やはり俺がドキドキ!させられるのはまちがっている 作:トマト嫌い8マン
何やってんの俺
ホームルームが終わり、先生が教室を出ると、早速廊下が騒がしくなった。他のクラスの連中もわざわざ見に来たらしい。男子と女子のグループが、それぞれ別々の隅から剣崎のことを眺めていた。とりあえず俺は隣で目立たないように机に伏せて寝たふりを続けながらその様子を見ていた。
「あたしファンなんだ!すっごく嬉しい」
「テレビで見るのとはやっぱり違うね」
「本当に可愛いね!」
「生まこぴー、超かわいい」
「俺このクラスでよかった〜」
「僕なんて席が前ですよ、前」
はい、唯一席が隣な俺ですけど何か?まぁ、割とどうでもいいが。流石に話しかけるのは気がひけるのだろうか。やっぱり国民的アイドルともなると大変だな、色々と。
しかしそんな中で例外は当然いるわけで、堂々と話しかけているやつが約2名いた。もうお察しだろうが、我らが相田マナとその妻(笑)の菱川六花です。うん、かっこわらいって実際の会話だと絶対使わないよな。
「ビックリしたよー。まさか転校してくるなんて」
「急にどうしたの?」
「王女様を見つけ出すためにも、もっとこっちの世界のことも勉強しようと思って」
「もうキュンキュンだよ!まこぴーとクラスメートになれるなんて。歓迎するよ!ようこそ、大貝第一中学校へ」
差し出された相田の手を、剣崎は躊躇いなくとった。途端にどよめくクラスの連中。流石に注目されているのに戸惑う相田と菱川。しかしそこはさすが人気アイドル、笑顔を見せることで生徒たちの心をガッチリと掴んでしまったようだ。
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一時限目のチャイムがなり、生徒たちは全員席についた。担任が再び教卓に立つ。
「それじゃあ授業を始めるぞー、とその前にさっき言い忘れてたことがあったな。比企谷〜」
「ゔえっ、あ、はい」
突然名前を呼ばれたせいで思っきし変な声が出てしまった。クスクスと小さい笑い声が聞こえる。なんでわざわざクラス全員の前で呼ぶんですかね、授業後でもいいでしょうに。が、次の先生の発言で笑い声がピタリと止むこととなった。
「しばらく剣崎の面倒見てやってくれ。学校案内と授業中のサポート、任せたぞ」
「えっ」
「せんせー、俺がやります!」
「私たちがやりますよ」
「いやいや僕が」
クラスがまた騒がしくなる。剣崎とお近づきになりたいのかみんなこぞって立候補する。そんなに剣崎が好きなのかよ、お前ら。俺はというと別に誰がやってもいいだろ、と先生が他の人を指名するのを待っていた。というかこういうのは相田が適任だろ。
「はいはい、みんな落ち着きなさいな。そうやってはしゃぎすぎるから彼にしたんだよ。彼は剣崎が来ても冷静でいたからね。ここではアイドルとしてではなく、一生徒だ。そうして接することができる彼が適任だろう」
「あたしも八幡君がいいと思う!」
手を挙げてそう宣言したのは相田だった。てっきり自分がやると言い出すと思っていた俺を含むクラス全員があっけにとられた。
「まこぴーも、八幡君でいい?」
「ええ。お願いするわ」
「決まり!八幡君、まこぴーのことしっかりとお願いね」
「えっ、あ、おう」
本人はそれでいいのか?ちらりと隣を見るとばっちり剣崎と目が合ってしまった。笑顔を向けられたので取り敢えず頷きで返事をする。
「またあいつばかり」
「ちくしょー、羨ましいなぁ」
「爆ぜればいいのに」
「俺だってまこぴーとお近づきになりたいのに」
「相田さんたちとも仲良いですしね」
「ねぇねぇ、もしかしてまこぴーも?」
「それってヤバくない?どこで知り合ったんだろう?」
「でもそれなら生徒会長が比企谷君を推すかな?」
「そこはほら、無自覚なんじゃない?」
「一番気にしそうなのは六花かな」
「三つ巴ってやつ?なんだか面白そう」
またなにやら色々と聞こえてくる。そういうことは本人に聞こえないように話すものでしょうが。男子は恨めしそうに、女子は興味津々にこっちを見て来てやがる。まぁ、王女のことを探すことも考えたら秘密を知ってるやつのほうがいいか。相田や菱川は生徒会で忙しい時もあるしな。
「まぁ、よろしくな」
「ええ。よろしくね」
すると剣崎が手を差し出す。相田の時のように握手のつもりなのだろうが、今ここでやらないとダメですかね?ただでさえ周りの視線が痛いのに。が、断ったら断ったで剣崎に失礼だしな。取り敢えず握手に応じると、黄色い歓声っぽいのと悲壮感あふれる叫び声みたいなのが教室に響いた。
「君たちね、今授業中なの忘れてるでしょ?これ怒られるの俺なんだからね」
先生、すみませんけど自業自得な気もします。
どうやったら間違えるんだろうか