そして、この話で記念すべき50話となりました!パチパチ
いや〜、嬉しいものですね、そして飽きっぽい私がここまで書けた事に凄く驚きです(笑)
それ程、リゼロが魅力的ということでしょうね。
そして、多くの方に応援して頂けている事に深く感謝申し上げます(礼)
「ッ!」
悲鳴らしき声が聞こえた方面ーー俺の進んでいる小道へと走って行くとそこに荷車を押している商売人みたいな男があの黒い犬に襲われているところだった。
「来るなぁ!来るなぁ〜ぁ!!誰か、助けてくれぇ〜〜!!」
「チィ」
“また、あの犬か”
この世界の召喚されて以来、俺のライバル的ポジションへとなりつつあるこの犬の頭上を見つめ、浮かび上がるフラグを見ると同時に母が得意としたパロールを口にする。
「開け開け開け開けよ、天地開闢の調べ!調べ調べ調べ調べて、標を留め置け!」
スゥーと息を吸い込み、大きな口を開けて
「アァアアアアー」
と声を出す俺から次々と淡い檸檬色の光の鎖が飛びては、今まさに商売人へと飛びかかろうとしていた犬へと絡みつき、身動きが取れないようになる。
「ガルルルゥ」
「ふっ、ひとまずこれであの人が襲われる事はないって事だな、と……こうちゃあいられないなぁ…トドメを刺さないと」
再度、鎖に掴まれている犬の頭上を見つめ、浮かび上がるフラグを見つめる。
“【風にそよぐ葉っぱと幹】がプリントアウトされてるかぁ…”
突然、現れた淡い檸檬色を放つ光の鎖に目を点にさせている商売人を庇うように前に立つと師匠直伝の構えを取ると、「フゥ〜ハァ〜」と深呼吸して、頭の中に五行思想を思い浮かべる。
“風にそよぐ葉っぱと幹ということはーー多分、《木》を合わしているのだろう、だとしたらーー弱点は……”
「五行万象を発生し、緊にして琴なる金の氣は木を禁ず。肺の金氣で拳を満たさん。勤にしいて禽なる金氣は満つ。いざや!破邪顕正の戦に臨もうぞ!」
胸元を撫でて、金の氣を集めた俺は鎖に動きを封じされている黒い犬へと拳を突き出す。
「っ、ハァ!っ、ハァ!っ、これでーー」
高速で犬の身体へと拳を埋めていく、数にして十…十一、十二、十三…飛んで、九十九。
“へなちょこなら質じゃなくて量で、勝負ってね。そろそろいいだろう。なら、決めされてもらうぜ、魔獣さんよーー”
「ーー終わりだァ!!ハァアアアアーーー!!!」
高速で拳を埋めたおかげで凹みに凹んだお腹へと、最後に気合と殺意を沢山込めた拳でそのお腹へとクリティカルヒットを食らわせる。
「グルルル……」
呻き声を上げて、地面へと落ちた魔獣の亡骸にやっと張り詰めていた息を吐く。そして、嫌な脂汗をかいたおでこを拭くと後ろへと振り返って、まだ地面へと腰掛けている商売人へと手を差し伸べる。
「あの…大丈夫ですか?」
「あぁ、ありがとうございます」
俺の手を掴んで、立ち上がった商売人は深々頭を下げると何かを思ったようで、立ち去ろうとする俺を引き止めると荷車を探る。
「あっ、お待ちくだされ、貴方様は私の命の恩人だ」
「いや、同然のことをしたまでですし…、それに命の恩人だなんて大袈裟ですよ」
「いいえ、そんな事はありません。なので、せめてもの気持ちとして…受け取って欲しいものがあるのです」
「それなら…」
必死に訴える商売人の男に流されるまま、商売人がその物を取り出すのを黙って待つ。そして、暫く経つと…荷車から黒い革手袋を取り出した。それを得意げに俺の掌へと置くのを黙って…ポカーンとして俺は見ている。
「これの手袋は持ち主を選ぶと云われるいわくつきものなんです。この手袋に資格なしと思われてしまうと、何故か付けられないという……、なので商売品としてはいつも余ってしまいましてね。面白がって買ってはいただけるのですが、すぐに返品されてしまいまして…、そんな事情からわたくしも執事様に貰って頂けるのなら、本望なのですよ」
「はぁ…この手袋が…?」
掌に置かれてある黒い革手袋からはそんな邪悪な感じは感じられないが…かといって、この商売人が浮かべる表情にも嘘をついている様子は見受けられない。
“んーって、言ってもな…”
この黒い革手袋の扱いをどうしようか迷っていると、商売人がクルッと身を翻して、荷車へと這い上がる。
「それでは、執事様、先ほどはありがとうございました!そいつも大事にしてやってください、では」
「ちょっ……あぁ〜、行っちゃった…」
遠ざかっていく荷車と手元に残る黒い革手袋に困惑の表情を浮かべながら、気を取り直して、アーラム村へと向かうことにして、貰ってしまった手袋をポケットへとつっこみ、歩き出す……