俺が青春なんてして良いのだろうか   作:nasigorenn
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もっと甘い話が書きたいのに、主人公がヒロインと一緒にいないから書けないこのジレンマ。でも頑張りたいです。

少し手直ししました。


第43話 俺は仕事に、妹は遊びにいく。

 八幡不在の比企谷家から小町は海浜幕張駅に向かって歩き始めた。

彼女は八幡が世話になっている教師『平塚 静』の誘いを受けて、千葉村で林間学校をする小学生のサポートスタッフをすることになったのだ。

中学生である彼女がこのボランティアに参加する意味はないのだが、聞けば兄と関わり合いがある女性達が来るというではないか。

兄の将来を心配する妹としては、『義姉候補』とより親密な関係を築いておきたいという思いがあり、家にいても仕方ないという事もあって承諾した。

尚、その後兄と連絡を取り参加すると報告したところ、八幡はそれを快く了承した。見ず知らずの相手なら絶対に駄目だが、相手が奉仕部の面々と恩師でもある静なら安心して任せられると。

本来受験生である小町には遊んでる暇などないと言うべきなのだが、この妹に激甘な兄は絶対にそんなことは言わない。気晴らしは必要だと言うだろう。最悪受験に失敗しても一生養うのに苦もないと言いだしそうだ。

そんな激甘な兄のことを思いつつ、だからこそ幸せになってもらいたいと小町は思う。

そのために、妹として義姉候補の皆により兄との親密な関係を築かせるようにちょっかいをかけようと小町は画策する。

まぁ、単純に兄と親しい人達と仲良くしたいということが本音だが。

そんな気持ちを胸に抱きながらこれから始まるであろうキャンプに胸を躍らせつつ小町は歩く。尚、飼い猫のカマクラは近所の人に預かってもらっている。

そして海浜幕張駅に着くと、小町は見知った人物達に向かって笑顔で駆けつた。

 

「あ、結衣さん、雪乃さん、沙希さん、やっはろー!」

 

小町の元気な挨拶に気付き、先に着いていた結衣達も小町に向かって挨拶を返す。

 

「あ、小町ちゃん、やっはろー」

「やっは………おはよう、小町さん」

「おはよう、小町ちゃん」

 

若干雪乃が結衣に引っ張られて独特な挨拶を言いかけて恥ずかしさから顔を赤くし、沙希はそんな雪乃を見て自分はつられまいと普通に挨拶をした。

3人と向き合い小町は相手が自分より年上だと分かってはいたが、それでも同じ年の人間を相手にする時のようにテンションを上げる。

 

「うわぁ、結衣さんはカジュアルだし雪乃さんはお人形みたいに可愛いし、沙希さん格好良い!」

 

動きやすい服装ということで奉仕部3人娘の服装は皆ラフなものだが小町にはそう感じるらしい。

結衣はピンク色の帽子とカジュアルでフラミンゴのプリントがされた黄緑色のTシャツに黒い身体に密着した短パン。服装そのものはかなりラフだが、元が可愛い結衣が着るととても良く似合っていてワンパクな印象を与える。

雪乃は白いフリルがふんだんにあしらわれた白いブラウスに長ズボンという服装で、彼女が着るととても清楚に見えた。

沙希は結衣と似たようにカジュアルなもので、上は胸の谷間が覗く程度の開いた黒いTシャツに下はジーンズという服装だ。服装そのものは普通だが、モデル体形の彼女がそれを着ると、それだけなのに格好良い。

服装を褒められ結衣は素直に喜び、雪乃は気恥ずかしさから目を逸らし、沙希は顔を赤くしつつ小さくお礼を言う。

そして今度は小町が褒められるのだが、彼女はそれを素直に受け入れ更に会話を盛り立てていく。

もう参加する人間は揃っているので後は責任者である静を待つだけである。

そして会話に華を咲かせること約10分、4人の前に一台の赤いワゴン車が停まった。

その扉が開かれると、中から赤いTシャツにサバイバル向きなズボンを穿いた静が出てきた。

 

「皆、おはよう。今日から三日間よろしく頼む」

 

「「「「はい」」」」

 

静に元気よく返事を返し、四人は早速ワゴン車に乗り込む。

そして適当に席に着きシートベルトを締めると、これから始まるキャンプに皆楽しみに賑わう。

そんな中、静は小町の方に顔を向けながら軽く笑いかけた。

 

「君が比企谷の妹さんか。お兄さんには良く世話になっているよ」

 

年上の『お姉さん』からの言葉に小町は少しだけ委縮しつつ答える。

 

「いえ、こちらこそよろしくお願いします、先生」

「あぁ、よろしく」

 

軽い挨拶をし終え、そしてワゴン車は走り始めた。

 

 

 

 運転しているので本格的に会話に参加できないとは言え、ある程度は参加する静。その話題の中には当然ここにはいない男の話が出てくる。

 

「ところで小町くん……比企谷はどんなバイトをしているんだ?」

 

何気なく出た話題。八幡と言えば勤労少年であり、バイトばかりしているイメージがある。だが、その内容が一切知られていない。清掃会社のバイトをしていると学校に報告されているが、その割に中身がまったく聞こえてこない。

だからなのか、普段とは違う八幡を聞いてみたいと思った静はそれを知っているかもしれない小町にそう問いかけた。

その質問は結衣や雪乃や沙希も勿論気になるらしく、小町に皆が集中する。

 

「確かに聞いたことないかも」

「彼、バイトでの経験を少し話したりするけど、具体的にどんな仕事をしているのかは喋ったことはないわね」

「あいつ、結構忙しそうだからその手の話はあまりしないしね(それに………あれだけのお金を稼げる仕事っていうのがどうにもね……)」

 

四人の視線を受け、小町は苦笑しつつ何とか答えた。

 

「それが……その~……私もよく知らないんですよ」

「知らない?」

 

結衣の不思議そうな顔に小町は頷き返す。

 

「お兄ちゃんのアルバイトは武蔵おじちゃん、えっと、お父さんの仕事の同僚で友人だった人なんですけど、今は私とお兄ちゃんの保護責任者でその人の紹介でアルバイトをしているんです。お父さんも清掃会社で働いていたってお兄ちゃんから聞きましたから、たぶんおじさんと同じ職場なんだと思います」

 

その答えに結局八幡のバイトがどのようなものなのかはっきりしない。

それはそれで仕方ないと皆思ったが、試しにバイトで床や窓を拭いている八幡を思い浮かべ、そして苦笑してしまった。

 

「に、似合ってないかも……」

「確かにそうね。彼には何故だか似合わないわ」

「おかしな事じゃないはずなんだけど、何故だか違和感を感じる」

「真面目なアイツなら可笑しくないはずなんだがな。何故か笑ってしまう」

 

そんな風に八幡の不在に寂しさを覚えつつ、皆はこのイベントに思いを馳せる。

 

(あぁ~、せっかくヒッキーと一緒に楽しめると思ったのになぁ……)

(比企谷君がいたら、きっともっと楽しくなっていたのかも……しれないわね)

(比企谷も来れればなぁ……もっと一緒に居たい………ぁぅ)

(アイツを誘ったのに来れないとはなぁ……。せっかく用意した勝負服とエロい黒下着が無駄になってしまった。ま、まぁまだ焦る時間じゃない。まずは外堀から……)

(お兄ちゃんとキャンプもしてみたいけど、こういうのも面白いかも。それに………お兄ちゃんの『お嫁さん候補』の人達ともっと仲良くなっておきたいしね)

 

そんな思いを各自で抱きつつ、ワゴン車は千葉村に向かって走って行った。

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………」

 

生い茂る森の中、3人の男達は互いの背を護るように起ちながら辺りを警戒していた。

その服はこの場に馴染む迷彩色、そして手に持っているのはそれに不釣り合いな鈍い輝きを放つ突撃銃。

それらをいつでも撃てるように構えつつ、彼等は周りから目を離さない。

彼等の表情は緊張で強張り、夏の熱気に煽られ汗が止まらない。汗だくになり緊張から呼吸まで荒くなっている彼等は今、とある存在を警戒していた。

 

「此方βチーム、ターゲットγの存在は未だ確認出来ず」

『此方Aコマンドポスト、αチームからの応答なし。既に無力化されたと思われる。次に近いポイントはβチームだ。警戒を怠るな』

「了解」

 

通信機で本拠地にそう返信を送るも、その男は悪態を付く。

 

「そう応えはするが…無茶だろ、これは。アイツの独壇場で捕捉できる自信なんかねぇっての」

 

その悪態にもう一人が賛同した。

 

「絶対に課長分かってやってるだろ。そもそもチーム分けだってアイツがいる時点で勝敗が決まったようなもんだろ」

 

二人の愚痴を聞いて3人目の男が不思議そうに二人に問いかけた。

 

「そんなに凄いんですか、あの人。確かに皆凄いって言いますけど、とても普段の様子じゃ……」

 

そんな3人目に二人は呆れ返った。

 

「お前は確か今年配属になったばかりで、しかもアイツと仕事したことはないんだったか? おいおい、よくそんな認識でここに配属されたな」

「アイツは仕事になるとマジでヤバいんだよ。体術も銃の扱いも悪くないが、何よりも一番ヤバいのはその隠密性だ。ありゃマジでお化けって言葉が似合う。出くわしたらもうおしまいだと思っとけ」

 

そんな二人の様子に今度は3人目が呆れた様子を見せた。

彼はこの職場に今年配属されたばかりの所謂『新人』であった。その能力はそれなりに高く、それ故に自信もある。

確かに二人が警戒する『人物』の特異性は聞いてはいるが、それと同時に弱点も知られているのだから怯える必要などまったくない。

だから新人は呆れつつ先輩二人に言う。

 

「そうは言っても電子機器には映るんですから、こうしてヘッドマウントモニターで周りを見渡せば見つかるはずです。いくら凄いといっても弱点があれば対処できますって」

 

そう自信を持っていう新人にそれでも怯えを見せる先輩達。

それを見て先輩達を内心使えないと判断し、彼は辺りをより細かく見渡した。

そして気付く。

 

「十二時の方向に接近するものあり!」

 

その言葉に先輩達も反応し突撃銃を構え、そして………。

 

「発砲します!」

 

相手が飛び出す前に新人が発砲した。

まだ正体が確認できない以上、下手な発砲は控えるべきである。

だが、それをしなかったのは味方ならこの距離で何も言わないなんてことはないと判断したからだ。仮に野性生物だったとしても、『この銃』なら殺すことは出来ない。精々汚れるだけで済む。

だから新人は確実に『獲った』と思いながら引き金を引き続ける。

だが、彼等の前に現れたのは………。

 

「ま、丸太?」

 

そう、突撃銃から発射された『ペイント弾』で真っ赤に染まった丸太だった。

その丸太には何やら細いワイヤーが縛られており、それが真上に向かって伸びており、気が付けばそれは木に引っかけられて3人の真上を通っていた。

それを認識すると共に、

 

「3人共アウトだ」

 

静かな言葉が3人に届いた。

足音すら聞こえなかった。いつの間に来たのかすらわからない。

ただ、その言葉とともに3人の胸にはペイントナイフで斬られた軌跡がはっきりと刻み込まれ、その力に3人とも地面に膝をついた。

それをやった存在………比企谷 八幡は新人に向かって静かに話しかける。

 

「確かに俺は電子機器越しに見れば簡単に見つかる。だが、そんな弱点をそのままにする馬鹿はいない。囮を用意しただけで簡単に引っかかる。お前は少しばかり事前情報を持っていたがために慢心したな。それは戦場では命取りになることをしっかりと学んでおけ」

 

それまでの会話まできっちりと『聞かれていた』という事実に新人は恥ずかしくなり顔を赤くして俯き、先輩二人は八幡に文句を垂れる。

 

「おい、比企谷、もっと加減してくれよ」

「そうだそうだ、まだガキなんだからガキなりに可愛い所を見せてもバチは当たらないだろ」

 

そんな二人に八幡は同情するような意思を見せつつ冷酷に下す。

 

「お互いに減棒がかけられている身だ。容赦なんて出来ないし、しない」

「「そんなぁ」」

 

そんな3人は死亡判定をコマンドポストから下されその場から去る。

その背を見送りつつ八幡は通信機に連絡を入れた。

 

「こちらチームシャドー、敵βチームの無力化に成功。引き続き敵対勢力の無力化を行う」

『こちらBコマンドポスト、良くやったシャドー。引き続きよろしく。なんなら本丸を落としてもいいんだぜ』

「俺だけ働いてばかりだろ。他の連中に仕事するよう発破をかけろ、よろしく」

 

そう言い終えて通信機を切る八幡。

そして彼は空を見上げつつ思う。

 

(あぁ~、今頃小町は奉仕部の皆とキャンプかぁ………いいなぁ、俺も皆とキャンプしたい)

 

そう思いつつ、彼は更に敵対チームの戦力を削るべく、森の中を静かに駆けていった。

 

 

 

 



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