俺が青春なんてして良いのだろうか   作:nasigorenn
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二学期の始まり。つまりあのキャラの出番というわけですね。


第63話 俺は文化祭実行委員にならない

 いつの日も常に仕事である八幡ではあるが、何もいつも危険な現場に出ている訳ではない。
この日、彼は珍しく……もないのだが、自分に宛がわれているデスクに座って作業に没頭していた。
目の前に広がるのは机を埋めるほどの量の書類。そのすべてが今回八幡が熟すべき仕事である。その書類の山を相手に、八幡はその手に持ったボールペン片手に速やかに片していく。
この大量の書類の中身、それは殆どが『報告書』である。
現場に赴き戦うのはいつものことだが、その際に出た被害、または消費した弾薬、そして敵対者の始末した数などを事細かに記載するのが八幡達の仕事の報告書だ。
それらを事前に回ってきた資料から記載していくわけなのだが、流石に量が多く片していくだけでもうんざりしそうになる。
それでも仕事だと割り切り八幡は熟すわけなのだが、わかっていても不満や文句は出るものらしい。

「あぁ~~~~~~~~、やってらんねぇ~~~~~~~!」

前のデスクに齧り付いていた相棒からそんな声が漏れるとともに、八幡の相棒であるレイス7は八幡の方へと体を向けた。

「なぁ、八幡! 何でこんな面倒くさいことしなきゃならねぇんだよ!」

レイス7はもういやだと叫びながら縋るような視線を八幡に向ける。
その気持ちは同じくうんざりとしている八幡には痛いほど分かるのだが、だからといってそれに関し答えることは決まっている。

「何でも何も、仕事だからだろ」
「それはわかってるんだよぉ………」

項垂れる相棒に八幡は無情にも切り捨てる。
相棒がこういった作業にねを上げるのは毎度のことなので、一々相手にしていられない。相手にしたところで時間を無駄に浪費し終わらせるのが遅くなるだけなのは既に経験済みだ。だからこそ、八幡は特に相手にせずに書類に向き合う。
そんな八幡に対し、レイス7は賛同を得られないことに絡む。

「お前はいいよなぁ~、書類が楽で」
「何がだ?」

自分のしている書類の量を見て、良くそういうことを言えるなと八幡は少しばかり苛つきつつ反応する。
書類の量だけで言えば、八幡の方がレイス7よりも1.5倍は多いのだ。それを見てもそう言われては、流石に苛つきもする。
そんな八幡のストレスを感じつつもレイス7は言った。

「だってお前の報告書には消耗品の欄に記載することなんてないだろ。それに比べて俺は毎回ぶっ放した弾の種類と弾数を事細かに記載しなきゃいけないんだぜ。それも使ったライフルの種類もな」

項垂れながら文句を漏らす相棒の様子に八幡はため息を吐く。
その文句ももう聞き飽きるくらい聞いたからこそのため息であり、つまりこれも毎度のことなのだ。
そんな相棒に対し、八幡は疲れを見せたまま答える。

「確かに俺はナイフによる近接戦がメインだから弾薬の消費は0だが、それとは別の項目があるってわかってるのか?」
「別の項目って?」

八幡は相棒に疲れたため息を吐きながら今書いている書類をレイス7と渡した。
それを受け取るとレイス7は早速書類に目を通す。
中に書いてあることは基本的にはレイス7が書いているものと一緒。そして八幡が言った通り、武器弾薬の消費に関しての項目はない。
だがその代わり、レイス7は見慣れない項目を見つけた。

「何だ、これ?………『当時の状況に置ける適切な戦術に関して記載せよ』?」

その項目を改めて言われたことで八幡は肩が重く感じた。

「そうだ。俺は俺でこういう面倒なのが付いて回るんだ。当時の状況なんて早々覚えていないというのに、それを資料片手になんとか思い出しつつ予測して、その上で当時の反省点を踏まえて最適な戦術の運用を書かなきゃならないんだ。どっちが面倒なのかなんて、夏の野外訓練でやらされたお前になら分かるはずだろ」
「あ、あ~~~………そのなんだ………すまん」
「別に気にするな。例えそれがお前の量より多くてもな」

気まずそうにするレイス7に対し、八幡はそう言いながら書類を返してもらう。
確かに八幡の戦い方に消耗するものは殆どない。だが、代わりと言うわけではないのだが、新たに戦術に関しての考察というものを書くようになっている。
それは彼がレイスナンバーの一桁代ということもあり、尚且つ将来有望だからということもあるからだ。尚、レイス7の方に記載されていない理由は彼に指揮官としての素質があまりないからである。
そんなわけで、八幡の苦労を知ったレイス7は文句を言うのを止め、その代わりに八幡に自分が持っていた物を差し出した。

「これ、いるか?」
「………いる」

渡された栄養ドリンクを受け取り、再び違いに書類を格闘し始める二人。勿論周りにいる他のメンバーも皆似たようなものだ。
まさに書類地獄に皆が辟易する。だが、それでも彼らの手は止まらない。
何故ならそれもまた仕事だから。

「そういえば、そろそろ高校だと学園祭がある時期じゃないか?」

疲れを紛らわせるためにレイス7がそんなことを言い出した。
それを聞いた八幡は書類に目を通しながら答える。

「あぁ、確か今月辺りに確かあったな」

淡々と答える八幡に対し、レイス7はからかうように問いかける。

「おいおい、高校生の青春ビックイベントなんだぜ? もっと楽しみにしたらどうだ? 何せここ最近は可愛い女の子に囲まれてるんだしよ」

その問いかけに対し、八幡は呆れ返ったジト目で相棒を睨み付けた。

「そんなことより目の前の現実をどうにかしろよ、相棒。俺がそういうのを楽しむようなタイプじゃないことは知ってるだろ。そんなことを考えるより、今は戦術を練ってることの方が有意義だ」

そう答える八幡に対し、レイス7は仕方ないといった様子で呆れる。

「しょうがないねぇ、俺の相棒は。もうちょっと歳相応にはしゃげないのか……」

その言葉を聞きつつも、八幡は黙って書類にペンを走らせ続けた。



 夏休みも終わり二学期。それまで夏休みを満喫していた学生達も、そろそろ夏休みボケが抜けてきた。
そんな中、朝一番に話し合いになったのは今月にある文化祭の実行委員を決めることであった。
既に話事態は前からあったのだが、なかなか決まらないことから未だに長引いている。

「では、今日も聞きますが、実行委員をやりたい人は挙手してください」

まとめ役であるクラス委員長がそう言うが、誰も手を上げるものはいない。誰だって面倒なことはしたくないということが良く伝わってくる。
それがもうずっと続いているだけに、流石にそろそろ決めないとまずいと委員長はシビレを切らす。

「誰もいないんじゃぁ仕方ない。じゃんけんで決めるしかない」

その言葉に皆から不満が漏れる。
そんな中、結衣が小さめに挙手しつつ委員長に問う。

「それって難しいの?」

この問いかけは単純に仕事の内容を少しでも明確にするためのものであり、彼女からしたら少しでも文化祭委員のハードルを下げて立候補しやすいようにしようという心遣いであった。

「いや、そんなに難しいことはしないよ。基本文化祭委員長の指示に従がってやることをするだけだから」

結衣の考えを読み取ってなのか、そう説明する委員長。彼自身、一年生の時にやったことがあるようで、その経験に基づくもののようだ。
その説明に周りは少しだけ浮きだつ。
だが、ここで委員長はせっかくの厚意を仇で返す。

「正直、由比ヶ浜さんがやってくれると嬉しいかな。人望あるし、適任だと思うんだけど」
「わ、私!? そ、そんな、私なんて無理だって! 頭悪し!」

名指しされ慌てて否定する結衣。別に結衣だってやりたくてそう言ったわけではない。
そんな結衣に対し、一人の女子が噛み付いた。

「へぇ~、結衣ちゃんやるんだ。そういうのっていいよねぇ~」

噛み付いてきたのは相模 南。夏休みの花火大会の際、少しばかり因縁がある相手であった。
そんな相模の周りは結衣を見ながら笑う。明らかに嘲笑であった。
そんな笑いを向けられ結衣はどうするべきか分からずに困る。
その笑いに絶えられなかったのか、珍しくと言うべきか、とある女子が結衣にはそれは無理だと言った。

「ってゆうかそれ無理だし。結衣は私と一緒に文化祭でお客呼び込む係だから」

そう言ったのはこのクラスのトップカーストである三浦 優美子。結衣の友人でもある。
クラス内でも絶対の発言力をもつ優美子にそう言われ、相模は内心舌打ちを打ちつつも表情を変えないようにしながら答えた。

「そ、そうだよね……呼び込みも大切だし」
「そうだよ、呼び込みも大切だし……って私呼び込みやるの!?」

そんな話聞いていないと騒ぐ結衣。
そこであまり収集が付かないと判断したのか、事実的なリーダーである葉山が話を纏め始めた。

「つまり、人望があってリーダーシップを発揮してくれる人にお願いしたいてことでいいのかなぁ」

その言葉に皆が賛同するのだが、だったら葉山がやれば良いのではと考えるのは当然だと八幡は思った。
それを周りはまったく考えていないのか、どういうわけか相模を押し上げた。
それに対し彼女は無理だと照れつつ言うのだが、満更ではない様子。どうやら周りから持ち上げられるのが気持ちよいらしい。自尊心が強いものには良くあるものである。
そんな訳で女子の委員は決まったわけだが、男子は決まっていない。
だから今度は男子の番だが、ここで八幡の名が上がった際に八幡はこう答えた。

「俺はアルバイトで忙しいから無理だ。それも生活がかかっているからな。学校側にもその許可はもらっている。だから俺には無理だ、他を当たってくれ」

その答えによって多少の文句は出つつも、学校側からの正式な許可ということもあって受諾するしかない。
よって実行委員は別の男子に決まった。
 こうして文化祭への準備は進む訳なのだが、まさかこの後面倒なことになろうとは八幡は思いもしなかった。








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