がっこうぐらし! ~護るべき人達~   作:元気

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かぎ

「俺は、絶対に資料室でねるから。いいな? 絶対にだからな?」

「えぇ〜! 私、モトくんと一緒に寝たいー! ……ダメ?」

「うぐっ……だ、ダメだ!! 絶対にダメだからな!!」

 

胡桃がアイツらを倒すことに、少しだけ躊躇いがなくなったその日の夜……俺は由紀と言い争っていた。

 

それも、俺が由紀たちと一緒に放送室で寝ると言う内容だった。

 

 

 

普通に考えたら可愛い女子達が、健全な男と一緒に寝ると言うことはとても危ないことだというのに、そんなことなど気にせずに、由紀は諦めずに突っかかってくる。

 

「モトくんと居ると安心するから、私は一緒に寝たいんだよ? だから……」

 

 

ヤバイ、そんな顔でそんなこと言うのは反則だろ......。そんな悲しそうな顔をしないで欲しい。今すぐにでも「いいよ」って言いたいのに、必死にこらえている俺の身にもなってくれ……

 

俺は放送室のうちのもう一つの部屋に、購買部の倉庫から持ってきた布団を床に敷いて、寝る準備を始めている悠里に視線を向ける。俺の視線に気づいた悠里は、ふふっと笑ってから、俺と由紀の所にやってきた。

 

 

「ゆきちゃん、流石に元弥くんも困ってるでしょ? 今日は我慢しましょう?」

 

悠里が由紀に子供をあやすような感じで優しく話しかけると、由紀は心底残念そうに頷いた。

 

「りーさんがそういうなら……」

「偉いわねゆきちゃん」

 

 

由紀がめぐねえと胡桃の所に行ってから、俺は悠里に近づいて話しかける。

 

 

「おいおい、『今日は』ってなんだよ?」

 

 

俺が聞いていて疑問に思った事を、ニコニコしながら由紀を見ている悠里に問い詰める。誤解を招くような言い方をした当の本人は、笑顔のまま返事を返した。

 

 

「そのままの意味よ。今日はダメでも、明日はいいかもしれないでしょ?」

「そっ、それは……......いや、ダメだ。お前らがよくても俺はよくない」

 

悠里の笑顔に圧されて、危うく「OK」と返事をしそうになった自分を殴りたくなった。ずっとニコニコしている悠里から、俺をからかっていたんだと感付くと、俺は静かに溜息をついた。

 

「俺はもう寝るからな。何かあったら資料室に来いよ?」

 

 

みんなにそう呼びかけてから、俺は放送室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、太陽が登り始め朝日が巡々丘学院を照らし始めた頃に、俺は目を覚ました。上半身を起こし、手を天井に伸ばして脱力する。脱力すると同時に一緒に息も吐いた。

 

「ふぁー、今日もいい天気だ」

 

 

窓から見える空には、雲ひとつない綺麗な青色が広がっていた。あくまで空は綺麗だが、街が綺麗とはいっていない。

 

 

俺は立ち上がり、窓の所に足を運ばせる。案の定、空は綺麗でも街は崩壊している。そこらじゅうに血の跡があり、車は電柱やお店などの壁に激突、人は誰一人歩いていないが、『アイツら』はたくさんうごめいていた。ボロボロになった服からは、黒く腐っているように見える肌がチラつく。

 

 

「なんともシュールな光景だな……」

 

苦笑いすら浮かばない。笑えるような状況ではないことを、改めて俺は思い知らされた。この街は絶望的だ。下手したら生きているのは俺たちだけかもしれない。だから俺は、守らなくてはいけない。何があったとしても……必ず。

 

堅くなっているであろう自分の顔をパチンと叩いて気合を入れた。誓を守ることも大切だけれど、そっちに力を入れ過ぎてみんなから笑顔をなくすような事はしたくない。だから、みんなを助けつつ、楽しく暮らしていかないといけない。よく、そんなことを兄さんは言ってたしな。

 

 

ラフな服から制服に着替えると、俺は二本の日本刀を腰に下げて、資料室から出ていった。

 

 

 

 

 

 

「おはよう。おっ、二人とも早いな」

「あっ、元弥くんおはようございます」

「おはよう、そう言う元弥くんも朝早いのね」

「まあな」

 

放送室につくと、そこには朝食の準備を進めていためぐねえと悠里の姿があった。二人は俺が持ってきていた缶詰と、家庭科室からとってきたのか炊飯器でご飯を炊いていた。

 

 

「おぉ、今日は久しぶりのご飯か! 楽しみだなぁー。炊飯器とか久しぶりにみ......…え"ぇ!?」

 

俺が炊飯器をポンポンと叩いてひとりでに喋っていると、炊飯器があることと炊飯器を使えることに気付き、驚きを隠しきれなかった。目をぱちくりさせて二人と炊飯器を交互にみていたら、二人は同じタイミングで笑い出した。

 

「ふふっ、驚いた?」

「ごめんね元弥くん。昨日元弥くんが資料室へ行った後に、私たちで家庭科室から持ってきたの」

「あっ、そうなんだ…電気は?」

「屋上にある太陽電池パネルを使っているの。それに、貯水タンクがあるから水も飲むことが出来るのよ」

 

 

めぐねえが申し訳なさそうに事情を説明するなか、悠里はしてやったり。というような顔で俺を見てくる。なんかどことなく悔しいのだが……それはいいとして…

 

「ちなみに誰がそんなコトを言い出したんだ?」

「えーと、確か……」

 

 

めぐねえが顎に手を当てて思い出す姿に、少しだけ見惚れた。先生なのに幼い童顔だが、いざとなった時のあの頼れる顔は本当に美しい。艶やかで綺麗な髪の毛も、由紀みたいにコロコロと変わ表情も、俺は好きだったりする。

 

ぼーっとめぐねえを見ていると、めぐねえは思い出したように、手をポンッと叩いた。

 

「ご飯を食べたいと言ったのは丈槍さんで、それに便乗したのが私たちだったわね!」

「…………」

 

めぐねえが何かを話すが、丈槍と言う単語しか俺の耳には入ってこなかった。なんにせ、全神経がめぐねえの所に持っていかれて、体が動きたくても脳が動いてくれない。そんな感じ。

 

「元弥くん?」

 

俺のことを変に思ったのか、めぐねえが心配そうに俺の顔を覗き込んだ。顔と顔の距離がとても近くて、めぐねえの甘い匂いがしてくる。その甘い匂いが俺の鼻孔をくすぐり、長く綺麗な髪の毛が俺の頬を掠った。めぐねえの顔が目の前にきて約三秒、やっとこの顔の近さを俺は理解する。

 

「お、俺…由紀をシバキに行ってきますっ!」

「えぇっ!? シバくっ!? なにをするんですかっ!? ほ、程々にしてくださいね!?」

 

 

めぐねえが離れてアタフタしている様子がなんとなくわかる。なんとなくであって、直接見た訳では無い。だって、顔を上げたら顔が赤いのがバレてしまいそうだから。たぶんだが、俺の耳は真っ赤になっていると思う。それほどまでに、めぐねえの至近距離は、俺にとってとても危険だったのだ。

 

近くで見れば見るほど、あの美しい顔に引き込まれてしまう。やばいな……俺、結構重症かもしれない...。

 

そんなことを思いながら、俺は放送室のもう一つのドアを開いた。

 

 

 

 

 

 

「おい、オマエら起きろ。気持ちのいい朝だぞ」

「むにゅうー......」

「うん...後、五分……」

 

由紀だけではなく胡桃までもが気持ちよさそうに寝ているのに、正直驚いた。いつもはあんなにシャベルを振り回して、男よりも男らしいく、頼りがいのあるあの胡桃が、寝ている時や普通に暮らしているときとかはやっぱり女の子なんだなと、失礼なことを考えてしまった。

 

胡桃の使っているシャベルはというと、胡桃の腕の中にあった。

 

俺、シャベルと一緒に寝る人は初めて見た。そんな事を思いながら、由紀の方に視線を移した。

 

 

由紀に関しては、想像通り、とても幸せそうに寝ていて起こすのがもったいないくらいだ。スヤスヤと寝息をたてている由紀は、いつもの倍は幼く感じたし、とても可愛らしかった。だけれど、そんな幸せの時間は長くは続かない。この事件の様に……

 

いつまでも寝かせておくわけにもいかないので、俺はある手段を使って二人を起こすことにした。

 

 

「寝るんだったら、俺はオマエらの朝ごはんも食べちゃうからな?」

 

 

扉を開けようとドアノブに手を伸ばすと、背後から由紀と胡桃の声が聞こえてきた。

 

「ふぁー、よく寝たー……よしっ! 飯にするか!」

「モトくんおはよー。今日もいい天気だねっ!」

 

調子のいい二人である。

 

 

 

俺は呆れながらも、二人に笑顔を魅せた。

 

「さあ、さっさと食べるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食が済み、俺達は安全圏を広げるためにも、三階のバリケード造りに力を入れた。それぞれが教室から使えそうな机と椅子を持ってきて、縦にどんどん積み重ねていく。積み重ねた椅子と机を、昨日持ってきたワイヤーや縄で縛りつけて、一通り完成する。コレが記念すべき第一号のバリケードだ。

 

「ふぅ、三階はまずなんとかなるな...次は二階か」

 

 

額にポツポツとついている汗を腕で拭ってから、俺は呟くように言った。

 

その言葉が聞こえていたのか、胡桃はシャベルを持って俺のところにやってきた。たくさん机と椅子を運ぶ作業をしていたからか、それなりに汗をかいている。

 

「それじぁさっそく、二階に行ってみるか?」

 

 

胡桃がそう言うが、俺は無言で首を横に振る。

 

 

「いや、今日はここまででいいと思う。みんな今日は頑張ったんだし...少しずつやった方が安全だと思うし。んでもって、胡桃も体を休ませた方が絶対にいい。明日、二階に行くんだったら、疲れは無くしておいた方がいいだろ?」

「元弥がそう言うならそうするか......」

 

相談した結果、今日はここで終わりにした。みんなの様子を見てみると結構汗をかいていてたし、ヘトヘトだったから、今日は区切りのいいところで終わらせて良さそうだ。

 

しかし、油断はできない。バリケードができたと言っても、まだ三階に一つしかない。コレだとまだまだ不安は消えない。彼女たちにはできるだけアイツらには関わらせなく無い……胡桃はもう手遅れだが、忘れるような、安心できる居場所を作ってやりたい。俺はそう強く思っている。

 

 

「せめてあと一つ、バリケードを造らないとな」

 

バリケードの近くに寄って、第一号の完成度をみながら次の目標を立てる。最終目標は、一階に到達して昇降口を完全に塞ぎ、その中でも、まだ学校の中にうろついているヤツらを倒し、やっと達成する。食料が尽きそうになってきたら、外に出て食料を探し出し、ここに持ってくる。そんな感じの未来予想図だ。

 

 

俺は少しだけ希望が持てた、こんな絶望的な街でも、小さな希望の光が見えるんだと思うと、少しだけ明るい未来を想像したくなる。また、いつものような日常に戻って、いつものようにみんなと話して、いつのようにめぐねえの笑顔に癒される。そんな未来が……

 

 

 

俺は、全員が生きていけると思っていた。バリケードが完成して、油断していた。まさか、また俺に絶望を突きつけてくるとは思わなかったから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食の乾パンを食べ終わり、俺達はそれぞれ自由行動を始めた。悠里、由紀、胡桃の三人は屋上に行って菜園の様子をみてくるのこと。悠里を頼りにこれから屋上で野菜を育てていくと予想できるから、菜園の整理や水のやり方など、後で教えてもらうことにしよう。

 

 

俺とめぐねえは、一緒に職員室に何か無いか見ることにした。職員室と言った時に、何かを思い出したようにハッと、めぐねえの表情が一変したように見えたのだが、気のせいだと思い流すことにした。

 

「うわー、けっこう荒れてますね...」

「そうね...片付けるのはもっと落ち着いてからでいいと思うわ」

 

 

それぞれ、先生方の机を拝借させて頂くことにする。俺はまず始めに、数学の授業を担当していた金谷先生(男)の机を見ることにした。めぐねえの席とは反対の位置にあり、顔を上げたらいつでもめぐねえの顔を見ることができる、最高のポジションにいる金谷先生を、少し...いや、結構羨ましいと思った。

 

「俺もここが良かったな...」

 

 

つい口に出てしまった言葉。めぐねえの事を考えたら自然と出てしまった。

 

そこまでに俺は堕ちてしまっているらしい。

 

 

自分の現状に苦笑いを浮かべながらも、金谷先生の机を探る。そういえば、金谷先生って、独身のわりにすごく立派な車だったよな...確か...八人乗り、だった気がする。

 

俺は金谷先生の車の鍵を探すことにした。机の引き出しを全部開けて、とにかく鍵だけを探し出す。そして、右の引き出しから、ヒゲが生えているクマのキーホルダーがついた鍵を見つけ出す事に成功する。そこで俺は、異常なほどまでに違和感を感じた。

 

 

「あれ? コレ、めぐねえも持ってたような……」

 

ヒゲの生えたクマのキーホルダーをみて、俺はハッと気づく。

 

 

『お揃い』

 

 

 

その言葉が頭を横切った時、俺は金谷先生の車の鍵を、手が白くなるまで強く握った。鍵のギザギザした部分が、手に喰い込んで痛いが、そんなことよりも、悲しく悔しい気持ちが、胸いっぱいにひろがった。

 

そういえば、金谷先生とめぐねえって、とても仲が良かったよな。金谷先生といる時のめぐねえはいつも笑顔で、とても嬉しそうだった。

 

 

 

でも、今はもう金谷先生はいない。めぐねえを幸せにできるのは、今のところは俺しかいないんだ。めぐねえだけじゃない、由紀、悠里、胡桃だってそうだ。俺が幸せにしないと……いい人を見つけるまで、俺が皆を守らないと…

 

ネガティブ思考になになりかけた頭を、首を振って追い払う。明るく振舞わないとな!

 

 

 

俺は立ち上がって、めぐねえの所に向かって歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次で日本刀の名前を締め切りたいと思います。

考えてくださった人たちの意見を基に、名前を決めていこうと思いますので、よろしくお願いします!

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