俺が青春なんてして良いのだろうか   作:nasigorenn
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もうそろそろ八幡が牙をむくそうです。
そしてお気に入り500人突破! 本当にうれしいです。


第23話 俺は彼女のために参加する

 今まで依頼に対し前向きに対処してきた八幡であったが、今回の依頼に対してはそうする気が起きなかった。

それと言うもの今回の依頼が今までと違い、明らかに『真摯』に欠けるからだ。

最初の結衣の依頼、既に送り先が分かっていたので少し曖昧であったが、それでも結衣の熱意は十分に伝わってきた。

材木座の依頼は本人の自己満足と言えばそれまでだが、酷評を覚悟した上で彼は自分の作品の評価を頼んできた。その真剣さは買うべきものである。

戸塚の依頼は自分の為である以上に部活の為であり、どう見ても無茶な練習メニューに彼は文句一つ漏らさずに着いてきた。それだけ一生懸命なのは十分に伝わってくる。自分の為だけでなく、部活の為にそうまでして頑張る彼を誰が否定しようものか。応援するのは当たり前だった。

だが、この依頼は違う。

確かに悪意があるのは認めよう。その結果クラス内の雰囲気が良くないのも確かだ。

しかし、それは犯人も承知の上での行動だ。それが身内というのだから流石に快くは思わない。詰まる所は身内争いに皆が巻き込まれただけなのだ。

それを解決するのを手伝えと言うだけに飽き足らず、挙句は自分からは動かずに解決しろと言ってきた。

別に八幡はその事に怒ってはいない。

この部活は活動理念こそ上げてはいるが、それを発表はしていないのだからこの部活の事を聞けば解決してくれると思っても仕方ない。

だが、そうだとしてもだ。

仮にも自分の『友人』関係だというのに問題を人任せにするのはいかがなものだろうか。

彼が今回やる気がないのはこれがもっともな原因だった。

それまで友人というものがいなかった八幡にとって、結衣や雪乃や戸塚、一応材木座はそれなりに親しくさせて貰っている。だから彼等が何か困ったことがあるのなら、自分はそれなりに助けようとは思っている。それが友人への対応と言うものだろう。彼の場合これが『戦友』……つまり同僚なら話は別だが。

友人がいなかった八幡でさえそう思うのだ。

だというのに葉山はそれをしないと言うのだ。自分の友人達の問題を自ら動かずに他者に解決してもらおうと丸投げした。

何度も言うが、八幡はこの件に関し怒ってはいない。

ただ、失望を感じただけだ。

やはり『友人』というものはそこまで大切なものではないのかと。

だが、それはまた自分自身の否定になる。それはそれまで親しくなった雪乃達とのこの気に入っている空間などのすべてを否定することになる。

それが八幡は嫌だった。だからこそ、依頼そのものは受ける姿勢は見せたが関わる気はないのであった。

それに………たまには結衣や雪乃のお手並みを拝見させてもらうのもよいだろうと、そう考えて。

 

 

 

 翌日になり、早速行動を開始する結衣。

彼女はどうやら女子特有のネットワークを使い最近の葉山組の男子3人に何か変化がないか調べるようだ。

それは良かったのだが、その行動を見ていた八幡は内心で絶句することになる。

何せ結衣は全く隠す気がないのか馬鹿正直にその話題を葉山組の女子である三浦と海老名 姫菜に振ったのだから。

仮にも秘密裏に調べることなのに、まったく秘密になっていない。当然普段そのような話題を振らない結衣に対し、二人はないやら疑いの目を向け始めたのは言うに及ばず。ただし、それが目的であることの看破にはつながらず、彼女の気になる男の相談と海老名 姫菜の腐女子話へと転がったのはありがたいことだろう。最初の調査から転がり落ちては話にならないのだから。

その後も結衣はそれなりに頑張って調べようとするのだが、もともとそのような事に向いていない事もあってか空振りに終わり、未だに調査は進まない。

また、八幡自身も結衣を見つつ例の3人と葉山を観察すると、そこである事が判明した。

と言っても大したことではない。高校2年になって人付き合いを結構経験しているはずなのに、まったくもって出来ていないということを見せつけられただけだ。

葉山は皆を友人と思い、また彼等もまた葉山を友人と思う。

だが、彼等同士では友人ではないのだ。友人の友人は知り合いであり友ではない。

つまりそう言うことだろう。この歳になってもそんな考え方をする彼等を見て、八幡は呆れ返るしかなかった。

会社の同じ部署にいるなら皆同僚。そこに苦手意識があろうが無かろうが同僚なのだ。時に助け合い、また時には競い合う。同僚の知り合いは知り合いだが、同じ会社内なら同じ仲間。その繋がりは持っていて絶対に損はない。そういう考え方が出来ない辺り、彼等はまだ子供なのだと言えよう。

そして時間は過ぎ、あっという間に2日が過ぎた。

しかし結果は…………

 

「ごめん、全然分かんなかった!」

 

放課後の部室にて、結衣が雪乃の前で両手を合わせながら謝っていた。

その行為から分かる通り、この二日間を彼女なりに捜査はしてみたものの、何も分からなかったのだ。

だからこそ、何もできなかった自分を不甲斐なく思いつつ彼女はこうして雪乃に謝っているのである。

 

「そう…………それは仕方ないわね」

 

そんな結衣に対し、雪乃は少しだけ肩を落としつつこれからの捜査について考える。

正直結衣の調査をあてにしていたわけではないのだが、その片鱗でも知ることができればそれを足がかりに自分でも調べようと思っていたらしい。

だからこそ、今度は彼女が調べようとするのだが、もともと人間関係に難がある性格の彼女だ。あの3人を見た所で分かるのは八幡が感じた事と同じことだけだろう。

八幡はここが限界だと判断し、雪乃に話しかける。

 

「雪ノ下、この後はどうするんだ? 流石にあの3人ただ見ていても何も進展しないぞ」

「えぇ、分かってるわ」

 

雪乃からの返答に彼女自身それは分かっていることが伺えるが、同時に焦りも伺える。

八幡の知る限り、雪ノ下 雪乃という少女はやると決めたことは何が何でもやり通そうとする。特にそれが経験があることなら尚のこと。

今回のチェーンメールという悪意を経験したことがある彼女にとって、その犯人がのうのうとしていることは絶対に許せないだろう。正義感ではなく、大義をもってして真正面から叩き潰す。それが彼女という存在だ。

だからこそ、今回彼女が最終的に取る行動も予測できる。

しかし、それはあまりにも無謀。それにシラを切られればそこから先は追求できない。

彼女なら気の強さと口の上手さで強引に行くかもしれないが、それに飲み込まれなければ犯人の勝ちだ。どちらの分が悪いのかなど、幼子が見ても分かる話である。

だからここで手打ち。ここから先は妥協するしかない。

八幡はそう思いつつ雪乃に提案する。

 

「お前がどうしようとしてるのかはなんとなく予想できるが、それは明らかに分が悪い賭けだぞ。勝てる見込みがまるでない。だから……もう犯人の特定はいいんじゃないか? 依頼の内容はチェーンメールのせいで雰囲気が悪くなったのをどうにかしてほしいというものなんだから、犯人特定は本来必要ない。だから諦めるのも一つの手だと思うが」

 

八幡の提案を聞き、雪乃は悔しそうに顔を顰めつつも八幡を睨みながら返答を返す。

 

「確かに貴方の言う通りかもしれない。でも、それでも………私はそれを否定するわ! この問題は一時的に解決しても根本が解決しなければ繰り返されるもの。悪意の拡散はずっと続き、そのたびに被害者が出てしまう。それを見逃すなんて私は絶対に嫌よ。それはつまり負けを認めるということだもの。悪意に負け、それを通すということはその後の人生に於いて一生付きまとうわ。そんなのは絶対に嫌、私は負けたくないしそれが通ることも許せない。何より、由比ヶ浜さんが一生懸命頑張って調べてくれたのよ。その頑張りをなかったことになんて、私はしたくない!」

「ゆきのん……」

 

雪乃の言葉に嬉しかったのか顔を赤くする結衣。

そして八幡は内心かなり驚いていた。

それは彼女は発した言葉に、今までにないものが入っていたからだ。彼女が結衣のためにもそうしたいと言ったことが意外であり、そして少し胸が温かくもなった。

そんな真摯なことを言われては、一生懸命が好きな八幡はもう諦めろとは言えない。

だからこそ、今度は彼が動くことにした。

 

「そうか…………なら、調査続行だな。今度は俺もやるよ」

「比企谷君………ありがとう」

 

八幡の言葉に少し嬉しかったのか微笑んでしまう雪乃。その顔は綺麗であり、それ以上に可愛らしかった。

そんな顔を見てしまったためか、顔が熱くなるのを感じる八幡。

それを知られたくなくて、彼は彼女がしようとしていたことへの問題点を上げる。

 

「一応先に言っておくが、雪ノ下がやろうとしていることをするには証拠が足りない。何もないのにスマホを見せろとは言えないし、見せた所で消されていては意味がないからな」

「それは分かっているわよ」

 

そう答える雪乃だが、改めて言われて少しばかりむくれてしまう。

それが結衣の何かに触れたのか、可愛いと言って雪乃に結衣が抱きつい来た。それに戸惑いつつも受け入れてしまう辺り、雪乃は結衣のことを大切に思っているのだろう。

そんな二人を生温かい目で見つつ、八幡は雪乃に提案する。

彼女の行動を確実にするための証拠を手に入れるために。

 

「雪ノ下、明日で終わりにしてやる。明日、俺は部室に『あるもの』を持ちこむ。そいつを使えばこの馬鹿騒動も終わりにさせられる。だから明日まで待て。終わったら、後はお前の独壇場だ」

「それってどういう………?」

 

八幡の意味深な言葉に首をかしげる雪乃。

そんな雪乃を見つつ、八幡は口元をニヤリと釣り上げた。

学校生活で『こんなこと』をするとは思わなかったが、技能は活かしてこその技能。そしてばれるようならレイスの名を語ることなど許されない。たまには自分で進んでそういうことをするのも悪くはないと、そう考えた。

まぁ、課長にばれたら大目玉なのはわかり切っていいるが。

そのためにも、八幡は明日のために最初のキーにして最後のピースになるであろう物を借りるべく、結衣に話しかけた。

 

「由比ヶ浜、だから明日………お前のスマホを貸してくれないか」

「え?………………えぇえぇええええええええええええええええええ!!」

 

八幡のお願いに結衣が驚き声を上げた。








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