嬉しい反面、負けてられませんと気持ちを強く持ちたいと思います。
というわけで、ご感想をこれでもかというくらいお待ちしております!
フリじゃないですよ!
「東京?」
Aqoursが東京スクールアイドルワールド運営委員会に招待されたその日の夜、黒澤宅でもその吉報は届いていた。ルビィが東京行きの了承を得るために姉のダイヤに話したのだ。
「イベントで、一緒に歌いませんかって・・・やっぱり、駄目?」
ルビィは尚も黙っているダイヤの返答を待つ。長期戦が予想されたが、意外にもその沈黙も数瞬で破られた。
「ルビィが自分で決めた事です。だったら、誰がどう思おうが関係ありません・・・でしょ?ただし、行く以上は気を抜かず!ですわよ?」
ダイヤの言葉を聞いた途端、パアァ!というように笑みを浮かべたルビィ。こうも簡単に許可を得られるとは、一体誰が予想できたのか?
ルビィの笑みを見たダイヤは静かにその場から離れようとする。
「ありがとう!お姉ちゃん!あぁ・・・みんなでお泊まりかぁ。どんな格好するのかな・・・巧お兄ちゃん」
ピクッという音を立て、その場で硬直するダイヤ。次の瞬間には何も言わずにルビィの顔から数センチの所まで歩み寄っていた。
「ルビィ。“巧お兄ちゃん”とはどういう意味か説明してもらいましょうか?」
その表情は至って真剣、舐めたら危険。隙を見せたら明日は無いぜ!と言ったところか。
「えぇ!?い、いや・・・巧お兄ちゃんにも来てもらう!って千歌ちゃんが。何か不味かったかな?」
どうやら本気で分かっていない様子のルビィに、思わず頭を抱えるダイヤ。やがて、その全貌を説明し始めた。
「ルビィ・・・年頃の男女が一つ屋根の下で過ごすというのは、どういう事か分かっていますか?」
「えっと、Aqoursのみんなや巧お兄ちゃんと一緒で・・・楽しい?」
ルビィはふと思った気持ちを吐露する。確かな答えがあるわけでは無く、何となくのイメージで語る。
「はぁ・・・まぁ他の男性ならともかく、乾さんでしたら問題ないはず・・・今の話は忘れて結構ですわ」
ダイヤは何か諦めたようにそれ以上語る事なく、その場を立ち去っていった。
「お姉ちゃん・・・結局、何が言いたかったんだろ?」
ルビィの問いかけに答えるものはいなかった。
時は経ち、東京行き当日の朝。駅に集まりいざ東京へ出発するAqoursのメンバー。しかし、そこに巧の姿はなかった。途中、東京行きの電車内でその話題が持ち上がることは当然だった。
「そういえば千歌ちゃん、今更なんだけど乾さんは?」
曜に聞かれた千歌はどういうわけが難しい顔をしながら答えた。
「うーん、何か用事ができたから先に東京行ったみたいだよね・・・。遅くても夜には合流するから、それまで好きにしてろーって言ってたよ」
その話題に乗っかったのは曜だけではなく、一年生組も興味津々といった様子だ。
「東京に着いたら、まず何をしようか?」
曜が何気なくそう聞いた。最初に食いついたのは善子だった。
「そりゃあもちろん、最新の堕天使グッズを買いまくる!!情報の最先端を行く東京ならではのグッズが・・・エヘヘッ」
どうやら東京で見つけた堕天使グッズを身につけた姿を妄想しているようで、一人で恍惚な笑みを浮かべる善子。そんな善子を他所に話はどんどん進んで行く。
「私は東京の美味しい食べ物をいっぱい食べたいずら!それまではこののっぽパンで我慢するずら!」
そう言いながら花丸に吸い込まれていくのっぽパン。妄想から抜け出した善子が残りののっぽパンの数に気がついて、花丸を止める。
「ちょっとずら丸!一人で食べ過ぎよ!」
「のっぽパンは静岡県民のソウルフードずら!いくら善子ちゃんでも、これだけは譲れないずら!」
「私も静岡県民だから!堕天使だけどね!いいからもう食べるのやめなさいよ!」
「ずらずらずらずらずら!」
車内で必死の攻防が繰り広げられる。のっぽパンが入った最後の袋を互いに引っ張り合って。
流石に他の乗客の迷惑になりかねないので、曜が止めに入る。
その横で千歌とルビィが話を続ける。
「ルビィは、スクールアイドルのグッズがあるお店を周りたいです!」
「あ、それいいね〜!μ'sのグッズ、たくさんあるんだろうなぁ〜」
二人の脳内がμ'sで満たされるのに時間はかからなかった。自然と満足気な笑みがこぼれる。
「エヘヘッ♪」
「ウフフッ♪」
そんな中、千歌は一人ずっと窓の外を眺めている梨子に気がついた。どこか思い詰めた表情をしている梨子を心配して声をかけた。
「梨子ちゃん、どうしたの?」
「千歌ちゃん・・・いやほら、今回は町の人たちや乾さんとかスカイランタンもないでしょ?それで少し緊張してるだけ」
「そっか・・・でも、大丈夫だよ!私たちがちゃんと気持ちを伝えれば!」
「・・・そうだね。ごめん、ちょっと弱気になってたかも」
それを聞いた千歌は満足そうに自分の席に戻っていった。この時はまだ梨子の心の蟠りに気づくことはできなかった千歌たちだった。
Aqoursが東京に到着したのと同じ頃、一足先に東京に赴いた巧は、とあるカフェに来ていた。以前から約束をしていた人物と会うためである。
しばらく待っていると、漸く目的の人物が現れた。
「乾さん、お久しぶりです」
「あぁ、悪いな。いきなり押しかけるみたいな真似して」
その人物とはかつて巧たちと共にオルフェノクと戦った仲間の阿部里奈だった。巧は里奈にここへ来た目的を話す。
「あんたに来てもらったのは他でもない。すぐにでも三原の居場所が知りたい」
巧の言葉を受けても里奈は黙っている。その様子を変に思った巧だったが、先に里奈が口を開いた。
「実は・・・三原くんが消えてしまったんです!」
切実に切り出されたその言葉は、今までの疑問を裏付けるのには十分すぎるものだった。
「ちょうど今から三週間ほど前のことです。突然、創才児童園のアルバイトのシフトを変わってくれと連絡があったんです。その時は用事があるからって言われたんですけど・・・まさか居なくなってしまうなんて」
そう言って俯く里奈。今の話から、三原と連絡を取った人物は巧という事になることを意味していた。
「それともう一つ、見てもらいたいものがあるんです」
そう言って里奈はバッグから数枚の写真を巧に見せる。そこに写っているものを見た巧は、驚愕の事実を知る事となった。
「これは・・・デルタ!?おい、どういう事だ?」
写っていたのはオルフェノクと戦うデルタの姿だった。しかし、それ以上に危惧するべきことがあった。
「乾さん、気がつきませんか?この写真が撮られた場所はそれぞれなのに、ほぼ同じ時間に撮られたものなんです」
そう、これら全ての写真に収められたデルタが撮られた時間。それら全てがせいぜい二分程度の差で、さらにその時間では往復が不可能な距離で撮影されたのだ。この事実から、巧は一つの結論に辿り着く。
「つまり、デルタが何人もいるってことか?」
巧の問いかけに里奈は静かに頷いた。
「以前、照夫くんを護衛していたスマートブレインの兵士を覚えていますか?恐らく、それと同じなんだと思います」
里奈の言葉を受けて、巧は改めて事態の深刻さを理解した。
「デルタが量産されてるって事かよ・・・マジか」
「これが、μ'sがいつも練習していたって階段・・・」
だいぶ日も落ちてきた頃、Aqoursは神田明神を訪れていた。自分たちの偉大な先輩であるμ'sが、かつてそこにいたのだ。彼女たちを目指す者ならば、一度は訪れる謂わば聖地だ。
Aqoursが名物の階段を登りきったその時、透き通るような歌声が聞こえてきた。先客がいたようだ。
「あら、あなた達、もしかしてAqoursの皆さん?PV、とても素晴らしかったです」
歌っていた少女の内の一人がAqoursの存在に気づいて、話しかけてきた。
「もしかして、明日のイベントでいらしたんですか?」
「え、はい・・・」
それを聞いた少女は一瞬黙り込んだが、すぐに何事もなく話し始めた。
「そうですか。楽しみにしてます」
少女たちが千歌たちの横を通り過ぎる。しかし、そこに現れたのは彼女たちだけではなかった。
「ウェアアアッ!!」
「・・・ッ!?」
突然、何処からかオルフェノクが現れ、少女たちに襲いかかった。少女たちは寸での所で何とか回避して、オルフェノクと対峙する。
「オルフェノク!?乾さんを呼ばないと・・・でも、私たちじゃない?」
梨子が冷静に分析していたが、少女たちを見捨てることはできず、急いで巧を呼び出す。
「乾さん!すぐに来てください!オルフェノクが!」
何とか巧を呼び出したが、オルフェノクはAqoursに向かってくることはなく、少女たちを執拗に狙っていた。
「またあなたですか!」
「ちょっと、ヤバイかも・・・」
少女たちがオルフェノクの攻撃を何とか回避していたが、一人がオルフェノクに捕まってしまう。
首を掴まれ、体ごと掴み上げられる。
「クッ・・・!!」
「理亞ッ!」
オルフェノクに捕まった少女を助けようと挑んだが、少女と同様に掴み上げられて拘束されてしまった。
「グゥ・・・!」
締め上げられる痛みに苦悶の表情を見せる少女たち。絶体絶命のピンチと思われたその時、何者かがオルフェノクに飛び蹴りを喰らわせた。
「ハッ!」
「グゥアアッ!!」
完全にガラ空きだったオルフェノクを背中から蹴り飛ばしたの謎の人物。Aqoursはその姿を見た途端、衝撃を受けた。
「巧くん・・・じゃない?」
そこに居たのは、巧が変身する姿と非常によく似た戦士だった。カイザとは違って全身が白いラインに包まれていて、ベルトの横に銃が携帯されていることくらいしか差異はないだろうか。
「あなた達、早くその子たちを避難させて」
謎の戦士がAqoursに少女たちの避難を指示する。声からして女性のようだ。その凜とした声に一瞬心を奪われかけたが、指示の通りに少女たちを移動させた。
「何だお前は?奴らは俺の獲物だ!」
オルフェノクは戦士目掛けて走り出す。戦士に掴みかかったが、軽くいなされて逆に投げ飛ばされた。
戦士はベルト横の銃を取り出して、ドライバーにセットされているミッションメモリーを差し込んだ。
“Ready”
音声と共に銃身が伸び、必殺技の体勢に入る。阻止しようとオルフェノクが向かってくるが、容赦なく殴り飛ばしてオルフェノクを吹き飛ばす。
「・・・Check!」
“Exceed charge”
戦士が音声入力をすると、ベルトからフォトンブラッドが出力されて、持っていた銃に伝わる。そして、次の瞬間には銃から発射されたポインティングマーカー光がオルフェノクを捉えて、三角錐状に展開して動きを拘束する。
「ハァッ!!」
天高く跳んだ戦士はオルフェノク目掛けて急降下キックを炸裂させる。同時に三角錐型のポインティングマーカーもドリルのように回転し猛毒として体内に侵入する。
次の瞬間、姿を現した戦士の背後には紅い炎を上げ、その場で灰になったオルフェノクの姿があった。
「お前ら!オルフェノクはどうした!?」
少し遅れてカイザが階段を登って辿り着いた。Aqoursの無事を確認して安心したのも束の間、すぐに視線をもう一人の戦士に移した。
「デルタ・・・スマートブレインの手先か?」
デルタと呼ばれた戦士はその質問に答えることはなく、どこかへ飛び去ってしまった。周りに危険がないことを確認した上で、巧はカイザの変身を解いた。
「巧くん!」
千歌たちが巧に歩み寄る。今回ばかりは不安しかなかったことは巧だけが知っている。皮肉にもデルタに助けられた形になっているからだ。
「乾さん、もしかしてさっきの知ってるんですか?」
曜は巧が何かを知ってると勘付いて、質問する。隠すような事でもないが、今はそれよりも先にやる事があった。
「まぁな。それより・・・おい、あんたら!怪我はしてないか?」
巧は少女たちの側に歩み寄る。軽く見たところ、どこかに酷い怪我はしていないようだ。
「お気遣い感謝します。見ての通り、私たちは大丈夫ですので・・・理亞?」
怪我の容態を確認していると、理亞と呼ばれた少女が何かを見つめている事に気づいた。その視線の先にあるものとは?
「お、おい・・・何なんだよ」
どうやら理亞という少女は巧を見つめているらしい。どういう訳か分からず困惑する巧に対して、もう一人の少女は何かに気づいたようだ。
「・・・フフッ、どうやら理亞はあなたの事が気にいったみたいですね。私は鹿角聖良、こっちは妹の理亞です。あなたとはもしかしたら長い付き合いになるかもしれませんね」
「はぁ?だから、どういう意味だ・・・?」
聖良の言葉にさらに困惑する巧だったが、それより先に鹿角姉妹は別れの挨拶をして立ち去ってしまった。
「一体何だってんだ・・・まぁ、いいか。おい!お前らはこれからどうするんだ?」
巧は再び千歌たちのもとに集まり、今後の予定を聞き出す。早朝から出ていた為にAqoursの予定を何一つ知らないのだ。
「とりあえず、このまま旅館に行こうと思いますけど。乾さんもそれでいいですか?」
予定を管理していた曜に聞かれ、快諾する巧。
「あぁ、俺も行く。お前らとな」
こうして巧たちは予定の通りに旅館へと向かうのだった。
背後からその姿を狙われているとも知らずに。
「Aqours、覚えましたよ。あなた達が乾さんを・・・許しません!!」
Open your eyes for the next φ’s
「まるのバックトゥザぴよこ万十~!!」
「期待されるって、どういう気持なんだろうね・・・」
「俺はここで見てる。行ってこい」
「今、全力で輝こう!」
第20話 夢、儚く散るとき