ハイスクールD×D【魔を滅する転生魔】   作:月乃杜

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第7話:匙×決闘

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 兵藤一誠が悪魔の事を知ってから翌日、一誠は暫くの間は下積みとしてチラシ配りをする為、ユートは少し暇を持て余している。

 

 一誠が契約取りをするのと同時期に、ユートも同じく契約取りを行う訳だし、未だ一誠がチラシ配り中である以上、ユートは何もする事が無いのだ。

 

 別に本来なら、使い魔にやらせる仕事をユートがやる必要もない。

 

 という訳でオカルト研究部には顔を出さずに現在、生徒会室の前に居た。

 

 コンコン……

 

「はい、どうぞ」

 

 中から女性の入室を促す声が聞こえてくると、ノブに手を掛けてユートは生徒会室の扉を開けた。

 

「失礼します」

 

 書類らしきものと睨めっ子していた眼鏡の少女が、ユートが入室したのと同時に顔を上げて此方を見る。

 

「当、生徒会室に何か御用かしら?」

 

 眼鏡の位置を直す様な仕草をしつつも、切れ長の目でユートを見やった。

 

 知的でスレンダー、冷たく厳しいオーラを発している鴇色の瞳の美少女。

 

 黒髪に眼鏡、彼女は遣り手の委員長タイプらしい。

 

 とはいえ役職は生徒会長だろうが。

 

 隣に居るのは秘書……と言うか副会長だろう。

 

 黒髪長髪で会長と同じく眼鏡を掛けている。

 

 魔氣を感じる事から彼女も悪魔である様だ。

 

 恐らくはシトリー眷族の女王(クイーン)なのだと、当たりを付ける。

 

 リアスの傍で、基本的には朱乃が副部長として控えていた様に、ひょっとしたら女王は王の傍に居るのが普通なのかも知れない。

 

「初めましてという訳じゃないけど、支取蒼那会長に御挨拶をと思いまして」

 

「確かに、転入の時に会っていますから初めましてではありませんね。ならば、挨拶とは?」

 

「上級悪魔、シトリー家の次期当主たるソーナ・シトリーへの挨拶かな」

 

 ザワリ……

 

 そう言った瞬間、生徒会室の空気が剣呑なものへと変わり、副部長らしき女性が睨んできた。

 

「剣呑だね。目的は挨拶だって言ったよ? グレモリー家の次期当主には、理由があったとはいえ挨拶したのに、同じ学園を支配するシトリー家に挨拶しないのは筋が通らないから」

 

「……成程。リアスが悪魔である事は知っているという訳ですか」

 

 嘆息すると、椅子から立ち上がってユートの方へ近付いてくる。

 

「では、改めて。シトリー家の次期当主、ソーナ・シトリーです。宜しく」

 

 ユートは差し出された手を笑顔で握った。

 

 どうやら彼女はそこら辺の悪魔や堕天使と違って、人間を見下している訳ではなさそうだ。

 

「そして彼女は、生徒会の副会長……真羅椿姫です」

 

「真羅椿姫です。宜しく、緒方優斗君」

 

「宜しく」

 

 同じく握手をする。

 

「然し、貴方は悪魔でなく人間ですよね? リアスの眷族になった訳ではないみたいですが、どういう理由で此方側に?」

 

「此処に転入する前、部長の戦車である塔城小猫が、蛇に襲われていたのを助けていたのでね。それで事情なんかを訊かれたんだ」

 

「そういう事ですか」

 

 暫く考え込み納得したのか『フム』と呟きながら、ソーナは頷く。

 

「だいたい判りました……だけど、眷族悪魔ではない貴方が彼女と関わり続けるのですか?」

 

 ソーナの言葉は尤もではあるが、此方にも事情というものがある。

 

 否応なしに関わらねばならないのだ。

 

「勿論、僕はレーティングゲームにも関わる心算だからね」

 

「それは……流石に無理があるのでは?」

 

 人間がレーティングゲームに参加してはならない、そんな規則が在る訳ではないのだが、基本的に人間を見下す傾向にある悪魔が、果たして人間の参加を認めるか否かという問題が浮上する。

 

 だが一応、その問題に関してはリアスにも教えた通りにクリア済みだった。

 

「これは、リアス部長にも言ってある事だけど、僕は少し魔王に縁故が出来たんだよ」

 

「魔王……様……に?」

 

「そ、魔王の一角を担っている人物が街を彷徨いてたのに出会してね。その際に偽りの魔王がどうのと言う輩に襲われたのを助けたら仲好くなって、深い話をして結果的に冥界に連れてって貰ったんだ。まあ、どんな話をしたかとかは割愛するけど」

 

 ユートの説明を聴いて、少し動揺するソーナ。

 

 それもその筈でソーナも魔王とは縁が深い。

 

 冥界には四大魔王というのが在り、それは七十二柱から選出されている。

 

 例えば、グレモリー家。

 

 グレモリー公爵の長男、サーゼクス・グレモリーが魔王の一角に選ばれ、家を出て現在の【ルシファー】を務めていた。

 

 現在の彼は、サーゼクス・ルシファーという魔王としての名を名乗っている。

 

「そ、その魔王様というのはどなたの事かしら?」

 

「セラ──セラフォルー・レヴィアタンだよ」

 

 ユートが呟いた瞬間に、思わずフラリと倒れそうになったが、椿姫によって支えられて事なきを得た。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、ありがとう、椿姫。ごめんなさい。もう一度、言って貰えるかしら?」

 

 気を取り直して、余り聴きたくはなかったが再度、その名を訊ねた。

 

「だから、セラフォルー・レヴィアタンだって」

 

名前を聴いた瞬間、ガクリと脱力してしまうソーナ。

 

「な、な、な、何をやっているのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 セラフォルー・レヴィアタンは、ソーナ・シトリーと縁が深い。

 

 それがどれだけ深いかと言えば、リアスとサーゼクス並の関係である。

 

 リアス・グレモリーにとって、サーゼクス・ルシファーとは実の兄。

 

 そして、ソーナ・シトリーにとってのセラフォルー・レヴィアタンは実の姉。

 

 その実姉が、何故か人間の世界に上がってきて彷徨った挙げ句、人間と仲好くなって冥界へランデブー。

 

 生真面目なソーナからすれば叫びたくもなる。

 

「だけど、あの人は何をしに此方に?」

 

「ソーナちゃんに会いに来たんだ☆」

 

「っ!?」

 

 突然、姉の声が聞こえてきてギョッと驚く。

 

 思わず、キョロキョロと辺りを見回すが、自分達以外には誰も居ない。

 

「い、今の声は……?」

 

 ユートを視た。

 

「だけどゴメンね? 実はソーナちゃんと会うより、もっと面白い子に会っちゃったんだ☆ だから会えなくなっちゃった、アハ☆」

 

 明らかに姉の声はユートの口から紡がれている。

 

「彼女からの伝言。因みに言うと、今のは変声魔法」

 

「泣きたいです……」

 

 最早、溜息しか出ない。

 

「セラに連れられて冥界に行ったんだけど、その時に他の四大魔王にも会って、話をしたんだよ」

 

「あー、あーっ! 聴きたくない、これ以上は聴きたくないですっ!」

 

 ユートが起こしたであろう騒動に到頭、ゲシュタルト崩壊をしてしまったのかソーナは耳を塞ぎ、イヤンイヤンと頭を振る。

 

 元よりハッチャケている姉を少し苦手にしており、こんな騒ぎの元凶の1人だと言われ、混乱してしまったらしく一分くらいそうしていた。

 

「コホン、失礼しました。兎に角、魔王様方の許可は得ているのですか」

 

「まあね、レーティングゲームの方は将来的な話だとして、学園ではオカ研での手伝いでもやろうかなと、そんな感じだね」

 

「そうですか。まあ、それなら……」

 

 ソーナが話そうとしたその時、勢いよく生徒会室の扉が開け放たれる。

 

「会長、仕事が終わりましたぁぁっ!」

 

 ご機嫌な様子で入ってきたのは男子学生。

 

 仕事という事は彼もまた生徒会の役員なのだろう。

 

「はれ?」

 

 少年から見た状況──

 

 薄らと瞳に涙を浮かべているソーナ。

 

 気遣う副会長の椿姫。

 

 見知らぬ男が傍に居た(←此処重要)。

 

「き、貴様ぁぁぁぁっ! ソーナ会長に何をしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 少年は何やらえらい勘違いをして迫って来た。

 

「てめえの血は何色だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 涙を浮かべたソーナを見た少年は、意味不明な事を叫びながらユートへと殴り掛かってくる。

 

 ズドン!

 

 だが然し、完全なカウンターとなりユートの蹴りが極った。

 

「あ、あががが……」

 

 鳩尾に踵が入り、少年は苦しそうに踞る。

 

 この場で咎められるのは一体誰か? 少年を蹴飛ばしたユートではなく、事情も判らないというのに客へ攻撃を仕掛けた少年だ。

 

「匙! 貴方は何をやっているのですか!?」

 

「う……ぐっ? か、会長……?」

 

 少年──匙からすれば、会長を泣かせていた糞野郎への制裁の心算だった。

 

 それが、寧ろソーナの怒りを買う結果となり、大いに混乱してしまう。

 

 反撃をしたユートは良いのかという問題はあるが、この場合殴られてやる義理は無く、向かって来た匙へと脚を突き出しただけだ。

 

 非は明らかに匙の方にあるだろう。

 

 無論、暴力を振るったという点を鑑みれば、ユートにも非がある訳だが……

 

「すみません、緒方君……生徒会の者が無礼を働いてしまって」

 

「うん、まあ……此方も蹴っちゃったからね。お互い様って事で」

 

「はい」

 

 匙には理解不能だった。

 

 何故、会長を泣かせた男に会長が謝るのか?

 

 何故、会長を泣かせた男に制裁を加えようとして怒られるのか?

 

 何故、会長を泣かせた男に言われた言葉で会長が頷くのか?

 

 これではまるで……

 

「(俺が只の道化みたいじゃないかっ!)」

 

 ソーナはユートを真っ直ぐに見つめ、そんなソーナに対してユートも見遣る。

 

 本人にその気は無いが、端から見ると良い雰囲気の男女が、互いに見つめ合っている様にも見えた。

 

 何と言おうか、ソーナの鴇色の瞳にユートが写り、ユートの黒瞳にはソーナが写っている。

 

 場所やシチュエーションを考えなければ、恋人同士が目と目で通じ合っている感じであった。

 

 大事な事だからもう一度言うが、ユートとソーナにはその気が無い。

 

 だが、匙から観ればどの様に映るだろうか?

 

 故に匙は愕然となった。

 

 そんな匙の心の内など露知らずソーナは先程、匙の乱入で言い掛けた事を改めてユートに話す。

 

「実はですね、匙が来て有耶無耶になりましたけど、緒方君に相談したい事がありまして……」

 

「相談?」

 

「はい。貴方が将来レーティングゲームに出る条件、確か上級悪魔の監督の下で駒として……でしたね?」

 

「まあね、だから僕の場合はリアス部長を王として、それで出場権が得られる。これは現四大魔王の保証の元に決定された事だよ」

 

 自分だけ強くとも、必ず勝てるとは限らないゲームなら、面白い闘いが出来そうだと考えている。

 

 そして四大魔王──取り分け今のレーティングゲームの基礎となる【悪魔の駒】を造った魔王、アジュカ・ベルゼブブが大いに沸いたのだ。

 

 実の処、ユートがリアスの申し出を断ったのには理由がもう一つある。

 

 光や聖属性という判り易い弱点が出来るというだけではなく、飽く迄も実験という事でユートに【悪魔の駒】がどう反応するかを、アジュカが試してみた。

 

 ユートの持つキャパシティやポテンシャルは、それが女王(クイーン)や変異(ミューテーション)の駒ですら反応しなかった。

 

 つまりは、ユートの身体を悪魔に変換して転生させるのに、アジュカ・ベルゼブブの造った駒では力不足であったという事。

 

 この事実に、サーゼクスもセラフォルーも驚愕したものだった。

 

 だからこそ、特別ルールを敷いたのである。

 

 尤も、この特別ルールは時と場合によって変更も視野に入っているのだが……

 

「それで、ですね……」

 

 少し歯切れが悪いソーナだが、少し迷ってるのか、瞳もあちこちを右往左往して定まっていない。

 

「何か? 会長」

 

 ユートに訊ねられ、意を決したのか口を開く。

 

「若し良ければですけど、私も将来はレーティングゲームに参加します。そしてリアスの所と同様、此方も実質的な駒が足りません。ですので、グレモリー眷族だけでなくシトリー眷族としても、ゲームに参加して貰えませんか?」

 

「エエェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!?」

 

 ユートの強さはリアスからの報告で知っている。

 

 現在、叫んだ匙に四つの兵士(ポーン)の駒を使い、十五人の駒が揃わない事が確定していた。

 

 特別ルールの一つ、それは監督する上級悪魔の駒が十五個揃っていないという条項がある。

 

 想定は、飽く迄も王を除けば十五の駒が全て。

 

 十六人目は要らない。

 

 要するに、駒の足りない上級悪魔の助っ人である。

 

 そういう意味に於いて、ソーナ・シトリーは条件を充たしていた。

 

「グレモリーを優先するけど? それで良いなら」

 

「構いません」

 

 若しもゲームの時期が重なればグレモリーの方を優先するし、リアスVSソーナとなれば矢張りグレモリーを優先する。

 

 そういう事だ。

 

 ソーナはそれにアッサリと頷いた。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい会長!」

 

「何かしら?」

 

「人間がレーティングゲームなんて、有り得ないでしょう!」

 

「既に魔王様が許可なされている以上、匙に口を出す権限などありません」

 

「うっ……」

 

 キッパリと言い放たれ、匙は狼狽える。

 

「な、ならこいつと模擬戦をやらせて下さい! 俺が消費した兵士(ポーン)の駒四個分を働ければ、こんな奴なんて要らないです!」

 

 嫉妬と焦燥から、ユートと決闘をしたいと申し出た匙に、ソーナは少し考え、ユートに向き直る。

 

「緒方君、此方から申し込んでおいて勝手かもしれませんが、私の眷族に貴方の実力を見せる為、匙と闘って貰えますか?」

 

「まあ、実力を知って貰うのも必要か。ルールは?」

 

「バーリトゥードゥで」

 

「了解」

 

 ユートは頷く。

 

 バーリトゥードゥ、つまりは何でも有り。

 

 それこそ、魔法を放とうが神器(セイクリッド・ギア)を使おうが。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 翌日の放課後……

 

 結界を張った上で体育館を貸切状態として、ユートと匙の模擬戦を行う。

 

 興味津々でグレモリーの眷族も観戦に来た。

 

 一誠だけは、チラシ配りに精を出しているが……

 

「それでは、模擬戦を始めます。ファイト!」

 

 ソーナの合図で匙が先制攻撃を仕掛けた。

 

 とはいえ、匙は神器(セイクリッド・ギア)以外では拳を揮うしか戦闘方法を持っていない。

 

 出来る事は右ストレートを先制で打ち込む。

 

 スカッ!

 

「あれ?」

 

 確かに匙の拳はユートの顔面を捉えていた筈だが、まるで幻影の如くすり抜けてしまう。

 

 匙は知らないが、名も無き堕天使も同じ事をした。

 

 だが、このユートは決して幻影などでは無い。

 

 やった事は至って単純。

 

 拳が当たる瞬間、紙一重で避けただけ。

 

 悪魔の目にも留まらない速度で、ユートは一旦躱してから元の位置に戻った。

 

 故に、すり抜けた様に見えただけである。

 

「この、野郎!」

 

 今度は一撃に懸けるのではなく、ラッシュで何度も殴り付けた。

 

 だが結果は同じで、全く当たらない。

 

「どうして、どうして当たらないんだ? 何ですり抜けんだよ!」

 

 誰しも、徒労に終わると疲労感が弥増すもの。

 

 匙もご多分に洩れずに、もう疲労困憊の様だ。

 

 十分以上、拳を揮い続けて何の効果も及ばさない。

 

 神器(セイクリッド・ギア)を使おうにも、拳すら当てられないのでは容易く躱されるのは想像に難くないであろう。

 

「こんちくしょう!」

 

 叫びながら苦し紛れに回し蹴りを放つ。

 

 初めて変化があった。

 

 ユートが裏拳で匙の蹴りを防御したのである。

 

「え……」

 

「偶然とはいえ正解だよ。僕は横に躱していたから、今の蹴りは避けられない」

 

 まあ、その気になったら前後に避ければ良いのだ。

 

「まあそういう訳で、そろそろ決めさせて貰うよ」

 

 宣言と同時に、匙は光の線が煌めいたのを見る。

 

「雷光放電(ライトニングプラズマ)」

 

 聖衣も纏っていない為、最大限のパワーやスピードは出せないのだが、それでも秒間で数千万発の拳を揮って匙の躰を粉砕した。

 

 

 悪魔の肉体は頑丈だが、一撃一撃の重さにも耐えられないのに、数千万発の拳を見舞われた匙は、ユートが言った技の名前を聴いたのを最後に、目の前が真っ暗になり意識を手放した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「あ……れ?」

 

「気が付きましたか、匙」

 

「か、会長? 俺、何で……こんな所で寝てんです……あっ!」

 

 何があったか思い出し、ガバリと起き上がる。

 

「その様子では思い出したようですね?」

 

「は、はい……」

 

 ソーナに言われて、匙は意気消沈してしまう。

 

 会長を泣かした糞野郎を勢い込んで喧嘩を売ってみれば、アッサリと敗けてしまったのだ。

 

 ならば匙のこれは、当然の結果であろう。

 

「けど、一体何があったんだよ? 俺の目には何かが煌めいた様にしか見えなかったってのに……」

 

 拳を握り締め、悔しそうな目でそれを睨む。

 

 匙はシトリーの眷族であり元人間、つまり彼は転生悪魔だ。

 

 人間であった頃より強く速く、丈夫になっており、動体視力とて高い。

 

 そんな匙が、殆んど何も出来ない侭に敗北した。

 

 自分でもそれが信じられないのだろう。

 

「それは私も知りたい処ですね。良ければ聞かせて頂けますか?」

 

「え?」

 

 ソーナの言葉から、自分を倒した男が傍に居るのだと気付き、彼女の視線を辿ると確かに椅子に座っているあの男と、リアス・グレモリー率いる眷族悪魔達。

 

 勿論、未だにチラシ配りに精を出す一誠は居ない。

 

「別に、大した事はしていないよ。単に殴っただけ」

 

「殴っただけ……ですか? ですが、私も匙も貴方の攻撃なんて見えなかった」

 

 そう、ただ煌めいた何かが見えたに過ぎない。

 

「速さを信条とする騎士の僕にも見切れなかった」

 

 グレモリー最速の騎士、木場祐斗でさえも頷きながら言う。

 

「技の名前は雷光放電(ライトニングプラズマ)といって、電撃を帯びた拳を揮ってしこたま殴るんだよ。煌めいたのは、電気の軌跡だろうね」

 

「しこたま? 悪魔の目にも留まらない速度で?」

 

「最近、グレモリー眷族になった元人間の友人が言ってたけど、前より身体能力が上がったそうな。視力も可成りのものらしいね? それでも捉え切れない速度も在るって事かな」

 

 全員が息を呑む。

 

 正確には、ユート自身に加えてユートの力を知っている那古人を除いてだ。

 

「その速度とは何の抵抗も受けなければ、三十万キロ毎秒になる」

 

『『『『っ!?』』』』

 

「あ、有り得ませんっ! それではまるで……」

 

「地球を7週半出来る速度……即ち、光速」

 

 ユートは聖闘士としての闘いに加わった事もあり、究極の小宇宙たるセブンセンシズに目覚めている。

 

 その小宇宙を以てなら、瞬間的に光と同等の拳速を揮う事が可能だ。

 

 

「雷光放電(ライトニングプラズマ)は僕の技じゃあ無いけど、何しろ電撃を拳に纏って殴るだけの単純な技だからね、真似るのも割りと簡単だったよ」

 

「真似る……ですか?」

 

「オリジナルなら兎も角、基本的にこの手の技ってのは模倣だと思うけど?」

 

「ソーナが言ったのはそういう意味じゃなく、あれを使える人間が他にも居るって事なの!?」

 

「まあ、元の使い手から習った訳だしね」

 

 それは生徒会室の悪魔達の全員を驚愕させた。

 

 雷光放電(ライトニングプラズマ)は、黄金聖闘士の獅子座(レオ)のアイオリアが使う技である。

 

 ユートのオリジナルとなる技は別に存在していた。

 

 実は以前、ハルケギニアに生きていた頃の事だが、病に苦しむカトレアを治す為に、地球へと転移をした事がある。

 

 その際に、現在の上司たる【純白の天魔王】の神号を持つ高町なのはにより、【機神咆哮デモンベイン】や【聖闘士星矢】の世界観を持つ世界に跳ばされた。

 

 その時の聖域での闘いが終わった後に、黄金聖闘士達から各々の技を教わっているのだ。

 

 真似たというか、教わって使える様になったというのが正しい。

 

 ユートは基本的に模倣ばかりの自分を自嘲し、真似たといっているだけだ。

 

「人間が……」

 

「超常の存在を降すのは、いつ、如何なる世に在っても人間なんだよ」

 

「そう……なのかも知れませんね」

 

 それが即ち、英雄と呼ばれる存在である。

 

「ま、この技のオリジナルの使い手は故人だけどね」

 

 冥王ハーデスとの決戦で【嘆きの壁】を破壊する為に十二の黄金聖衣の力を、一点に集中した結果の消滅だった。

 

 その後でユートはサガもカノンも死んだ事により、双子座の黄金聖衣を正式に受け継いでいる。

 

「まあ……本来は10万ボルトもの電圧で殴るけど、今回のはスタンガンくらいの電圧でやったから、後遺症も残らないと思うよ」

 

 それを聴いて益々、匙は落ち込んだ。

 

 完全に手加減をされて、それでアッサリ敗北したのでは匙も立つ瀬がない。

 

 何よりも肝心の会長は、糞野郎だと思っていた相手と仲良く話をしている。

 

 其処から導き出せる答えが理解出来ない程、匙という少年は愚かではない。

 

 会長の瞳に浮かぶ涙を見て頭に血が上ったが、あれが勘違いによる一人相撲だと解ってしまった。

 

 ならば匙が執るべき態度は一つだけ。

 

「さっきは済まなかった。俺、会長が泣かされたんだって思ってつい……」

 

 ユートの前まで進んで、頭を下げて誠心誠意の謝罪をするのみであった。

 

 反省するものに突っ掛かる程、ユートも狭量ではないから謝罪を受け容れる。

 

「問題は無いよ。それだけ主を……生徒会長を大切に思っていたって事だしね。ただ、事態を把握する前に手を出すのは頂けないし、相手の実力も見極めないで闘うのは、場合によっては会長に恥を掻かせる羽目になるから気を付けなよ」

 

「お、応!」

 

 ユートと匙は互いに握手をし合う。

 

「俺は匙 元士郎だ」

 

「僕は緒方優斗」

 

 某・三番目と四番目に当たる仮面物語であるなら、此処でコミュニティが発生する処だろう。

 

「ふう、ソーナの所の眷族と喧嘩になったって聴いた時は頭を抱えたけど、上手く纏まったのかしらね」

 

「そうね。リアス、ごめんなさい。ウチのサジが無礼を働きました」

 

「ユートは私の眷族ではないし、二人で判り合えたのだし問題無いわ」

 

 実際、ユートは眷族ではなく普通の人間──というには常軌を逸しているが──肉体的には人間であり、悪魔や天使などの類いでは決してない。

 

 それは間違いないのだ。

 

 切っ掛けは十二宮での闘いであり、其処から力を更に付けていった結果、今の力を獲た。

 

 そもそも、ユートの敵となる存在が〝邪神〟とカテゴライズされる神。

 

 這い寄る混沌ナイアルラトホテップ。

 

 これに加え、別世界では神の闘士の神闘士や海闘士や冥闘士などと闘い、その首魁とさえ闘った。

 

 即ち……

 

 海皇ポセイドン

 

 冥王ハーデス

 

 恐らくはこの世界にも、根源を同じくする神が存在しているだろう。

 

 勿論、別物であるが……

 

 そういう意味ならアテナも居るし、ユートはルシファーも確認済みだ。

 

 同じ世界といえ、楔が穿たれてより派生した世界、それは全く別の進化や法則から成っている。

 

 故に元々の真っ白な世界にまるで、絵を画く様に別の原典世界(オリジン・ザ・ワールド)を置いた。

 

それは地球のみならず……異世界も同様だ。

 

ゼロの使い魔や精霊使いの剣舞、ドーク魔法材料店 三代目仕入れ苦労譚など。

 

様々な原典世界(オリジン・ザ・ワールド)が時空間を隔て、存在している。

 

 ユートはそれらを管理、必要とあらば護る事こそが【純白の天魔王】延いては【朱翼の天陽神】より与えられた使命であり仕事。

 

 そう、星騎士(ワールドガーディアン)として。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「そういえば、緒方君」

 

「会長、僕の事は良ければ名前で呼んで貰えるかな? 僕は緒方優斗と名乗ってるけど、実際にはもっと長い名前なんだ。そして僕の本質を表すのはやっぱり、優斗なんだよ」

 

「判りました、ではユート君と呼びましょう。ユート君はお姉様やリアスのお兄様と会っていましたね?」

 

「会ってるよ。サーゼクスとセラとアジュカとファルビウムとは冥界で直接会ったからね」

 

「よ、四大魔王を呼び捨てですか……」

 

 現在、冥界で魔王と呼ばれている四人──

 

 サーゼクス・ルシファー

 

 セラフォルー・レヴィアタン

 

 アジュカ・ベルゼブブ

 

 ファルビウム・アスモデウス

 

 この四名である。

 

 悪魔からしたなら仮令、兄や姉であっても階級的には雲の上の存在。

 

 敬称抜きでなど呼べるものではない。

 

「それにセラ? というのはお姉様の事ですね?」

 

「ああ、『【レヴィアたん】って呼んで☆』 って言われたけど流石にねぇ?」

 

「お、お姉様……」

 

 ソーナは姉のフリーダムさに、思わずガックリと肩を落としてしまう。

 

「優斗君……あれを悪魔のデフォルトだとは思わないで下さい、決して!」

 

「ラ、ラジャー」

 

 ソーナの目が座っていて正直に言って怖い。

 

「と、兎に角です。リアスも居るから丁度良いので、もう一度頼みます。四大魔王様との約定で得た権利、私達の眷族にも適用して頂けますか?」

 

「僕は構わないよ」

 

 リアスを見遣りながら答えると、リアスも視線に気が付き同じく答える。

 

「勿論、ウチを優先して貰えるのよね?」

 

「最初にコンタクトしたのはリアスですし、そこは当然です。サジ、今度こそ良いですね?」

 

「は、はい。会長!」

 

 実力は充分に解ったから匙にも否は無い。

 

 ただ、不満が在るとすれば一つだけ……

 

「(くっ、羨ましいなぁ。会長から名前で呼ばれるなんてよ!)」

 

 個人的な嫉妬と憧憬……それだけであったという。

 

 

.




 そういえば、なろうではどの辺まで書いたっけ?

 少なくともライザー戦はやったと思うけど……


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