やはり俺がドキドキ!させられるのはまちがっている 作:トマト嫌い8マン
I˙꒳˙)
( ๑´•ω•)੭_□ ソッ
( 'ω')ノシサラバ
最初に思ったこと。ゴーグルもなしに水の中に潜るのって、やっぱキツイわ。特に流れが速い水だと、目を開けるのもキツイ。
けれどもそんな弱音を吐いている暇なんてあるはずもなく、暫く流れに逆らっていると、なんとか大きめの岩を掴むことができた。
(けど、どっから探せばいいのか……って、ん?)
岩を掴んでいたはずの手に、何か不思議な感触のものが当たる。ゴツゴツしておらず、硬さ以外に弾力のようなものが。慌てて手が触れているものを確認する。
真っ黒な墨のようなものが、カプセルのような形を形成している。なんとか目を凝らして見ると、中には色とりどりの妖精と、携帯やら大きい丸い物やらが見える。
(っ、これか!うおっ!?)
すぐに持ち上げようと思ったものの、思ったよりも重いのと、流れが影響して、うまくいかない。更にこのままでは息が持ちそうになかった。
(一旦浮上してから、戻るしかないな……場所は分かってる……なら!)
急いで水面まで泳ぐ。水しぶきが上がる中、なんとか呼吸を整える。
「八幡殿!見つかったでござるか?」
「っ、ぷはっ!はっ、はっ…ああ!これから取りに潜る!だから水面に俺の手か檻が上がったら、つかんで引き上げてくれ!」
「了解でござる!八幡殿、無茶はなされぬよう!」
最後に大きく息を吸い、再び水の中に再び突っ込む。大まかな場所が分かっているなら、後はそこをめがけるだけで時間は短縮できる。今度はすぐに檻までたどり着いた。
(よしっ、掴んだ……後はこれを、っ!?)
なんとか檻を持ち上げ、水面を目指そうとしたその時、突然、首元に何かが巻きつく。
(なんだこれっ!?絞まる……っ!)
首元への圧迫感。まるで浮上させまいとするように引いて来ている。
(っ、これ…影か!?)
首元を見下ろすと、掴んでいた檻の形状が変化し、細めの黒い紐のようなものが伸びている。どうやらこの檻もある程度の意思があるらしい。いや、これかなりまずいだろ!
(息がっ…)
ただでさえ水中で呼吸もままならない中で、首に感じる圧迫感がより一層に体力を奪っていく。
(んなろ……)
意識が遠くなってきているのがわかる。このままでは沈んでしまいそうだ…
やべ…力が…抜け——
(早く逃げるメポ!)
「っ!」
突然聞こえた声に、遠のいていた意識が驚きで一瞬はっきりする。
(メップルたちのことはいいから、君は逃げるメポ!)
(このままじゃ、危ないミポ!)
少しくぐもった声は、どうやら檻の中から聞こえてきたらしい。視線だけをそちらに向けると、心配そうな表情の妖精たちがこちらを見ている。
(……って、沈めるわけ、ねぇか)
根性論は嫌いだか、今回ばかりはその考えを参考にさせてもらう。無理は承知で脚に力を込めて水を蹴る。
そうだ、あいつらは今戦っている。
——なんのため?
この妖精たち、そしてプリキュアたちを助けるためだ。
——今それができるのは誰だ?
この状況だと、檻を掴んでる俺しかいないわな。
——逃げろって言ってるが?
んなもん、
(聞けるわけ、ねぇだろうが)
ずっと思ってた。
あいつらと一緒にいるべきなのか、必要があるのか?
求めたいと思った。あいつらと、一緒にいるための自分の役割、自分の「本物」を。
だから——
『八幡君、グレルとエンエンを連れて行って!』
笑顔で送り出してくれたあいつらに、応えたいんだ!
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八幡殿が潜ってから暫し。
先ほどよりも長い時間はおそらく経っていたでござろう。
水面から黒い檻が顔を出したのが見えたでござる!
「お兄ちゃん!」
「任せるでござる!」
すぐに降下し檻を両足でしっかりと掴む。
「みんな、捕まってるでござる!」
あまり時間をかけるわけにもいかないため、思い切り翼に力を込め上昇する。すぐ近くに開けた場所があったためそこに着陸する。
「八幡殿は?」
「っく、ゲホッ!いるっての。それよりこの檻を何とかしねぇと。というかなんとかしてくれ」
疲弊した様子の八幡殿が答える。肩で息をする八幡殿の首の周りに、檻の1部が絡みついている。
「八幡!」
「だ、大丈夫ですか?」
「まぁな。さっきまでと違って、今はこいつは動いてねぇ。締まってる訳じゃないけど、外そうにも力が入らねぇわ」
確かに絡まっていこそすれど、影と八幡殿の首の間にはそれなりの隙間がある。ただ引き抜くのは難しそうであるため、結局のところ、
「みんな、早くこの檻を壊すクル!」
「そうでござる!」
ここからが拙者たちの本番でござる!
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クラクラする頭を振る。
首あたりに絡みついた影を引っ張ってみようとするものの、まだ全然力が入らず、仕方なく草の上に手をおろしグレルたちの方を見る。
グレル、エンエン、キャンディ、ポップの4人は檻を叩き、乗り、体当たりしと色々やっているものの、檻が壊れる気配はない。
「ど、どうしたら……」
エンエンの表情が暗くなる。諦めてはいないだろうけれども、このままの調子ではいつまでも檻を壊せないのは確か。
何とか体勢を変えて檻の方に顔を向ける。
ガラスのように中の様子が見えるものの、硬さを踏まえるなら下手な防犯ガラス並みである。プリキュアの力でなら壊せないこともないだろうが、残念ながら今ここには一人もいない。
「ん?」
と、ふと気づく。
影とはいえ既に光がさらに差し込む訳でもない状況なら、既にその量は決定されているはずだ。
形を変えたとしても、影の質量は変わっていないはずだ。
ってことなら、この檻を形成している影から俺の方へと伸びている分、何処かが手薄になっているんじゃ無いか?
その仮説を思いつき目を凝らしながら檻を見る。と、やはり僅かながら綻んでいる箇所が見つかった。先の尖ったもの出なければ突くことも難しそうだが、確かな小さな綻び。
「グレル、エンエン!ここを」
「見て!ここからなら、壊せるかも!」
「何か尖ったものないか?それでうまく突けば……」
えーとえーと、と2人が当たりを探す。石でも落ちていないかと思ったが、そんな気配はない。
「あ……」
とここでエンエンが息を漏らす。
「どうした?」
「グレル、これだよ!」
そう言ってエンエンが指したのは、グレル
が持って来ていた木の剣だった。
「でも、これおもちゃだぜ?」
「グレル」
戸惑うグレルを、エンエンが強い決意を込めた瞳で見つめる。信じて、信じ切って、疑わない目。
その目を見つめ返したグレルが、手に持った剣を強く握りなおす。
「やるぞ、エンエン!」
「うん!」
2人が並んで剣を握り、しっかりと目的の綻びを見据える。互いにもう一度視線を交わし、気を引き締める。
「いち、」
「にの、」
「「さん!割れろ(て)〜!」」
2人が息を合わせて剣をつきだす。
強い思いと願いを込めて。
すると2人から小さな光が溢れ、剣が当たると共に強い閃光となった。
目を開けられなかった俺にわかったのは、自分の首周りに巻かれていた影が砕ける感触だった。