俺が青春なんてして良いのだろうか   作:nasigorenn
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どうもサキサキが可愛い今日この頃、頑張れゆきのん!


第38話 俺は彼女達にお礼を贈る

 ららぽーとに出向き結衣の為に誕生日プレゼントを買いに来た八幡達。

さっそく施設内に繰り出そうとするのだが、そこで少し問題が発生した。

それはどこから周れば良いのかというものである。施設が大型なのでその店の数も膨大。だからどこから周ればよいのかが分からないのだ。

その事に考え込む八幡と雪乃と沙希。

八幡はこういった施設を『戦闘』的に有効活用する方法は熟知しているが、普通に買い物に来ることがないのでどうすればよいのか分からず、雪乃は雪乃で人が多い所に自ら出向く事がなかったので困り、沙希は庶民感覚で安い物を求める傾向が強いのでこういった大型商業施設に行くことがなかった。

そんな3人なのでどの店から周ればよいのか迷っていた。

このまま行けばすべての店を周ることになってしまい、時間を莫大に浪費してしまう。それはこの3人にとって非常によろしくない。

だからどうしようかと相談するのだが、それは小町によって解決した。

 

「小町的には~~~~……ここのお店から周るのが良いと思います」

 

小町はそう言うとある区域を指差した。

そこは若い人向けの衣服や装飾品を取り扱う店が多くある区域であり、小町の意見は3人にとってとてもありがたいものだった。年頃の彼女の感性はある意味一番この場で適切な判断をしてくれる。なので即採用し、4人はそこに向かって歩き出す。

さて、ここで普通に考えれば各自で散策した方が効率が良いだろう。しかし、その選択肢を八幡が取ることはしなかった。

何故なら確かに効率を考えればその方が良いとは言え、この場は3人にとって不慣れな場所である。そういった場所を単独で行動するというのは明らかに危険な行為だ。いざという時通常通りの対処が出来なくなる可能性がある。また、合流に手間取る可能性もあるのだ。それを考えると効率よりも一緒に固まって行動したほうが安全を確保出来る。

そういった考えがあるからこそ、こうして4人で固まって歩く八幡。

それに選んだ物に対しての意見を聞けるという利点もあるのでこの選択は決して間違いではない。

だからこの判断は間違いではない………というのに、八幡は妙に気まずさを感じで顔が強張っていた。

何故彼がこうも気まずさを感じるか? それは八幡の後ろで実に楽しそうに話す小町達が原因であった。

 

「へぇ~、お兄ちゃん、学校だとそんな感じなんですか。家だといつも忙しそうにしてるからそんな風にのんびりしてるお兄ちゃんって初めてかもしれません」

「あら、そうなの? 部室ではいつも勉強ばかりしてるわよ」

「それに昼休みもいつも一人で何処かでお昼食べてる。その時も静かにゆっくりしてるみたいだけど」

 

どうやら小町が八幡の学校生活を雪乃達に聞いているらしい。

その代わりに雪乃と沙希は二人が知らない家での八幡についてを小町から教えて貰っているようだ。

会話の内容が自分でしかも身内からの暴露となれば恥ずかしいものである。

それは八幡とて例外ではない。

例えば、

 

「お兄ちゃんって凄く優しいんですよ。小町が困ってる時はいつだって助けてくれるし、それに小町に怒ったことなんて一度もないんです。小町がいけないことをしても、叱りはするけど怒りはしないんですよ。仕方ないなぁ、て感じに呆れつつも私の頭を優しくポンポンって叩くんです」

「彼、家ではそうなのね………」

「あいつも家ではしっかりお兄ちゃんしてるんだ………何か似合ってて可愛いかも」

 

こんな話をされていては恥ずかしくもなる。

何故小町が二人にそんなことを話すのか気にはなるが、それをやめろととは八幡は絶対に言わない。何せ彼の優先順位は最優先で小町になっているのである。小町がすることに文句は一切なく、必要とあれば助けるのが当たり前。自分の意思というものは一切関係なく、小町こそが重要なのだ。だから小町がどのような話をしようとそれを遮る権利は八幡にない。

だからやめろとは言わない。言わないが故に会話は続き、八幡の気まずさは拍車がかかっていく。

そんな兄の心境などまったく知らない小町は自分の将来の義姉候補に平等に情報を教えている。

小町としてはこれで少しでも兄が幸せになってくれたらと思う。

理由までは知らないが、兄のお陰で今の自分があるのだと彼女は理解している。だから妹として八幡の幸せを苦労をかけた分願っているのだ。

そのために八幡に必要なのが恋人だと小町は考えている。俗世に言うように、恋が人を変えるのだと信じているから。

結果がこの身内による恥さらし。八幡は目的地でる店に少しでも早く着きたいと願ったのは言うまでもない。

 そして始まったプレゼント探しの店巡り。

なのだが、最初から上手くいくものではないようだ。

歩いてる最中、雪乃の足がとある店の前で止まってしまった。

それは良くあるファンシーショップ。可愛いマスコットキャラなどの商品を取り扱っている店である。

 

「どうしたんだ、雪ノ下?」

 

八幡の問いかけに彼女は答えず、まるで惹かれるかのような足取りで店内に入り、とあるキャラクターの商品の前に来た。

そして顔を頬を染めつつ無邪気そうな笑みを浮かべながら商品を手にした。

 

「………パンさん」

 

雪乃が持っているのは無愛想な顔をしたパンダのぬいぐるみ。

それは東京ディスティニーランドの人気キャラクターである。その事を知らない八幡は正直にその場で漏らす。

 

「なんだ、あの物騒な顔のパンダ?」

「え、知らないの、お兄ちゃん!?」

 

そんな兄を信じられないと驚く小町。それは沙希も同意のようで、八幡に分かりやすく説明し始めた。

 

「あれは東京ディスティニーランドの人気マスコットキャラだよ。あんた、本当に知らないの?」

「あぁ、逆に川崎は良く知ってるな。もしかして好きなのか?」

 

その言葉に沙希は顔を赤くしつつ少し慌てた様子で答えた。

 

「べ、別にそこまで好きじゃないって。ただ、妹が良くぬいぐるみとか欲しがってるから覚えてて」

「そうか」

 

沙希の言葉に八幡はそう答えると共に彼女の妹を思い出す。とても純粋な子で姉の沙希にべったりだったかと。

そう思いながら八幡も店に入ると、雪乃のすぐ傍まで行き彼女が手にしていた物と似たようなぬいぐるみを手に取った。

傍に来た八幡の気配を感じ、雪乃はそれまで夢中になっていた事を恥じらいつつ上目遣いで怒るかのように八幡に話しかける。

 

「何、何か文句でもあるのかしら?」

「いや、別に。好きなのか、これ」

「べ、別に好きというわけじゃないわ。ただこのぬいぐるみの作り方が興味深いというかなんというか…………」

 

八幡の問いかけに顔を真っ赤にして捲し立てるように否定する雪乃。

しかし、その手にはしっかりとぬいぐるみが掴まれており、先程まで夢中になっていた所を見ればその否定は無意味としか言いようがない。

そんな雪乃の様子がいつもの冷静な彼女からは考えられないくらいおかしかったからなのか、八幡は少し笑ってしまう。

 

「な、何がおかしいのかしら!」

 

笑われたと思い怒る雪乃。

そんな雪乃を八幡はやんわりと無視し、彼女が持っていたぬいぐるみと最初に手に取ったぬいぐるみ、そして後は適当に似たようなぬいぐるみを手に取りそれを速やかにレジに持っていく。

そして皆が何かを言う前に素早く会計を済ませ、雪乃と沙希に二つのぬいぐるみを差し出した。

 

「ほら、これでいいのか?」

 

急に目の前に出されたぬいぐるみに理解が遅れる二人だが、次第に追いつき途端に慌て始めた。

 

「急に渡されても困るわ! それにあなたが買ってもらう理由もない」

「そ、そう、私も同じ! あんたにここまでしてもらうわけにはいかないって」

 

そういう二人に対し、八幡は小町にぬいぐるみを渡しつつ答える。

 

「別に大したものでもないだろ。俺がただしたいと思ったからしただけだ。それに小町も欲しそうな目をしていたから。雪ノ下は凄く好きそうだし、川崎も妹が好きなんだろ。日頃二人には世話になってるからな。その礼のかわりだ」

「お兄ちゃん、アリガト~! 大切にするね」

 

ぬいぐるみを貰って喜ぶ小町。

 

(ど、どうしよう……彼に知られてしまったわ………。で、でも、こうしてぬいぐるみを貰えたわけだし、初めて彼から物を貰ったわけで、どう言い表わせばよいのか分からないわ………凄く恥かしい……けど、嫌じゃない)

(ご、ごめん、けーちゃん。確かにけーちゃんもパンさん好きだけど、でも、これはあいつが初めてくれたものだから、その………私が……どうしよう、嬉しくて顔がおかしくなりそう……)

 

そんな小町と違い、雪乃は八幡の中で自分がすでにパンさん好きだということに決まってしまったことが恥ずかしいやら何やらで顔が真っ赤になり、沙希は妹が好きなのは勿論だが、自分も嫌いではないのでプレゼントされたことが嬉しくて顔を赤くする。

 

「お兄ちゃん、ナイス!」

「お、おう?」

 

そんな赤面の二人を見て小町は満足そうに八幡に親指を突き立て、八幡は何がナイスなのか分からずとりあえず返事を返した。

 

 

 

 そのような事がありもしたが一同は本来の目的である結衣の誕生日プレゼントを続行する。

その中には服屋などもあったが、そこは服飾に詳しい沙希がいたお陰で色々と意見が聞けた。

そしてどのような物をプレゼントしようかと色々と候補が決まってく中、雪乃があることを思い出した。

 

「そう言えば、彼女はもうエプロンを付けられるようになったかしら?」

 

それはもっとも最初の依頼。結衣がクッキーを教わりに来た際に判明した事実。彼女はエプロンを今まで付けたことがなかったらしく、まったく付けられなかった。

その事をふと思い出した雪乃は八幡達に提案する。

 

「彼女のプレゼント……エプロンとかどうかしら?」

「エプロン……いいんじゃない」

「エプロンですか……良いと思いますよ、小町的に! 女子力が上がりそうで」

 

雪乃の提案に賛成する二人。そして八幡は反対する気などない。

なので一同は可愛らしくもそういったものが売っている店に入った。

そこで雪乃と沙希の二人は自分の好みの物を選び鏡の前でそれを身体に当てながら自分の姿を見る。

雪乃は紫をベースとした落ちつきのあるエプロンを試着する。前に着いたポケットから黒猫が顔を覗かせているのがポイントだろう。

沙希は水色の清楚なエプロンだが、実用性が高そうな感じである。所々にあしらわれた青色のリボンがポイントだ。

二人はそれを見て満足そうな顔をすると、八幡に向かって少し恥じらいつつ問いかけた。

 

「どうかしら?」

「ど、どうかな……」

 

その問いかけに八幡はどう答えるべきなのか少し悩む。

いや、答える言葉はすでに決まっているのだが、何故かそれを上手く言うことができない。何故か言葉が喉につっかかるのだ。そして二人から目が離せなくなっていた。

そんな彼女達の姿に見惚れてしまっていることに気付いていない八幡だが、妹の小町はその様子を見て実に面白そうにニヤニヤと笑う。妹の目にはそれが明らかに丸わかりなのだった。

なので小町は八幡に一押し入れる。

 

「ほら、お兄ちゃん!」

「ん、あぁ………」

 

小町に呼びかけられやっと目を離すことができた八幡。

そして彼はその感想を述べる。

 

「その、雪ノ下は可愛いって感じで良く似合ってるかな」

「そ、そう………」

 

褒められたのが嬉しいのか顔を赤くする雪乃。その顔が熱いのか、彼女は見られないように両手で頬を隠す。それが小町の何かを呼び覚まし、小町は雪乃を可愛いと連呼する。

そして今度は沙希に向かって八幡は顔を向けた。

 

「川崎は何ていうか、着なれた感じがする。お母さんっていうのか、そんな感じだ。だからなのか、こう見ててホッとする感じだ。良いお嫁さんになりそうだよ」

「そ、そうかな……あはは……」

 

褒めて貰えたことだけでも嬉しいのに更に良いお嫁さん発言に妄想が膨らんでしまう沙希。頭の中で八幡との新婚生活を思い浮かべてしまい、その幸せな気持ちを少しでも感じ恥ずかしさと嬉しさで内心悶える。

そんな乙女心を震わせる二人を見て小町は更に八幡に親指を突き立てるのだが、八幡はその意味が未だにわからない。

そして少しして冷静に戻った二人そこから結衣に似合いそうなエプロンを探し購入した。

ちなみに八幡に似合っていると言われたエプロンを二人はちゃんと購入していた。

 

 

 そんな風に一同はプレゼントを更に探す。エプロンだけでも良いのだが、出来れば各自で贈りたいのでもう少し探す必要があった。

のだが、流石に長い時間歩きっぱなしということで一同は店内にある休憩用のベンチに腰掛けた。

その際に小町と沙希は一緒にお手洗いに行くと言って八幡達から離れる。

八幡と二人っきりになった雪乃は彼の方に目をチラチラと向けつつ、どう言葉をかけて良いのか迷う。

八幡は八幡で周りに意識を向けつつ休んでいた。

そんな二人に、突如として声がかけられた。

 

「あれぇ、雪乃ちゃん?」

 

その声に振り向く雪乃。その顔は少しばかり強張っていた。

それに八幡も続いてみると、そこには綺麗な女性がいた。

 

「やっぱり雪乃ちゃんだ!」

 

そう喜ぶ女性に雪乃はそれまでの様子が吹き飛び、まるで苦手な何かを相手にするかのような様子で呟く。

 

「姉さん………」

 

その言葉を聞いて八幡はやっとその女性が誰なのか気付いた。

雪乃の姉にして雪ノ下家の長女……雪ノ下 陽乃であると。

 

 

 








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