幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ……いや割とマジで   作:東方兎流陽寿

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歴史的和解回


八雲紫の出奔(後)

 

 

 夢から覚めて一番最初に確かめたのは、これが果たして本当の現なのか、それとも紫様の言う「ひと時の悪い夢」なのか。

 

 夢なら、まだ眠らせて欲しいと願う。だってもう二度と、あんな悪夢は見たくない。

 

 私の疑問に結論付けたのは、息を呑む音とお腹のあたりに感じた感触。そしてじんわりと伝わってくる暖かな気持ちだった。

 

 ああそうか、あの毒を受けてもなんとか助かってくれたのか……。良かった。

 

「藍さま……良かった! 良かった…!」

「ああ、ごめんね橙。心配、かけた?」

 

 ふるふると懸命に首を横に振っているが、それが嘘であることは布団に広がっていくシミを見れば分かる。一体何日眠り続けていたんだろうか。

 ……寝起きだからか、頭が上手く回らない。おまけに身体も満足に動かないときた。

 

 何があったかも朧げだ。

 

「あいつは……異変はどうなった…? 私が寝ている間に何があったんだ……」

「安心してください! もう、全部終わりましたから……異変は解決されました」

 

 酷い安堵感に包まれる。

 そうか……何とかなったのか。

 

 がむしゃらに戦い抜いた。恥も外聞もなく、全てを投げ捨てて得た力を存分に奮って……挙句に負けた。誰も八意永琳には勝てなかった。

 

 結局、全てを終わらせたのは──ッ。

 そうだ。あの方しかいないんだ!

 

「紫様はっ!? 無事なのか!?」

「そ、それが……」

 

 言い澱みながら橙が目線を逸らす。なんで、そんな表情をするんだ橙。紫様の所在を言ってくれるだけで十分なのに、なぜ……。

 

「紫さまは異変が終わった直後まで元気だったんです。だけど、藍さまが起きる少し前に体調が急変して……それで……」

 

 身体中から冷汗が止まらない。あの光景が何度も脳裏でフラッシュバックして、あの時の事実が容赦なく私へ突き立てられる。

 紫様の最期を、私は……確かに見届けてしまった。あの時の紫様の言葉は今も鼓膜に焼き付いている。やめてくれ……この現実が夢の続きだなんて。

 

「どう、なったんだ……?」

「紫さまは────」

 

 

「こっちよ」

 

 聞き慣れた美しい声がする。

 あまりにも近すぎたその声に思わず痛む首を曲げてみると、ちょうど私の横に引かれていた布団に紫様はいた。

 青白い顔で時々えづく様子は病人そのもの。

 

 固まる私に橙が告げる。

 

「紫さまったら体調を崩されたみたいです」

「さっき魔法の森に行ってたんだけど、その時にちょっと瘴気にやられちゃったみたいでね……この通りグロッキーな状態なのよ」

「は、はあ……? 左様ですか」

 

 魔法の森の瘴気は確かに強い。それこそ人間や並みの妖怪では立ち所にして身体の自由と意識を奪われるほどに。

 だが紫様は……。

 

 いや、そうか。確か違うんだったっけ。

 ……分かっていてもなお、慣れないものだ。

 それよりも問題は、隣に紫様が居たというのに気づかない私の落ち度だな。

 

 と、橙が元気いっぱいに跳ね飛んだ。

 

「それじゃあ私はお買い物に行ってきますね! お二人とも安静にしててください!」

「貴女も病み上がりなんだから無茶しちゃダメよ? あと阿求にこの手紙を」

「了解です!」

 

 紫様から書簡を受け取ると同時に、橙は勢いよく駆けて行った。無理するなと言われたばかりだろうに……そんなに嬉しかったのか。

 ……橙が矢に撃たれた時、私はあの子を半ば諦めかけた。情けない事だが、それほどまでにあれは絶望的な状況だったのだ。

 

 けどあの子はこうして元気に走り回って、紫様に、ついでに私も命を繋いでいる。

 あの方には感謝してもしきれない。

 

 

 少しばかりの心地よい沈黙の後、まず静寂を破ったのは私だった。

 

「……異変を解決されたのは()()ですか?」

「うーん、どうなんでしょうね? 大部分は霊夢がやってくれたから()()()がやったことは些少な事に過ぎないわ」

「──……()()()()に助けられたのは多分、これで二度目です。春雪異変の時も、そして今回も……私は貴女様を救うことができなかった」

 

 紫様の双眸が見開かれた。だがやがて気まずそうに下方へと向けられる。

 

「貴女は彼女を知っていたのね。私は──ついこの前よ。何がどうなってるのやら……この右も左も分からない感じは久方ぶりかしら」

「……紫様にも分からない事があるのですね」

「買い被り過ぎよそれは。だけど、そのかつての右往左往はすぐにどうにかなったわ。……貴女に出会えたおかげで、ね」

 

「──それは、()()()ですか?」

「どっち?」

 

 私が大きく変わる節目となった出来事は二回ある。そしてそれは全て紫様と出会えた事によるものだ。一度目も二度目も、私にとってはかけがえのない大切な思い出である。

 

 けど、その二回の紫様は恐らく違う。

 身体や心と言った解り易いモノではなく、もっと目に見えない大切なモノが完全に変質してしまっているのを感じるのだ。

 

 だけど今までの私はそれを認めなかった。

 紫様は紫様だ。

 それに何の違いがあるというのか、と。

 

 

 ……その考えは間違いだった。

 悔しくもそれを認めさせられたのは、あの八意永琳の言葉から。

 

 私は、紫様が変化し、大きく衰えているという事実から目を逸らしていたんだ。

 原因は私の甘えだろう。

 紫様という絶対的な導を失いたくなかった。あの紫様を否定すると、かつての想いも記憶も、幻に消えてしまいそうで。

 

 

 ──だけど、それは違う。

 

「どっち……? どういうことなの?」

「私はあの日から──貴女を護る事を誓いました。例え迷惑で足手まといだと思われようとも、いつかは貴女の隣に立つ従者を夢見て」

 

 それが私の此処に在る理由だ。紫様に出会ってから、私の全ては紫様ありきのモノとして支配されている。その現状に脆弱な私が不満など抱くはずもなく、寧ろ本望なまであった。

 しかしそれ故に数えきれない数の失態を犯した。

 

 さらなる言葉を口にしようとして、胸がズキリと痛む。だけどもそれを振り切って語らなきゃならないのだ。

 じゃないと私は、これ以上紫様と共に居ることができない。

 

「……私が邪魔でしたか? ……私が恐ろしゅうございましたか? いつ牙を剥かれるのかと、気に病まれていたのではないですか? ……私は貴女様のことを、何一つ知ろうとしていなかった」

「……っ」

 

 殆ど変わらない紫様の表情が少しだけ歪んだような気がする。瞳の奥に深い悲しみを湛えるようにして、口を開きかけて、やめた。

 私の次の言葉を待たれている。

 

 不安で胸が締め付けられる。

 私の一言で今までの全てが無に帰してしまいそうで。もう二度と、今までのような関係には戻れない確信があった。

 

 だけど、それでも────!

 

 

「……私は、強い貴女に仕えたのです。断じて、今の弱い貴女に仕えたのではない。私は、貴女を貴女として認識する事ができないかもしれません。既に無きかつての幻影を今も追い続けている」

 

 これが本音だった。

『紫様は絶対の者』だという認識が式や人格の奥底まで刻み込まれている。それは現実を知った上でも上書き出来そうにない。

 私は何に変えてでも八雲紫という存在を守ることを誓った。私が追い求め続けた紫様も、いま目の前に居る紫様も、同じ存在であることは疑いようもない。よって紫様への態度がこの日を境に変わるなどあり得ない。

 

 だから紫様には私の胸中を言っておかなければならないと思った。

 そして選択していただかなくては。

 

「幻滅しましたか? ええ……私は少なくとも、貴女様に抱いている理想と事実の偏差に苦しんでいます。頭の中で何度もこの偏差を正当化しようとしている、そんなどうしようもない式神です。……それでもなお、紫様は私を『八雲藍』だと、呼んでくださいますか?」

「藍……」

 

 脆弱な私は、脆い。自らの心にあるヒビを自覚した途端、今にも砕けようとしている。私はいつもそうだ。昔から何も変わらない。

 

 紫様が受け入れてくれるなら、私は死する時まで変わらず紫様を慕い続けよう。

 紫様が拒絶されるなら、私は喜んで紫様の世界から姿を消そう。じゃないと、自分が何をしでかそうとするのか分かったもんじゃない。

 

 紫様が霊夢や幽々子様を愛する事に一切の不満が無かったのかと聞かれれば、答えは否。これもまた自覚したくなかった事柄の一つではあるのだが、私にも一丁前の嫉妬心があるようなのだ。

 ……私だって出会い方が違えば、彼女らのように紫様と接する運命もあったはず。『八雲藍』の居ない世界だってあるんだろう。

 

 そう。『八雲藍』が居ないと、私は狂ってしまう。紫様に何をしようが、それは本来の私が望むことであって、『八雲藍』の望むことではない。

 少なくとも『私』は貴女の悲しむ顔を見るのは嫌だ。だけどあの時の私は、紫様が望まないことだと解っていながらも、八意永琳との戦闘を望んだ。

 全ての事項が私に優先されるのだ。

 

 そんなこと、『私』がお断りだ。

 

 

 紫様から笑いが溢れた。

 奥ゆかしいその笑顔はとても美しい。その実情を悟らせない能力はやはり私でも遠く及ばない。貴女が弱者だなんて、やはり信じれないのです。

 

「貴女は私を八雲紫と呼ぶのでしょう? なら貴女を藍以外の名前で呼ぶことなんてありえないんじゃないかしら。いつぞやかに言ったわよ? 貴女と私は対等……いえ、対等という飾りの関係だって。だって、私は貴女無しじゃ、何もできないもの」

 

 ……けどそれは私だって同じ。

 私は貴女が居ないと、何もできない。

 

 ……いや、だから対等だと、紫様は仰りたいのだろうか? 私の心情を見透かすような瞳のまま、紫様の言葉は続く。

 

「正直言うと、貴女の事が怖かった。貴女から向けられる感情の全てが私には理解できなかったから。けど今ならはっきり言えるの」

「っ!」

 

 しなやかな紫様の指が私の指と絡み合う。いつもなら私をからかっているんだろうと推測するところだが、今回に限ってはそう言い切れず頭がフラフラする。

 言葉は悪いが、紫様の心を掴んで離さない魅力は、正に魔性の類いと言える。

 

「私は多分、貴女の望む紫にはなれないわ。だけど……もし貴女が許してくれるのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()

「え?」

 

 そして予想外の言葉に思わず息が詰まった。

 そうだ……紫様の言動はいつだって突拍子で、私の理解が及ぶ範疇ではない。だからいつも貴女の底を知る事が出来ないのだ。

 

「貴女が望む姿へ近づく努力をするわ。なんなら貴女が私の全てを操ってくれたって構わない。私は貴女の理想を目指す。……だから──」

 

 指先から伝う震えが私に伝播した。

 綴る言葉がどんどん弱々しく、消え入りそうな程に小さくなっていく。

 並々の想いを湛えた瞳が私に訴えかける。

 

 

「……だから、私を見捨てないで、藍」

 

 

 ガツンと、頭を打つような想いの衝動に心が揺れた。今まで紫様に抱くはずの無かった感情が次から次へと込み上げていく。

 

『見捨てないで』……か。

 

 ──見捨て、られるものか。こんなか弱い主人を、見捨ててたまるものか。

 

 

「……私は……ダメな式神です。主人の望むままに存在しなければならないのに、貴女のせいで力も心も中途半端になってしまいました」

 

 貴女がどうしても望むというならそうしましょう。貴女の言葉は私の意志だ。

 そして対等だと言うのなら──。

 

「だから……紫様からも教えてください。貴女が望む、私が在るべき姿というモノを。我々は一応、対等なのでしょう?」

 

 変な話だ。互いに互いを相手に委ねているのに、対等を強調する関係なんて。

 歪だが……私たちの関係は昔からそうだった。そうなのでしょう? 紫様。

 

 

 

「それで、藍はどんな私を望んでいるの? 貴女の好きな八雲紫を目指して見せるわ」

「す、好き!? いやあの……え、えっと……好き、で形容するのは如何なものかと思いますが……優しくて、笑顔が素敵で、私よりも強い紫様が、その……好きです」

「……ならまずは橙を目指さなきゃならないわね。遠き道のりだわ」

 

 私が告げたのは憧れだった紫様の漠然とした像。だけど今の紫様があの方を目指す必要はないのだ。だって今ある紫様こそが、八雲紫なのだから。

 それでも敢えてお願いさせてもらった。

 貴女と私の約束……式と合わせて二重の縛り。なんて贅沢なのだろうか。誰にも譲れない、存在しない私たちだけの関係。

 

 だから私は、何年でも待ちますよ。紫様。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 速報ォォォッ!!

 

 どうやら私は藍の夢小説の中で、全知全能地上最強の妖怪だということになっていたらしい! いきなり独白された時はあまりの衝撃に頭が真っ白になったわ。ふふ……震えが止まらないわ……!

 まさか藍にそんな一面があったなんてね!

 

 まあ、私って見た目だけならそう見えてもしょうがない部分があるらしいから、もしかすると仕方のない事なのかもしれないわね。さとりからもなんかちょくちょく言われてたし。

 だがまさか藍が……ねぇ? 藍と同じく、私も大きなショックを受けたわ。

 

 しかし逆に言えば、これまで不可解だった藍や橙の忠誠心の謎が解けた。これからは彼女たちと本当の意味で付き合っていけるような気がする!

 まあその為に彼女たちの理想を目指していくことを誓ったんだけどね! さあ明日からトレーニング開始よ! はてさて藍を超える日は何万年後の話になるんでしょうかね!?

 

 ……未来永劫そんな日は来ないと思う(小声)

 一日に三十年の鍛錬という矛盾のみを条件に存在する肉体を手に入れても勝てなさそう。ていうか橙にも勝てる気がしない。

 

 

 

 話題を変えましょう。

 内容は私の中から出て行ってしまったもう一人のワタシについて。

 

   ある日突然心の内から語りかけてきたもう一人の自分が告げる衝撃の真実! なんと『自分は未来のお前』とのこと!

 

 いやーホント字面だけ見たら私の頭が明らかにおかしくなってて、これはそう、キチガイというヤツである。乾いた笑いがこみ上げるわね……。

 

 しかし私はそれを信じるしかないのだ。

 なんでかって? ……それがねぇ、根拠なんて何もないのに心が勝手に決めつけるのよ。もう一人の私が言っていることは信じなきゃいけないって、心が頭に命じるのよ。

 それこそ否定という選択肢を取ろうとする意志すらちっとも湧いてきやしないわ。正直操られてる感があって恐怖を禁じ得ない。

 

 だがやるしかないのだ。

 もう一人の私が告げたのは幻想郷の予言。これから起こるであろう事象を大雑把に教えてくれたんだけど、その内容がどうにも私が日頃危惧している内容と合致するのよね。

 

 例えば妖怪の山の暴走、地底世界からの攻撃などなど……中には博麗神社が倒壊するなんてものもあったわ。勘弁して欲しいです(涙目)

 実はそれに対応する為にあうんと華扇を博麗神社に呼び寄せたっていうのもある。正確には荒ぶるであろう霊夢への仲介役。

 

 それらを未然に防ぐ事ができるのであれば、越したことはない。幻想郷が壊れる前に私が策を講じておくのよ! 外の世界への用事とはこれに起因する。

 

 ……まあ辛いのはこんな事言っても信じてくれる人なんていないだろうってことね。故に私一人での単独行動になったわけだ。

 本当なら藍に付いて来て欲しかったんだけど、あの怪我だもの療養させないと! ついでに互いに色んな真実を知っちゃったんだし、改めて再出発する心の準備をしないといけない。この期間をその為に使って欲しいわ。

 

 目指す場所は外の世界! なお一人での旅行は初めてよ。普通なら単独行動なんて是が非でも避けなきゃいけない事案である。

 けれども外の世界には強い妖怪はもう殆ど残ってないし、私に喧嘩を吹っかけるような奴は大抵幻想郷に来てるから、安全性に関しては案外保障されている。まあその気になればスキマで幻想郷に即帰還できるしね。

 

 あれ、もしや外の世界とはユートピアなのではなかろうか? 私の理想郷と立場が逆になるとは、一体……うごご!

 

 

 さてAIBOはというと、なんと新たな身体を作り出して何処かへ出かけてしまったのだ。そしてさらに驚いたのは、その身体があの黒歴史のメリーちゃんボディだったことね!

 どうもドレミーが現実世界に連行されたことで、私の夢の中にあの身体が放置されていたらしい。それをAIBOが回収し利用している、と。

 

 もうね、正直なところあの私は二度と見たくもなかったし思い出したくもなかった! あああ嫌な思い出が蘇るぅぅぅ!!

 

 八雲紫クールダウン!

 ひっひっふー!

 よし落ち着いた。

 

 それにしても身体があって自由に動けるならAIBOが外の世界に行けばいいのにねえ? なんでか行きたがらないのよね。「貴女がいない間の幻想郷の調整に務める」の一点張りで……。

 まあ別にいいけど。

 

 

 と、目の前の空間が別たれ黒々とした異界が広がる。その中から現れたのはAIBOだった。ふわりと降り立つその姿は優雅そのものである。

 てか当然のようにスキマを使うのね。私その姿の時は使えなかったんですけど……。

 

 

「何処に行ってたのよ? こちとら藍との話し合いで大変だったんだから……」

「あらあらそれはそれは……とても有意義な時間だったみたいですね。此方もとても興味深い時間を過ごせましたわ」

 

 気楽で羨ましいわ。

 ……ん? なんか心なしか焦げ臭いような? ついでに若干の獣臭も漂ってる。

 んー……まさかねぇ? 地霊殿に行ってきたわけがないわよね。AIBOもさとりの恐ろしさについては重々承知しているはずだ。

 

「さて、準備の方はどう? 旅路の計画までちゃんと練れたかしら?」

「まあ問題ないと思うわ。ただ早ければ数日以内には帰って来れそうなんだけど……そんな綿密に計画する必要あるの?」

「勿論。それに今回の貴女の仕事は気負う必要の無い半ば休暇のようなものなんだから、1ヶ月くらいはリフレッシュしてくるといいでしょう。この不安定な幻想郷は私が観ておきますわ」

 

 優しい! AIBOまさかの聖人路線! なんかていのいい厄介払いのように感じるけど、それで安息がもたらされるなら結果オーライだ。

 やはり最後に信じれるのは自分自身だったってわけね。頼りになりますわー。

 

 そんじゃ早速出発しましょうかね!

 藍や橙に捕まると色々と面倒なことになりそうだし、日が暮れる前には寝る場所を確保しておきたい。それにやけにAIBOが急かしてくることですし。

 藍が寝ていて、橙が出かけている今がチャンス!

 

 

 ……あっ、そうだ。

 外の世界へのスキマをAIBOに開けてもらいつつ、ふと気になった疑問を口にしてみた。

 

「貴女って未来の私なんでしょう?」

「ええそうよ。厳密には……なんて言っても貴女には通じないでしょうし、それなら単純にそう捉えてもらえればいい」

「ふふ、そう。なら一つ聞きたいことがあるんだけど……未来の世界では私の掲げる『みんな仲良し幻想郷』は実現しているのかしら?」

 

 たわいもない質問だった。うんかいいえで答えてくれさえすれば満足な問い。多分実現してないだろうし。

 しかし一瞬だけ、もう一人の私は呆けた顔をすると、途端に馬鹿にするような笑みを浮かべた。身体の子供っぽさも相成ってなんかイラついたわね。

 

「貴女ったら、そんな目標を思い浮かべながら幻想郷を作ったのね。……随分と昔の事を思い出しましたわ。そう、確か私も最初はそんな事を考えていたような気がします」

「そりゃそうでしょう。むしろそれ以外に何の理由があるのかしらね。……それで? 未来じゃどんな感じなのかしら?」

 

 まあ単純に気になるのよね。

 AIBOは少しだけ考え込むそぶりを見せると、あっけらかんと言い放った。

 

「概ね達成されていると言っても過言ではないのかもしれない。幻想郷の住民の殆どは団結していたわ。……()()()()()()()()()()ね」

「一人? ……それは誰なの?」

「教えなーい」

 

 悪戯っぽく答えた彼女は私の背中を押し込んでスキマへと進ませる。

 スキマへ潜ると、途端に重力のベクトルが切り替わり私は顔から地面へ叩きつけられるのだった! オイオイオイ、これアスファルトだわ。

 

 ちょっと酷すぎない!?

 抗議しようと上を見上げると、無慈悲にも私の少しばかりの手荷物が投げ出されると同時に速攻スキマは閉じられた。

 やっぱりAIBOは聖人なんかじゃなかったわ。アレは畜生よ! しかもさとりに匹敵するレベルの!

 

 

「うぉえ……臭い」

 

 幻想郷では嗅ぐことのない、器官の隅々を汚されるような煙たさが私の中を満たした。

 この淀んだ空気の中を過ごすというのは、中々気がひけるわね。外の世界……つくづく一世紀前とは比べものにならないほど変わったこと。

 

 さて、取り敢えず最寄りの駅を探しましょうか。あと途中でマミさんの元に向かえるルートも見つけれるといいわね! (てかここどこ?)

 

 最終目的地は信濃の中部。

 いざしゅっぱーつ!

 

 




※この後ゆかりんが悪目立ちしすぎたのは言うまでもない。てか明らかに身なりがこの世の者じゃないからね…。
普通ゆかりんが外の世界に行くときは藍が一緒に着いて来てます。またその時に藍が隠行の術を使っているので、悪目立ちせずに済んでいました。
勿論そんな事をゆかりんが知るはずもなく、今回に至る。



幻想郷で起こる予定だという異変
・60年目のあの異変
・妖怪の山の暴走
・地底からの侵攻
・やべぇ地震

そりゃ対策を取れるなら今のうちにやっとかないとね。ゆかりん頑張って!


ちなみに今の状態をギャルゲーに例えると藍しゃまに関してはもう王手ですね。しかしゆかりんまさかの放置でこれから新たな女にうつつを抜かす模様。ハーレムルートでも目指してんのかな?

逆にゆかりんを攻略する場合、必須となる条件はゆかりんの実力、本性をしっかりと把握していることですかね。藍様はまだゆかりんの本性には気がついてないんですねこれが。ちなみにゆかりんの秘密を知っているとなお良し!
……あれ、この条件を満たしてるキャラがいたような、いなかったような……。



進捗状況については活動報告欄を参照なさってくれると嬉しいです。

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