やはり俺がドキドキ!させられるのはまちがっている   作:トマト嫌い8マン

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せっかくなのでこっちにも投稿です。

あぁ、もう今年が終わる


覚悟と想い

思っていた通り、そこには相田がいた。そして剣崎真琴も。少し怒っているようなその表情はキュアソードに似てるな~とか一瞬考えていた俺だったが、この状況を見る限り相田があまりいい接触をしたようには思えない。

 

「あなた、ここの職員じゃないわよね?何の用?」

「あ、いえ。すみません。知り合いがご迷惑をおかけしたようで」

「この子の知り合い?なら一緒に連れて行ってくれる?何をしにここに来たのかはわからないけど、ここは私たちプロが人々に夢を届けるための場所。勝手な行動で邪魔をしないで」

 

普通なら、別に相田の行動に対して問題を感じることはないかもしれない。だが今回は違う。ここは剣崎真琴にとっての仕事場。彼女は本気で取り組んでいるのだろう。きっと苦しいことも、つらいことも、大変なこともすべて含めて彼女はまっすぐこの仕事に向き合って、歌っているのだろう。だからこそ彼女は怒ったのだ。たとえ悪気がなかったとはいえ、相田の行動は決して褒められたものではないのだから。無断で自分の大切な場所を踏み荒らされることは誰だって我慢ならないだろう。だから、彼女の怒りはもっともだ。

 

「本当に、すみませんでした。相田も」

「・・・ごめんなさい」

「あら?何の騒ぎかしら?」

 

ちょうどそのタイミングで剣崎のマネージャーが部屋に戻ってきた。手に紙コップを二つ持っていることからきっと飲み物を買いに行っていたのだろう。タイミングが良かったのか悪かったのかわからないが、とりあえずここは引き上げるべきだ。

 

「あら?あなたたちは?」

「お騒がせしてすみませんでした。もう戻りますので」

 

マネージャーに深く礼をしてから俺は相田に外に出るように促した。彼女の言葉が相当答えたのだろう。沈んだ表情でうつむいていた。

 

「マナ!やっぱりここにいた」

「いきなりいなくなったので心配しましたのよ」

 

少し遅れて菱川とありすもやってきた。おそらくはほかの可能性がある場所も探していたのだろう、少し息が上がっているようだった。

 

「あの・・・本当に、ごめんなさい」

 

そういって剣崎に向かって深く礼をした相田は俺より先に部屋から飛び出していった。二人はその様子を見て一礼をしてから相田を追いかけて行った。あんな感じの相田、初めて見るな・・・そんなことをふと思い、俺はもう一度礼をしてから相田の後を追おうとした。

 

「ちょっと待ちなさい」

 

が、呼び止められてしまった。ほかならぬ、剣崎真琴によって。

 

「真琴、もうすぐ収録が始まるわ。今は、」

「大丈夫。すぐに終わるわ」

 

マネージャーが止めようとするが、そんなことはお構いなしに彼女は俺を見据えていた。なんだろう。俺、この一連の流れで何か彼女を怒らせるようなことをしただろうか。

 

「あの子、一体何なの?」

「はい?」

 

いきなりの質問にポカーンとしてしまった。しかしそれも仕方ないことだろう。質問の意味さえよくわからなかった。

 

「いきなりこんなところにまで来て、一体どういうつもりなの?どうかしてるわ」

 

あぁなるほど。そういうことか。確かに普通では考えられないことだ。プリキュアのことを差し引いてみると、完全に質の悪いファンがやりそうなことだ。そしてたいていの場合はここで逆恨みして、問題を起こして、つかまっちゃうんだよな~。それくらいあいつの行動力ははたからしたら理解しがたいものだろう。ただ、

 

「あいつはただ、一生懸命なだけですよ」

 

きっと相田本人には迷惑をかけるつもりも、邪魔をするつもりも毛頭なかったのだろう。本人は徹頭徹尾一生懸命ただ一つなのだ。本当にキュアソードだとしたらきっとその手を取りたかったのだろう。一緒に戦って、一緒に助け合って、そんな風に仲間に、友達になりたかったのだろう。アイドルだからとか、ファンだからとかは関係なく、同じ目的のために助け合える仲間になりたかったのだろう。菱川やありすと同じ、友達に。

 

「今回はその一生懸命さがから回って迷惑をおかけしましたけど、あいつは誰に対してもきっとあんな感じです。一生懸命で、まっすぐで、前向きで・・・ただ、それだけのことですよ」

「・・・そ。でも、もうこんなことはしないように伝えて」

「はい」

 

そう言って俺は立ち去ろうと思った。が、なぜかこれだけは言っておいてもいいかもしれないと思った。

 

「あいつのこと、嫌いにはならないでやってください。あいつ、あなたの大ファンなんで。今回のことはあいつが悪いですけど、あいつは本当にあなたのことが、あなたの歌が好きなんで。・・・それでは、失礼しました」

 

あ~、なんだか偉そうに語ってしまったような気がする。まぁしかし、あいつ自身はたぶん反省しているだろうし、この件で剣崎があいつのことを嫌いになってしまうのはやっぱり避けたいからな。仮にプリキュアじゃなかったとしても、自分があこがれている相手から嫌われるのはやっぱり痛いだろうからな。ソースは俺・・・まぁあこがれるの意味合いが少し違うし今となってはもうどうでもいいまであるけど。

 

「あっ、八幡君」

「ん、おう」

 

スタジオに戻ろうとした俺だったがちょうど目の前の控室の扉が開き、中から相田が顔をのぞかせた。

 

「えっ、何ここ?」

「ありすが頼んで、私たちにこの部屋を使えるようにしてもらったんだって・・・」

「そうか。まぁまだ時間はあるみたいだし、休める場所があるのはいいな。二人は?」

「中で作戦会議中。直接話すのは難しいかなって」

「そうか」

「うん」

 

なんだか非常にやりづらい。相田がここまでしゅんとした態度をとっていること自体が珍しいわけで、いつもの元気さというか快活さがないとどうにも話しにくく感じてしまう。

 

「あたし、大切なことを忘れてた。どんな人とでもきっと手をつなぐことができたら仲良くなれるって思ってた。でも、そのためには相手の気持ちをちゃんと尊重しないといけないのに。ここは、まこぴーにとって、きっととても大切な場所、一生懸命夢を与えるための場所。歌を歌うことは、とっても大事なことなのに、真剣な気持ちを邪魔しちゃった・・・」

「まぁ、やっちまったもんはしょうがねぇだろ。人間、そういうのはやり直せないしな。けど、自分でちゃんと気づけたってことは、反省できているってことだろ。なら、それを次に生かせばいい」

「うん・・・あたし、ちゃんと謝りたい!」

 

そう言って顔を上げた相田は少し普段の相田に戻ったように思える。これなら次は大丈夫だろう。ちゃんと考えて、考え抜いたうえで行動することができる。こいつはそういうやつだ。落ち込んでも、失敗してもそれをばねに次に向かうことができる。そういう相田を、俺は尊敬している。

 

「ちゃんとわかってくれたみたいね」

 

突然声をかけられた俺たちは傍から見たらどうした?ってレベルでビクッとなってしまった。やべぇ、恥ずかしい。声の主へ顔を向けると、そこに立っていたのは

 

「剣崎真琴はいつだって真剣。だから彼女の歌は心に響くのよ」

「あ、あなたは」

「剣崎真琴の、マネージャーさん?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「続きまして、ヒットチャート急上昇中の『Song Bird』、剣崎真琴さんです!」

 

マネージャーに連れられて俺たち4人がスタジオに入ってみると、ちょうど剣崎の出番のようだ。スポットライトに照らされたステージの中、彼女は歌い始めた。その時の彼女の顔は、先ほど見せられた怒り顔から一変、楽しそうで、うれしそうで、本当に歌うことを好きだと伝えられるような、そんな笑顔だった。小町経由で何回か剣崎真琴の歌を聞いたことはあったが、その時はアイドルに対して、彼女らは欺瞞にあふれている、という考え方を持っていたこともあってそこまで気にも留めていなかった。けれども、ステージに立って歌う彼女を見ると、そんな考えは失礼に値するのだと、彼女を侮辱することに他ならないと思わざるを得ない。それほどまでに彼女が歌うことに真剣に取り組んでいるのが伝わってきた。同時に、先ほどのマネージャーとの会話が思い出される。

 

 

 

 

『あの子、不器用だから。普段はあんな言い方しかできないけど、その歌には大切な願いが込められているの。それは自分の歌を聞いてくれた人が、笑顔になってくれること。だから、いつでもベストを尽くして、最高のパフォーマンスを披露しなくちゃいけないの。あなたたちにも、そういうの無い?』

『あたし・・・あります、そういうの』

『どうですかね・・・今はまだない・・・かもしれないです。けど、剣崎真琴がどれだけの覚悟を持って仕事に臨んでいるかは、なんとなくわかった気がします』

『あたし、ちゃんと謝りたいです!』

『わかったわ、時間を作ってあげる』

 

 

 

 

マネージャーは、この収録が終わったら少しだけ時間が取れるはずだから、その時に謝ったらいいと言ってくれた。相田もさっきまでの沈んだ表情はもうどこにもなく、剣崎のパフォーマンスに見入っていた。彼女の真剣な様子を直に見て、きっと相田なりに何か感じるものがあるのだろう。それを確認した俺はステージに目を戻した。が

 

「ジコチュー!」

 

突然大きな星の形をしたジコチューがステージに現れた。

 

「ジコチューシャル!」

「なんでこんなところに?」

 

周りを見渡してみると、スタジオの端のほうに一人の少女が倒れていた。衣装を着ていることから考えて、きっとこの番組の出演者なのだろう。突然現れた怪物にスタッフはおびえ、逃げ始めた。しかしジコチューはその人たちには目もくれず

 

「スターハコノアタシヨ、ホカノライバルハハイジョスルマデ!」

 

そう叫び、ジコチューはステージ上の剣崎に向かって突っ込んでいった。間一髪のところで躱した剣崎だったが、衣装がヒールだったためにバランスを崩して倒れてしまった。

 

「六花、ありす。行くよ!」

「おっけー」

「はいですわ」

「「「プリキュア・ラブリンク!」」」

スタッフが全員いなくなったのを確認した三人は、すぐにプリキュアに変身してジコチューに挑みかかっていった。しかし星の形をしているジコチューは体から強烈な光を放ち、三人は目を開けていることができず、思うように戦えずにいた。強力な体当たりで三人は壁まで吹き飛ばされてしまっていた。

 

「コレガスターノカガヤキヨ!」

 

体制を崩してしまった剣崎に向かって、ジコチューが再び突っ込んでいった。後で聞かれたときには、無意識のうちに体が動き出していたとしか答えられなかった。気づけば俺は走り出していた。逃げ出していたのなら、かっこ悪くてもまぁこの状況に対する判断としては正解だったかもしれない。実際他の連中もそうしていたわけだしな。けれども俺の体はステージに向かっていた。なんで勝手に走り出していたのだろうか。あぁマジでわかんね。

 

そんなことを考えながらも体は動いていた。ジコチューが剣崎に当たる直前に何とか彼女のもとにたどり着く。さすがに避けきるだけの時間はもうないのがわかる。とっさの判断で彼女とジコチューの間に立ち、前に飛びながら彼女の体を抱きかかえた。背中に衝撃が走る。その勢いのまま俺たちは吹き飛ばされ、壁にたたきつけられた。

 

「っがぁ!?」

 

思わず息が漏れる。前に飛ぶことで何とか攻撃による衝撃をいくばくかやわらげたつもりだったが、逆に壁に当たるときにはより強い勢いがついてしまった。

 

「っ、ちょっと、大丈夫!?」

 

腕の中にいた剣崎が声をかけてくる。壁に当たる前に彼女と自分の位置を無理やり入れ替えてみたが、どうやらうまくいっていたようだ。見たところ彼女には目立った外傷もなく、衝撃でどこかを痛めた様子もなかった。ほっと口から息がこぼれる。とりあえず、やるべきことはやれた・・・気がする。

 

どうやら背中だけではなく、壁に激突した際に頭も打ったらしい。どうにも頭がくらくらする。はっきりしない意識のまま顔を上げて前を見てみると、至近距離で剣崎が心配そうな顔をしてのぞき込んでいた。いつもの俺なら緊張で顔をそらすだとか、距離を取ろうとするだとか、なんらかしらの反応をしたかもしれないが、今の状況ではその気力がなかった。剣崎の後ろからジコチューが迫ってきているのが見えた。早く逃げなければ、そう思ったが体が思うように動かなかった。と、キュアハートが俺たちの前に立ってジコチューの攻撃を防いだところが見えた。が、そのまま俺は自分の意識が遠のいていくのを感じた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Side 真琴

 

がくりと彼の頭が落ちたのを見て慌てて心臓に耳を当てる。

 

トクン トクン トクン トクン

 

一定のリズムで刻まれる心音を確認できてほっと息がこぼれた。血も出ていないし、気を失っているだけみたいね。安心して彼を壁にもたれさせる。振り向くとあの子たちがまだ戦っていた。自分でもきついことを言った自覚はある。もともと不器用だと言われているし、人付き合いが決して得意というわけでもなかった。だからあの子も、傷ついただろうし、悲しかったり怒っていたりしているかもしれないと思った。けれどあの子は私を助けてくれた。私の歌が好きだと言ってくれた。心から一生懸命、歌に取り組んでいるこの場所も守りたいと言ってくれた。本当に不思議な子だわ。

 

ちらりと後ろで気を失っている彼を見る。彼の言っていた通りだ。あの子は一生懸命なだけなんだろう。彼はあの子をよく理解している。どれだけの時間を一緒に過ごせばそうなれたんだろう。私は結局、先輩たちときちんと信頼関係を築く前にここにきてしまった。もしも彼らのような関係を築けていたら、結末は変わっていたのかしら。

 

でも、今はそんなことを考えている場合じゃなさそうね。光による目くらましにあの子たちは苦戦していた。まったく、見ていられないわね。




天気がいいので昼寝しちゃいたいとか思っちゃってます笑

そうしたら年越せるよなぁ
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