がっこうぐらし! ~護るべき人達~   作:元気

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あしあと

「めぐねえ」

「っ!?」

 

突然、肩を叩かれて驚きのあまり心臓が大きく跳ねた。本棚からとったアレを背中に隠すようにして、後ろを向く。

 

私の肩を叩いたのは、元弥くんだった。私のあまりの驚きぶりに、心配そうな顔で「大丈夫ですか?」と声をかけてくれたが、私は「平気よ。大丈夫」とだけしか返せなかった。

 

心臓がドクンドクンと、大きく跳ねている。先ほど読んだアレの事を思い出すと、信じられなくて手が震えてしまう。そんな自分が情けなく感じてくる。自分だって、アッチ側の人間なのに...なのに、私は……

 

 

「めぐねえ!!」

 

私の両肩を掴んで揺さぶっていることにやっと気づき、元弥くんの顔に目を向けた。元弥くんは、心から心配そうに私の顔を、真っ直ぐな瞳で捉えている。

 

「元弥くん……ごめんなさい、心配かけて。私、先生なのに...」

 

自分でも、声が震えているのがわかった。今にも泣きそうになる感情を堪えて、元弥くんにそう言うが、とても申し訳なくて……私、私っ...

 

 

「めぐねえが一人で背負う必要ないからっ!!」

 

元弥くんは私にむかってそう言った。両肩にある元弥くんの手がギュッと私の肩を握る。元弥くんは、私より少し背が高い。そんな彼からの言葉は、私に安心をもたらすのには充分過ぎる言葉だった。

 

「めぐねえが待ちきれない事は、俺が全部持ってやるから! 一人で抱え込む事はしないでくれよ、俺だって、めぐねえの役に立ちたいんだ。全部が全部めぐねえの責任じゃないんだからさ。俺にもめぐねえの負担、背負わせてくれよ」

 

 

真剣な表情でそう言ってくれるだけで、我に返って、私は落ち着くことが出来た。

 

自分の右手で、彼の左手を包み込むように優しく置いた。その手は温かくて、大きくて、とても頼れる左手だった。彼なら、もし、私がああなっても、安心してみんなを任せることができる。そんなことを思いながら、私は笑顔を作った。

 

 

「ありがとう。そいう言ってくれるだけで、私は勇気づけられる。だから大丈夫よ」

 

そい言い終わってから、もとやくんの左手を握った。もとやくんは安心したような顔つきになり、柔らかな笑みを浮かべている。

 

「一階に着いたら、みんなの前ですべてを話すから……その時まで待っててくれる?」

「もちろんですよ。俺はめぐねえを信じてますから」

 

 

コツんと、額を合わせてそう言ってきた。驚いて目を白黒させていると、彼は紅葉のように顔を紅くしながらも、いつものように微笑んだ。

 

 

「もう、佐倉先生です」

 

いつもの私なら、こんなことされると恥ずかしがって離れてもおかしくはないのに、その時は離れることができなかった。……生徒に甘えている私は、教師としてどうなのだろうか。苦笑しつつも、私はもとやくんから離れなかった。今だけは、彼の温もりを感じていたいと、心から思ったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

めぐねえに、笑顔が戻った。

 

俺はそう認識すると、なぜかわからないが、自分の額をめぐねえの額にくっつけてしまった。恥ずかしいコトをしているのは自覚済み。でも、こうしないと気が済まなかった。めぐねえ、本当に悩んでたから、役に立ちたいと本気で思ったから、自然とこんな行動に出たんだと思う。でないとただの変態だ。

 

めぐねえとの距離の近さにドキドキしつつも、俺はこれからのことについて考えていかなければならない。今日は区切りのいい三階のバリケードで終わったものの、階段のところにも一つ欲しい。それに、二階にも何個か設置して、最後には一階に行かなければないらない。

 

 

しかし、ここで心配事が何個かある。一つは机と椅子、ワイヤーの残りの数だ。

 

椅子や机は、日常生活でも使っていくことになるので、できるだけ残して置きたい。ワイヤーだって、あることだけでも奇跡なのに、数も多くはない。だからできるだけ節約して、なおかつ丈夫なバリケードを作らないといけないのが、至難の業である。

 

 

次に食糧だ。俺が家から持ってきたぶんはそろそろ切れてしまう。なので購買部に行って調達するか、屋上の菜園で自給自足するしかないのである。今の状況で、学校の外に出る。と言うのはまだ早いと思うので、最終的にこの二つに絞られるのだ。

 

 

「んー、まずはバリケード造りだな。三階の安全を確保しなきゃ...」

 

考えていたら、自然と声に出てしまっていた。そして、現在の状況を再確認することになる。

 

「うおっ!?」

 

 

めぐねえから顔を離して、視線を合わせないようにソッポを向いた。

 

 

 

くっそ...自分でやっておいて、スゲー恥ずかしかった……

 

 

先ほどのコトを思い出すと、不思議と口角が上がってしまう。左手で口許を隠すが、俺の顔は正直らしく、嬉しくて顔がほころんでしまう。どうしようもない羞恥心が溢れかえってきて、今、まともにめぐねえの顔を見ることが出来ない。

 

ヤバイ、マジでヤバイ……嬉しいけど、恥ずかしい…。

 

 

とても複雑な気分になる俺だった。

 

 

「ふふっ」

 

めぐねえが突然笑い出した。可愛らしく肩をすくめて笑っているめぐねえは、本当に見惚れるほど美しい。そう思うと同時に、俺は一つ、大事なコトを知ることが出来た。

 

 

 

──俺はめぐねえのことが好きなんだ。

 

と。

 

 

 

 

 

「もとやくん。今日はもう終わりにしましょう?」

「あっ、...はい」

 

 

めぐねえに言われて、俺は職員室から出た。めぐねえもしっかり出たことを確認してから、俺は歩き出す。

 

 

「ん、そうだ。めぐねえって、金谷先生と仲がいいんですか?」

「えっ? ど、どうしてそう思ったの?」

「えっ? だって……ほら」

 

俺は金谷先生の机から持ってきた鍵を、めぐねえにみせてみる。それでもよくわからないのか、めぐねえはただたんに可愛らしく首を傾げるだけだった。

 

 

「確かめぐねえの鍵にも、このクマのキーホルダーついてませんでしたか?」

「えぇ、つけてるわよ。でもソレは、たまたま同じモノをつけただけだと思うけど...」

「えっ……マジ? お揃いじゃないんですか?」

「偶然だとおもうわよ? …… あっ、でも偶然同じものを持っていた事は、たくさんあったわ」

 

 

めぐねえって、モテるんだな。金谷先生の鍵をみながら、俺は改めてそう思った。

 

「って、もとやくん、なんで金谷先生の鍵を持ってるの!?」

 

今更気づいたのか、金谷先生の鍵を見て驚きの表情を浮かべるめぐねえ。そんなめぐねえに、俺は笑いながら答える。

 

 

「金谷先生、いい車に乗ってたので、借りてきました」

「そ、ソレって...」

 

 

めぐねえが呆れるような声でそんなことを呟いた。そんなことなんか気にせずに、俺は鍵を人差し指でクルクルと回しながら理由を話す。

 

「いつになるかはわかりませんが、いつかはこうなる日が来るはずです。だから、その時のためにですよ」

 

 

卒業。由紀がいたら、キッと悲しそうな顔をするだろう。由紀だけじゃない。悠里も、胡桃も、めぐねえも、そして俺も。ずっとここにいるわけにはいかない。食糧も尽きるだろうし、本当に安全と言えるとはいえない。だから、この学校から出なくちゃ行けなくなった時のために、俺はもってきたのだ。

 

チラッとめぐねえを盗み見ると、案の定、少し悲しそうな顔をしていた。

 

 

俺は歩く足を止めて、めぐねえに体を向けた。そして、優しく頭を撫でてみた。

 

 

「もっ、もとやくん!?」

 

顔を火照らせて、めぐねえは俺を見上げる。生徒にこんなことされるとは、夢にも思わなかっただろう。俺だって、今日までこんなことになるとは思いもしなかったから、正直驚いていたりする。

 

俺は、アタフタしているめぐねえに言った。

 

 

 

「大切な人には、ずっと笑顔でいて欲しいです。たがら、笑ってくださいよ」

 

俺は満面の笑みで、めぐねえにむかって喋ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミスった。

 

俺は資料室のドアを閉めると、敷いてある布団に大の字でダイブした。枕に顔をうずくめてめぐねえのあの顔を思い出した。

 

 

「ずけー可愛かったな……」

 

あの後、俺はとてつもなく恥ずかしいコトを言ったということに気づき、硬直していた。自分でもわかるくらい、顔が真っ赤になって、ろくにめぐねえの顔すら見れなかった。

 

本当に一瞬だけ、めぐねえの顔を見た。めぐねえの顔は、トマトよりも赤く染めながら俯いた。めぐねえも俺と同様に恥ずかしかったらしい。

 

 

俺はめぐねえの頭から手をはなし、無言のまま歩き出した。めぐねえは、俺の後に続くように歩き出す。そして、俺達は気まずい雰囲気のなか、静かな廊下を会話することなく歩き続けた。

 

 

「ヤバイ、明日からどんな顔でめぐねえに会えばいいんだよ...」

 

あれは、人によって告白と言っても過言ではないくらいヤバイ台詞だ。普通に考えて、大切な人。と言っている時点でアウトだし、何がずっと笑顔でいて欲しい。だよ、俺のバカ野郎。ソレはもう少しいい雰囲気になってから言うことだろーが。本音が出ちゃったじゃないか、バカ。おかげで夕食の時、異常に静かだったろーが!! バカー!!

 

 

俺は仰向けになって、何も考えずに、ぼーっと天井を見つめる。

 

めぐねえのことも大切だけど、他にも色々いろいろ知っておかなくちゃいけないことがある。例えば...なぜ設備がこんなに整いすぎているのか。だ。

 

 

俺は立ち上がり、日本刀を持って資料室を出た。向かう先は放送室。悠里に聞きたいことがあるのだ。園芸部の彼女なら、学校の設備についていろいろ知っているかもしれないし、それに、めぐねえに直接きけるようなライフは、俺にはもう残っていないからだ。ホント、ヘタレである。

 

 

「ちょっといいか?」

 

ドアを三回ノックし、俺はドアノブに手をかけた。そのままドアを開くと、机に脚をのせて本を読んでいる胡桃と、家計簿を書いている悠里がいた。めぐねえはキッと、職員室にいるのだろう。由紀は寝床にいるのだと思う。俺は悠里の向かい側の席に座り、とりあえず話をきくことにする。

 

 

「なあ、悠里。どうして水が使えるんだ?」

 

俺が真剣な顔で言ったせいか、悠里は少し戸惑うも、質問に答えてくれた。

 

「浄水施設があるからよ。川や地下水から汲み上げて、ろ過するの。だから私たちは水を飲む事ができるのよ。」

「へー、そんなものがこの校舎にはあったのか……。ん、そしたらシャワーも浴びられるんじゃね?」

「「っ!?」」

 

二人は勢いよく立ち上がり、顔を見合わせて頷くと、胡桃は由紀の所に向かい、悠里はめぐねえの所に走っていった。

 

ここ最近、あんまりシャワーを浴びることができなかったから、そこに反応したんだと思うが、それよりも二人は重大なことを忘れている。

 

「着替え無くね?」

 

俺の一言は、誰も聞くことなく消えていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら興奮しすぎだっての」

「しかたないだろ、最近忙しくてシャワーとか浴びれなかったし……」

 

 

  

その後、放送室に集まった女性群は、いざ更衣室へ! と、揃って行こうとしたところを、俺は横から口を出した。すると、みんなの足は止りその場に固まる。数秒間、静かな時間が生まれたが、胡桃がシャベルを担いで俺の腕を引っ張り、みんなに言う。

 

「購買部から制服取りに行ってくる!」

 

そう言い残し、俺を道ずれにしてきて、今の状況に至るというわけだ。

 

 

「なんで今まで気づかなかったんだよ」

 

俺が笑いながら聞いてみると、胡桃は悔しそうに呟く。

 

 

「気づけなかったんだ……」

「………...ぷッ」

「おい! 笑うな!!」

 

 

胡桃が大きな声を出したからか、アイツらが二体、こちらに向かって歩き出した。低い唸り声をあげながら、ゆっくりだが確実にこちらに向かってきている。ボロボロだが制服を着ているので、どちらも生徒で間違いないだろう。

 

「ほら、胡桃が呼んだんだからアッチはよろしくな」

「わかった。ってか、大声出したのは元弥が笑うからだろっ!!」

「はい、はい」

 

 

同時に駆け出し、標的に狙いを定める。俺は奥の方にいる少しデカイ方を倒すことにした。

 

右腰にある日本刀を抜き、今回は片手だけで持ってみる。やはり重いが持てない訳では無い。左手に重りを乗せているような感覚だが、まあ、慣れれば問題ないと思う。

 

俺はソイツに接近し背後に回る、やはり脚が脆いのか、ヤツが振り返ったと同時に、俺は既に日本刀を振るっていた。振り向く直前、左足で踏み込み体を右に捻る。そこからヤツの首めがけて、右から左に、溜めていた力を解き放ち、遠心力を利用して真っ直ぐに切った。斬るといっても、豆腐を箸で切るのと同じくらいに、切れ味が良い。斬った感覚がしないほどだ。

 

首が無くなった所から、大量の血が噴き出した。血飛沫が腕や顔についてしまうが気にしない。

 

 

 

ヤツの首と胴体が綺麗に離れ、首は宙を舞った。そして、重力に従ってボトっと床に血をぶちまけて落ちる。ゴロゴロと少し転がり、やがて止まった。胴体の方は、数秒間立っていたが、頭が無くなってバランスをとれなくなり、そのまま床に倒れ込んだ。

 

「ふぅ...」

 

倒したヤツらをみてから、すぐに胡桃の状況を確認する。すると既に終えていたらしく、シャベルを背中に納めていた。

 

 

「お疲れ、けっこうグロかったな。血とか」

「あぁ、そうだったな。軽く寒気がしたよ。でも、慣れないと」

 

日本刀を鞘に戻しながら、俺と胡桃は苦笑いを浮かべる。そして、いつも用に拳をコツんとぶつけた。コレは、ヤツらを倒した後に必ずやる動作だ。戦闘お疲れ様。と言う意味もあるが、一番は、お互いが無事に生きていることを確かめ合っている感じだ。

 

 

「さぁ、購買部にいくぞ」

「おぉ!」

 

俺と胡桃は、少しずつ暗くなってきている廊下を、ヤツらを倒しながら歩いていく。

 

床に血という足跡を残しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




名前が決まりました!

様々な意見ありがとうございます!
多分次の回で出てくると思うので、楽しみにしていてください!


それと、UA1000突破&お気に入り25突破ありがとうございます!!

これからも頑張っていきますので、どうか応援して頂けると嬉しいです!

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