俺が青春なんてして良いのだろうか   作:nasigorenn
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あけましておめでとうございます。
ですが作者は忙しさから死人状態でまったく休まりそうになく、お正月な気分に慣れてないですよ。
もっとラブコメしたい………。


第44話 俺は指揮し、彼女はもっと煽っていく

 車を走らせること約数時間、停止した先に広がっているのは広大な山々が聳え立つ自然豊かな光景だった。

それを見て小町達は皆感嘆の声を上げる。

 

「うわぁ~、凄い凄い!」

「街よりも空気が澄んでいて美味しいわね。空気に味なんてないけれど、そう思えるわ」

「確かにそうだね。こう綺麗な景色を見ると気分がスッキリするよ」

「ん~、まさに自然って感じでテンションが上がりますね~!」

 

これから始まるキャンプに胸を高鳴らせる小町達。そんな彼女たちに保護者である静は微笑む。

 

「今からはしゃいでいてはこの後疲れてしまうよ。確かにこれはキャンプだが、同時にボランティアでもあるんだ。成すべきことを成す前に疲労していては元も子もない」

 

そう言いつつも、実はこういったイベントが好きな静は内心は彼女達と同じくはしゃいでいた。

まぁ、本音で言えば意中である『八幡』と一緒に来たかったが。

そうすればこれまでの人生において、過去に於けける大学でのリア充達の幸せな背中を恨みがましく見ていただけの自分とおさらば出来るのだから。

まぁ、それは実現できなかったとはいえ、それでもこうして教え子と何かを一緒にするのは嬉しいものである。

そう思いながらハシャぐ彼女達を見ていると、その近くに一台の車が止まった。

その車に視線が集中する中、その扉が開かれる。

そしてそこから出てきた人物に小町と静を覗くメンバーが驚きの声を上げた。

 

「え? 隼人君? それに優美子とヒナに戸部っちも!? なんで!」

「葉山君………」

「何で三浦達が来てんのよ」

 

学園のスクールカースト上位である葉山グループの面々が車から出てきたことで驚く3人。そんな3人に比べ、小町は不思議そうに首をかしげる。

 

「えっと………誰ですか?」

 

純粋な疑問に対し、答えたのは一番まともな説明ができる雪乃である。

 

「その4人は皆2年F組の生徒で、トップカースト集団と言われてるグループよ。我が物顔でクラスの中心にいて、常に自分達のことばかり考えている自己中心的な集団ね」

 

若干悪意めいたものを感じさせる説明に引く小町。

そんな雪乃をフォローすべく、今度は結衣が説明の捕捉をした。

 

「私や沙希やヒッキーと同じクラスの人達で、私の友達だよ」

「あぁ、そういうことですか」

 

中学でも似たようなものがあることから大体を理解する小町。高校だろうが中学だろうが人の交友関係というのは得てして変わらない物のようだ。

その事で納得した小町に改めて葉山達が挨拶をしに来た。

 

「どうも、葉山 隼人です。君は?」

「あ、どうも。えっと、比企谷 小町と言います、よろしくです」

 

さわやかな好青年の葉山に対し、小町は普通に挨拶を返す。

だが、その名字を聞いた途端に葉山の顔が若干曇り、それを見て雪乃が不敵に笑う。

 

「彼女は比企谷君の妹さんよ。あまり失礼なことはしないことね」

 

それがどういう意味なのか分からない小町は更に首をかしげる。

その様子に苦笑する結衣。沙希は何があったのか知らないので知っていそうな結衣に後で聞いてみようと決めた。

葉山達の自己紹介を終えた所で沙希は不満そうに静に問いかける。別にこれが他の見ず知らずの人間ならここまで嫌には感じない。葉山自身にそこまで何かを感じることはないのだが、彼女にとって毎回噛みついてくるしつこい『三浦 優美子』がいることが納得しかねるのだ。

 

「先生、何で葉山達も来てるんですか?」

 

その質問に静は普通に笑いながら答えた。

 

「全員揃ったようで何よりだ。彼等は君達と同じボランティアだよ。内申点を餌に募集をかけた結果、彼等が来たんだ」

 

その答えに葉山達は軽く笑いかける。

 

「内申点はおまけで、俺達も友達とキャンプに行きたいなって思ってたから丁度良くてね」

 

そうは言っても内申点につられてということが事実なのは変わらず、若干白い目で小町と沙希は葉山達を見てしまう。

その視線に苦笑する葉山。それを見て面白かったのか少しだけ雪乃が笑った。

 そして葉山達と合流したことで揃ったボランティア集団は静と共に今回の林間学校が行われる施設の従業員やその小学校の教員達に挨拶をしに行き、最後には小学生達の前で皆に挨拶をすることになった。

 

「何かあったら、いつでも僕達に言ってください。この林間学校で素敵な思い出をたくさん作って下さいね。よろしくお願いします」

 

葉山のその言葉に主に女子からの元気良い返事が返ってくる。

そしてボランティア最初の仕事は小学生達のサポート。

と言っても特に小学生を手助けするというものではなく、彼等と同じように山を歩き、時たまにスタンプラリーのスタンプ位置のヒントを教える程度。

だから小町達は普通に山歩きを楽しむことにした。

 

「い~や、小学生マジ若いわ~、俺等おっさんじゃねぇ?」

「ちょっとやめてくんない、それじゃあたし、ババアみたいじゃん」

 

先頭を歩く葉山達の会話を聞いて、小町達もその話題に盛り上がる。

 

「確かにそうですね。小学生の時から見て、高校生って大人って感じがしましたね」

「確かにそうかも~」

「でも、実際に高校生になってみても大人とは思えないけれどね」

「あぁ、その話分かるかも。こう、何とも言えない中途半端な感じになっちゃうんだよね」

 

小町の同意に皆が賛同すると共に、実際に高校生になってみての感想を各自が口にする。

 

「高校生になってみてもそこまで変わらないっていうか」

「結局自分ですべての事がこなせるわけではないわ。養ってもらっているのも変わらないし」

「立派な大人っていうのがはっきりとは分からないけど、きっと自立してる奴のことをそう言うんだと思う。だから自立しきっていない私らは子供だよ」

 

結衣、雪乃、沙希の三人の感想に小町は賛同すると共に、それまで自分が思っていた事を話す。

 

「その点で言えば、兄はある意味本当に『大人』なんだって思います。幼いころから私の為に頑張って、そして今では家を支えられるくらいになってる。私は本当に頭が上がらないですよ」

 

その事を聞いて結衣達は確かにそうかもと八幡の事を思い出していた。

 

「ヒッキーは確かに大人っぽいね」

 

結衣はいつも大人のように余裕に満ちている八幡を思い出して顔を赤らめる。

 

「確かに彼は立派と言えるわね。常に周りのことを考えて冷静に対処しているし」

 

雪乃は頼もしさを思い出して感心すると共に、その魅力について頬が熱くなるのを感じていく。

 

「あ、アイツは本当の意味で大人なんだって私は思う。だからこそ、本当に、その……尊敬するよ」

 

沙希は真っ赤になった顔で八幡の事を思い出していた。その瞳は潤み切なさを周りに訴えてる。

そんな年上3人を見て、小町はニンマリと笑う。

 

(うんうん、お兄ちゃんったら罪作りなことで。でもその分充実してることが分かって小町は嬉しいよ)

 

だからこそ、小町は本音を3人に言った。

 

「だから思っちゃうんですよね。私の所為でお兄ちゃんは『大人』にならざる得なかったんじゃないかって。自分の事なんて全部無視して、私の為に急に大人になって。その所為で本当ならもっと子供らしいことが一杯できたかもしれないのに」

「小町ちゃん………」

 

小町の後悔を聞いて心配してしまう結衣達。

このことは確かにどうしようもなく、そして小町が背負うには重すぎる問題であった。

だが、ここで小町は口元を釣り上げてニヤリと笑った。

それは彼女なりの兄への恩返し。幸せになってもらいたいからこそのエール。そしてこの場にいる乙女達を煽る爆弾でもある。

 

「だからお兄ちゃんには幸せになってほしいんです。出来れば、可愛くて綺麗な『お嫁さん』なんかが出来れば最高なんですけどね。お兄ちゃん、あんな感じだから恋人とかいないし。特にお兄ちゃんのことを想ってくれる人なら尚更……ね」

 

そう言いつつチラチラと義姉候補に目を向ける小町。

その視線を受け、『お嫁さん候補』とやらは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

 

「ひ、ヒッキーのお嫁さん………」

「比企谷君の恋人……」

「あ、アイツの奥さん………」

 

そんな反応が実に可愛らしく、小町はかなりテンションを上げつつ一緒に歩いて行った。

 そして彼女達はその後に気付く。

ただ一人、孤独な少女がいることに。

 

 

 

 

 小町達が実に楽しくハイキングを楽しんでいる時、八幡はと言うと………。

 

「αチームはそのまま前進。βチームはαチームのサポートに回れ」

 

『『了解』』

 

彼は戦場にはいなかった。

彼がいるのは簡易テントが広げられ、中には通信機器の数々が設置された簡易コマンドポスト。

そこで八幡は今、このチームにおける指揮官として指揮をしていた。

八幡達レイスナンバーズは皆が全員強力な戦闘力を持つ。だが、それは指揮があればこそ発揮されるものであり、指揮がなければその能力は完全には発揮されない。

だからこそ、ナンバーズの上位10以内のメンバーには皆部隊指揮者としての教育がされているのいだ。いざという時自分達が臨時で指揮をとれるようにするために。いうなればナンバーズの上位とは、士官候補生のようなものでもあるのだ。

だから八幡もこうして指揮が取れる。この演習に於いて、上位者はこういった指揮能力も図られるのだ。

ただドンパチするだけが仕事ではないというのはこういうところもあると言うことだろ。

故に八幡はテーブルの上に広げたこの山の地図を睨みつける。

その上に載せられた青いブロックが自軍、そして赤いブロックが敵軍。自軍からの情報と相手の戦略を予想して赤いブロックを配置し手前に向かって常々移動させていく。

その様子はまさに真剣であり、それこそ学校のテストなど比較にならない程に険しく鋭い。もし彼に好意を抱く女子達がこの八幡を見たら見惚れてしまっていただろう、それぐらい今の彼は格好良いものであった。

 

「今の所は順調。だが、相手の戦力はまだ十分にあるし、何よりレイス7が向こうにいるのが気になる」

 

もっとも警戒している相手が敵に回っているとなればこそ、その脅威が恐ろしい。味方なら頼もしい存在も敵にすると厄介極まりないということを改めて実感する。

そして一人にだけ警戒していては他の所で足元を掬われる。故に気が全く抜けない。

八幡は自軍を進めていく先にある地形を見て戦略を練っていく。

そして咄嗟にあることに気付いた。

 

「αチーム、一旦ストップ。その先に何があるのか目視でいいから確認してくれ。地形の確認だけでいい」

 

その言葉に最初は戸惑う様子を見せる同僚たちだが、その指示を信じて彼等は言われた通りに実行する。

そして直ぐにその報告が八幡に届いた。

 

『近くに川があり、この急斜面から予測するに、この先にあるのはたぶん滝だ。それも結構なサイズの。地図の地形からもその可能性が高い』

 

それを聞いて八幡は確信、はっきりと指示を出した。

 

「そこにはたぶんレイス7がいる、恰好の狙撃ポイントだ。この森の中で奴がもっともその能力を発揮できる。進路上どうしてもその先を行かなければならないことを考えれば、奴は最高のポイントゲッターになる。だからこそ、囮としてαチームが攪乱しろ。木々を楯に使えば多少は防げる。その間にβチームが回り込んで奴を叩け。アイツを叩けばこの進軍はかなり進む。それにボーナスだって出るだろうさ。やる気を出していけ」

『『『『『『了解!』』』』』』

 

その言葉に戦意を高める自軍。

そして八幡の指揮通りに動いた結果………。

 

『此方βチーム! 対象7番を撃墜した! ボーナスは俺のもんだ』

『くっそ~、何で後ろからこいつらが来るんだよ!』

 

悔しそうに恨み言を漏らす相方の声を通信機越しに聞きつつ八幡はニヤリと笑う。

 

「よし、そのまま更に進軍して一気に相手本拠地を叩き潰すぞ。勝つのは……俺達だ!」

『『『『『『応!!』』』』』』

 

その言葉に自軍が皆賛同し、そして30分後にこの演習は八幡達の勝利で終わった。

 



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