『未来からの使者』
「み、未来ずら〜!!」
開口一番で何を言っているのかと思われるが、決して気が狂ったわけではないと言わせてほしい。
所変わって、今は十千万で青年 野上幸太郎の治療をしている。あの後、残りのAqoursメンバーにも連絡をとって合流してもらったのだ。
因みにさっきの言葉は、NEWデンライナーとテディに向けて発せられたものである。
「さっきの話、詳しく教えてもらってもいいかな?」
幸太郎の腕に包帯を巻き終えた木場は、治療道具を片ずけながら事の詳細を質問する。幸太郎は腕の感覚を確かめながら答えた。
「悪の秘密結社“ショッカー”が何かを企んでるらしく、俺とテディはそれを追ってるってわけ。正確に言うと、“イマジン”っていう怪物が絡んだ事件だからってこともあるんだけどね」
幸太郎の口から先ほどとは違う名前が飛び出し、思わず巧たちの頭上に?マークが浮かぶ。
その様子を見た幸太郎は、思い出したかのように説明を補足する。
「あぁ、そうか・・・あんたたちはイマジン見たことないんだっけ。イマジンっていうのは、人間の願いを聞いて、(自分なりに解釈した結果)その願いを叶えることで契約をして完全に実体化、その人間の記憶の中にある「現在のその人間像を作った最も強い時間」にタイムスリップする。そこで過去を都合の良いように現在や未来を変えて好き勝手してる奴らのこと」
幸太郎はイマジンについて解説する。テディを指差しながら「こいつもイマジンだけどね」と付け加える。
が、それよりも早くテディは一年生組(+千歌)に遊ばれていた。
「こ、この姿は正しく魔界からの使い!?天界から堕天した私を取り込むつもりなのね!この、このッ!」
「な、何をする!?い、痛ッ!普通に痛いからやめろ!」
「善子ちゃん、そんなに強く叩いちゃ駄目だって!壊したら怒られちゃうよ〜」
「ピギィ!?怖い・・・た、巧お兄ちゃん」
「この着ぐるみ!未来ずら〜!」
もう訳がわからない。残った常識人’s(巧、木場、梨子)は思わず頭を抱えてしまった。
その日の夜、巧は一人露天風呂に浸かりながら幸太郎とのやりとりを思い出していた。
(あんた、これからどうするつもりなんだ?)
(さぁね?とりあえずデンライナー直して、他の時代に行かないと。珍しく運が良かったみたいで、明日には出発できそうだし)
(他の時代?どういう事だ?)
(さっきも言った通り、俺は未来から来たんだ。当然、他の時代にだって奴らの手先がいるはずだ。だから俺が行かないと)
(あんた、何でそんなに頑張れるんだよ?自分の事で手一杯じゃないのか?)
(どうしてかな?ただ、俺にしか出来ない事なんだって思ったら、無理してでも守りたいって体が動いてた。俺は誰かが築いてきた過去と未来、その記憶を守りたい。あんたにもそういう大事なものってあるんじゃないの?)
(俺は・・・)
巧は一旦回想を止め、湯で顔を洗う。巧は幸太郎の質問に答えられなかったのだ。夢を守るとは言うものの、未だにオルフェノクと人間が共存できる環境は出来てはいない。こっちに来てからは千歌たちの活動を支える事が主になってはいるが、それもいつまでも続けられる訳ではない。
(俺は、どうすればいいんだ?俺の大事なものって・・・)
巧がそんな事を考えていると、何者かによって浴室のドアが開けられた。
「あれ?あ、ごめん!美渡姉がお風呂空いたよ〜っていうから来たんだけど・・・」
「千歌か・・・いや、すぐに出るから入っていいぞ」
意図的ではないといえ風呂場のドアを開けてしまった千歌。自分の行為に年相応の恥ずかしさを感じる千歌に対して、湯に浸かっている巧(大事なところはタオルで隠してある)は特に恥ずかしがる事もなく、むしろ気を遣ってなのか進んで出て行こうとする。
しかし、それは千歌が許さなかった。
「だ、駄目だよ!今日だって私たちを守るために戦ってくれて、傷ついているのに・・・そうだ!巧くん、私がお背中流しましょうか?」
ドアから顔だけを出して、何を思ったのか巧の背中を流すと言い出した千歌。その発言に言葉を失ってしまい挙げ句の果てに「頭大丈夫か?」という言葉が出かかった巧だったが、本気で自分を心配する千歌の視線に気づき、ボソッと一言だけつぶやいた。
「少し後ろ向いてろ・・・今、用意するから」
その場になんとも言えない空気が流れる。千歌と巧、二人の間に会話は無い。
(うぅ〜・・・何であんな事言っちゃったんだろ?)
千歌は一人羞恥心と戦っていた。自分の発言に戸惑いを覚えながら、目の前にある自分とは少し違う背中を一心に。
「なぁ、千歌。少し聞いてもいいか?」
その時、不意に巧の方から話しかけてきた。お互いにタオルを巻いて体を隠しているとはいえ、年相応の恥ずかしさというものには逆らえない。
千歌は赤みがかった頰を自覚しつつも、巧に返事をした。
「な、何?」
「お前から見て、今の俺はなんかヤバそうに見えるのか?」
巧は自分自身では決して分からない自分の様子について質問した。千歌の想いのこもった視線に何かを感じとったのだろうか。
千歌は泡のついたタオルで巧の背中を洗いながら、その胸中を明かした。
「確かに巧くんはいっつも無愛想だし、何に対しても興味なさそうだし・・・」
千歌の言葉に「・・・悪かったな」と小さく反論する巧。その反応が可笑しかったのか、思わず千歌は頰を緩めてしまった。
「でもね、口ではそう言っても私たちを助けてくれるし、その・・・大事に思ってくれてるって知ってるよ」
千歌の言葉でその場が凍った。が、すぐに自分の発言の意味に気付いたのか、組んであったお湯で巧の背中を流すと足早にその場から立ち去ってしまった。
残された当人はというと・・・
「千歌の奴・・・しゃあねぇ、もう一回入るか?」
「えぇ〜!?千歌ちゃん、乾さんにそんなこと言っちゃったの!?」
「うん・・・どーしよう曜ちゃん?」
自分の部屋に帰った千歌は、曜に連絡をとっていた。先ほどの発言の意味を問いかけていたのだ。
「私、何であんな事言ったんだろ?」
悩む千歌とは対照的に、曜の方はというとどうやら既に答えらしきものが出ているようで、それとなく伝えた。
「千歌ちゃん、もしかしたら・・・乾さんに“恋”してるんじゃないかな?」
「エェェェェェェェェッ!?」
翌日、巧はデンライナーの修理をしている幸太郎たちのもとへ向かった。彼らの言葉の通りなら、今日中には旅立ってしまうはずだ。巧には何とかその前に聞きたいことがあった。
「野上!」
巧は昨日と同じ場所で幸太郎を見つけると、すぐさま詰め寄った。
「な、いきなり何だよ?」
「昨日、言い忘れたんだけどな・・・お前、俺の未来のことも分かるか?」
巧がそう問うと、幸太郎は作業していた手を止めて答えた。
「すぐにって訳じゃないけど、その時代に行けばある程度は分かるよ。もちろん、そこから手を加えることは禁止だし、許さないけど。けど、それがどうしたってわけ?」
幸太郎の言葉を聞いて、巧は自分の問いの真意を伝えた。
「もし、俺の未来に行くことがあったら見てきてほしい。オルフェノクの未来と、あいつらの未来を」
巧の願いを聞いた幸太郎だったが、直後に意外なことを言った。
「それはあまり意味がないんじゃないか?」
幸太郎の言葉の意味を図りかねた巧は思わず聞き返した。
「どういうことだ?」
「俺が時間を移動できるのは、俺が時間の影響を受けない“特異点”だからだ。普通、過去や未来を変えることで現在に何かしらの影響が出るんだ。もしかしたらこの時間で起こった事だってなかった事になるかもしれない。だから俺があんたの未来を見たとしても、必ずしもその未来が訪れるとは限らないんだよ」
幸太郎の説明を受け、巧はようやく言葉の意味を理解する。
「・・・過去や未来を嘆くよりも、今を大事に生きろってことか?」
巧の問いに幸太郎は不敵な笑みを返した。
「そーいうこと。よし、これで大丈夫かな?おいテディ!動かしてくれ!」
すると近くで作業をしていたテディにシステムの起動を頼んだ。しばらくすると、静寂を保っていたデンライナーから駆動音が聞こえ始めた。
「どうなったんだ・・・?」
巧は初めて見るその光景に理解が追いつかなかった。その様子はまるで弱っていたデンライナーが息を吹き返したようだった。
「おーい!乾さーん!」
デンライナーの起動に呼応するかのように、Aqoursメンバーが合流した。そこには当然、千歌もいるわけで・・・。
「ほら、千歌ちゃん。隠れてちゃダメだよ?」
曜の背に隠れていた千歌だったが、抵抗むなしく曜と梨子によって巧の前に押し出された。
「うわわッ・・・!あ、巧くん」
普段通りの巧とは対照的に、どこか煮え切らない様子で恥じらいを隠せないでいる千歌。そこはやはり乙女なのだろうかと。
しかし、そんな瞬間を邪魔する者たちが現れてしまった。
『イーッ!!』
突如現れた黒尽くめの覆面集団が巧や幸太郎たちに襲いかかる。不運にもカイザギアをサイドバッシャーに置いてきてしまったが巧と幸太郎は難なく立ち回っている。しかし、その間に隠れていた別働隊が千歌たちを取り囲んでしまっていた。
「ちょっと!何なのよ、あんたたち!?」
「ま、またこれなの・・・!?」
「ピギィィ!?ルビィは美味しくないですぅ!?」
巧と幸太郎は悲鳴を聞いて彼女たちのもとへ向かおうとするも、キリなく現れる戦闘員が行く手を阻み近づく事が出来ずにいた。
が、そこに現れたのは敵だけではなかった。
『イッ!?』
千歌たちを取り囲んでいた戦闘員が次々と引き剥がされ、倒されていくではないか。巧たちは自分を取り囲む戦闘員を突き放して、ショッカー戦闘員を次々に倒すその人物に思わず目を奪われた。
「良くないなぁ・・・こういうの」
「草加!?」
その人物とは今まで消息不明だったかつての戦友、草加雅人だった。雅人は巧に返事もせず、代わりに手に持っていたケースを巧に投げ渡した。
「これは・・・カイザギア!?」
驚く巧を他所に、雅人は持っていたファイズギアを装着しながら言い放つ。
「今だけは手を貸してやる。さっさと変身しろ!」
雅人に促され、巧は雅人の隣に立ちカイザギアを装着して戦闘員と対峙する。そのすぐあとにベルトを巻いた幸太郎が合流した。
「野上、あいつらは?」
「大丈夫、ちゃんと安全な場所に隠れてる。あ、千歌があんたに伝えたい事があるってさ。それに、もう少しでデンライナーも動かせると思うし」
幸太郎の言葉を受け、胸を撫で下ろす巧。
「俺たちがデンライナーで他の時代に移動すれば、奴らも吊られて追いかけてくるはずだ。だから・・・」
「分かってる。それまでは、俺たちが守ってみせるさ。だろ、草加?」
巧が促すと、雅人は憮然として答えた。
「フッ・・・ま、せいぜい俺の足を引っ張らないでくれよなぁ?」
草加の皮肉を再び聞く日が来るとは。巧は内心堪らなかった。
「野上、草加・・・いくぜ」
「あぁ!」
「フン・・・」
掛け声と同時に巧と雅人は変身コードを入力し、幸太郎はベルトのフォームスイッチを押す。
《9・1・3 》&《5・5・5》Enter Standing by
すると、超特急を彷彿させる待機音が流れ始める。
『変身ッ!!』
巧と雅人はベルトに装填し、幸太郎はライダーパスをベルトにセタッチする事で変身シークエンスを開始させる。
“Complete”
“Strike Form”
巧には黄色いラインが、雅人には紅いラインが、そして幸太郎には藍色のスーツ、鋭角的な電仮面・全身を走るデンレール・胸のターンテーブルが出現する。
ここにファイズ、カイザ、NEW電王の三人の戦士が誕生した。
恐らく次回で最終回だと思います。
そのあとは引き続き、本編をお楽しみいただけると思われます。