受験生なので少し余裕がありませんでしたすみません。
「あぁー!!!! やってしまったぁー!!!!」
資料室。そこは、俺専用の寝床である。今、自分の寝床で何をしているかと聞かれたら、俺は即答で「叫んでいる」と言うだろう。なんにせ、現にそうなのだから。大声で布団に顔を埋めて、俺は脚をバタバタとさせた。何で男の俺が、女子みたいに脚を布団に叩きつけてるのかは、数時間前に起った……いや、自分自身で起こしてしまった事が原因だ。その原因は、めぐねえに詰め寄った時間帯に遡る。
「ん…?」
めぐねえの可愛らしい声が口から出てきたと同時に、めぐねえはうっすらと瞼を開けた。自分の身に何も起こらなかった事を不思議に思ったのだろう。先程まで俺の肩を強く掴んでいた手が、スッと緩まったのが、その証拠だった。
俺はと言うと、あと数センチ。というところで怖気づいてしまい、キス出来ずに固まったままだった。二人が動けば、今でもキスできる距離なのにも関わらず、ヘタレてしまう自分が心底嫌になる。もう、意気地無しとでも、ダサいとでも何でもいえ。仕方ないだろ……恥ずかしいんだよ…。
俺はめぐねえから視線を逸らして、床を見つめた。今、めぐねえの顔を直視してしまったら、何をしでかすか分からないし、そもそも恥ずかしくて見ることが出来ない。自分でも分かるくらい顔が熱い。ヤバイな、これはこれで凄く気まずい。さて、どうしたものか。
俺が思考を巡らせていると、めぐねえは緩めた手に、再度力を込めた。俺の服をギュッと優しく掴む。何ごとかと思い、めぐねえに視線を移すと、めぐねえは耳を赤くしていた。しかし、俯いしまっているので表情が読めない。なので俺は、無言でめぐねえを見つめることしか出来なかった。
何分たったのだろうか。静かな時間が訪れて、かれこれこの体勢のまま時間が経過している。めぐねえは俯いたままでいるし、俺はめぐねえの行動から、何をしたいかを推測することすら出来ない。なんにせ、少しでも動いたらいけないような気がして、俺は身動きがとれないでいたし、一番は、めぐねえとの距離が近いからだろう。頭が沸騰して、脳みそが動かないのだ。
するとここで、めぐねえが動き出した。
「も、もとやくん。その……さっきの、続きを…して、もらえるかな?/// もっ、もちろんダメだったらいいのよ!! 」
「ふぁい?」
しまった! 突然過ぎてアホ丸出しの声をだしてしまったぁ!!
そんな事を考えていると、めぐねえは俯いていた顔を上げで、俺を数秒間みつめる。そして、再び瞼を閉じた。長い睫毛が揺れ、綺麗で吸い寄せられる瞳を閉ざす。顔の角度を少し上げで、小さくだが唇を突き出しているようにも見える。いや、突き出しているのだ。コレの顔はつまり、キス顔ということになる。
「…………ヴぇ!?」
どこかのアニメに、さっきの俺みたいな声を出して驚くアイドルがいたような気がしたが、今はそれどころでは無かった。
「めっ、めぐねえ!? そっ、それは……!」
俺が本脳的に離れようとしたら、めぐねえは俺の肩をつかんだまま引き寄せて逃さないようにする。その行動は、俺の考えを確信へと変えさせるものだった。
──めぐねえは俺のキスを求めている。
いやいやいやいやいや!!
あまりにもマズすぎるだろっ!?
いや、確かにさ、俺はめぐねえに詰め寄ってキスしようとはしたよ? だけどな、それはなんというか…熱で頭がおかしくなっててさ。やっていいことと、やってはいけない事の区別が付けなかったんだよ。
そうだ! それだ!!
そうなんだよ、俺は熱で判断基準がおかしくなってたんだ。だから、いつもより理性が抑えきれなかったって言うか……男の俺が出てきたと言うか…めぐねえとお近づきになりたかったと言うか……なんで俺、全力で言い訳考えてるんだろ……
そんな事を思いながら、静かに俺を待っているめぐねえに、意識を持っていった。
紫色の綺麗な髪の毛に、童顔で可愛らしい顔。少しタレ目だけど、とても優しい目元。頬を赤く染めて、ピンク色の唇を小さく突き出している。この顔は、誰もがみても一瞬で堕ちてしまう位に、とても強力だった。
俺は吸い込んだ息を飲み込み、めぐねえの頬に手を添えた。柔らかい頬の感触が掌に広がる。ソレを感じながら、俺はゆっくりと口を近づけた。そして──
「──めぐねえ、モトくん。ご飯の時間だ…よ」
「…めぐねえ、大丈夫か? いきなり背中を壁にぶつけて転ぶからビックリしたよ!!」
「へぇ?」
突然扉が開いたと思ったら、由紀が部屋に入ってきた。
由紀は固まったまま、俺とめぐねえを数秒間みつめた。咄嗟についた嘘を聞きとってくれたと願いながら、俺はめぐねえをその場に立たせる。自分の服をパンパンと叩いて、転んで起き上がった後の動作をする。そして、今、由紀の存在に気づいたように顔を向けた。
「あっ、由紀どうしたんだ?」
「え……えっと、その…」
「へ? えっ??」
頼むめぐねえ、どうか俺に合わせてくれ!!
そんな意味を込めた視線を、めぐねえに向けた。すると、勘づいたのか、ハッとしたような表情をしてから、コクリとめぐねえは小さく頷く。良かった。めぐねえは察してくれたようだ。
「ごめんねゆきさん。さっきのは…その、うぅ// わ、私が転んであんな体制になった……のよ」
「そうそう。もう、めぐねえ。しっかりしてくださいよ。俺は病み上がりなんですよ?」
不自然すぎるほどの棒読み感。めぐねえは途中であの事を思い出して顔をあかくするが、なんとか堪えてくれた。ぷるぷると小刻みに震えており、恥ずかしいのか俯いてしまう。
「そうなんだ……めぐねえったら、しっかりしてよ〜」
「さっ、佐倉…先生、です」
由紀は、どう考えても嘘だとわかる嘘を信じてしまったようだ。あのめぐねえの表情と行動を由紀ではなく、胡桃や悠里が見ていたら、一瞬でバレていただろう。なので由紀が来てくれたことと、由紀が純粋だった事に心底感謝した。
めぐねえは、なぜか自信なさそうに小さく呟いた。いつもならキッパリと言うセリフなのに。疑問に思いながら、聞いていたけれど、由紀がこの部屋に来た理由を尋ねることにした。
「それで、由紀は何しに来たんだ?」
「あっ、そうだった! りーさんが、ご飯だから二人を呼んできて。って言ったから、呼びに来たんだよ」
「わかったわ。それじゃあ、行きましょう」
顔を火照らせためぐねえと、「ごっはん〜♪ ごっはん〜♪」と、上機嫌で謎の歌を歌い出した由紀は、部屋から出ていく。パタンと、部屋のドアが閉じ、俺は一人取り残されてしまった。二人が部屋から出ていった後、間を置いてからその場にしゃがみこんだ。
「はぁあああああああー」
落ち着いたのか、緊張が解けたのか、よくわからないけれど、とりあえずひと安心して、息を吐いてしまった。
「俺のバカヤロウ」
手で顔を伏せて、静かに呟いた。呟いたその声は、誰にも聞かれることなく、部屋の中で消滅した。
そして、冒頭に戻る。
あの後、みんなで放送室で食事をとり、俺は資料室に戻った。ヤツらの数もだいぶ減り、落ち着いた時間帯だったので、俺一人だけで行くことが出来た。胡桃が俺の体を心配して、付いてこようとしたが、胡桃に「もう大丈夫」と説得をすることで、やっとひいてくれた。それでも胡桃は納得いかないような顔つきだった。ソレを見て、俺は心から嬉しく思った。
心配してくれている人がいるだけで、俺は嬉しいんだ。
それだけで、アイツらを倒すことが出来るし、死にたくないって、思える。だから、俺は自分を犠牲にしてでも、あの四人を守り抜きたいんだ。たとえ、俺が死んでしまっても……
ぼーっと天井を見ながら、俺は握りしめていた拳にいっそう力を込めたのだった。
その頃、放送室にて。
「めぐねえ、少し話したいことが……めぐねえ?」
「………………へぇっ!? あ、え…えぇ! いいわよ」
私がめぐねえに話しかけても、めぐねえは上の空で、何秒かたった後にようやく返事が帰ってきた。めぐねえは、今日一日変だ。いえ、強いていえば食事中からな気がする。朝や昼は普通だったけれど、みんなで晩ご飯を食べていたあたりから少し頬が赤い気がするし、時とぎ突然「うぅ…///」と、声をもらしたり、顔が綻んだりと。変なのだ。それに、なんて言えばいいのかしら……そう、めぐねえの周りに放たれている雰囲気が、少しピンク色な気がする。
これはきっと、元弥くんと何かあったのだろう。
根拠はある。午後はずっと元弥くんの看病をしていたのだ。それも付きっきりで。何度か私とくるみが交代しようとしたけれど、めぐねえは「大丈夫よ」と、断り続けた。何回も断り続けるので、とうとう私達は折れてしまったほどだ。
めぐねえのあの顔と、ぼーっとした態度から考えた結果。アレは『恋』をしたと推測された。
この状況で恋をする相手といえば、一人しかいない。それは──
「悠里さん?」
「……はい。ここだと少し言いにくいので、寝室に行きませんか?」
「えぇ。いいわよ」
私は笑みを浮かべながら、立ち上がった。
これは私の心の中に留めておくことにした。あの様子からするに、めぐねえはまだ、確信しているようにはみえない。だから、本人から相談されるまでは、見守っておくことにする。
めぐねえ、頑張ってくださいね。
疑問符を頭に浮かべるめぐねえを目尻に、私は軽い足どりで寝室に向かうのだった。
「りーさんとめぐねえ、行っちゃったね」
「あぁ、そうだな」
ゆきは漫画を読みながら、机に頬をつけている。私はというと、自分の武器…シャベルを布巾でピカピカになるまで拭いていた。
今日はヤツらとの戦闘はなかったため、制服もシャベルも血に染まらずに済んだ。これもすべて、元弥のお陰だ。私が放送室にいた時に、元弥はかれらのコトに勘づくことができたから、誰も被害に遭うことがなかった。
アイツは、もう少しあたしを頼りにして欲しい……
どうせ元弥の事だろ、一人で二階に行こうとしてやめたに違いない。なんか、元弥ばかり無理させて、しかも戦闘の殆ども元弥が担当している。あたしに戦闘をさせたくないというのは、もちろん理解している。でも、……ハブられてる感があって、スゴくイヤなんだが…それに、相棒だからこそ、もっと頼って欲しいのに…元弥のヤツめ。
「部屋にでも乗り込んでやろうかな…」
心の声が、つい口から出てきてしまった。
あたしの声が聞こえたのか、ゆきが体を起こして、顔をこっちに向けてきた。が、突如、焦ったような表情をした。
「く、くるみちゃん、どうしたの? 顔にシワが増えてるよ?」
「なっ、なんだとー!? それはどーゆーことだゆき!」
パイプ椅子を蹴って、ゆきにじりじりと詰め寄る。すると、シャベルを構えていることに気づいたのか、焦った表情のままその場に固まってしまった。ビビってしまったのか微動すらしない。そのかわり、大量の冷や汗を滝のように流している。
そこまであたしは、酷い表情をしていたのか…
「お、落ち着ついてくるみちゃん? 怒るとさらにシワが増えちゃうよ?」
「よし、手加減しないからな。覚悟しろよ」
「ふぇえ!? ごっ、ごみん! くるみちゃん許してーー!!」
少しだけゆき感謝しながら、あたしはシャベルをゆきの横にシュッと突き出した。もちろん力は入れていないし遅くした。それでも、ゆきは「ひぃ!!」と、声をあげて小さく叫んだ。峰打ちじゃ。安心しろゆき。
そのあと、寝室から出てきたりーさんに見つかり、十分くらいの説教を受けた。もちろん、りーさんの目の前で、あたしとゆきは正座して……
「部屋の中でシャベルを振り回さないの!」
「…はーい」
「うぅ、わたし悪くないのになんでぇ…」
ゆきは遣り切れないような顔でりーさんの説教を聞いている。これもそれも、あたしが招いた事なのに、ゆきも巻き添えになっている。ゴメンなゆき。そう、心の中で謝った。
「あ、脚が痺れた……」
「ふっ、ふっ、ふっー。くるみちゃんもまだまだだね!」
「……ほい」
「〜〜っ!? くっ、くるみちゃん酷いよぉー!!」
未だに座っているゆきの脚を、軽くつついたら、案の定、声にならない悲鳴をあげて悶絶した。脚を必死におさえて、痺れを堪えている。
そんなゆきをスルーし、あたしはパイプ椅子に腰をかけて、りーさんとめぐねえをみる。
「なんの話をしてたんだ?」
「まだ内緒よ。でも、私達からしたらとてもいい事だと思うわ。そう思いませんか、めぐねえ?」
「えぇ、きっと、いい方向に進んでいくわよ」
めぐねえもりーさんも、楽しそうにそんな事を言ってきた。そう言われると、結構期待してしまう。こんな状況の中、そんな事を言われたら、どんな些細なことでも期待で胸が膨らむだろう。
「何だろうね。楽しみだねーくるみちゃん」
「そうだな」
やっとのことでゆきは立ち上がり、制服をパンパンと払う。そして、あたしの肩に両手を乗せて、楽しそうにはしゃぐゆきをみて、自然とあたしも微笑んでしまったのだった。
0はグサッと来ましたね……悪いところがあればできる限り言って欲しいです!
全力でなおしますから!
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