俺が青春なんてして良いのだろうか   作:nasigorenn
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遅れてしまって申し訳ありません。
リアルが忙しすぎてマジでしんどい。たぶん一週間に一回投稿できれば良い方かもしれません。本当に申し訳ありません。

今回はゆきのんに頑張ってもらいました。

少しばかり手直しをしました。


第39話 俺は雪ノ下 陽乃と出会う

 突如として雪乃と八幡の前に現れたのは雪乃の姉である雪ノ下 陽乃であった。

現在二十歳の大学生であり、外見はやはり妹の雪乃と似通っている。しかし、その身に纏う雰囲気は雪乃とは真逆といっても良いくらい違う。

雪乃と違い彼女はまさに優しく朗らかな表情を浮かべている。まさに人に当たり障りない、誰からも好かれそうな、そんな印象を見る者に与えていた。加えてその美貌がまた凄い。雪乃も美人ではあるが、更にそこにスタイルの良さととっつきやすさを加えたと言ったところだろうか。姉妹なのに胸のサイズはまったく違っている。

まさに雪乃のバージョンアップ版といった感じだ。

そんな感想を抱いた八幡であったが、何かひっかかりを感じる。

それが何なのかまでは分からないが、少し様子を見ることにした。

陽乃は雪乃と少し話した後に、八幡の前に出て実に親しみやすそうな笑顔で八幡に自己紹介を始めた。

 

「雪乃ちゃんの姉、陽乃です。あなた、お名前は?」

「比企谷 八幡といいます」

 

名前を聞かれ、八幡はそれにやんわりと普通に答える。

陽乃は八幡の名を聞いて彼を軽く見回す。その様子は吟味しているようであり、八幡は『如何にも普通』を装った。一般人に見破られるほど緩くはないが、目の前の女性には警戒を怠るなと今までの経験が告げるからだ。

そして彼女の吟味は終わったらしく、陽乃は笑顔で八幡に話しかけた。

 

「比企谷君ね………うん、よろしく!」

 

男なら誰もが見惚れそうな綺麗な笑顔をしながら陽乃は八幡に親しみの籠った声でそう告げる。

彼女はとてつもない美人だ。そんな女性からこのように笑いかけられれば男なら誰もが皆彼女に夢中になるだろう。

だが、八幡はそうは思わなかった。逆にそれまで感じていた違和感が更に強まったのだ。

 

(何だ、この感じ………何処かで見たような気が………)

 

その正体が少しづつだが分かりかけてきた。

だからなんのか、八幡は陽乃を見る目をより深くする。

傍から見ればただの濁った目だが、その中身は濁る以上に深く澄み渡る。それは比重が日常から仕事の方へと切り替わっている証拠だ。この違和感の正体をはっきりさせるのには必要だと判断した。

陽乃はそんな八幡に気付く様子もなく、妹が年頃の男子と一緒にいることに愉快そうにからかう。

 

「二人はいつから付き合ってるんですか~。ほれほれ、言っちゃえよ~」

 

雪乃にそう言いつつ陽乃は彼女の肩をツンツンとつつく。

雪乃はそんな姉に対し、そんなことはないと否定しようとするのだが………。

 

「た、た、ただの同級生よ!」

 

顔を真っ赤にして必死にそう言われても、誰が見ても否定しているようには聞こえないし見えない。その反応が実に面白く、そして姉として妹の恥ずかしがっている姿が可愛いらしくて彼女はニヤニヤと楽しそうに笑い、今度は八幡に顔を向けた。

 

「そこのところ実際はどうなのかな~? 雪乃ちゃん、満更でもないみたいだけど~?」

 

雪乃の先程の様子をネタにして煽りながら八幡に問いかける陽乃。

そんな様子をまさに観察するように見つめながら八幡はそれに答える。

 

「『今は』普通に友人ですよ。常日頃世話になってる大切な友人です」

(今はっ!? 今はってどういうことなの、比企谷君!! それってつまり今後もっと関係が深められたら……………ぅぁ……)

 

その答えを聞いて目を若干見開く陽乃。そして雪乃の顔はトマトのように耳まで真っ赤に染まった。

勿論これがわざとであることは分かるだろう。彼と言う人間を本当に知っている人間なら、これがブラフであることはすぐに分かる。だが、それを一般人が察せるわけがなく、傍から見たら今後を期待させるような言葉にしか思えない。だからなのか、陽乃は少しだけ真顔になってしまった。想定していた答えと違っていたから。

彼女としては、八幡も雪乃同様にに焦ると思っていたのだ。それがまったくの方向違いの返答に若干驚いた。とてもじゃないが、年相応の男子の答えではない。

しかし、その驚きに寄ってもたらされた真顔はほんの僅かであり、すぐに誰もを魅了する笑顔に戻った。だが、八幡はそれを見逃さなかった。

その表情を見て、少し前にあった仕事で見た表情であることを思い出し、そして判明した。

 

(あぁ、成程。『そういう』ことか)

 

納得してしまえばなんてことない話。それまで感じていた違和感だって説明できる。

それは政治家や財団の人間など、所謂上流階級の人間にありがちなものであった。それに雪乃と陽乃の父親は県議会議員だ。そういった催しに良く出ていてもおかしくない。

だから八幡は彼女が被る仮面を見破った。

破った先にあるのが何なのか、少しだけ気になった。だからなのか、少しばかりだけ彼女に意地悪をすることにする。雪乃をからかっている彼女は魅力的に見えるが、その隠された先にある感情がどうなっているのかというのが気になったから。

 

「そう張り切らなくてもいいんですよ、雪ノ下さん。『それ』は疲れませんか?」

 

その問いかけに陽乃は最初、何を言われたのか分からなかった。

そのためかきょとんとした顔をしてしまっている。それはそれで年相応に可愛いと思えるが、八幡は更に踏み込んだ。

 

「この場は誰もあなたを『雪ノ下家の長女』とは見ていませんよ。『陽乃』として振舞ってもいいんじゃないでしょうか? 妹の前でも無理する必要はない思います」

 

「!? な、何のことかな……」

 

その言葉に今度こそ八幡に見破られたとわかる陽乃。そうなった瞬間、確かに彼女が顔を覆っていた『仮面』に罅が入った。

口ではいつもと変わらないように言葉を紡ぎだそうとするが、浮かんでいる笑みは少し歪んでいて瞳からは動揺が漏れ出す。

 

「姉さん、どうしたの?」

 

そんな姉の様子を今まで見たことがなかった雪乃は陽乃を少し心配してしまう。八幡が言った言葉は陽乃に聞こえるぐらいの音量でしかなかったのと、先程八幡が言ったこの先はどうなるかわかりませんよ発言のため彼女の思考はそれで体一杯になりまったく聞こえなかったのだ。

陽乃は雪乃に心配され、どう答えて良いのか分からず顔をしかめる。

このまま八幡が彼女の仮面を引き剥がせば、たぶん雪ノ下 陽乃という女性の精神は壊れる。それ分かってしまう程、彼女は歪んでいた。

流石にそれはやり過ぎだと思い、八幡は二人に聞こえるよう、また陽乃を落ちつけるように、こう言った。

 

「いや、そんな深い意味はないですよ。ただ……俺みたいな不気味な奴にまでそんな風に相手しなくてもいいですよって言いたかっただけですから。誰だって不気味な奴相手に作り笑顔とはいえ浮かべるのは嫌でしょう?」

 

その言葉に雪乃は納得したようで、安心したのか顔が赤いまま八幡を軽く罵倒する。

 

「何だ、そういうことなのね。確かに比企谷君の目はビックリするぐらい濁り切ってるから、気持ち悪くてしょうがないもの。それを我慢して相手していた姉さんに無理はしない方がよいと。言い得て妙ね。比企谷君にしては珍しくまともな意見かも」

 

罵倒に突っ込みを入れたくはなるが、それを堪える八幡。突っ込めば当然流せたものが戻ってくるからだ。

しかし、それでも納得できないのは陽乃である。

そう言葉を言われたところで彼女はしっかり聞いてしまっているのだ。あの言葉を、彼女がその顔を覆った仮面を指す言葉を。

だからこそ、彼女は雪乃のばれないように罅の入った仮面を被り直す。

 

「君、一体何者?」

 

不敵な笑みを浮かべながらの問いかけ。

それに対し、八幡は同じように不敵な笑みを浮かべながら返す。

 

「ただの高校生ですよ。ただし………バイト三昧で忙しい勤労学生ですがね」

 

その言葉に勿論納得などするはずがない。

だがここは人前であり、そして何より八幡のその言葉がそれ以上語る気がないとはっきりと表していた。

だから彼女はこれ以上は無理だと思い引き返すことにした。

彼女の中で八幡は要注意人物の判を押された瞬間であり、同時に自分のことを理解してくれる可能性がある相手であるとも思った。

だからなのか、この場で複雑な思いに駆られながらも彼女は悪い気はしない。寧ろ八幡という男を意識し興味が湧いて仕方ない。彼のことが気になり始めていた。

そのせいなのか、陽乃は笑顔で八幡と雪乃に別れを告げる。

 

「比企谷君、雪乃ちゃんの彼氏になったら一緒にお茶しようね。あ、何ならお姉さんが彼女になってもいいかも」

「ちょ、姉さん!!」

 

陽乃の発言に雪乃が噛みつくが、陽乃はそれに捕まらないように颯爽とその場を去って行った。

その背中を見ながら二人は陽乃の事を考える。

 

「お前の姉さん、凄いな」

 

その言葉が気に食わなかったのか、雪乃は少しばかり険の籠った声で八幡の言葉に返す。

 

「姉に会った人は皆そう言うわね。確かにあれほど完璧な存在もいないでしょう。誰もがあの人をそめ褒やす」

 

その言葉から分かるのは雪乃の姉への劣等感。それを感じ取り、八幡はそうじゃないと軽く首を横に振る。

 

「いや、お前だって凄いと思うぞ。努力してる凄く優秀な秀才だ。それは万人がそうだって答えるよ。だけど、今回言ったのはそう言う凄いじゃない。どこでもそうであろうとするあの『仮面』の事だよ」

「仮面?」

「あぁ。きっとお前の家の長女ってことで周りから見られる度にそうして来たんだろうが、その所為で可笑しくなってきてる」

「それってどういうこと?」

 

雪乃の疑問に八幡は表情を変えることなく、その濁り切った目で見抜いた事実を告げる。

 

「ニコニコと人当たり良く、誰からも好かれ愛されるようなあの性格。それは確かに凄いとは思うが、そこに人間特有の揺らぎがない。それはつまりそうであろうとしているからであり、人為的にしているからだ。政治家なんかにはよくああいう手相が多い。外面を良く、中身がばれないようにするように。だが、それにだって限度がある。行きすぎた外装はやがてその重みで纏う本人を押し潰す。だから……お前の姉さん、もう少し気をつけて見ていないと危ないぞ。あれはその一歩手前だ」

「姉さんの事をそこまで見切るなんて………」

 

八幡の言葉に感心する雪乃。だが、少しして不服そうな顔になる。

 

「初対面の人間なのに随分と分かるのね。私と初めて会った時はそんな言葉すらかけなかったのに」

 

はっきりとむくれる雪乃。

そんな雪乃に何故そんな顔をするのかわからない八幡は困ってしまう。

 

「いや、ただそういう人を仕事柄良く見るってだけで」

 

清掃業の人間が何故そんな人を見るのかと突っ込みが入る所だが、雪乃は八幡にそっぽを向いているためまったく聞き入れない。その様子を擬音にすると『ツーン』である。

そんな彼女に困り果てた八幡はどうすればよいのか困り果て、彼女に問いかける。

 

「どうすれば機嫌を直してくれるんだよ」

 

その問いかけに対し、雪乃は顔が熱くなるのを感じながら八幡の顔を見つめる。その時の彼女の眼は上目遣いになっていた。

 

「だったら………前に由比ヶ浜さんにしたみたいに、私の頭を、その……やさしく撫でなさい(由比ヶ浜さんに良くしているのだから、たまには私にもしてほしい)」

 

そう言い終えると共に真っ赤に染まる雪乃。

何故そんなことを彼女が言いだしたのか分からないが、それで良いと彼女が条件を出したのならそれに乗るしかないと八幡は判断する。

そして瞳を潤ませて何か期待しているかのような雪乃にドキドキしつつ八幡は雪乃の頭に手を載せ、優しくポンポンと叩きつつ撫で始めた。

 

「これでいいか?」

「………もう少し強くしなさい(もっと撫でて貰いたい………)」

 

そう言いつつも雪乃は顔を赤らめたまま俯く。その顔は色々と緩んでしまい彼女の印象をぶち壊すような顔になっていた。それを見られたくないため、彼女は俯いたのだ。

雪乃の要望を聞きつつ八幡は雪乃の頭を撫でる。

黒くすべすべとした絹のような髪を撫でるたび、八幡は何とも言えない気持ちになる。

そう思いつつも撫でていき、

 

「もういいか?」

 

そう聞くのだが、彼女はその言葉に小さく答える。

 

「もっと………(気持ちいい……これは……クセになるわ………うふふふ)」

 

そう言われてはどうしようもない八幡なのだが、雪乃にとって至福なこの時間は突如として終わりを迎える。

 

「あんた達、何やってるの?」

 

その言葉に振り返った先にて、八幡と雪乃の顔は凍りついた。

何故ならそこには、如何にも怒っていますというオーラを噴出する沙希がいたから。

その後ろでは小町がハイテンションで雪乃を可愛いと悶えていた。

 

 

 

 こうして初めての雪乃の姉との邂逅は終わり、八幡達は再びプレゼント選びへと戻る。

尚、機嫌が最悪になっていた沙希だが、小町の提案で雪乃がされていたのと同じように頭を撫でられた結果、赤面でしばらく何もしゃべらなくなった。

 

 






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