俺が青春なんてして良いのだろうか   作:nasigorenn
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第49話 俺はいじめの解決に乗り出す

 食後の休憩と一緒に少女『鶴見 留美』の話を聞く八幡。

たどたどしく何度も声が小さくなりながらも懸命に話す留美の顔を見て、本人がどれだけ参っているのかが伺える。

話の内容は小町達に話したものとまったく同じ、いじめられている件についてだ。

その話を聞いて八幡はと言うと……………。

 

「……………難しいな」

 

何とも微妙な顔をしながらそう言った。

その反応に若干怒った様子で結衣が八幡に喰い付く。

 

「ちょっとヒッキー、ちゃんと相談に答えてあげて! 留美ちゃん、本当に困ってるんだから」

「いや、それは分かってるんだがな………」

 

結衣に怒られて歯切れが悪そうに答える八幡。

そんな八幡に小町は不思議そうに問いかけた。

 

「ねぇ、お兄ちゃん。いじめなんて今までいっぱい受けてきたじゃない。何が難しいの? いつもみたいに弾き返しちゃえばいいんだよ」

 

八幡がこれまで何度もいじめを受け、その度にすべてを弾き返してきたことを知っている小町には、何故そこまで八幡が悩んでいるのか分からない。

そんな小町の考えを察してか、八幡は留美にも分かるように簡単に説明する。

 

「いじめは確かにいじめなんだが、その被害が少なすぎてな」

「被害?」

 

八幡の言葉に留美が小さくそう問い返す。

その言葉をそのまま聞いてまた結衣が怒ろうとしたが、それを雪乃が手で制し八幡に問いかけた。

 

「それはどういう意味かしら?」

 

雪乃の言葉に八幡は素直に答える。

 

「そのままの意味だ。聞いた話だといじめられていることは分かるんだが、その実害は無視と仲間外れ。それだけだとどうにもな………押しが弱い」

「確かに一理あるわね」

 

その言葉の真意が未だに理解出来ないのか首を傾げる結衣。

そんな結衣にもわかりやすいように八幡は自虐で小町に問いかけた。

 

「小町、俺が受けてきたいじめの被害、覚えてるか?」

 

八幡にそう聞かれ、小町は昔を思い出しながら答える。

 

「確か石投げつけられたり喧嘩になったり上履き隠されたり教科書捨てられたりとかだったかなぁ?」

「それでも一部だけどな。それだけでも器物損壊に盗難に傷害だ。それだけあれば実害も十分だ。だが、彼女の場合はそうじゃない。無視や仲間外れ程度じゃ害とは言えないんだよ」

 

その言葉でやっと理解した結衣。

 

「ヒッキーが言いたいことはわかったけど、それでもやっぱり可愛そうだよ。どうにかならないの?」

 

すがるような声でそう聞く結衣に八幡は分かってると言うように軽く頷いて見せる。

程度はあれど、それでもいじめはいじめだ。悪意がある以上、それは決して良いことではない。

過去、いじめを受けてきたからこそ分かるその思い。同族嫌悪でも憐れみでもない、言わば『共感』。それを感じるからこそ、八幡は留美に話しかける。

 

「お前はどうしたい? この問題に関し、お前はどのような結末を求めるんだ?」

 

ある意味酷い問いかけ。まるで求められる答えが幾らでもあるかのように聞こえるその問いかけに、留美は困惑した顔でたどたどしく答える。

 

「そんな急に言われても……どうしたらいいのか分からない」

 

彼女がそう答えるのも無理はない。

実際本当にどうしたいのかすらわからないのだから。

そんな彼女に沙希が目線を同じ高さにするように屈みながら優しい笑みで話しかける。

 

「大丈夫、そんな不安にならないで。アイツは見た目とかは葉山とかに負けるけど、その心は誰よりも信頼出来る男だよ。私も少し前にちょっと入り組んだ問題があったけど、アイツが解決してくれたんだ。アイツは人を助けると決めたら、それこそ本気で絶対に助けるよ。助けられた人間が言うんだから間違いない。だからね………自分が今思ってることを、何でもいいから言ってみな。アイツはきっとその意を酌み取ってくれるから」

 

沙希の言葉は聞く人間すべての心に染み渡るような響きがあり、雪乃や結衣や小町や静もその言葉に聞き入ってしまった。当人である八幡は気恥ずかしさから赤くなる顔を誤魔化すようにそっぽを向いている。

そんな八幡を見て、そして八幡に全幅の信頼を寄せる沙希の恥じらいつつも綺麗な顔を見て、留美は何とか思いを言葉にした。

 

「わ、私は………いじめられたくない。別に友達に戻りたいとは思わないけど、それでも………もういじめはしたくないしされたくもない」

 

それはこれまでの友人との決別。ある種の決意と言えよう。

その言葉に立派だと思う一同だが、女子達はそれでも不安がぬぐえない。

雪乃がまずその不安について八幡に質問する。

 

「彼女の思いは分かったけど、どうやっていじめをなくすの? 被害が小さい以上、正攻法ではいかないわよ」

 

それに更に結衣が言葉をかける。

 

「それにヒッキー、このままいじめをしてる子達と別れても、きっと問題は解決しないと思う。中学校にあがって新しい人が入ってきても、今度はその人と一緒になっていじめをするだけだよ。女子ってそういうのがしつこいから……」

 

留美の思いはわからなくないが、それでも解決が難しい問題。その上持続する可能性があるというのは性質が悪い。

そんな問題に対し、八幡がどういうのか一同から視線が集まる。

 

「比企谷、教育者としてあまり過激なことは言うなと言いたいが………一個人としては徹底的にやって良い。いじめなど許せるものではないからな」

「お兄ちゃんなら大丈夫でしょ。何せ私が一番大好きなお兄ちゃんなんだからさ」

 

静の激励と小町からの応援を受け、八幡は自分の考えろ述べる。

 

「まず雪ノ下と由比ヶ浜の心配なら大丈夫だ。この一回でこの問題は解決する。この子が中学に上がってもいじめが悪化したり持続したりは絶対にない。だが……」

 

そこで一端言葉を切ると、八幡は濁り切った目で留美の目を見つめる。

 

「同時に今までの交友関係はすべてなくなることになる。それでも良いのか?」

 

その言葉に留美は力強く頷いた。

八幡はそんな彼女を見て彼女の『いじめをなくす』ことを決めた。

だからこそ、彼女にこう答える。

 

「分かった。なら、俺はお前の『いじめをなくしてやる』。ただし、お前が思い描いたものとは全く違う結末になるかもしれない。それでも、確かにいじめはなくなる。それは誓ってやるよ」

 

そう答えると八幡は留美の頭に手を置き、優しくぽんぽんと叩いてあげる。

そうされ留美は安心と安堵からなのか、目に涙が溜まっていくのを感じ俯いてしまう。

それでも周りはそんな留美の心情を察し、微笑ましい笑みを向ける。

ただし、同時に彼女が羨ましいと内心思っていることも忘れない。

微笑ましい視線の中に混ざる羨望の意思に、何故だか留美は背筋がぞくりとした。

 

 

 

 留美のいじめの解決に対し、八幡は特に何かを指示するということはなかった。

八幡が雪乃達に聞いたのは、この後の小学生達の予定。その中に肝試しがあると知ると、八幡はまさについていると言わんばかりに笑った。

その笑みがあまりにも『悪い』ものだから、それまであった優しい雰囲気など一気に消し飛んだ。

そんな顔を見せられて不安にならない者などいない。

だから雪乃が代表として八幡に問いかける。

 

「ひ、比企谷君、一体どのような方法を取るつもりなの? その、私たちにも手伝えることがあるのなら手伝うから」

 

その問いかけに八幡は目の濁り具合を実に良い塩梅にしながら答えた。

 

「いや、今回は手伝ってもらわなくても大丈夫だ。寧ろあまり見ない方が賢明だ。何せ精神的によろしくないからな。今回俺がすることは単純だ。ただ、そのお友達とやらに問いかけるだけだ………『本当の友情』とはどのようなものなのかをな」

 

その答えは不安を煽るのに十分だが、今までの八幡が成した功績、そして救われた者としての心情から信頼出来る。

だから雪乃達は八幡に任せることにした。手伝えないことは残念だが、彼がそう言うのならその通りだと分かるから。

ただし、そんなことで残念がる彼女達にも手伝えることが一つだけあった。

 

「あ、そうそう。誰かクッキーとかチョコとか持ってないか? 出来ればたくさん」

 

その言葉の真意は分からないが、おやつとして持ってきていた結衣がクッキーやチョコをを渡すと、八幡は実に嬉しそうに笑う。

 

「これだけあれば十分だ。ありがとうな、由比ヶ浜」

「う、うん、ヒッキーの手助けが出来て良かったよ」

 

感謝された結衣は顔を赤らめつつも嬉しそうに返し、八幡はそんな彼女に見送られつつ山の中へと消えて行った。

 

 

 

 休憩時間を終えて更に演習に次ぐ演習。辺りは夕日によりオレンジ色に染め上げられている。

そんな中、一時間半の休憩時間に入ると共に、八幡は自分のいるチームの中にいる数人に話しかける。

 

「なぁ………これ、欲しくないか?」

 

彼等の目の前に差し出されたのは、昼間結衣に貰ったクッキーやチョコ。

ここ数日ロクな食事を取っていない彼等からすれば、まさに御馳走に見えただろう。

だが、同時に無料で渡すなど誰もが思うわけがない。貴重な食料を無料で配れるほど、この世界に善性はない。必ず何かがあるのだ、それを差し出す代わりにある条件が。

だから彼等は八幡に問いかける。

 

「何が望みだ?」

 

その問いかけに対し、八幡は実に極悪人の笑みを浮かべながら答えた。

 

「なぁに、簡単なことだ。ただの………いじめに苦しんでいる女の子を助けるだけのことだよ、コイツを渡す条件はな」

 

その言葉に精神を追いつめられているメンバーは乗り……………久々の甘味に涙した。

 

 こうして八幡の布陣は整い、この休憩時間中に八幡と5人のメンバーは周りに気付かれぬよう、山を降りた。

野戦装備一式に暗視ゴーグルという完全装備でだ。

八幡がすることはただ一つ

 

『友情というものを試すだけ』

 

ただ、それだけだ。それが例えどれだけ恐ろしい事なのかを知った上で、彼は試すのだろう。

 








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