俺が青春なんてして良いのだろうか   作:nasigorenn
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この話は雪乃メインですね~。
他二人の活躍が………。


第65話 俺は彼女の見舞いに行く

 日に日に書類の数は減っていった。

元がデスクを埋め尽くす程の量がやっと半分より下まで減ったのだ。それを感慨深く見る八幡はやっとかと精神的疲労が籠もった溜息を吐いた。

文化祭の準備が始まり学校は大忙しだが、八幡はそれに関与することはなく毎日をバイトに費やしている。毎日徹夜ではあるが、そのおかげもあってやっと報告書の量がここまで減ったのだ。それまでの苦労に本当に労いたい気持ちで溢れそうになる。

 

「あ~、やっと少しは減ったぜ~。マジで疲れるわ」

 

前のデスクから相棒の疲労満載な声が聞こえてくる。それを聞いて八幡は疲れた顔をしながら声をかけた。

 

「あぁ、お疲れ」

「おう、お疲れさん。そっちはどうよ」

「ざっと半分以下ってところだ。そっちは?」

「俺は3分の1ってところだよ」

 

お互いの処分量を聞き、そして再び深い溜息を吐く二人。まだまだ量があるので仕方ない。

それでもここまで減ったのだから、ある程度の目安にはなるだろう。終わるまで後何日かかるのかが予測出来れば、その日まで頑張れば良いとわかるだけ精神的にマシになる。

だからこの先に希望を見いだした二人は何とかやる気を振り絞り、再び書類に取りかかった。

 

「なぁ、お前の学校の文化祭、準備とかどうなってるんだよ」

 

少し時間が経ってから相棒にそう声をかけられた。

八幡はそれに対し、普通に答える。

 

「俺はまったく参加してないからなぁ。進行状況とかはまったく分からない」

 

その答えにレイス7はニタニタと笑いながら八幡に問いかけた。

 

「部活の可愛い娘ちゃん達はどうしたんだよ? お前と一緒に遊びたいってハシャぎまくってるんじゃないのかよ?」

「何が可愛い娘ちゃんだよ。雪ノ下は文化祭実行委員で、由比ヶ浜と川崎はクラスの出し物だ。奉仕部として文化祭実行委員の手伝いというのもあるが、俺は……分かるだろ、この現状を」

 

八幡は眉を顰めながらレイス7にそう言うと、彼はそれが分かってしまうだけに仕方なく頷いた。

 

「まぁ、これじゃ仕方ないよな。まったく終わらねぇんだもん」

 

レイス7に仕事で手伝うのは無理だと分からせた八幡は目を書類に戻す。

八幡自身、少しばかり浮かれていた。

このまま行けば明日からでも文化祭の準備を手伝っても良いかもしれないと。

書類の処理は順調。今現在で既に3分の2は処理済み。ならば多少の余裕はある。

今からクラスの出し物を手伝うのは意味が無いと思うので、文化祭実行委員会の手伝いならばまだ出来るかもしれない。

別に文化祭に興奮しているわけではない。

ただ、仕事で仕方ないとはいえ手伝えなかった事に心苦しさがあったからだ。

具体的には雪乃、結衣、沙希の3人を手伝えないことにだ。

だから明日のは…………そう思っていた。

 

 それが既に遅いとも知らずに………。

 

 

 

 翌日になり、静にそのことを聞かされたときに八幡は若干だが驚いた。

今まで驚くことが多かったが、それとは多少毛色が違った。

その情報は八幡の耳に深く刻み込まれる。

 

「……雪ノ下が体調を崩して倒れた」

 

それを聞いた瞬間、八幡は何故だと思った。

倒れたことは心配だが、それ以上にその理由が気になった。

彼女はそういったものに関してはしっかりしていたはずだ。自分にかかる負荷を考え、それに対し出来ることを十分に把握している……そういう女の子だ。

そんな彼女が体調を崩したという。

体力が無いことは前から知っていたが、それでもここまで酷いのは今回が初めてだ。

だから気になる。

八幡はそう思いながら静に答えた。

 

「わかりました。放課後、あいつの様子を見てきます」

 

そう答え、八幡は教室へと入っていく。

その背中を見ながら静は小さく呟いた。

 

「頑張れよ、男の子………まったく、雪ノ下が羨ましい……」

 

 そう呟いた彼女の表情はとても慈愛に溢れていた。

 

 

 

 放課後になり、八幡は結衣と沙希をつれて雪乃が一人暮らししているマンションへとやってきた。聞いた通り、高級マンションのようだ。佇まいからして他のマンションとは一線をかくしている。

 その道中に文化祭実行委員の仕事の状況などを結衣と沙希に聞くが、どうやら彼女たちは二人ともクラスの出し物の手伝いで大変だったらしく、文化祭実行委員の仕事に関しては良くわかっていないらしい。

ただ、それでも分かったのは、どうやら委員長である相模が仕事をサボっているということだ。

 それを聞いた八幡は何故雪乃が倒れたのかを察した。

大方相模が適当な仕事をし、その所為でその負担が雪乃にかかったといったところだろう。彼女の事だ。責任感の塊のような彼女なら、文化祭実行委員としてそれこそ猫の手が欲しいくらいに働いたはずだ。周りに迷惑をかけたくないから……友達二人に迷惑をかけたくないから………八幡に迷惑をかけたくないから。

 そう思われていることを理解し、そして少しばかり八幡は胸が苦しくなる。

その感情がなんなのかは、どことなく分かった。

 ただ、それを彼女に伝えることが気恥ずかしい。でも、これを伝えないと彼女はまた無理をするだろうから。

だから八幡は彼女に伝えに来た。

 玄関を通ると各部屋へのインターホンが付いていて、それを押すことでその部屋と連絡が取れるらしい。その後の許可を部屋の住人に取らないとそこから先には行けないようになっている。

 だからまずは彼女が住んでいるらしい部屋に連絡を付ける。

インターホンを鳴らす………しかし、雪乃は中々出ない。

そのことに不安を感じる結衣と心配する沙希。

そんな二人の心配は上手い意味で外れ、少しした間の後に彼女が出た。

 

『はい………』

「ゆきのん! 私、結衣!」

 

聞こえてきた雪乃の声がか細そうだったからなのか、結衣が焦りながらそう答える。

それでは伝わらないだろうと沙希が今度は雪乃に話しかけた。

 

「雪ノ下さん、私、川崎だけど。体調崩して倒れたって聞いたから心配でね」

 

その言葉に雪乃は申し訳なさそうに答える。

 

『ごめんなさい、心配させてしまったようで。とりあえずは大丈夫だから』

 

その言葉に八幡はこれ以上は言わせないと塞ぐかのように声を被せる。

 

「本人の自己診断ほど当てにならないものはない。いいから開けろ」

『……どうして比企谷君が………アルバイトは?』

「多少の猶予が出来たんで手伝おうとした矢先にお前が倒れたんだよ。バイトがあってもお前のためなら見舞いくらいはするさ。心配させるなよ」

 

その言葉を聞いて少し言葉が出なくなる雪乃。

彼女は今、顔を見られないことが心底ありがたいと思った。

何せ………その顔は熱以外の理由で真っ赤になっているからだ。

 

(比企谷君が心配してるって言ってくれて、私は不謹慎だけど……嬉しいって思ってしまうなんて……ふふふ)

 

意中の相手に心配してもらえることが嬉しかった。

自分が彼の心を占めていることが純粋に嬉しくて、申し訳なさと嬉しさでごちゃ混ぜになる。

だが、彼女が喜んでいることは自分の頬が熱くなっていく感覚で分かってしまっていた。

それが凄く恥ずかしい、。でも嬉しい。

だから雪乃は少しばかり元気を出しながら3人に向かってこういった。

 

『上がってちょうだい。たいしたおもてなしも出来なくて申し訳ないけどね』

 

 

 こうして八幡達は雪乃の見舞いへとやってきたのだ。

 

 

 






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