間に戻れないのならいっその事、悪魔の人生? を楽しむ事に決めたのだ。
それに人間の侭では不可能だったハーレムも、今なら夢ではない。
一誠のテンションは無駄に上がっていた。
「ハーレム王に、俺は……成るっっっ!」
こうして兵藤一誠は悪魔として【オカルト研究部】の末席に名を列ね、新たな生を歩むのであった。
「ねえ……序でにユウ達も悪魔になってみない?」
「あはは、断るよ」
「そう……」
勢いで聞いてはみたが、にべもなく断られる。
ユートの場合、悪魔化しても【光】や【聖属性】という明確な弱点を作るだけで何の益にもならない。
悪魔になって獲られるであろうモノ──力にも地位にも富にもユートは興味が無かった。
女? その気になれば幾らでも居るし、ユートが連れている子達を見たなら、一誠辺りは血の涙を慟哭と共に流すであろう。
いずれ劣らぬ美少女ばかりだからだ。
問題が有るとするなら、前に教えて貰った【レーティングゲーム】とやらに出られないかも知れない……という事か。
それに関しても、今現在は工作中だったりする。
具体的には冥界に乗り込んでというか、連れられて魔王と会談していた。
そんな無茶な事を可能としたのは、偶さか地上に来ていた某・魔王少女との出逢いにあるが……取り敢えず今の処は関係の無い話。
それから数日の間、一誠は魔方陣の描かれたチラシを配る仕事に精を出して、悪魔としては必要最低限の知識を、座学で教え込まれていた。
要は契約取りのマニュアル等をだ。
木場や小猫達もやったというチラシ配り、一誠は下積みとしてこの辺りの仕事を必死にやっている。
ユートはといえば、悪魔ではないからそんな仕事など無い。
部室に来ては暇な者達と駄弁っていた。
ただ、少し前に魔王からの通達があり、契約取りは少しやっておく様に言われている。
どうやら、【人間に悪魔を理解させる】という名目で契約取りや、レーティングゲームをさせる事にしたらしい。
それにあるオファーも、ユートはすぐにとはいかないが、前向きに検討すると約束をしている。
魔王との会談で、ユートが話した事が興味深かった事と、何よりユートが実力を示した事が大きかった。
人間を蔑視する悪魔も居るには居るが、魔王達は認めたという事だ。
其処で一誠が契約取りをする頃に、ユートも同じく契約取りを行おうという話になるのであった。
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