幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ……いや割とマジで   作:東方兎流陽寿

22 / 82
霧塵な夢人と無尽な無人

 紫様が出て行かれた後、私は呆然とする幽々子様を視界に捉えつつ思考の渦に沈んでいた。

 先ほどの、紫様の一言一言に込められた意図がちっとも読み取れない。

 そしてなによりも鮮烈に感じたのが身を焦がすほどの違和感。紫様からの拒絶は、なにか真に迫っているようで……───。

 

 少しして妖夢が庭先から帰ってきたが、彼女の表情も優れない。彼女は何かに怯えるようにして縁側に座り込んだ。

 しばらく居心地悪い空気が辺りを包んだが、意を決したように妖夢が言葉を発する。

 

「……一体何があったのですか? 何をしたら紫様は、あんな……」

「……紫様がどうかされたのか?」

「憂いているような、とても悲しい目をしてました。少しすれ違っただけなので実際はどうなのか分かりませんが……いつもと様子が違うような感じがして……」

「私たちもそのことについて考えているところなんだ。恥ずかしいが、私でも紫様の言動の意図が掴めない。なぜ、今このタイミングであのようなことを────」

 

 紫様の様子がどうもおかしい。

 いやまあ……おかしいのは今始まった話ではないが、今回は特に不可解だ。

 

 昨日はあれほどまでに幽々子様の起こされた異変に賛同の意を示していたというのに、今日は一転変わって私たちへと色々なことを問いかけた後、どこか否定的とも見える態度を取っている。

 紫様が臨まれていた展開へと異変が進んでいないのだろうか? ……紫様に限ってそんなことはあるまい。紫様は推論のみで未来を見通すお方だ。

 

 そういえば、霊夢と対峙することに特段の難色を示しておられた。

 異変に賛同し、協力するのであれば彼女たちとの対立は必至であることを紫様が把握できないはずはない。

 つまり何かもっと別の意図があったのだろうか。

 

 ……ダメだ、思考が偏っている。

 紫様の思惑を知りたいために、自分の疑問をひたすら自答しているだけでは決して紫様の為す真実に近づけない。私と紫様ではまずそもそものレベルが違うのだから。

 従順なだけでは……

 

 

 ───ああ、そうか。

 一番に着目すべき点は今現在の紫様のご様子ではない。なぜ紫様がこの異変に対して支持を表明したのか……その点だ。

 当初こそは私もかなり疑問に思ったものだが、時が進むにつれて紫様に流されていた。紫様の行動が全て正しいことを念頭に置いているからこそ、思考が上手く纏まらなかったんだ。

 

 となれば……

 

「幽々子様。なぜ紫様は……貴方様が起こされた異変の支持を決めたのでしょうか。確かに紫様はご友人や親しき者らへの配慮をとても大切にしていらっしゃいます。幽々子様であれば尚更のことでしょう。しかし、普通ならば異変を起こされた幽々子様を言葉でお止めになるのが、紫様にとっての最適解であるはずです」

 

 縋るように幽々子様へ問いかけてみた。

 幽々子様は紫様ととても馴染みが深いお方だ。時には私でさえも到達し得ぬ難題の結論へと、簡単に辿り着くことのできる知略派で、紫様の理解者でもある。

 だがそんな幽々子様でも困惑の色を隠せていなかった。先ほどまでの食欲は何処へか、目を閉じて黙考に耽ている。

 

 

「───そう、それが普通。私も紫が訪ねてきた時は春集めの失敗を悟ったわ。貴女たちと一戦交えることも決意したわね。……昔からだけど、紫が意味深な行動をとる時は何かしらの理由があるの。時には相手を欺くため、時には私たちに何かを暗に伝えたいがため……。だけど───」

 

 幽々子様は一度視線を逸らして紫様が消えていった方向を見る。そして若干目を伏せてぽつりと語られた。

 

「あの目と顔には……見覚えがあるのよ。最近じゃない。とっても昔の、いつの頃だったかすらも思い出せないほどに遠い……朧げな記憶に」

 

 ……それだ。

 私が感じた何よりの強烈な違和感の正体は、あの久方ぶりの雰囲気と佇まいか。

 酷く懐かしくもあり、恐ろしい。とっくの昔に失われた禁忌を、不本意に覗いてしまったような焦燥感が私の本能に訴えかける。

 

  式の部分ではなく、私自身がこれ以上考えることを放棄するよう迫っているのだ。

 解ってしまえば、もう戻れない。

 

 

 

 何にせよ、春集めは開始された。今現在も私と橙の繋がりを通して幻想郷の春が白玉楼の庭に立つ”西行妖”へと注ぎ込まれている。

 少し前に橙が霊夢と遭遇してしまったみたいだが、軽くあしらうように指示しておいたので大丈夫だと思いたい。橙にはあまり情報を伝えていないし、霊夢もあまり橙を痛めつけるようなことはしないはずだ。なんせ幼少期の数少ない遊び相手だものね。

 

 もはや事の完遂は時間の問題。幾つかの懸念事項はあるが、ただちに全体計画に影響を与えるほどのことではない。

 紫様のこれから先のスタンスは判らないが、異変中止を命じられないということは、事の続行を望まれているのだろう。しかしこの様子だと、紫様が直接に力を振るわれることは恐らくないと思う。

 ……私に橙、幽々子様に妖夢が揃っていれば決して霊夢一人に遅れはとらない。ついでに魔理沙あたりも増えるかもしれないが、所詮は人間───大した脅威ではない。

 そういえば幽々子様が我々と接触する前に、知霊へと協力をお願いしていたらしい。別に期待はしていないが、まあいないよりかはマシだろう。現在は幽明結界の近くで待機してもらっているようだ。

 

 異変成功率は90%を超える。だが注意すべきはその確率の高さではなく、失敗する通りも幾つか存在する点だ。

 だからこそ、わたしが適切にイレギュラーへと対応しなければならない。

 

 幽々子様の悲願のため……そして紫様の秘めた思いのため。私は内に眠る式に従って、この異変をやり遂げる。

 

 

 

 

 ────────────

 

 

 

 霊夢は吹雪吹き荒れる幻想郷遥か上空を飛行していた。冷気が霊夢の顔を打ち、美麗できめ細やかな表情を歪ませる。

 

 博麗の勘に従って紫を探してみたのはいいものの、結果霊夢はマヨヒガへと迷い込み、馴染みある化け猫と対峙することになってしまった。

 結果は霊夢の圧勝。化け猫の橙は「ぎゃふんっ!」と、わざとらしい声を上げ死んだふりを実行し、霊夢は呆れてその場を後にした。

 

 その後、勘の調子が悪い霊夢は異変時には珍しく、自分で色々と考察を深めていた。そして結論へと辿り着いた。

 よくよく考えれば雪も桜の花弁も、空から落ちてきているのだ。元凶は空にいると考えるのが、単純かつ真っ当な思考である。

 

 そして今に至る。

 霊夢はひたすら上へ上へと飛翔を続ける。雪雲に覆われた分厚い層を突き抜け、雪は水滴になる。やがてそれすら無くなり、天空へと……

 

 

 

「よー霊夢。今日は私の勝ちみたいだな」

 

 晴光が差し込むとともに生意気な声が耳へ届いた。聞き覚えのあるそれに霊夢は白けた目を向ける。

 色素の薄い冬空と未だ舞い散る桜の花弁を背景にしてそこにいたのは、ニヒルな笑みを浮かべた魔理沙。そしてあともう一人。

 青のノースリーブにロングスカート、肩に羽織ったケープ。金髪によく映える赤のリボン。大きな本を大事そうに抱えている。

 ……馴れ馴れしい目だと霊夢は思った。

 

「えっ? もう異変を解決したの?」

「いんや。だが冥界への突入方は分かったぜ!つまり私の方が一歩リードってわけだ」

「私が教えてあげたことをさも自分が見つけたかのように……相変わらずの図々しさね」

「違いないわ……ってあんた誰?」

「私のこと覚えてないの? まぁ、別にいいけど」

 

 金髪の少女はやれやれという風に肩を竦める。しかし全身からは悲壮感が溢れ出しており、霊夢は心底面倒くさいヤツだと思った。

 別に彼女のことを知らないわけではないが、特別関わりたい相手でもない。

 魔理沙だけでも異変時には自分に対抗意識を燃やしてくる面倒臭い相手だというのに、これ以上面倒臭い相手を増やすのは憚られる。よって知らないフリだ。

 だがそんな霊夢の心の内を少女が知る由はなく、ならばと話を始めようとした魔理沙を押しのけ、胸に手を当てる。

 

「それじゃ自己紹介するわ──七色の魔法使い、アリス・マーガトロイドよ。もう忘れないでよね。ていうか私にあんなことをしておきながら今日久しぶりに会って『忘れました』って酷くないかしら?この冷血巫女」

「あんたの存在感が気薄なのがいけないのよ。いつ消えたのかも気付かなかったもの。それに巫女の仕事をやらせてみたはいいけど全然役に立たなかったし」

「よくもまあぬけぬけと……って覚えてるじゃない! まずそもそも───」

「よしそこまでだぜ。私にもちっとは喋らせてくれ」

 

 ジト目でさらに追求を強めようとしたアリスだったが、押しのけられていた魔理沙が復帰し押しのけ返す。話が進まないと思ったのだろう。

 

「で、だ。こいつ(アリス)曰く冥界への入り口はアレらしい。花弁もあっこから出てるからどうやら本当みたいだな」

「疑ってたのね……」

 

 魔理沙の指差す方向を見る。

 雪雲に紛れて自分たちとともに空に浮遊する巨大な物体。ここまで巨大な建造物を見たのは霊夢にとって初めてだった。

 

 幽明結界。

 顕界と冥界を遮る仰々しき鉄門は、圧倒的な存在感と力強さを感じさせた。

 固く閉ざされた門はありとあらゆる存在の行き来を遮る。とてもじゃないが、そう簡単に通してくれそうには────

 

 

「この先に異変の黒幕と紫が居るってわけね。……『夢想封印』!」

 

 思考停止夢想封印。

 躊躇なく放たれた特大の追跡霊力弾が幽明結界へと殺到する。そしてけたたましい轟音とともに、幽明結界は光の中に消えていった。

 こうしてあの世とこの世を遮る鉄門は、脆くも崩れ去った。

 

「よし行くわ。付いてきたければお好きに」

「……なあアリス。これって大丈夫なのかな? 私にはちょっと……」

「大丈夫じゃない、大問題よ。はぁ……後始末が面倒臭さそうね。たくっ、これじゃどっちが悪者なんだか判らないわ」

 

 むしゃくしゃするから。そんな理由で破壊されては幽明結界も浮かばれない。

 ちなみにのちに結界の現状を聞いて吐血したスキマ妖怪がいたことは当の本人のみが知る余談である。

 

 いち早く飛んでいった霊夢に魔理沙とアリスが追従する。どうやら魔理沙は先ほどの霊夢の行動を見て、異変解決の貢献度を彼女と競うことをやめたようだ。

 無闇に今の状態の霊夢を煽れば、どんなことになるか幼馴染である魔理沙でも予想ができない。触らぬ(巫女)に祟りなし。

 

 ふと、気になった霊夢が首だけをアリスへと向けて問いかけた。

 

「そういえばなんであんたが付いてきてんのよ。異変解決なんて柄じゃないでしょうに……なんか狙いでもあるの?」

「異変には興味ないわ。どうせ家からは出ないし冬でも夏でもどうでもいい。いやまあ寒いからそろそろ終わってほしくはあったけどね。私が用のあるのは……こっちの方よ」

 

 手に小さな魔法陣を展開し、文々。新聞を召喚する。そして指差したのはでかでかと載せられた八雲紫の写真だった。

 ピタリ、と霊夢が静止した。若干目のハイライトが消え、控えめに言って不気味である。たじろいだアリスだったが、霊夢のペースに飲まれまいと気丈に振る舞う。

 

「なんで?」

「言う必要はないわ」

「……なんで?」

「ちょっと面識があるからよ別に他意はないわだからその陰陽玉を降ろしなさい早く!」

 

 気丈なアリス陥落。

 日の本全ての妖怪を滅ぼしても事足りると謳われる博麗の秘宝、陰陽玉を脅しに向けられては、いくらアリスでもたじろぐしかなかった。

 そして魔理沙は今日霊夢を弄らない方がいいことをしみじみ確認した。

 

「しかし意外だな、お前と紫に接点があったとは。確かにある意味似た者同士ではあるんだが」

「……まあそうは言っても相当昔のことよ。いつか機会があれば話してあげるわ」

「興味ないぜ」

 

 魔理沙が切り捨てる。と、同時に閉ざせし雲の通い路が破裂し、複数の人影が飛び出した。

 即座に反応した魔理沙は八卦炉をそれらへ向け、アリスも魔法糸を纏う。霊夢はダラダラとそちらへ視線を向けるに留まった。

 

「見て見て姉さん、紅白の蝶が飛んでるわ! 春に映えてとってもきれいね〜」

「その隣には不吉なカラス。またその隣には不気味な人形。ロクな連中じゃないわね。屋敷のお嬢様が言っていた連中かしら」

「つまり、私たちの敵ってことね。お得意様の頼みとあれば断れない! よしそんじゃ、気張っていこう!」

 

「「なんでリリカが締めてるのさ(のよ)!」」

 

 そして場は一気に騒がしくなる。

 消滅した幽明結界があった場所に三人の幽霊が陣取っていた。各々が思い思いのカラーリングの服を着込み、上等な楽器を持っている。

 やがてそれらは浮遊し、各自で音を奏で始めた。鬱、躁、そして幻想。相反する属性を調律させ、未知の音域を創造する。

 

 音とは波長だ。幅が短くなれば焦燥を生み出し、長くなれば安堵を生み出す。そうして万物の感情を操るのだ。

 

「……この騒霊ども、待ち伏せしてたよな。つまり異変の協力者ってことか」

「今回の異変は一筋縄ではいかないってことね。紫の動きに呼応してるのかしら?」

 

 なんにせよ目の前の三人組が異変の協力者とあれば話は早い。

 異変解決を妨害する存在は、慈悲なく退治しろ。霊夢の数少ないポリシーである。

 ちょうど数は3対3。魔理沙はともかくアリスを数に数えて良いものか霊夢は少しだけ迷ったが、まあ足手まといにはならないだろうと気にしない方針をとった。

 

「余計な雑音は、始末するまで」

「我らはプリズムリバー三姉妹!少し早いお花見にしてあげるわ!」

「三位一体の幻想曲、とくとご清聴あれ!」

 

「ふふふ、プリズム(虹色)ねぇ……いいセンスじゃない。だけど貴女たちは三人揃って七色のみ。対してこっちは私一人で七色全てをカバーすることができる。さらに赤白黒の追加もありなのよ。負ける要素が見つからないわね」

「おい……あいつ(アリス)がなんか言ってるぜ?」

「言わせときなさい」

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 あー泣いた泣いた。

 おかげですっきりゆかりんよ! まあ問題は何も解決してないけどね! 私の愚痴に付き合ってくれてありがとう見ず知らずの大木さん。いつか貴方も見事な桜の花をつけれるといいわね!

 しっかしどうしましょう……完全四面楚歌チャーミングでまさに八方ふさがり状態だし、頼れる仲間は一人もいない。

 

 今の私にできるのは死に方を決めることぐらいかしらね。よくよく考えればこの修羅が跋扈する幻葬狂で好きな方法で死ねるって結構幸運なことじゃない? うん、幸運なことに違いない!

 えへへ……どうやって死のうかなぁ! 切腹が良いかなー! 妖夢が「介錯しもす!」ってね!

 いやそれよりも幽々子の能力でコロッとやってもらった方が楽かなー!そしてその後は閻魔に裁かれるまで白玉楼住まいになるのかしら?

 あっはっは───……。

 

 ……虚勢は止めよう。なんだかとっても悲しくなっちゃった。

 はぁ……とっても憂鬱ベリーベリーメランコリー。死ぬと解ってて開き直るのはどうにもガラじゃないわ……。だからと言ってどうにかなるわけでもないし。安西先生……仲間が欲しいです……。

 

 けど卑屈になってても何も始まらないわ。何か打てる手は取っておかないとね。

 腐っても私は幻想郷の賢者、策謀とかは結構得意な方なのよ! ふふふ……幻想郷の諸葛孔明とでも呼んでちょうだいな。

 えっ、なんでそれなのに天下を取れてないのかだって? ……因幡帝がいるわよね?はい論破。

 

 さてと、それじゃ一旦白玉楼に戻りましょうかね。藍と幽々子が怖いけど、少しでも存命できるように媚びを売っておかないといけない。運が良ければ見逃してくれるかもしれないし!

 「とことん希望に縋れ。さすればどうにかなる」ってどっかの偉人(ひよっこ)が言ってたような気がするわ! ナイス名言よ!

 

 あーお腹すいた。まだご飯は残ってるかしら? 幽々子が全部食べちゃったかもしれないわね。まあその時はスキマから保存食を出して食べましょう。

 あっ、食べ物で幽々子を釣ればあるいは……

 

 

 

 

 

 [───……かり……。こっちへ────]

 

 

 

 

 

「……ふぇ?」

 

 なに今の?誰かの声がしたような……?

 空耳、だろうか。歳はとりたくないものだわ。……いやわたしはピチピチプリプリだけどね!?

 うーん……声はもう聞こえない。だけど変な声に代わって、酷い耳鳴りと一緒に頭がガンガンする。あー頭が痛い……。

 

 多分疲れてるのね私。ショックの受けすぎで心身性のストレス偏頭痛でも患ったのかもしれない。ついに胃腸だけに留まらず頭にまで被害がいってしまったのか……あぁショックだわ。

 取り敢えず寝室に帰って仮眠を取ろう。寝れば頭痛も治ると思うし。

 ……だけど寝首を掻かれたらおしまいだから、我慢するしかないか。きついなぁ……。

 

 

 

[────────]

 

 

 

 ひっ!? や、やっぱり聞こえる……しかも私を呼んでるわ!

 これは俗に言う「頭に直接……ッ」現象ってやつね。どうも橙や藍が使ってる念話に近そうだ。つまり空耳ではない。

 声質は女性のものだが、若干無機質な感じだ。まるでコンピュータに話しかけられてるみたい。

 それにどっかで聞いたことがあるような声だ。……誰だっけ?思い出せないわ。

 

「貴女は……誰?一体どこにいるの?」

[……────────]

 

 目の前? 見下ろす? くだらない戯言ね、私の目の前には寂れた大木さんしか立ってないわ! 幽霊一人居やしない。

 ……はは〜ん、さては私を惑わそうとしているわね!人の迷いを吸収する弱小妖怪かしら? 残念だけど、そこんじょそこらの妖怪じゃ私から畏れを得ることはできないわよ?何たって大妖怪だもん。

 

[────────]

 

 えっ、「そうではない」って?

 ていうかこいつナチュラルに思考を読んできやがったわ!さとり乙!

 どうせ幻覚系が得意な妖怪の仕業なんでしょ? なら対処は簡単、相手のペースに飲まれなければいいだけ! 私に隙はないわ!

 

「それで、誰とも知れない何処ぞの貴女がこの私に何の用かしら?」

[────────────]

「な、何ですってー!?」

 

 こ、この四面楚歌チャーミングな状況をどうにかしてくれるの!?

 救世主! 救世主が降臨なされた! どうか迷える私をお導きください!……って、早速相手のペースに飲まれてんじゃないわよ私! 本当かどうかまだ分からないでしょ!

 

 姿も見せない怪しい誰かさんを信じられるほど私はお人好しじゃないの。残念だけど、その申し出は受けられそうにないわ。

 

[────────……]

 

 いい加減しつこいわねぇ。

 そんなに私を助けたいの?もしかして本当にいい妖怪なの? ……もう分からないわねこれ。

 

「……その方法を聞くだけなら良いわ。ただし私に何かをした場合、すぐに悪意があるとみなすわよ。いいわね?」

 

[────]

 

 短い了承の言葉。

 その後彼女は淡々と語り出した。ノイズ混じりで時々よく分からない単語を言ってたりしてたけど、だいたい言いたいことは分かった。

 何でも西行妖──目の前にある寂れた大木さんのこと──にくっ付いてとあるワードを呟けば、声の主さんの力で外界からの認識を妨げる術式を構成させることができるらしい。それでほとぼりが冷めるまで隠れていろとのこと。

 

 ……いや無理でしょ。

 この声の主さんは藍や幽々子のことを舐めすぎている。そこんじょそこらの有象無象が作った術式なんて、彼女たちに通用するはずがないわ。

 

[────────]

 

 ものは試し?

 はぁ……簡単に言うわねぇ。

 けど他に頼るアテがあるわけでもないし、藁にもすがる想いでやってみようかしら。

 もし成功しなかったらただじゃおかないんだからね! 私の希望をへし折った罪は重いわよ!

 

[……────────]

 

 「ありがとう」……? なんで貴女がお礼を言うの? ……ほんと分からない妖怪さんね。

 

 大木さん──西行妖に触れる。妙に心がざわつくけど、私は何に緊張してるんだろう? なんか立ち入り禁止の境界を踏み越えて行くような……だけど背徳感とかそういうのじゃなくて。

 ああもう面倒臭いわね!

 それじゃいくわよ!

 

「『賢者八雲紫の名において命ず、800年の禁を解け』!……これで良いの?」

 

[────ええ、それで良い]

 

 えっ、いきなりノイズが消え……っ!?

 

「こ……れ、なに……?」

 

 やだ怖い!なにかゾクゾクしたものが体を這って自由を縛りつけてるわ!しび、痺れて……!

 ひっ、いやッ、助け……………

 

 

 

[おはよう、そしてゆっくりおやすみなさい。貴女は夢と現の境界で全ての顛末をしっかりと見届けるのよ。『無人は無尽にして夢人と為す』……悪いようにはならないわ]

 

 

 藍、幽々子……霊夢っ…ぅあ……────

 




咲夜さん頑張ってます
ちなみに声主さんはサグメ様じゃないわよん。サグメ様はすでにどこかで登場してるわよん。
なんか回を重ねるごとにゆかりんが退行してるような気がしないこともない。だけどこの先もっととんでもないことが起こるんDA

明日は節分の日!さあみんなで華仙ちゃんに豆をぶつけよう!ダイジョーブ、仙人に豆を投げてもどうにもならないからさ!


感想、評価をいただくたびに喜びの舞を舞っております。あなうれしや……
「文章も悪い、能も下手じゃ!セプテットの舞をせい!」
お、恐れながら作者は八雲家のファンにございま(ry

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。