やはり俺がドキドキ!させられるのはまちがっている   作:トマト嫌い8マン

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ぶっちゃけありえない!

まぁ、今回はこの二人を絡ませたいがためにこうしただけなんですけどね笑


一難去ってまた一難

バサリ———

 

落下する中目を瞑った俺が聞いたのは、重々しい羽ばたきの音。まるで巨大な羽が風を切るかのような音。だが、当然俺に羽なんてないし、アイちゃんだったとしても、こんなにはっきりした音にはならない。

 

幻聴か……

 

そう思った瞬間、浮遊感が止まった。言っておくが、落下が完了して感覚が消失したわけではない。というかそれもう死んでるよね?終わりだよね?先生の次回作にご期待ください、ってなるアレだよね?

 

まぁ、今回はそうはならなかった。

 

俺が感じたのは、軽い衝撃と、柔らかい感触。そう、犬や猫の体毛のような、柔らかくて温かいもの。

 

恐る恐る目を開くと、

 

「間に合ったでござる!」

「お兄ちゃん、ナイスキャッチクル!」

「アイ、アーイ!」

 

巨大な鳥のような姿の生き物が、俺たちを背に乗せ、空を飛んでいる。いつの間に合流したのか、アイちゃんがもふもふの感触を堪能している。無事なことにホッとしながら、もう1人に目を向ける。頭付近に座る影は見覚えがあった。ほんの数時間前に、通信越しに会っただけではあったが。

 

「お前、キャンディ、だよな?」

「クル?あっ、シャルルのとこにいた男の子クル!大丈夫クル?」

「あ、ああ。悪い、助かった。あんたも、えーと」

「拙者、キャンディの兄、ポップと申す。ですが挨拶は後。まずはプリキュアを助けるのが先決でござる!」

 

一瞬だけ顔をこちらに向け、名乗る鳥……いや、妖精か。にしても、こんな大きい妖精もいるのか……やべぇ、普通にかっこいいじゃねえかよ。

 

と、呆けていた状態から回復したのか、グレルとエンエンが腕の中から飛び出して、頭の方へと駆け寄る。

 

「お願いします!滝の方へと向かってください!」

「滝クル?」

「その下に、プリキュアの妖精と変身アイテムがあるんだ!」

「お兄ちゃん!」

「了解でござる!皆の者、しっかり掴まるでござる!」

 

加速して滝へと向かうポップ。空を見ると、既に太陽の輝きが完全に失われてしまったらしい。わずかに見える光は、擬似的な星や月から与えられるもの。幸い、そちらはまだ手をつけられていないらしい。

 

「で?どうやって滝の下に行くんだ?」

「拙者が中に向かうでござる。流されないように、しっかり掴まるでござるよ」

「わかった。妖精たちの捕まった檻を見つけたら、陸まで引っ張りあげるぞ」

「うん」「ああ」「クル」

 

頷く妖精たち。かなり危険な行動になるが、みんな覚悟が決まっているらしい。相田たちの時間稼ぎだって、いつまでも持つわけじゃない。

 

急がないと———

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「煌きなさい!トゥインクルダイヤモンド!」

 

キュアダイヤモンドによって放たれた冷気が次々に影を凍らせ、浄化していく。しかしそれとほぼ同じペース、いやそれ以上に、影は増殖を繰り返していく。

 

「まだまだぁぁぁあ!」

「閃け!ホーリーソード!」

 

迫り来る影の軍団に対し、その正面の空間を一閃するキュアソード。無数の光の刃が影を貫き、浄化する。

 

「キリがないわね」

「来る!」

 

反撃とばかりに影が迫り来る。連続で影の力を込めた球体の攻撃が口から放たれる。

 

「カッチカチの、ロゼッタウォール!」

 

狙われたソードとダイヤモンドの前にロゼッタが降り立ち、両手に作り出した盾で攻撃を防ぐ。即座に飛び上がるハート。

 

「あなたに届け!マイスイートハート!」

 

胸のハートのブローチから放たれた光が、正面の影を一掃する。しかしそれでもなお、影の勢いは衰えない。

 

「だんだんわかってきたぞ、お前たちの技」

 

「あの影、私たちの攻撃を受けながら、分析してたの?」

「なかなか賢いですわ」

「関係ないわ。やることは変わらないもの」

 

気合いを入れるように地面を踏みしめるプリキュアたち。決して状況は良くないものの、彼女の笑みが曇る様子はない。

 

「もう少しだから、みんな、頑張ろう!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここだ……でも、」

「すごい勢いクル……」

 

間近で見下ろした滝の勢いは、正直予想以上だった。下の川もやたらと勢いのいい水しぶきが上がっている。というか何あれ?なんで光もほとんどないのに虹がかかってるの?しかもなんか石とか弾いてるし、マジモンの橋なの?

 

「ポップ、水面ギリギリまで降りてくれ」

「ぬ?中ではないでござるか?」

「でかいお前だけならともかく、こいつらじゃ流れに逆らえねぇよ。だから、俺が探す。んで、上に上げるから、お前が引っ張り上げてくれ」

「それは……とても危険でござるよ」

 

そんな深刻そうな声出すなよ、余計に怖いだろうが。いや、見てわかる。この流れの中で何かを探すのは大変だ。探すだけならまだしも、それを水面から上げるために持たなければならない。その間、どこまで踏ん張れるか……けどまぁ、こういうときあいつなら笑いながらこう言うんだろ。

 

「なんとかなるだろ、多分……知らんけど」

 

あ、ダメでした。うん、あそこまで自信満々にはなれないです、はい。そんな俺の回答に、一瞬キョトンとした顔をしたものの、ポップは笑みを浮かべた。

 

「なんとかなる……でござるか。確かに!」

 

言うが早いか、ポップは水面に向かって降下を始める。

 

「それにしても、こう言っては悪いでござるが、八幡殿からそんな言葉が出るとは思わなかったでござる」

「奇遇だな。俺も俺がこんなこと言うとは思わなかったぜ」

「案外気が合いそうでござるな」

「まっ、同じ兄だからな」

「ほほう。では下に誰か?」

「妹だ」

「なんと。同じでござるか」

「だな」

「では気があうもの同士、パートナーになってみるでござるか?」

「冗談でもやめてくれ。あんな衣装着た俺とか、それだけで兵器だろ」

「違いない」

 

バカみたいな軽口を叩き合いながら、俺たちは水面まで降りた。俺たちの様子を不思議そうに見ているグレルたち。まぁ、難しいことは考えなくて良いさ。

 

それに、決戦前の日常会話とか、若干死亡フラグっぽくて笑えねぇしな。

 

「八幡殿」

「ああ」

 

小さく頷き、深呼吸を繰り返す。

 

落ち着け。

 

水の中で慌てたら終わりだ。

 

だから落ち着け。

 

落ち着いて、探すことだけに集中しろ。

 

「よしっ」

 

最後にしっかりと腹に空気を溜め込み、ポップの背中から飛び降りる。

 

瞬間、一気に冷たさが襲いかかった。

 




いい加減プリキュア復活を描きたい……

まぁ、あと2話くらいか?
頑張るしかないか

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