Re:フラグから始める攻略生活   作:律乃

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大変遅くなりましたm(__)m

言っていたネタバレの話なのですが…完成まで、もう少し時間が掛かりそうなので、本編を更新させていただきます。

予想として、第1章があと、5話か早くて3話で終わるので…そのあとは、ラムさん章を更新しようと思ってます。その章もあまり話はないかもです。

そして、その頃にはネタバレ回も書き終わっていると思うで…第1章とラムさん章が終わった後に、ネタバレ回を更新したいと思ってますm(__)m


※お気に入り919名!評価者・61名
本当にありがとうございます!

また、暖かい感想の数々、痛み入ります…。

皆様のご期待に添える展開になれるよう、これからも更新していきたいと思いますので…

どうか、よろしくお願いしますm(__)m


二十九話『忍び寄る影と眠たい俺』

ゆぅ〜らゆらと微睡みの海を背泳ぎで泳いでいた俺を誰かが遠くから呼んでいる。

俺は眉を潜めて、その声をよく聞くと、どうやらその声は鈴のような可愛らしい声音である事が分かった。そして、その中に隠しきれるほどに溢れている慈愛に、俺は声をかけている人物が青い髪をショートボブにしている少女だと気付く。

毎朝してくれているように、優しい手つきで俺を揺すり、起こそうとしている彼女には、毎朝のことながら本当に迷惑をかけている。

 

だがしかし、今日ばかりは俺とてこの安眠を譲るわけにはいかない。

 

その理由が今の今まで相手にされてなかったこの青髪の少女の姉に当たる少女による不意打ちにドキドキし過ぎて、眠ろうとしても寝れなかったという…余りに女々しく乙女すぎるものであるが、本当に眠いのだ。寝れたのは時間にして、約二時間か三時間…その間、バクバクする心臓を静かにさせようと羊を数えたが、一万匹を数え終えても寝れそうになかったのでやめた。

ゴロゴロとベットの上を動き回り、やっと眠りについたのが…窓の外が明るくなってきた頃ときた。

 

“これが眠くないわけないだろ?”

 

完全に自分のせいであるが、こんな状態で仕事してもいい動きができるとは思えない。

ならば、いい仕事を行う為にあと一時間ほど寝かせてもらう為に、俺の背中にしなやかな手を置き、揺さぶっている少女・レムちゃんを説得しなければならない。

 

「…いさま、気持ちいい朝ですよ。起きてください」

 

近くにある布を強く抱き寄せ、絡まるように眠りこける俺からみるみるうちにタオルケットなどを剥ぎ取ったレムちゃんは眠気まなこで自分を見つめてくる俺をにっこり微笑んで出迎えてくれる。

そんなレムちゃんの笑顔と同じように微笑んだ俺は、いつも使っている《あの作戦》を実行する。

 

「…レムちゃん好き大好き愛してる。あと一時間、寝かせて。お願い」

 

「はい、レムも兄様と同じ気持ちですよ。兄様のことが大好きで、誰もよりも愛しています。そして、そんな兄様のお願いをレムも聞いてあげたいのですが…今日はダメなんです。ロズワール様と姉様が兄様を何としても起こすように、と言付かってますから。なので、兄様、今日は我儘を聞いてあげれられなくてごめんなさい」

 

きめ細かい白い肌をほんのり赤く染めながらも、薄青色の大きな瞳には強い意志が宿っており、その中でも《兄様を二度寝させてはいけない》という使命感みたいなものがぼんやりした俺の目からも読み取れた。

 

“今日のレムちゃん相手には無理っぽいな…。うん、諦めて…いう事聞こ”

俺は諦めて、起き上がるとレムちゃんがいつものように程よい暖かさで濡らされたおしぼりを手渡してくる。

 

「うん、なら仕方ないね。レムちゃんのいう事聞く」

 

「はい、そうして頂けるとレムも嬉しいです。兄様、これで顔を拭いてください」

 

「うん、いつもありがとう」

「いいえ。兄様の側に居れる事、兄様のお役に立ててる事がレムの幸せですので」

 

その後も甲斐甲斐しく、俺の周りを動き回るレムちゃんに申し訳ないと思いつつも、俺は慣れたおしぼりを握ったまま、うとうととしていた…

 

 

τ

 

 

このロズワール邸使用人頭と書いてスーパーメイドと読むレムちゃんの神業により、俺の身なりは見違えるほどに整えられた。

母譲りの癖っ毛は梳かすのも大変だが、寝癖がつくと更に大変な事になる。あっちらこっちに飛び跳ねる赤い髪に俺は何度頭を抱えたことか、だがそんな難関をレムちゃんはいとも簡単にクリアし、俺の髪のセッチングまでこなすほどになっている。

 

まさに《なすがまま》であり、うとうとと船を漕ぎながらも、恐らくラムさんよりも世話をかけてしまっている現状に思わず溜息が出てしまった。

そんな俺に気付かずに、最後の仕上げに俺の前髪をしなやかな指先で持ち上げたレムちゃんは幼稚なデザインな髪留めをパチンとはめると、俺の赤い瞳を真っ直ぐ見つめてくる。

 

「兄様、出来ましたよ。今日もカッコよくて、素敵です」

 

「うん、ありがとう。レムちゃんも可愛いくて素敵だよ」

 

「いいえ、兄様の方が素敵ですよ」

 

「いいや、レムちゃんの方が」

 

「いいえ、兄様の方が」

 

と、いつものように互いを褒めあいながらも、指定された場所にレムちゃんとついた俺へと、先に来ていたらしい黒い髪を上へと持ち上げている少年執事が「よっ」と右手を上げてくるので、それに「あぁ」と答える。

「今日もレムに起こしてもらったのか?兄様よ」

 

黒髪の少年執事・スバルの横に並んだ俺の横腹を肘でつついてくる相棒の方を鬱陶しそうに見てくる俺をニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて見てくるスバル。

 

「悪いかっ。いや、スバルは羨ましいんだろ?俺がレムちゃんとラブラブだからな。そっちはエミリア様と……あっ、ごめん。その人相の悪さじゃあ、進歩ないよな…期待してごめんな」

 

「兄様、それは流石に言い過ぎですよ。確かに、スバルくんの三白眼は怖くて、足の短さは気持ち悪いですが…そういうのも含めて、スバルくんの特徴なんですから」

 

「…そうだね、レムちゃん。そういうのも含めて、スバルの特徴だもんな。

スバル、大丈夫さ!エミリア様は優しいお方だ、スバルの見た目の悪さじゃなくて、中身を好きになってくれるはずだから」

 

「お前ら、いい加減にしろよ!なんで、そんなところまで息ぴったりなんだよ!!あと、レムの気持ち悪いが一番、効いたからっ!そう言うことはもっとオブラードに包んで、言うべきことだから!!」

 

俺とレムちゃんの切れ味抜群のカウンターを食らったスバルが泣き喚いていると、階段の上から俺たちを呼んだ張本人が現れた。

脇に控える桃髪のメイドから注がれる絶対零度の如く視線にスバルは口を紡ぐと、俺がいつもよりも…というのは雇い主に失礼な感想だが、まともな格好をしている我が主人・ロズワール様へと話しかける。

 

「ロズワール様、今日はどこかにお出かけですか?」

 

「うん。ハルイト君の読み通りだーぁよ。すこし厄介なところから連絡があってねーぇ。ということで、今からガーフィールのところと外を回ってくるよ」

 

肩をすくめるロズワール様へと今度はレムちゃんが尋ねる。

 

「今夜にはお戻りになられますか?」

 

「いーぃや、無理だろうね。というわけだからーーラム、レム、ハルイト、任せたよ」

 

主人のその言葉に俺たち三人は同時に腰を折ると、その命令に答える。

 

「はい、ご命令とあらば」

 

「はい、命に代えましても」

 

「はい、この身を盾にしてでも」

 

俺たち三人の忠誠に満足にうなづいたロズワール様は、俺の側にいるスバルへと視線を向けると声をかける。

 

「スバルくんもよろしくお願いねーぇ。どうもきな臭い気がすーぅるかーぁら。エミリア様の事はよろしく」

 

「あぁ、任された!ちょー頑張るぜ」

 

「ハルイトも、よろしくねーぇ」

 

「はい、心得ております、ロズワール様」

 

胸を叩くスバルから俺へと視線を変えたロズワール様は、チラリと青髪のメイドを見てから俺をみる。そのアイコンタクトに俺は深く頷くと、深々ともう一度頭を下げる。

俺のそのセリフに今度こそ満足したロズワール様は、優雅に魔法を下して、空を飛んで、ガーフィールさんのところ…俺は名前を何度か聞いたことがあるだけ…へと向かっていった。

 

残された俺たちはというと、使用人頭の「主人がいないからこそ出来るところがある。なので、手抜きをせずに、いつも以上に綺麗にしましょう」のお言葉通り、其々仕分けられた仕事へと精を出していた。

 

「ふぅ…、こっちの見回りは終わりだな」

 

俺の今日の仕事は、庭園の手入れと簡単な掃除、アーラム村への買い出しと点検となっている。下の二つは、スバルも行くと行かないので、絵面的に酷いが…男二人でお出かけとなっている。

そんな楽しみにたくないお出かけの時間となった俺は、今の今までラムさんにこきを使われていたのか、既にヘトヘトなスバルを伴って、アーラム村へと続く山道を歩いていた。

 

「じゃあ、まず村に着いたら、子犬を探さないとだな」

 

「あぁ、だな。そいつが今回の犯人確定だからな」

 

「俺たちでどうにかしたいけど…スバルはヘボいし、俺もあの二人に比べて戦力は低いからな…」

 

スバルを意見を交わしながら、歩いていた時だったーーふと、気に留めなければ…受け流してしまいそうな痛みが脳に流れたのはーー。

ズキンとやけに大きく脈立つ僅かな痛みに、恥ずかれたように脇の木々の方を見た俺の赤い瞳は大きく見開かれる。

赤い瞳に映っていたのは、濃い青髪をお下げにしている少女の姿があった。そんな少女の腕には、頭のてっぺんがちょうど10円玉が入るくらいに禿げたモフモフな毛が可愛らしい子犬が抱かれていた。

そんな少女と子犬の足元には、犬に噛まれたような跡を残している大中小と様々な塊がありーー

 

“マジかよ…こんなタイミングで…”

 

「おい、ハル。突然、黙ってどしたよ?」

 

「ーー」

 

「おいってば!ハァ〜ルゥ〜、聞こえてますか〜?」

 

突然立ち止まり、一言も喋らずに木々の一点を見つめ、一筋の汗を流す俺を見て、スバルも只ならぬものを感じたのだろう、押し黙る。

そんなスバルへは視線を向けずに、執事服のポケットへと手を突っ込んだ俺はそこから穴あきの黒革手袋を取り出しては嵌め、ゆっくりとスバルを匿うように構えを取る。

 

そんな俺の背中に隠れるスバルの背後に《僅かな痛み》を感じた俺は振り返り、飛びかかってくるおでこにツノを生やした大型犬の顔を思いっきり殴り、そのまま蹴りを食らわせた俺はびっくりするスバルの背中を乱暴に屋敷方向へ蹴飛ばすと、次から次へとスバルへと襲いかかろうとしているツノが生えた大型犬へと師匠直伝の技を食らわしていく。

 

「ハ…ル…ッ」

 

「スバル!屋敷に戻って、この事をラムさんとレムちゃんに連絡して!そして、村の人たちを安全なところへと!!」

 

地面に倒れたままのスバルへと視線を向けながら、俺は叫ぶ。そんな俺の叫びに応じるように駆け出すスバルの邪魔をしようとする大型犬の行く手を母直伝の光の壁で遮る。光の壁に行方を阻まれた大型犬へと水の氣を含んだ拳を埋めた俺は、手袋とは反対側に入れていた紙へと血を染み込ませていく。

そして、顔を出すお馴染みのメンバーに囲まれながら、俺はもう一度構えると大きな声を出す。

 

「ここから先は残念ながら通行止めとなってるんだ、犬ころさん達や。

纏めて、相手してやるーーかかってきなっ!!」

 

くいくいと右手を動かして、挑発する俺へと近くの崖にいた大型犬が白い牙をギラつかせて、飛びかかってきた…





ということで、30話へと続きますm(__)m




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