モチベが下がらない程度に更新する予定です。
突如現れたファイズの姿に、驚きを隠せずにいるオルフェノク。しかし、巧は気にもとめずにオルフェノクに殴りかかる。
「はぁッ!たぁッ!」
放たれる拳の一発ごとに、嘗ての感覚が蘇る。思えば、オルフェノクの王との決戦からの2年間、ファイズとして戦うことは無かった。そのせいもあってか、体全体がやけに重く感じていた。
「うらぁッ!!」
巧は自身のブランクを振り払うかのように、渾身のキックでオルフェノクを蹴り飛ばした。
「うぅ・・・こんなの、聞いてないぞ・・・!?」
吹き飛ばされたオルフェノクは地を這うようにファイズから逃げようとしたが、一回の跳躍によって先回りされたファイズに体を起こされ、その腹部に連続パンチをもろに食らう。
もはやその拳にブランクなどは微塵も感じられなかった。それを痛感させるかの如く、最後の一発でオルフェノクの体ごと貫いた。
「あっ・・・そんな・・・!?」
オルフェノクの悲痛な叫びは虚空に消え、次の瞬間には全身から蒼炎を上げ、灰となって崩れ落ちた。
巧はその瞬間に目を背ける事なく、ただその様を眺めていた。まるで自分の罪を確認するかのように。
「凄い・・・」
そう呟いた千歌はたった今目の前で起こっていた出来事に、愕然としていた。隣にいる女生徒は、もはや何が起こったのかすら冷静に考えられないようで、さっきから一言も喋らないでいる。この場でただ一人、変身した男の知り合いだけが彼のもとへ駆け寄り、安否を確認していた。
やがて話が落ち着いたのか、変身を解いた男が千歌達の近づいてきた。
「怪我はないか?」
一言それだけを確認する男。千歌も女生徒も啓太郎と共に避難していたので、一切の怪我はなかった事を伝えた。男は「そうか・・・じゃあな」とだけ言うと、右手を庇うかのようにしながらバイクのある方向へ歩いて行った。
「あ、帰り道とか気をつけてね?あと、今日の事は誰にも話さないでくれるかな?」
連れの男が千歌達にそう頼む。図らずとも命を守ってもらった恩もあり、彼の頼みを快諾した。
答えを聞いた男は感謝すると、 変身した男の後を追っていってしまった。
そのすぐ後、バイクの駆動音が聞こえどこかへ走り去ってしまった。その場には千歌と女生徒だけが残された。
「ねぇ、あなた・・・どうして海に入ろうとしたの?」
千歌はかねてから疑問に思っていた事を女生徒に聞く。聞かれた女生徒はそう聞かれた事に驚愕し、改めて話題を先ほどの出来事に戻す。
「今そんなことはいいでしょ!?あなた、さっきの出来事を見て何とも思わないの!?」
やけに興奮した様子で、千歌に迫る女生徒。恐らく現実に起こったことを認めたくないのだろう。千歌はその話題を軽くあしらって、話を進めた。
「私だって何だか分からないし、それにあの人も喋らないでって言ってたじゃん。それよりも何で海に?教えて教えて!」
千歌の勢いに負けたのか、その理由を白状する女生徒。
「海の音を聞きたいの・・・。私、ピアノで曲を作ってるの。でも、海の曲のイメージが浮かばなくって」
曲を作る。彼女の言葉で自分達がその人材を求めている事を思い出す千歌。彼女の事を知るため、さらに質問をする事に。
「凄いねぇ!ここら辺の高校?」
千歌の質問に、女生徒は「東京」とだけ返す。これを聞いて、千歌はますます盛り上がった。
「東京!?あ、だったらさ、スクールアイドルって知ってる?ほら、東京だと有名なグループが沢山いるでしょ?」
千歌は期待を込めて女生徒に質問した。しかし、返ってきたのは想像と違う答えだった。
「え、何の話?私、ずっとピアノばっかりしてきたから、そういうの疎くて・・・」
女生徒の答えに若干目が点になったが、そこは作戦変更。自分の携帯で動画を見せ、興味を持ってもらう事に。
「えっと・・・なんか、普通だね・・・」
今度は季節違いの冷たい風が吹いた。千歌の様子を感じ取ったのか、女生徒は慌てて説明を始める。
「ち、違うの!アイドルっていうから、もっと芸能人みたいなものだと思って・・・」
女生徒の感想に千歌は怒る事はせず、意外にもその意見に同意した。
「だよね。だから、衝撃だったんだよ。私ね、普通なの」
そして、千歌は今までの自分の事を話し始める。
自分は如何に普通で、それでもいつか何かあるんじゃないかと思っていたら、現在に至っていたということを。
「でも、そんな時に出逢ったの・・・あの人達に!」
そして、千歌はその時の感動を言葉にする。
自分と同じでどこにでもいる高校生達が、どこかキラキラ輝いている。一生懸命練習して、心を一つにしてステージに立てば、カッコよくて、感動できて、素敵になれるんだと。
「そして、思ったの。私も仲間と頑張ってみたい!私も輝きたいって!」
千歌の心を垣間見た女生徒は、千歌に向かってエールを送った。
「スクールアイドル、なれるといいわね」
そして、彼女は自分のことを話し始める。
「私は、桜内梨子。・・・学校は、音ノ木坂学院高校」
彼女達のストーリーは、まだ始まったばかり・・・。
時を同じくして、再び目的地へとバイクを走らせていた巧と啓太郎。ふいに、巧はバイクを路肩に寄せて急停止させる。そして、すぐさま自身の右手を抑え、痛みに耐える。
その様子を見た啓太郎は、巧の手にはめているグローブを外し、その手に起こった異変を目の当たりにする。
「たっくん!これどういう事なのさ!?手が・・・!?」
啓太郎が目の当たりにしたのは、巧の右手の一部が灰となって崩れ落ちている状態だった。もちろんこれが初めてではないし、巧自身も分かっていた事だ。
思えば2年間の戦いの際、同じ症状が出ていた。手に持っていたファイズフォンが灰化した手と一緒に落ちていった事は記憶に新しい。
「気にするな、寝てれば治る」
巧は無愛想な態度で、啓太郎からグローブをひったくり再び手にはめる。しかし、啓太郎にはそれが本心ではない事は分かっていた。だからこそ、自分の頼りなさを呪った。
「何で・・・何でだよ、たっくん!何で全部一人で抱え込もうとするのさ・・・!?」
啓太郎はそう言いながら涙を流す。巧はいつもそうだ。誰かの為に自分を犠牲にする。かといって、自分にはどうする事も出来ない。自分は巧のように戦う事は出来ないし、巧の症状を治す事も出来ない。ただ、泣くばかりの自分を殴りたいと思う。
そんな啓太郎の様子を感じ取ったのか、巧は静かに心の内を話し始めた。
「いいんだよ、これでな。これが俺の罪だって言うんなら、背負ってやる。たとえ、体が灰になったとしてもな。ただ、死んでいった彼奴らの・・・木場や草加たちの夢を守りたいんだ。もし、誰かがあいつらの夢を壊そうとするのなら、俺が倒す!そして、オルフェノクである俺自身もな」
巧は今までひた隠しにしてきた本心を語った。啓太郎は涙を拭いながら、オルフェノクである巧に気遣いの言葉をかける。
「気にしなくていいよ!たっくんはたっくんじゃないか!オルフェノクにだって、心はある。もっと俺を頼ってよ・・・!」
巧は啓太郎のお人好しの性格に、改めて感謝する。そして、啓太郎にこんな言葉をかけた。
「だったらよ・・・早く行こうぜ。疲れちまったよ」
巧の裏表のない言葉を聞き、啓太郎は思わず感動していた。そしてすぐさま頷き、サイドカーに乗り込んだ。
啓太郎が乗り込んだのを確認すると、巧は先ほどよりも澄んだ気持ちでバイクを走らせるのだった。
「ただいま〜・・・疲れたよぉ〜」
その日の夜、千歌は旅館(実家)に帰宅した。そしていつもの通り自分の部屋でくつろごうとした時、姉の高海志満に呼び止められる。
「千歌、ちょっと話があるからおいで」
特に断る理由も無かったので後をついていくと、なぜか家族全員が集合していた。
「しま姉、これどういう事?」
千歌が志満に聞くが「説明するから座って」とだけ言う。千歌は渋々ながらも従った。
「さて、集まってくれてありがとう。実は今日から旅館の一室に住む事になった人がいるから紹介したかったんだ。入っておいで!」
志満の突然の報告に、千歌だけが驚いていた。何故なら、入ってきた人物というのが・・・。
「どうも!今日からお世話になります。菊池啓太郎です!」
「・・・乾 巧だ。さっきぶりだな。お前は夢を持っているか?」
つい先ほどの出来事の当事者たちだったからである。
Open your eyes for the next φ's
「スクールアイドルゥ?知るか、そんなもん」
「生徒会長、何でか嫌いだもんね。スクールアイドル」
「前途多難すぎるよ〜」
「変わるよ、きっと。そんな気がする」
「ちっぽけでも、くだらない夢なんか無いってな!」
第3話 儚い花