今回の話はスバル目線となっております。そして、次回もスバル目線かな。あと少しで最初の死に戻りがあるんですよね。スバルもがんばって欲しいですが、ハルにも頑張って欲しい。そして、作者は皆さんに応援してもらえる主人公を書きたいということで、前書きを終えます。
※お気に入り登録・420人!!評価者・25人!!本当にありがとうございます!!
そして、特別章に多くの感想を書いてくださったこと、嬉しい気持ちと感謝の気持ちでいっぱいです!!
では、大変遅くなってしまいましたが、楽しく読んで頂ければなぁ〜と思います。
「ぐは……疲れた……」
キチンとベットメーキングされた寝所の上に、疲労困憊な身体を投げ捨てる。包み込む柔らかいクッションの感触が夢の世界へと誘う。
「あー、こき使われたこき使われた!」
ベットに転がりながら、黒髪を上に持ち上げたリーゼントみたいな髪型をした少年ことスバルがボヤく。
「勤労ってすげぇわ、世の働くお父さんたちのすごさがマジでわかった!一日でこれとか、半端ないッスわ」
間違いなく明日は筋肉痛で苦しめられるのであろう。その前に少しでも痛みを和らげておくとしよう。モミモミと今日頑張ってくれた筋肉へ労いを込めて、マッサージを行う。そのまま、ゆっくりと瞼が下がっていくのを感じて、スバルは眠りについた。
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「スバルさんはよく怪我をなさるのですね」
呆れたような声音でそう言うのは、赤く短い髪を持つ少女だ。適度に整った顔立ちは可憐というより、綺麗な方だ。その外見と身長から出会った当時は姉達より上だとスバルは思っていたが、その予想に反して、赤髪の少女はメイド姉妹の一番下ということになっている。
「なんか悪いな、ハル」
スバルが礼を言うと、赤髪の少女ことハルが少し不機嫌な感じでいう。
「悪いと思ってるのなら怪我を余りなさらぬようにお願いします」
「あぁ、了解。いつもサンキューな」
「どういたしまして」
素っ気ない態度で言うハルだが、メイド三姉妹の中で一番、スバルに優しい。
まだ、スバルが痛そうな顔をしていたのだろうか、ハルはそう言うとスバルの顔を覗き込んでくる。整った顔が近づいてくるのにドキッとしながら、スバルは右手を軽く横に振る。
「レム姉様に治してもらいしょうか?」
「いや、いいよ。名誉の負傷ってやつだよ。カッコいいだろ?」
スバルにそう聞かれたハルは暫し、呆れたような顔をしていたが、満面の笑顔を浮かべると
「確かにカッコいいですね」
「おぉ。その笑顔、百万ボルトの夜景に匹敵するね」
「………」
指を鳴らして、そういうスバルにハルは無言で受け入れる。随分と嫌そうな顔がスバルの心にクリティカルヒットして、気持ちが一気に沈んだ。
そんな調子でスバルの執事生活は早足にかけていった……
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月明かりの下、絹のような銀髪を風へと遊ばせている少女が日課を行っている。それを遠くから見ている黒髪の少年の瞳には、暗闇の中に淡い光を放つ精霊が空に浮かぶ星々のように見えたであろう。
少女が座る芝生へと歩いていくスバルの気配を感じ取ったのか、目を閉じていた銀髪の少女ことエミリアを目を開ける。アメジストを埋め込んだようにキラキラと純粋な光を放つ瞳が歩み寄るスバルを見つめると、スバルがピクッとして変な声を上げる。
「おふっ。こ、こんなとこで奇遇じゃね?」
「毎朝、日課に割り込んでくるくせに。それに奇遇って……同じ屋根の下よ?」
いつものようにため息をつくエミリア。そんなエミリアに負けずと、スバルは近づくと
「一つ屋根の下って、改めて言葉にするとなんかムズムズするね」
「そのムズムズって言葉、すごーく背中がぞわぞわってして、なんか嫌」
じと目で見上げてくるエミリア。スバルは頬をかくと、当たり前のように、エミリアの隣へと腰を下ろした。無言で受け入れるエミリア、その無言の中にはどのような思いが詰まっているのであろうか?
スバルには分からないけど、しかしエミリアの隣にいれること、それがとてつもなくスバルには嬉しいことである。
「で、で、何してんの?」
「んー?朝の日課の延長をしてるの。大体の子とは朝の内に会えるんだけど、冥日にしか会えない子たちもいるから」
エミリアの答えにスバルは頷く。
この世界には陽日や冥日といった、前の世界で言うところの午前、午後というものがある。最初の頃は慣れなかったその表現もこの世界で過ごすことにより慣れてきた。しかし、それと並行した形で三人娘によるスパルタ使用人業務の手ほどきはかなり精神的にも肉体的にもくるものがある。
「土日休みのゆとり教育世代としては、もっと長期的な目で見てほしいというか……」
ついこぼれてしまうこんな愚痴も仕方がないことなのだ。そんなスバルの横で、エミリアは冥日限定のお友達との会話を続けている。
そんなエミリアが作り出す幻想的な光景に隣に座るスバルは、口を紡ぎ、ジィーと黙ってエミリアの横顔を見つめている。
「見てても楽しくものでないでしょう」
無言のスバルがそんなに珍しいのか、エミリアがふと呟いた。その呟きには申し訳なさそうな響きが混じっていた。そんなエミリアにスバルは首を横に振る。
「エミリアたんと一緒にいて、退屈と思うこととかねぇよ?」
「なっ」
スバルのストレートな言い方に、思わず息を詰まらせるエミリアが赤顔する。そんなエミリアを見つめているスバルも耳まで真っ赤あったが……
次回はハル目線とスバル目線で書きたいと思います。