お久しぶりです。えぇ、本当に帰ってきましたよ。
一応ですが就職試験の方が結果待ちなので、こっちの続きを書きたいと思います。
日も落ちてきて外も薄暗くなってきた頃、黒澤宅のインターホンが鳴らされた。
「ルビィー!悪いけど出てくれますかー?」
ダイヤの頼みを聞いた妹のルビィは、不思議に思いながらも返事をして玄関へと向かう。
「はーい!いつもはお姉ちゃんが行くのに・・・どうしたんだろ?」
ルビィはいつもとは違うダイヤの行動を疑問に思いながらも、パタパタと走り玄関の戸を開ける。
「は、はーい!どちら様で・・・!?」
ルビィは言葉の途中で思わず絶句してしまう。訪ねてきた人物とは言わずもがな。
「お前・・・何でここに居るんだ?」
その人物とはもちろん乾 巧だ。面識があるとはいえ、未だに巧の人柄が掴めていないルビィはただひたすらテンぱっていた。
「あ、あの・・・ここ私の家なので。い、乾さんはどうして?」
ルビィの質問に、巧は手に持っていた洗濯物を見せながら答える。
「あぁ、これを届けにな。だけど、ここって黒澤ダイヤの家じゃないのか?」
巧の疑問にルビィはちゃんと説明をする。
「あ、ルビィはダイヤお姉ちゃんの妹なんです。とりあえず、その洗濯物は貰いますね?」
ルビィは巧から洗濯物を受け取ると、一旦家の中へ戻り洗濯物を置いてから再び巧の前に姿を見せる。
なんとなく気恥ずかしいのか、ルビィは胸の前で両手を弄りながら巧からの言葉を待つ。
そして、遂に巧が口を開く。
「・・・お前、スクールアイドルをやりたいんだろ?俺から言えることじゃねぇけど、もっと自分に素直になった方がいいんじゃないか?」
巧の言葉を受けて、ルビィは今向き合わなければならない問題を抱えていることに気づかされる。
「・・・知ってたんですか?ルビィがスクールアイドルになりたいって・・・」
ルビィの質問に巧は静かに頷く。
「だったら、分かりますよね。お姉ちゃんの事も大事だし、ルビィもスクールアイドルを捨てられずにいるんです」
ルビィが俯きがちに言葉を続けるも、巧が鼓舞するように声をかける。
「それがお前の夢なんだろ?とにかく迷惑なんか考えないでやってみればいいんじゃねぇか?」
巧の言葉がルビィの核心に触れる。そして、反射的に本音が見えてしまった。
「ルビィがどれだけ悩んでるか知らないで・・・今度こそ嫌われるかもしれないのに・・・乾さんには、分からないんだよ!」
ルビィは苦悩に対する本音を巧に吐露する。その想いを真正面から受け止めた巧は「そうか・・・」とだけ言い、バイクを停めている場所まで移動し、乗り込んだ。
ルビィは少し経ってから、自分の失言に気づく。いくら触れられたくない部分に踏み込まれたからと言って仮にも歳上の、そして本来なら関係のない巧を責めるなどそれこそお門違いというもの。
すぐに追いかけ謝罪の言葉を伝えようとすると、不意に巧が振り返って言葉を伝えた。
「なぁ、一つだけ言ってもいいか?」
ルビィは内心ドキッとしながらも頷いた。
「誰だって嫌われるのはもちろん怖い。俺だって怖いさ。でもな、いつかは自分で決めるしかないんだよ・・・好きな事なら、尚更な」
巧の言葉にハッとするルビィ。自分の中でどこか言い訳をしていたのではないだろうか。ダイヤを言い訳に逃げていたのではないだろうか。そんな考えがふと頭をよぎる。
「じゃあな・・・」
巧はサイドバッシャーを走らせ黒澤宅を離れた。その場に立ち尽くしているルビィも、どこか寂しげな様子。
しかし、すぐに家の中へ引き返し部屋に戻る。
「・・・よし!」
そして、ルビィは何らかの準備を始めた。その目にはもはや先ほどまでの弱々しい自分など存在せず、闘志とやる気に満ち溢れていた。
その翌日の朝、ルビィは自分がスクールアイドルになりたいという事を花丸に打ち明けた。そして、花丸からも意外な答えが帰ってきた。
「えぇ?スクールアイドルに!?」
ルビィの驚きをよそに、花丸は説明を続ける。
「ルビィちゃんと見てるうちに、良いなって思って。でも、ビックリしたなぁ。まさかルビィちゃんからスクールアイドルやりたいって言うなんて。流石は乾さんずら」
花丸の言葉に気になる名前が出て、つい聞き返してしまうルビィ。
「え、乾さん?」
花丸はやっちまったとばかりに表情を引きつらせ、強引に違う話題を持ち出す。
「そ、そうだ!もしよかったら・・・」
「本当!?」
「はい!よろしくお願いします」
放課後、スクールアイドル部の部室にはルビィ、花丸の姿があった。リーダーの千歌が1人舞い上がっているが、梨子が冷静に説明をする。
「喜びすぎだよ千歌ちゃん。まだ仮入部、お試しってこと」
説明を聞いていた曜はふと気づいた事を口走る。
「もしかして、生徒会長のこと?」
その問いかけに花丸が答える。
「はい・・・だからルビィちゃんとここに来たことは内密に・・・」
事情を理解した3人はルビィ・花丸を交えて活動をする事にした。
が、すぐに問題発生。それは練習スケジュールを確認している時だった。
「でも、練習ってどこでやるの?」
曜の問いかけに答えられる者は居なかったため、急遽練習場所の確保に。結局、いくつか回って最終的には屋上でやろうという事に決定した。
「はぁ・・・なんだかなぁ」
巧はベッドに寝転んで天井を見上げていた。昨日ルビィに放った言葉が自分に跳ね返って、頭の中でずっとリフレインしているのだ。
「すみませーん!」
すると、受付から誰かの呼ぶ声が聞こえてきた。啓太郎は配達に、高海家の住人も出払っているので必然的に巧が応対する。
「はいはい・・・って、またあんたか。ずいぶん暇なんだな」
そこにいたのはつい先日も来た黒澤ダイヤだった。しかし、手に洗濯物を持っている様子はない。
「なんだ、冷やかしかよ。まさかあんたも頼みごとってわけじゃないだろうな?ここは何でも屋じゃねぇんだ」
ルビィの一件以来、なんとなく頼みごとに抵抗ができてしまった巧。特に人間関係はとても手に負えるものではないと痛感させられた。
「まず先に謝らせていただきます。昨日のルビィとの会話を聞かせてもらいました」
巧は一瞬表情を硬直させる。しかし、すぐに「そうか」と言い言葉を続けた。
「正直なところ、話を聞くまでルビィの苦悩に気づいてあげられませんでした。私に悟られまいとひた隠しにしてきたのでしょう。元々、私だって初めからスクールアイドルを毛嫌いしていた訳ではありませんので」
ダイヤの言葉に静聴する巧。その事はなんとなく気がついていた。というのも、本当に嫌いなら部を設立なんてさせるはずがない。
過去に何かがあり、前に踏み出せないでいる。そんな様子だ。
「あの子のスクールアイドルに対する気持ちは本物です。だからこそ、あの子には輝いてもらいたいんです!・・・私たちの分まで」
私たちの分まで?この言い方からするにやはり過去に何らかのトラウマがあるようだが、詮索はしない。
「あぁ、俺もそう思う。よくは分からないけど、あいつには輝いてもらいたいって心から思えるよ」
含みのある言い方になったが、それが本音だ。優しすぎる奴が夢を見れないなんておかしいからな。
「では、失礼しますね。今から花丸さんと会う約束がありますので」
ダイヤが踵を返し歩き始める。不意に巧が呼び止め、ヘルメットを投げ渡す。
突然投げ渡されたヘルメットに困惑していると、サイドバッシャーの荷台にケースを括りながらその意図を伝える。
「送っていく。俺も用があるんでな」
ダイヤは呆然としながらも、巧に促されるままにサイドカーに乗り込む。それを確認した巧はバイクを走らせた。
「着きましたわ。待ち合わせ場所の神社です」
たいして距離があるわけではないので、数分で着いた。階段があるので、途中までバイクで残りは徒歩で行く事に。
階段を少し上った先に、既に到着していた花丸が立っていた。
ダイヤがきた事を確認した花丸は、早速要件を伝える。
巧はここに来るまでに、異様な気配を感じていた。あの特有の違和感、同類の気配を。
巧は持っていたケースからカイザギアを装着し、周りを警戒する。
そして、その時は訪れた。
「ッ!危ないッ!!」
オルフェノク特有の触手がダイヤと花丸を狙い、接近する。咄嗟に巧がダイヤと花丸を庇うように触手から逃がす。その触手の元を辿ると、静かにその主が歩み出る。
カマキリを模した怪物“マンティスオルフェノク”だ。
「スクールアイドル・・・殺す」
マンティスオルフェノクの言葉に狂気を感じた巧は即座にカイザフォンに変身コードを入力する。
9・1・3 Enter Standing by
カイザフォンから変身待機音が鳴り響く。脳裏に体が灰化するイメージが蘇る。かつての流星塾生のように自分も・・・と。
戸惑いながらも巧は決心し、バックルにカイザフォンを装填する。
「・・・変身ッ!」
Complete
ベルトから二本の黄色いラインが出力され、全身へと伸びていく。黄色い閃光が放たれ、そこにΧを模した戦士が誕生する。
「草加・・・力、借りるぜ」
Open your eyes for the next φ’s
「よかったね。やっと希望が叶って」
「ルビィ、スクールアイドルがやりたい!花丸ちゃんと!」
「1番大切なのは出来るかどうかじゃない。やりたいかどうかだよ」
“Exceed charge”
「やあああああッ!!」
第11話 巧Χ少女たち