俺が青春なんてして良いのだろうか   作:nasigorenn
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今回も頑張るガハマさんです。


第12話 俺の初めての小説がこんなものなんてあんまりだ

 遂に新たな依頼が来たと思えば、その依頼内容は『書いた小説の感想を聞かせて欲しい』というものであった。

その依頼に対してそこまで不満というものはなかった。何せ渡された小説を読み、感じたことをそのままに報告すればよいのだから。特に何かをしなくてはならないというわけではないのだから、楽も楽、超楽とすら言っても良いくらい簡単な仕事と言えよう。

だと言うのに八幡はこの依頼に関し、実に面倒だと思った。

何せただの小説ではない。目の前の所謂『中二病』をこじらせた男が書いた小説だというのだから、不安しか残らない。精神不安定者が書いたものなど勿論安定しているわけがなく、下手をすれば此方の精神が病みかねない。事実、精神を病んでいる者は他者に対し、何かしらの方法で精神異常を伝播させることがあるのだ。そんな事例があるだけに、八幡は出来れば読みたくなかった。誰だって病みたくはないのである。

だが、ここは奉仕部。そしてその精神は魚の取り方を教えるというものだから、この場合はちゃんと読んで材木座に適切な指摘と感想を伝えた上で彼に物書きへの向上心を上げさせることこそが正解。故に答えは決まっている。

決まっているのなら後はするだけであり、まず材木座に依頼の返事を返すことに。

 

「その依頼、確かに引き受けたわ。だからそのお話を渡して欲しいのだけれど。出来れば由比ヶ浜さんと比企谷君の分も頼めるかしら」

 

雪乃にそう言われ、それまで雪乃に責められ打ちのめされていた材木座は目を輝かせながら嬉しそうに頷いた。

 

「うむ、勿論用意してある。受け取るがいい!」

 

そして彼の鞄から取り出されたのは、床に散らばっていた物とまったく同じ物。それを見てこいつは何人分用意しているんだ、と突っ込みたくなった八幡だが飲み込んだ。突っ込んだところで話が進まないのは目に見えているからだ。

雪乃はそれを受け取ると、結衣と八幡を呼んでそれを渡す。

 

「とりあえず3人で読んでみて思った感想を報告しましょう」

「あぁ、そうだな」

「そ、そうだね~…………」

 

八幡は特に気にしていないようだが、結衣は紙の分厚さと文字の多さに目が泳いでいた。

ここでネットに詳しい者なら、小説投稿サイトというものを紹介しただろう。そうすれば多くの人から意見や感想を貰えるので為になるはずだと。

しかし、残念な事にこの場でそれに思いつく者はいなかった。

八幡は仕事柄パソコンは使うが、報告書だったりといった書類関係やもしくはクラッキングなどをするときに使うだけで、あまりそういった遊びにパソコンを使うことはない。雪乃も似たようなもので、彼女の場合は勉強にしか使わないのでそういったものを知らない。結衣はオタク趣味とはかけ離れているのでその存在自体知らないのだ。

結果、3人は一番楽な答えを知らないが為に見逃してしまっていた。

その最適解に気付けずに依頼の話を更に詰めることになり、翌日に再び材木座に部室に来てもらいそこで感想を発表することに。なので今日はこのまま持ち帰って全部読まなければならなくなった。

それが決まったところで材木座は帰ることに。その際に八幡に一緒に帰らないかと中二病的な言い回し方で誘ったが、八幡はすっぱりと断った。内心では厄介事を持ってきた相手の誘いなど受けたくなかったのだ。

そして材木座が部室から去って室内に八幡、結衣、雪乃の3人が残る。

 

「それで…………どうしようか?」

 

結衣の言葉に八幡は顔をしかめた。今し方話していただろうにこいつは聞いていなかったのかと。

だからもう一回同じように言ってやろうと思ったのだが、先に雪乃に言われてしまった。

 

「由比ヶ浜さん、さっきも言ったけどこの小説を持ちかえって各自で読んで。明日依頼主であるあの男に感想を言えばいいだけだから」

 

その通りなので特に言うことはない八幡。

ならば後は雪乃の言う通りこの小説を持って帰るだけ。だから八幡は帰ろうとするのだが、そんな八幡の服の袖が引っ張られた。

 

「ん?」

 

その声と引っ張られた方向に顔を向ければ、そこには顔を真っ赤にしてモジモジしている結衣がいた。

 

「どうしたんだ、由比ヶ浜?」

 

その様子がやけに可愛らしいものだから戸惑ってしまう八幡。そんな八幡に結衣は上目遣いで見つめてきた。

 

「その、ヒッキー………一緒に読もう」

 

他の男から見れば破壊力抜群のお願い。しかし、八幡はそのお願いを聞いて胸を打たれる前に疑問府が上がる。

 

「由比ヶ浜、話は聞いていたよな? 何でそこで俺に話を振るんだ? 自分の家に帰って読めばいいだけだろ?」

 

八幡の言葉に結衣は軽く首を横に振ると、何故そんなお願いをしたのか話し始めた。

 

「だって怖いんだもん! あのキモいのが書いたのでしょ……なんか怖くて。それに私、小説とか読んだことないし、どういうのが面白いのかなんて分からないし」

 

キモいと言われている材木座に少し同情しつつ、八幡はどうしようかと考える。ここで結衣の話に乗る必要はない。バイトもないのだから家でゆっくり読んだ方がいいだろう。しかし、結衣が言うことも分からなくもない。見た感じからも分かるが、結衣は読書をするようなタイプではない。だからその話の面白さが分かるのかと言えば答えはNOだ。だが、それは八幡も一緒であり彼自身本はあまり読まない。語学の勉強で何かしらを読みはするが、あくまでもそれは勉強重視。物語の面白さなど感じたこともない。なら、結衣と大した差などないのかもしれない。

そんな二人に今度は雪乃がのっかってきた。

 

「なら、私も一緒に読むわ。比企谷君と二人っきりなんて危ないもの」

「おいちょっと待て。俺が襲うのは当たり前なのか?」

「あら、流石は男子、卑猥ね。私はただ危ないと言っただけなのに何を深読みしてるのかしら、この変態」

 

きっと結衣の事を心配しての発言なのだろうが、途中から八幡への罵倒に変わっている。それに突っ込む八幡だが、それがさらに墓穴を掘ることに。

 

「ヒッキーに襲われちゃう!? そ、そんな、まだ速い……で、でも、ヒッキーになら………」

 

顔から蒸気を噴き出し暴走する結衣。

真っ赤になった顔は熟したトマトのように真っ赤で彼女を艶やかに魅せた。

 

 

 

 そんなわけで3人でとりあえず下校時刻まで材木座の書いた小説を読むことにした3人。

いざ始まった読書だが、それは3人の混迷の始まりでもあった。

 

「なんだ、これ?」

 

八幡はついついそんな言葉を漏らしてしまう。

何せ小説が小説として機能していない。物語は滅茶苦茶で穴だらけ。その上設定は妙に凝っているかと思えば矛盾している箇所が多く、何よりも目的がまったくない。

小説以前の話であり、とてもじゃないが人様に読ませられるものではない。

チンプンカンプンな内容に目を点にする八幡。そんな八幡に結衣は近づきながら声をかけた。

 

「ねぇ、ヒッキー……この漢字、何て読むの?」

 

まるで耳元でささやかれるかのような声に八幡の集中は乱れる。甘い声が耳をくすぐり、女の子特有の甘い香りが結衣からして、八幡の胸は確かに高鳴った。

ドキドキする心臓にだらしないと八幡は思い、何とか表に出ないように努力する。

そして結衣に正解を教えると、彼女は嬉しそうに笑った。

 

「ありがとう、ヒッキー!」

 

そのお礼と共に温かくなる胸。きっと八幡の頬も少しばかり朱色になっていただろう。

そんな風にドキドキしつつも悪くない時間を過ごしていると、今度は雪乃が八幡に近づいて問いかけてきた。

 

「ねぇ、比企谷君。この言葉なのだけど、どう考えてもこんな風には読まないし意味も絶対にこんな意味にはならないわ?」

 

結衣とは違うフローラルな香りに八幡は再びドキドキしてしまう。雪乃は性格こそ厳しいが、それを除けば美少女なのだ。そんな彼女とこうして顔を突き合わせられる距離に居ると言うのは、何と言うか嬉しくも思ったが気恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。

 

「たぶんこれは比喩などの注訳じゃないか。意味としては………」

 

そんな風に3人で一緒になって小説を読み、分からない所などを3人で一緒に考える。それは確かに穏やかで気恥ずかしく、女子が近くに居ることを感じさせるには十分だった。そのせいなのか気まずくも恥ずかしいのか顔を紅くしてしまう八幡。

そんな八幡に対し、結衣と雪乃の二人は同じように顔を紅くしていた。

 

 結局、話を半分も読まずに時間になり帰ることに。ただ、こんな時間も悪くはないと八幡は思った。

 

 

 








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