やはり俺がドキドキ!させられるのはまちがっている 作:トマト嫌い8マン
翌日、一日中相田がそわそわしているのを苦笑する菱川とともに眺めながら、俺たちは無事にその日の授業を終わらせた。生徒会としての用事を電光石火の速さで済ませた相田たちをしばし待ってから、またまた一緒に下校、相田家、正確には洋食屋、「ぶたのしっぽ」へ直行した。
「少し早く来すぎたみたいね」
「テレビ局のスタッフもまだ見たいだしな」
「まこぴー、今日は大丈夫だよね?」
「まぁ昨日練習したしな、コツさえ忘れてなければ問題ないだろ」
とは言ったものの、なんだか俺も緊張してきた。ただ誰かの仕事を眺めるだけならいざ知らず、今回の場合はある意味自分も大きくかかわってしまったわけで。弟子を見守る師匠ってこんな気持ちなのかしらん?
到着して早々撮影スタッフが慌ただしく動き始めた。しばらくして、剣崎真琴とマネージャーも到着し、支度を済ませる。さらには何故かありすまで来て驚いたが、よくよく見るとスタッフの腕章にヨツバテレビと書いてあるのが見えたのですぐに納得した。また特権行使ですか。撮影が始まる前に、剣崎がこちらへ歩いて来た。
「あっ、まこぴー!おはよう、でいいんだよね?」
「ええ、おはよう」
「頑張ってね。あたしたち、しっかり応援するから」
「昨日の通りにできれば問題ないはずよ」
「リラックスして、頑張ってくださいな」
皆一言ずつ激励の言葉をかける。チラリと剣崎の視線がこちらを向いた。この流れで俺が何も言わない、のは流石にないよな。それに教えたのは俺だし、送り出す責任があるのかもしれない。
「まぁ、頑張れよ」
「ええ」
「まぁ、あれだ。うまく作るとか失敗がダメとか、そういうこと考えながら作るよりかは、食べる相手を喜ばせることだけを考えればいいんじゃねぇの?つまりあれだな。要は気持ちを込めろってことだ」
「何その言い回し。でも、そうね。行ってくるわ」
全ての準備が終わり、相田の父と剣崎が並んでキッチンに立った。いよいよ始まる。ごくり、と思わず息を飲んだ。
「本番!3、2、1」
料理体験番組はこうして始まった。剣崎は昨日のリハーサルの時とは比べ物にならないほど手際よく料理を進めていた。卵を割り、材料を切る。料理慣れしていると言えるほどの腕ではないものの、初心者にしては中々と言えるレベルだ。ここまで時間的には1日も経っていないというのに。こっそりマネージャーが、「あの子、珍しく家で料理したのよ。練習したいからって」と、教えてくれた。というかマネージャーと一緒に住んでるのか?血縁者?
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「で、できた」
フライパンから綺麗に整ったオムライスが皿に移される。ケチャップを上にかけて、ついに料理は無事に完成した。流石に完璧!とまでは言えないものの、十分見た目も綺麗だった。ただ、問題としてあげられるとしたら
「多くね?」
材料が明らかに多すぎたのだ。その証拠に通常のオムライスと比べても2、3倍の大きさになっている。
「あ、すみません。あたしが材料多めに用意しちゃったから」
「あ、いえいえ。大丈夫ですよ。映像的には見栄えしますからね。そうだ。あなた方も一緒に食べるところを取らせてもらってもいいですか?きっといい絵が撮れると思うので」
プロデューサーからの頼みにより、相田、菱川、ありすの3人が剣崎と一緒に食べるところを撮ることになった。まぁ、三人とも剣崎と並んでもなんら見劣りしないルックスの持ち主だし、絵的にいい感じになりそうだしな。ノリノリの相田、緊張気味の菱川、そしていつもニコニコのありす、そして流石はアイドルという感じの剣崎。4人がテーブルに腰かけ、ともにオムライスを食べる・・・っていうか、昨日の夕飯もオムライスだったんだけどな。
「あぁ、腹減ったなぁ。俺も撮ってばかりじゃなくて、オムライス食べたいな・・・」
ふと、カメラを持っていたスタッフのつぶやきが聞こえた。まぁこういうおいしそうに食べているのを見るとなんだか自分も食べたくなる感情はわからんでもない。そろそろおやつ時ともいえる。しかしそういうのを我慢してでも仕事しなければならないと考えると、やっぱりいつでも時間が取れる専業主夫になるしかないな。
ガチャリ、と玄関のドアが開く音がした。誰か来た?顔を廊下に出して確認すると、そこには
「お前の欲望を叶えてやるよ」
「イーラ!?」
ジコチュー集団の一人、イーラが立っていた。指を鳴らすイーラ。途端にカメラを持っていたスタッフが苦しみ出し、豚のジコチューが現れた。
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「ハラヘッタブー!」
大きな声を上げ、ジコチューはなんと壁を食い破り、撮影現場に入ろうとした。と、丸い体型のため腹が支えているようだった。すぐさま相田たちは机の下に隠れていなくなったように見せた。それを確認し、俺と執事さんは他の人を避難させることにした。
「早く外へ!急いで下さい!」
「でも、マナたちが」
「ご安心を。既にわたくしが避難させました。さぁ、どうぞこちらへ」
執事さんに促されてスタッフも相田の家族も外へ出た。それを確認し、部屋に戻ると、
「ダビィ」
「その表情、待ってたわ」
ポンッと音を立て、剣崎のマネージャーは姿を変えた。シャルルたちとよく似た、携帯端末状の姿に。
「プリキュア・ラブリンク!勇気の刃、キュアソード!このキュアソードが、愛の剣であなたの野望を断ち切ってみせる!」
ついに、キュアソードの正体が判明した。それはやっぱり剣崎真琴だったのだ。凛とした姿はアイドルの時とは違い、鋭い雰囲気、抜かれた剣のようだった。ラビーズをダビィにセットするキュアソード。
「閃け、ホーリーソード!」
腕を横に一閃すると、そこから無数の刃が飛び出し、ジコチューの体を包み込んだ。浄化されたジコチューのハートは、元のスタッフの元へ戻って行った。
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「まこぴー、やっぱりキュアソードだったんだね」
「ようやく正体を教えてくれたわね」
「別に、見てられなかっただけよ。それに、借りもあるしね」
借りのくだりでソードの視線がこちらにくるのを感じた。借りって俺に?料理のことで?
「料理教えただけだ。大した借りじゃないだろ」
「それだけじゃないわよ。あなたには2回も助けてもらったじゃない」
「は?」
なんのことだったかあんまりよく思い出せない。あ、一回はあのスタジオでのやつか。もう一つは?
「クローバータワーのことよ」
「は?」
「落ちそうになった時、最初に助けようとしてくれたじゃない」
「いや、それも結局は相田だったし。というかあんまし貸しだの借りだの、そういうのはやめとこうぜ。収拾がつかなくなりそうだ」
「そ、そうね」
「なんだもう終わりか?面白そうな会話をしていたのに、残念だ」
突然知らない男の声が響いた。いつの間に現れたのか、黒い服にサングラスを掛けた男性がそこにはいた。ただ、その白い髪は年から来たものではなさそうだ。
「誰!?」
「名乗る必要はないさ。どうせお前たちはこれから消えるんだからな」
そう男が言うと、突然床が消え、大きな穴が現れた。どうすることもできず俺たち5人はその穴へ落ちていった。
「もうこの世界に光が届くことはない。ここは我々、ジコチューの世界だ」
なんだか展開がうまくいかない気がするなぁ
難しいなぁ