【ネタバレ注意】※四章終了までのネタバレがあります。

四章終了後で五章開始前、ロズワール本邸に移った後、エミリアが自分にとってスバルがどのような存在なのかを思い返すというありがちな話。ほぼ全編エミリアの回想です。

アニメでレムがカワイイヤッターなので、エミリアたんの魅力を再確認しようとして自己満足で執筆。しかしどうしてこうなった。

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【ネタバレ注意】Web四章までのネタバレがあります。時系列的には四章後五章前の、ロズワール本邸に移った後でのお話。スバ←エミで、自分にとってのスバルを想うエミリア。

アニメでレムがカワイイヤッターなので、エミリアの魅力を再確認せねば…とか思っていたらいつの間にか出来ていたss。どうしてこうなった。

ssは初めてなので拙いとは思いますが、暇つぶしにどうぞ。

※pixivの方にも投稿してます


月夜にあなたを想う

 「…ふう」日課である微精霊との対話を終え、思いがけずため息が出た。火季なので夜でもなかなか暖かいのだが、いつもならもう眠っている時間なので瞼が重い。早くベットへ移動しようと、屋敷のほうへ体を向ける。寝床に行こうと一歩踏み出してから、そういえば今日はベアトリスと話があるとかで、スバルが来ていないことを思い出した。

 

 ーナツキ・スバル。白鯨討伐の立役者、魔女大罪司教を打ち破り、多兎撲滅を先導した英雄。今や彼は誰もが認めるエミリアの騎士である。だが、それとは別に、スバルはエミリアの心の中の大きな部分を占めている。

 

 

 まず、銀髪のハーフエルフという、この世界で忌むべき存在を恐れない、あまつさえ、美しいだの何だのと口説こうとする始末である。きっと、彼はそれがどれ程自分の心を揺らしたのか理解していない。

 

 

 エミリアは、少なくとも氷の中から解き放たれてから、自らの銀髪とハーフエルフという出自のゆえに、自分を自分として見て対等に接してくれる存在に会ったことがなかった。パックは自分をただ絶対的に肯定するだけであり、ロズワールやラムも仕えるべき主人としてしか扱ってくれない、他の市井の人など言わずもがなである。それゆえ、エミリアはずっと孤独を抱えていた。だれも本当に自分のことを見てはくれないのだと。だから、ロズワールの別邸で、銀髪のハーフエルフである自分をその理由だけで変な距離をとろうとしなかったスバルに、期待してしまったのも無理は無かったのかもしれない。自分を対等に扱って欲しい、と。

 

 

 もっとも、一度はその彼と袂を分かってしまった。彼から差し出されるただの好意。それが何故なのか理解できなくて、それを説明してくれない彼がわからなくなって、それでいつも傷だらけになってしまう彼を見ていられなくて。だから、治療のためだといって彼をおいて王都を離れた。胸にこみ上げてきたのはただただ悲しいという感情。自分はやはり、一人なのだと。

 

 

 今にして思えば、エミリア自身にも落ち度はあったと思う。何せ相手は、王都にいたにもかかわらず王が不在ということすら知らない、とんだ世間知らずである。精霊術師にとって約束がどれ程重いものなのかなんて知らなかったのだろうし、スバルの言う「特別」という意味を取り違えたのは自分のほうなのだし。ー今ではエミリアは、そう考えられるぐらいにはあのときのことを冷静に見つめているつもりだ。

もちろん、だからといってあのときのスバルの行動を全て肯定するなんて出来ないけれど…

 

 でも、それだけが、あの少年が自分の心の多くを占めている理由ではない。誰にそれを語るわけでもないというのに、それに思いをめぐらせることを避けている自分を自覚する。仕方が無いではないか。思い出すのも恥ずかしいのだから。

 

 

 「スバルのおたんこなす、あんぽんたん、とーへんぼく!」

墓所での一幕を思い出してしまい、知らず、声に出してしまっていた。スバルへの理不尽な罵倒が、彼に届くことなく夜の闇に吸い込まれる。きっと今、自分の顔はリンガのように赤くなっているはずだ。

 

 

 墓所の試練を超えることができず、パックを失い、自分自身の存在にすら自信を持てなくなり、自分には何もできないのだと、何も期待されてなどないのだと思っていた。だけど、スバルは、スバルだけは違った。お前は面倒くさい女だと、だけど好きだから信じていると、そう言ったのだ。あまつさえ、それを信じられないという自分に、ち、ちゅーまでしたのだ。それは、彼の理想を、エミリアにはこうあって欲しいという願いを押し付けているだけにすぎない。

 

 

 ーだが、自分はその願いを受け入れた。どんな醜態をさらそうとも、エミリアが好きだからエミリアが試練を乗り越えると信じているというスバルの願いを。たとえそれが、無力な自分に何もしないという道を選ばせない、呪いのような理想だとしても。それはきっと自分が一番欲しかった、前に進むための力なのだ。

だから、エミリアは前を向く。一歩を踏み出す。正しいかどうかなんてわからなくても、きちんと自分を見ていてくれる人がいるから。たとえ間違ったとしても、それを相談できる人がいるから。

 

 

 スバルはずるい、と改めてエミリアは思う。あんな告白をされて励まされたら、どんなに厳しい道だと知っていても、前に進むしかないではないか。あるいは、彼の厳しさは彼自身もかつてそのような厳しさに救われたことがあるからなのだろうか。だから、エミリアにもそう進めと言うのだろうか。本当に勝手な人だ。

 ーでも、その優しくも厳しい言葉は、その甘くも容赦の無い理想は、確かに袋小路に陥っていたエミリアを救ったのだ。だから、彼という存在は、自分の心の多くを占めて離さない。

 

 

 彼からはそのような熱烈な告白をされた一方で、申し訳ないとは思っているが、自分はそれに対して明確な返事を返せていない。自分は長く氷の中に閉ざされていたために、実年齢に対して精神が幼い。それゆえ、誰かを好きになったこともまだ無いし、それがどのようなものなのかなどわからない。だから、彼に対して返事を伝えてあげることが出来ない。だけど、確かにいえることがひとつ。自分の心の中に、他の誰にも感じたことの無い確固たる想いが育ち始めているということ。母様やジュース、パックに感じる愛ではなく、エリオール大森林の集落の皆への親愛といったものでもない。さりとて、オットーやガーフィールへ感じる信頼といったものとは決定的に一線を画すモノ。今はまだ言葉にできなくても、近い将来にはきっとー

 

 

 と、そこまで考えを進めてエミリアは月がその場所を大きく変えていることに気づく。ついでに、眠気のほうも限界だ。早くベッドに入ることにしよう。最後に、スバルが寝ているはずの暗い部屋ヘ向かって、何処かやさしく、しかし恨みがましい視線を送りながら館のほうへ向かう。

 

 

(こんな風な私にした責任、絶対の絶対に取ってもらうんだから)


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