問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~   作:biwanosin

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ようやく再開できますよ。
では、本編へどうぞ!


暴虐の三頭龍
名の継承


「おーい、じいさん。アンタはいつになったらサラちゃんに階層支配者の立場を譲るんだ?」

『知った風な口を叩きおって。まだ隠居する気はない。』

 

和服を着た青年と火龍は、そんな会話をしていた。

そして、その青年は和服には似合わない、指輪を全ての指にはめていたり、ブレスレットを両手首にしていたり、ネックレスをしていたりと、合計二十一のアクセサリーをしている。

 

『それより、貴様はよいのか?いつまでも卵のままで。』

「いいんだよ。俺は家の奥義を継ぐ気はない。自分の奥義を編み出すか、一生卵のまま過ごすさ。」

 

そう言うと同時に、“サラマンドラ”の元に通達が届いた。

曰く、「全軍、集合せよ。」と金糸雀名義で。

 

「・・・全軍、ってことは緊急事態だよな。おい、じいさん。ウチの参謀が呼んでるんだが。」

『うむ、すぐに向かうとするか示道よ。』

 

そして、二人は“サラマンドラ”のメンバーと個人で所有する戦力を呼び、開かれた門を進んでいった。

 

「・・・意外。一番乗りが“サラマンドラ”だとは思わなかったわ。」

『フン・・・貴様の』

「聞いてくれよ金糸雀。じいさん、スッゲー勢いで全員を呼んだんだぜ!」

『黙らんか示道!』

 

示道はそう言って雰囲気をぶち壊し、金糸雀に近づく。

 

「で?今回こんな大規模に呼んだのはどうして?」

「ちょっとね。今回の魔王を倒すには、とにかく頭数が必要なのよ。示道、あんたあの娘たちは連れてるの?」

「偶然にも、全員いるぞ。さあ、夜を()こう。」

 

示道がそう呟くと、身に着けた二十一のアクセサリーが輝き、その場に二十一人の美少女、美女・・・隷属した元魔王が現れた。なぜか、全員がメイド姿で。

 

「相変わらず壮観ね。じゃあ作戦を伝えるわよ。ドラゴたちは眷属を率いて“アヴァロン”の援護。ガロロはラプ子たちと合流してサポート。示道たちとコウメイ----って、ちょい待ち。」

「ん?どうしたんだ金糸雀?」

「どうしたもこうしたも・・・コウメイは?ドラゴたちのところにいたはずじゃ?」

「そういや、アイツいねえな。」

 

二人は辺りを見回し、件の男を捜す。

 

『奴なら数日前に西側へ向かったぞ。』

「あれ?姉御達のほうに連絡行ってませんかい?」

「来てないし聞いてないわよ。」

「全く、行き先も言わずに向かうとは。常識知らずなやつめ・・・」

「最初の行き先すら伝えないあんたが言うな!アンタの影響でその娘たちにも無断でどこかに行っちゃう様になったんでしょうが!」

「まあまあ。今は、あの最強戦力にその自覚はないって話だろ?」

「あんたも最強戦力の一人でしょうか!人のことの前にまず自分が自覚しなさい!」

 

全くだ、とその場の一同が一斉に頷く。

金糸雀は疲れたように肩を落とすが、気を取り直したように顔を上げ、

 

「あ、お札のストックがねえ。」

「常にストックしときなさいって言ったでしょうが!」

 

られなかった。

まあ、それでもどうにか顔を上げ、指示を出す。

 

「とにかく、指示を出したところはその通りにお願い。“サラマンドラ”は敵の群れが出る前に防衛陣と結界をお願い。神霊級を一体でも下層に逃がしたら目も当てられないわ。心してかかって。」

『心得た。』

「姉御も御武運を!」

 

そうして、指示を受けたものたちは飛び立っていった。

 

「ん?君は・・・“月の兎”の子?」

「あ・・・はい。黒ウサギといいます。」

「黒ウサギ・・・そっか、そう言うことか。それでこれだけのメンバーが。」

 

示道はようやく現状を把握しきり、表情が真剣なものになる。

 

そして、話しかけられたことで我を取り戻した黒ウサギは、ようやく彼女らが何者なのかという疑問にいたった。

 

マヤの終末暦(マヤ・ヒストリー)”。“キルケー”。“エレシュキガル”。

“ヘル”。“アテ”。“ネメシス”。

“メリッサ”。“ブロッケンの魔王”。“ザババ”。

“リリス”。“リリム”。“ブードゥーの魔王”。

“ハンニャ”“ラジェル”。“ゴモリー”。

“アスタルテ”。“バルベロ”。“パルテノペー”。

“ウアジェト”。“バステト”。“ディスノミア”。

そして、その二十一の魔王を隷属させる男。

純血の吸血鬼。“燕尾服の魔王”。日天の獅子の同士。

南の支配者・“アヴァロン”と“龍角を持つ鷲獅子”。

北の支配者・“サラマンドラ”と“ラプラスの悪魔”。

そこには一切の統一性がないが、只一つ、これだけの集団を問答無用で呼び出せる金糸雀という女は只者ではないことだけは分かる。

そして、多くの魔王を従わせている青年もまた、只者ではない。

そう言う意味合いを込めて黒ウサギが二人を見上げると、彼らはいたずらっぽい笑みを浮かべて答える。

 

「そういえば、自己紹介がまだだったわね、ウサギの御子様。私は“      ”の参謀を任されてる金糸雀よ。」

「俺も一方的に名乗らせちゃったな・・・俺は“      ”に所属してる、只のプレイヤーで陰陽師の卵の高橋示道だ。」

 

が、一人その立場がよくわからなかった。

 

「あんたは今度何か役職を付けたほうがよさそうね・・・」

「やだよめんどい。まあ、安心して。君の今後についてはまたあとで話せばいいし、生き残りのウサギさんは俺たちで保護するから。」

「ほ、本当ですか?」

「もちろん。私たち“      ”は、連盟の同士を決して見捨てない。その中でも、“月の兎”は同じ旗の下で戦った同士よ。見捨てるはずがないわ。だから、今は休みなさい。」

 

そう言って金糸雀が黒ウサギの額に口付けをすると、黒ウサギは眠りに落ちた。

 

「お母さんかよ、お前は。」

「それもいいかもしれないわね。でも・・・まずは、この子が起きるまでにこの悪夢を終わらせましょう。」

「だな。さーて、いっちょ働くか!行くぞお前ら!」

『了解(です)(なのです)!』

 

そう言って、その青年は二十一人の元魔王を引き連れて、魔王の討伐へ向かった。

 

 

 

         ==============

 

 

 

気絶してしまった黒ウサギが落ちないよう、しっかりと支えながら飛んでいた俺は、飛鳥たちを発見したため、そこに向かっていた。

 

「皆!無事か!?」

「一輝君。ええ!ここにいるメンバーは無事よ!」

 

俺はそのままディーンの肩に乗り、誰がいないのかを確認する。

 

「ジンはどこに?」

『方々探してみましたが、頭首殿の行方はつかめませんでした。』

「黒ウサギは無事なの?」

「ああ、大丈夫だよ。黒ウサギは、な・・・」

 

俺の言い方に疑問を抱いたのか、飛鳥が俺に尋ねようとすると、そのタイミングで黒ウサギが目を覚ました。

 

「っ・・・みな、さん・・・?」

「目を覚ましたか、黒ウサギ。」

 

黒ウサギを下ろすと、飛鳥が黒ウサギに近づき、ふらつく体を支えてくれる。

そして、飛鳥、耀、俺、ヤシロちゃん、スレイブ、音央、鳴央、アルマ、ディーンの姿を確認すると、

 

「・・・十六夜、さんは?十六夜さんはどちらに?」

 

そう、呟いた。

そして、全員の視線が俺に向かう。

・・・確かに、これは俺の役目だよな・・・

 

「十六夜は来ないよ。一人で残って、戦ってる。」

「なっ、」

 

そして、黒ウサギは表情を驚愕に染め、残りのメンバーは言葉を失った。

 

「俺が十六夜のとこに着いた時点で、あいつは腹を貫かれて重傷だった。それでもう逃げ切れないと思ったんだろうな。俺に黒ウサギを任せて、この現状の原因を作った魔王に一騎打ちを挑んだ。」

 

今の俺には、このことを説明する責任がある。

できる限り淡々と、あのときのことを語らなければ。

 

だが、黒ウサギにはそれが許せなかったようだ。俺につかみかかってきた。

 

「な、何てことを・・・!!一輝さんは陰陽師なのですよね!?それならば、あの魔王の正体は・・・いえ、もしそれが分からなくてもその霊格の高さはわかったはずです!」

 

確かに、俺にはあの龍の正体がつかめている。

前にラストエンブリオの件があった際に、軽く調べたのだ。

 

「アレは、魔王アジ=ダカーハは只の魔王ではありません!あれこそ、数多の神軍を退けた人類最終試練(ラストエンブリオ)ッ!十六夜さんであっても勝ち目は皆無です!それが分からないはずがないですよね!?」

 

・・・もう、淡々と語るのは無理だな。

 

「ああ、それくらい分かったさ!一目見て分からないはずがないだろう!」

「だったら、どうして、」

「でも、それくらいは十六夜も分かってた!勝てるはずがないと分かった上で、俺にお前を託したんだぞ!」

 

黒ウサギは俺から手を離し、頭を抱えてしゃがみこんだ。

 

『黒ウサギを連れて逃げろ!』『皆を頼んだ。』俺は確かに、アイツからそういわれた。

そうである以上、俺は皆を守らなくちゃならない。

だったら、嫌われ役も俺の役目だ。

 

「黒ウサギ、俺のことはどれだけ恨んでくれてもかまわない。でも、お願いだからあいつの思いを無駄にしないでくれ・・・」

 

偶然にも、外道である俺は嫌われ役になれている。おあつらえ向きだろう。

 

「・・・お兄さん・・・」

 

ヤシロちゃんは俺の手を握って首を横に振っている。

気付けば、他の三人も俺の近くに来ていた。優しいな、四人とも・・・気を抜いたら泣き出しちゃいそうだ。

 

「・・・ねえ一輝君。十六夜君は、その・・・」

「・・・死んだのを見たわけじゃない。もしかすると、逃げ切ったのかもしれない。・・・でも、あの重傷じゃ・・・」

 

飛鳥は俺が言わんとすることを理解してくれたらしく、「そう・・・」といってうつむいた。

 

「悪いんだが、正直こうしてる時間も惜しい。アルマ、何かあの龍を抑える方法はないか?」

 

そして、俺はアルマに近づき、小声でそう質問した。

アルマも俺に合わせてか、小声で耳打ちしてくれる。

 

『そうですね・・・元々、あのような魔王に対抗するためにおのれの霊格を開放して試練と化す神魔の秘奥・・・それが“主催者顕現”です。』

「なら、“主催者顕現”さえあれば、あの龍を倒すことも?」

『理屈上は。ですが、試練の食い合いになるわけですから、あの魔王に対抗しようと思えば、それこそ最強種クラスでなければ・・・』

「そうか・・・」

 

・・・なら、あれ(・・)を試してみるだけの価値はあるな。

 

「・・・兄様、何かするおつもりですか?」

「やっぱり、スレイブにはバレちゃうか・・・」

 

前に聞いたが、スレイブは俺の剣として契約したことにより、俺の感情を少し感じ取ることができるらしい。

 

「そのために、少しばかり意識を沈めるから、何かあったら起こしてくれるか?痛みを与えるか、何か精神的に動揺するようなことがあれば起きるから。」

「・・・分かりました。御武運を。」

 

そして、俺は意識を沈めて、檻の中へと繋いだ。

 

 

 

      ==============

 

 

 

さて、久しぶりに檻の中に来たな。

 

「本当に、久しぶりだのう・・・で、何のようじゃ?」

 

声が聞こえたので振り向くと、そこには案の定ぬらりひょんがいた。

 

「分かってることを聞くなよ・・・ちょっと力が必要でね。継承しに来たよ、鬼道の名を。」

「・・・そうか。では、場所を変えようか。継承の間へ。」

 

その瞬間、目の前に巨大な門が現れた。

 

「この中が継承の間だ。覚悟はよいか?」

「ああ。今の俺には力が必要なんだ。それに、いつまでも責任から逃げてはいられない。」

 

俺は、なんだかんだと言い訳をつけて正式に名を告ぐことを拒否してきた。

それによって生じる責任の重さに、恐怖していた。でも・・・

 

「であれば、わしからは何も言わん。白澤も来たようじゃし、いくか。」

「ああ、いこう。」

 

継承の際には、その当人が倒した中で最も霊格の高いものが付き添うことになっている。

俺は白澤を横に引き連れて、門をくぐった。

 

 

 

       ===================

 

 

 

「久しぶりだな、一輝。」

 

門に入った俺を出迎えてくれたのは、俺の父さん、鬼道星夜だった。

 

「なるほどね・・・継承する前に先代が死んだ際の措置ってのは、こういうことか。」

「ああ。歴代鬼道は死んだ際に魂の一部を檻に留め、子孫を見守り、名を継承する。ここは、継承とお前を見守るための空間だ。」

 

そして、さらに奥を見てみるとそこにはさらに多くの人々、恐らく、初代鬼道から父さん、第六十二代の鬼道がいるのだろう。

 

「見守るって・・・ここでは普段、外の様子でも流れてるのかよ。」

「ああ。お前を見守るように、映像が流れている。」

「プライバシーも何もあったもんじゃねえな。そこんところはどうなんだ?」

「これもまた、鬼道が背負うものだ。」

 

いやなもんを背負わせるな・・・まあ、文句を言っても仕方ないか。

 

「じゃあ、そろそろ本題に入ろう。俺は一刻も早く、十六夜や皆を助けたいんだ。」

「視ていたからな、分かってる。お前がここにいる間は外ではほとんど時間はたたんが、それでも、なのだろうな。」

 

父さんはそう言って、継承の間の中心まで移動する。

そこで手招きしてくるので、俺も父さんの前まで行く。

 

「さて、最後に確認だが、鬼道の名を継ぐということの意味、分かっているな?」

「ああ。人の道を外し、外道となり、鬼となる。その道にありしは人の栄光にあらず、民の侮蔑と、畏怖成り、だろ?」

「分かっているのなら、俺は止めん。始めようか。」

 

そんな無駄話をしている間に他の歴代鬼道も俺達を囲むように並び、横に自分が倒した最も格の高い存在が控えている。

 

「我、第六十二代目鬼道、鬼道星夜。今ここに、鬼道の名を継承せん。汝、これを受け入れるか。」

「我、寺西一輝。鬼道の血を継ぎし者とし、今ここに鬼道の名を継承す。汝、我に力を与えん。」

 

開始の言霊を唱えると、その場の全員の服装が男性はデザインの統一された和服、女性は巫女服へと変わる。

ただし、俺のもの以外は全て黒い。

 

「「「一族に受け継がれしは、忌むべき鬼の名。」」」

「「「一族が得しは、わずかの栄光と、多大な畏怖。」」」

「しかし、それが我らが名の象徴。道を踏み外しし、外道の象徴である。」

 

何人もの人が同時に言霊を唱え、それに俺が一人で返す。

 

「「「その名を継ぐことは、すなわち、汝も人を止めることである。」」」

「「「妖と契約し、その加護を得る、陰陽師にあらざる行為成り。」」」

「「「一族の歩みし道は、暗く染まり、一涙の光もなし。」」」

「だがしかし、我にはその道を進む覚悟あり。」

「「「我らには、その道を進みし義務がある。」」」

「「「我らには、その道を守りし義務がある。」」」

「「「我らには、その道を背負いし義務がある。」」」

「であれば、我もその一端を担おう。新たに道に踏み込み、わが身を染め上げよう。」

 

だんだんと、俺の和服も黒く染まっていく。

 

「「「汝、一族の業を背負う覚悟はあるか。」」」

「愚問成り。我、覚悟を持ってここに参上す。」

「「「汝、一族の責務を背負う覚悟はあるか。」」」

「愚問成り。我、覚悟を持ってここに参上す。」

 

そして、俺の和服が真っ黒に染まると、言霊を唱えるのは俺と父さんだけになった。

 

「我が名は一輝。一族の歩みし道を照らす者成り。」

「我が名は星夜。一族が歩みし道に、一時の輝きを与えるものなり。」

 

名の意味を唱え、継承は最後の一節に入る。

 

「汝、今ここに」

「我、今ここに」

 

 

「「大いなる鬼道の名を継承せん!」」

 

 

継承は終わり、俺の和服は完璧な漆黒に染まった。

黒よりも深い、無の色に。

 

「これで継承は終わりだ。」

「OK父さん。これで、皆を守る力が手に入った。」

 

次いつここに来るのか分からないし、少しくらいは話をしておこう。

 

「にしても、あそこまで継ぐことを拒否していた一輝が鬼道を継承するとは。」

「あれだって、本気で言ってたわけじゃねえよ。何かきっかけがあれば、いつでもこうなってた。」

 

これは間違いない。でなければ、とっくに陰陽師なんて止めてる。

 

「なんだか、オマエが継承したときと似たような流れじゃのう、星夜?」

「おとうさま・・・」

 

へえ、この人が俺のじいちゃんか。始めてみるな。

 

「確かオマエも、友を救うために継承を望んだのではなかったか?」

「言われてみれば、そうでしたね・・・懐かしいです。」

「へえ、父さんもだったんだ。」

 

まあ、意外ではない。何せ、片思いしてたころ母さんを助けるために命を賭けた人だ。

 

「それより、名を継いだもののみに知らせることがある。早く初代様のところに行くといい。」

「そんなことがあるんだ。じゃあ、そこに行く前に一つだけ言わせてくれ。」

「なんだ?」

 

さて、どうしても言いたかったけどいえなかったこと、今のうちに伝えるとしますか。

 

「俺をここまで育ててくれて、ありがとうございました。」

 

そう言って頭を下げ、何か言われる前にその場を去った。

後ろからしゃくりあげるような音が聞こえるけど、聞こえなかったことにして。

 

 

 

        ================

 

 

 

「どうもこんにちは、初代様。自己紹介とか、いる?」

「いや、別に必要ない。いっつも檻の中から見てたからな。」

 

初代様との挨拶は、こんな感じで終わった。

 

「で?俺に伝えることって?」

「まあ、それは見た方が早いだろうな。オレとぬうりひょんが契約した理由、鬼道が背負う仕事について。」

 

そう言いながら、初代様----確か、名前は示道(・・)だったはずだ----は継承の間を出て、檻のさらに奥へと向かって行く。

まあ、何かあるんだろうな、とは思っていた。ただの人が何の代償もなしに大妖怪と契約できるわけがない。

だが、初代は何も代償とせずに契約したと伝えられてるし、実際に俺も、代償なしで契約しているようなものだ。そこに何か事情がなくては話が合わない。

 

「この中で見れるって事は、何かしらの封印が契約なのか?」

「そうじゃ。あれをどうにかするには、ワシら異形の力だけでも、おんしら人間の力だけでも足りなかった。ゆえに、ワシはそいつの一族に力を与えるという契約で、その任を任せた。」

 

異形側でも、人間側でもない存在。それがキーワードか。

 

「ほら、着いたぞ。これが、契約の代償だ。」

「これが・・・?」

 

示道が指すところには、よく分からない像がぽつぽつと八個・・・いや、九個並んでいた。さらに、像をさらに置くと思われる場所が、数え切れないほどある。

 

「なんだ?まさか、像のコレクションが契約の代償だとでも言うのか?」

「その言い方は間違ってはいないが、正しくもないな。正確に言えば、この像の元を封印し、この場で完全に封印することだ。」

「像の元・・・?まさか、こいつらが元は生きて外の世界にいたとでも言うのか?」

「ああ、その通りじゃ。」

 

・・・ありえない、真っ先にそう思った。

そこに現されているものに、俺は心当たりがない。

確かに、俺は湖札のように豊富すぎる知識を持っているわけでもない。だが、陰陽師の中でも中の上くらいの知識量はある。

その知識を元に考えても、こんなものに覚えはない。

こんな・・・一体の像が一体に見えない、一の存在のはずなのに二つの存在に見えるものなど。

 

確かに、異形の存在である妖怪や魔物、霊獣に神は何でもありの、混ざった存在だが、こんな・・・言葉で表しきれないことなど・・・

 

「そうか・・・確かに、これは人間だけでも異形だけでもどうにかできないわけだ・・・」

「ああ。しかも、こいつらの一体一体が神何ぞとは比べ物にならない力を持ち、異形から見ても異形であるせいで記録されず、何の報酬も出ない。」

「なんつうタダ働きだよ・・・つり合わなさすぎんだろ・・・」

 

まあ、納得できなくはない。中には小指の爪ほどの大きさの像もあるが、封印されているにもかかわらずかなりの格の違いを感じさせられる。

 

「だが、別の形での利点もある。倒したものには封印の影響で、そのものの力が宿るのじゃ。」

「こんなんの力がただの人間に宿るのかよ・・・」

 

そんな人間、もうチートどころの騒ぎじゃない。

だが、その話が本当なら、その力を持つものが過去に九人いたことになる。

 

「じゃあ、それに成功した人間が過去に九人もいて、そいつらが皆死んだってのかよ。」

「まあ、力を得たもののうち、七人が死んだのは確かじゃ。」

「そいつらの内六人はこいつらの同属によって殺され、一人は寿命で死んだ。二度目の遭遇は、ほぼ例外なく死与えたものじゃ」

 

なるほど、確かにそれならば力を持つものが死んだことも理解できる。

それに、このことから遭遇率は低いことも分かった。一度会えば引かれる、というわけでもないらしい。

 

「だけど、それならあと二人はどうなるんだ?もう生き残ってるやつらなんて・・・」

 

いや、違う。

まだ・・・まだ二人だけ、生き残りがいる。

 

「そうだ・・・こいつは、おんしとおんしの妹によって封印された。それゆえ、姿が薄くなっているのだ。」

 

そうか・・・最初に気付かなかった姿のあいまいな像は、そこに半分しかいないからだったんだ。

だが、それでは計算が合わない。

 

「じゃあ、残りの一体はどうして・・・」

「それは、またおんしの妹もあわせて話べきじゃろうし、今は、最低限の話だけにしておこう。」

「ああ。いそいでいるんだろう?」

「そうだった・・・」

「それに、神成りを使えば分かることもある。どれ・・・来い、蚩尤。」

 

ぬらりひょんがそう言うと、この場に蚩尤が現れた。

なるほど、考えてみれば当たり前のことだ。ここは檻の中で、この檻の本当の意味での主はぬらりひょんなのだから。

 

「ほう・・・小僧、あの奥義を使うのか?」

「ああ。少しでも力が欲しいらな。」

「だが、今の小僧ならそうせずとも、あれ(・・)はつかえるのだろう?」

「使えるみたいだけど、これ(・・)は隠しておきたいからな。」

 

そう言って、俺は蚩尤に触れて言霊を唱える。

 

「我、今此処に大いなる神の力を希う(こいねがう)。我が血族の名は鬼道。鬼の名を持つ一族成り。故に我はわが身の丈を考えず、神にならんと欲す。汝、その大いなる力を我に貸し与えよ。」

 

言霊を唱えると、蚩尤の体が輝く霧となり、俺の体に同化していく。

そして、蚩尤の力が完全に俺のものと一体化すると、カチリ、と言う音が三回聞こえ、封じられていた記憶が戻った。

 

 

 

そこには、翠色に輝く、どこか禍々しい大鎌を振るう、かなり幼い・・・小学校に入ったかどうか、と言うころの自分がいた。そして、その視線の先には、黄金の洋弓を構える幼い湖札と、言葉で表現できないなにかがいた。

 

少し遡り、言葉で表現できない・・・だが、先ほどの記憶のものとは違う、何かと話している、地面に倒れた自分がいた。

 

少し遡り、湖札を背に隠して、一つ目の記憶にいた何かと対峙している自分がいた。

 

少し遡り、湖札と手を繋いで歩いている自分がいた。

 

そして、封じられていた中で最も古い記憶にたどり着き・・・そこには、泣いてうずくまっている湖札と、そこに手を差し伸べている自分がいた。

 

「大丈夫か?俺は鬼道一輝だ!困ってるなら助けるぞ!」

 

それは明らかに、初めて会うもの同士の挨拶だった。

 

 

 

「そっか・・・そういうことか。」

 

俺は意外にも、冷静だった。

かなり衝撃的な事実を突きつけられたのに、全然動揺していない。

 

「どうじゃ?少しは理解したか?」

「ああ。なんとなくだけど、理解したよ。そう言うことか・・・」

 

でも、今はそれどころじゃない。

 

「だけど、その辺りについて考えるのはまた後にしよう。ぬらりひょん、檻の中の妖怪、霊獣を全員呼んでくれるか?」

「別に構わんが、どうするのじゃ?」

「俺は今、できうる限り最善を尽くしたいからな。百鬼統合を使う。」

「はっはっは!神成りを使い、さらにそこまでするとは流石はオレの子孫だ!」

 

初代様が何か言っているが、ぬらりひょんは気にせずに全妖怪を呼ぶ。

 

「我、今此処に汝らに命ず。これは勅命である。我が望みしは汝らの力、恩恵、功績、その全てである。故に汝らは、我が身に宿り、その全てを明け渡さん。今ここに、我はこの奥義を発動する。その名は、百鬼統合也。」

 

言霊を唱え終わるとその場にいた妖怪、霊獣の全てが俺の中に入り、俺と同化する。

そして、俺の身にすべての妖怪の霊格(そんざい)、功績、恩恵が宿る。

 

「その奥義は、一輝のオリジナルだったな?」

「ああ。俺が望んだ力に対応した奥義の一つだ。」

 

そして、その場にいるのが俺と初代様だけになると、さすがに無視するわけにもいかないから、そうかえした。

 

「それだけの力を持っているなら、黒ウサギたちを任せても安心できるな。」

「・・・まて、その言い方だとまるであんたが黒ウサギと知り合いみたいじゃないか。」

「まさしくその通りだ。」

 

まさかの新事実だった。

 

「オレは一時期箱庭にいてな。そのころ、今のノーネームに所属していたんだ。」

「それってぬらりひょんと契約してから・・・じゃないよな。だとしたら、黒ウサギたちが俺の奥義や元の苗字に反応してるはずだし。」

「ああ、まだ苗字がなんの捻りもない高橋だったころだな。ギフトも、陰陽術しかなかった。」

「陰陽術ってことは、妖刀に式神、お札ってところか・・・それで何ができたんだ?」

「これでも、五十を超える魔王を倒し、二十六人の魔王を隷属させたもんだぞ!陰陽術サブに体術メインで!」

 

初代様は予想以上に強かった。

そんな人が外道・陰陽術まで使うとか・・・どうなるか考えたくもないな。

 

「まあ、まだ黒ウサギはオレたちが箱庭の外にいったことは知らないみたいだし、まだばれないようにしておいてくれ。」

「だったら話すんじゃねえよ・・・」

「悪い悪い!俺の子孫が箱庭に行くことになったときのために、ぬらりひょんと契約したからな。予想以上に強いやつが行ってくれて嬉しかったんだよ!」

「このご先祖様は・・・そういや、アンタが隷属させた魔王はどうなったんだ?」

「あー・・・一人を除いてみんなどこかにいるはずだ。」

 

なんともまあ、あいまいな言い方だった。

 

「あんたが俺がいた世界に追い出されたってことは、魔王とのゲームに負けて、ってことだよな?」

「そうだな・・・アレは、なんともタイミングが悪かった。あいつらが全員揃っていれば、もう少しまともなゲームができたかもしれなかったんだが・・・」

 

示道は、本当に残念そうにそう話す。

そして、コイツは勝てる(・・・)ではなく、まとも(・・・)と言った。

俺たちが倒そうとしている魔王は、それほどの存在だと言うことだ。

全盛期のノーネーム、示道一人でも二十六人もの元魔王を従えていたコミュニティですら、勝てる可能性は、低かった。

 

「まあ、今更そんな後悔をしても遅いんだがな。一人だけ元の世界につれて帰ったやつは、神社にしまってあるぞ。バックル、見たことないか?」

「あったな・・・今は俺の倉庫の中にあるぞ。」

「じゃあ、もし他のやつらも確保できたら一緒に出してやってくれ。」

「了解。じゃあ、そいつらはどこに?」

「それは、俺も知らん。まあ皆おまえのメイドたちにも負けないくら可愛いから、楽しみにしてろ。」

「もういいや・・・じゃあ、俺はもう行くぞ。まずは皆を助けないと。」

「おう、行って来い!黒ウサギたちを頼んだ!」

 

そして、俺は檻を出た。

 

 

 

         ==============

 

 

 

「ですから、あれほどの魔王を抑えるには“主催者顕現”が必要になります。」

「だったら、それは俺が引き受けるよ。」

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

俺がそう答えると、その場にいた全員が驚いたように俺を見た。

まあ、檻から出た瞬間に奥義が発動したみたいだし、一瞬のうちに霊格が異常なほど上がってて、服装も真っ黒な和服になってたら、普通は驚くだろう。

でも、わざわざそれに構ってられるほどの余裕はない。

 

「兄様、もう大丈夫なのですか?」

「うん、ありがとうスレイブ。さて・・・ヤシロちゃん、これ。」

「?お兄さん、これ何?」

 

俺が差し出した小さなナイフを、ヤシロちゃんは首をかしげながらも受け取ってくれた。

そして、それはヤシロちゃんの体に吸い込まれて(・・・・・・)いった。

 

「え、あれ、この感じ・・・霊格が、上がってる?」

「今渡したのは神格だからな。魔王だったころならともかく、今のヤシロちゃんなら霊格があがって当然だよ。」

「神格!?一輝さん、今神格を与えたと言いましたか!!?」

「それは人間にできることではありません。あなたは一体・・・」

「俺は人間だよ。まあ、今は人間であり、妖怪であり、霊獣であり、そして神霊でもあるんだけどな。」

 

全員が絶句するが、俺は気にせずに話を続ける。

 

「じゃあ、俺は“主催者顕現”を使って、最低限でも時間を稼ぐから、このメンバーへの指示は頼んだぞ、アルマ。音央と鳴央も別行動で。今の俺は、本気でヤバイから。」

 

一方的に指示を出すと、俺は皆から少し距離をとり、背後で炎を上げる。

 

「あ、そうだ。もしも俺が魔王に落ちたら、飛鳥に耀・・・それと、十六夜の三人で俺をぶん殴って“ノーネーム”につれもどしてくれ。鳴央に音央、ヤシロちゃんは俺に隷属してたりするから、どうゲームに影響するか分からん。」

「一輝・・・何する気なの?」

「別に・・・昔一度やったみたいに、感情に任せてみようかな、とね。スレイブはどうする?」

 

あんまり俺といっしょに来るのがいいとは思えない。

そう思っての提案だったのだが・・・

 

「愚問です。私は貴方の剣。常に貴方とともにある。そう何度も申したつもりですが?」

「さっきも言ったけど、俺は魔王に落ちるかもしれない。それでもいいのか?」

「それこそ愚問です。・・・私は、ここに誓います。」

 

そう言いながら、スレイブは俺の前まで来てひざまづき、右手を差し出してくる。

 

「私は貴方とともにあると誓った。例えその道が王道であれ覇道であれ、正義の道であれ悪の道であれ、魔王の道であれ滅びの道であれ、私はともに進みましょう。」

「ははは・・・ありがとう。じゃあ俺も、破滅だけはさせない、そう誓うよ。」

 

俺はそう言いながらスレイブの手を取り、剣の姿になったところで抜剣する。

 

そして、すべての準備が整ったところで俺は炎の勢いと規模を上げていく。

ああ、俺がこれだけの怒りを抱いて、冷静でいられるのが不思議だ。いや、スレイブのおかげでもあるんだろうな。

でも、間違いなく本気でキレてる。もう二度と、大切な家族を、仲間を失わないと決めた俺が、こんな状況を作ったやつに対して。そして、覚悟の足りていなかった過去の自分に対して、だ。

そして、俺の怒りに合わせて激しくなっていくそれを空へと上らせていく。

 

「ゴメン皆・・・」

 

そして、俺は元の世界にいた頃。記憶が封印されてからずっと、殺女に渇を入れられるまで使っていた、作った、無理をした笑みを浮かべ、

 

「ちょっと、無茶してくる。」

 

そう、言葉を向けた。

 

「「一輝!」」

「「一輝さん!」」

「一輝君!」

「お兄さん!」

『一輝殿!』

 

そして、業火をそのまま弾けさせ、火の粉の一つ一つを輝く“契約書類”にし、あたり一体に降り注がせる。

 

 

 

===========

 

 

 

私は、殿下たちとともに深い森の中にいた。

とりあえず私の戦果は認められたらしい。

魔王すら一人で圧倒できる兄さん、そして元魔王に、神話の魔剣。

ティターニアに神隠しまで一人で押さえ込んだんだから、文句を言われる筋合いはない。

誰も彼もが、成長すれば主催者権限を手に入れられる存在・・・それこそ、兄さんはあの場で使うことも出来たんだから。

 

「・・・あれは・・・」

 

そんな状態で兄さんのことを考えていたら、視界に入るものがあった。

 

「なんでしょうね、アレは・・・火の粉?」

 

そう、火の粉。

だけど、それは降りながら姿を変え・・・一つ一つが、輝く契約書類になる。

 

「あ、あれは・・・」

「ちょっと、湖札さん!?」

 

リンの制止の声を無視して風をまとって飛び、その一枚を手にして地上に戻る。

内容に目を通して・・・無意識のうちに、兄さんと戦った方向に飛び出そうとして、

 

「湖札さん!」

 

リンの声で、正気を取り戻す。

そうだ・・・ここには、マクスウェルもいる。

迂闊な行動は、出来ない。

 

「どうしたんですか、湖札さん・・・そんなに慌てて」

「・・・これ」

 

私は契約書類を・・・兄さんの名前で開催されたギフトゲームの契約書類を渡して、天を見上げる。

 

 

「こんなギフトゲーム・・・何がしたいの、兄さん」

 

 

 

     ==============

 

 

 

『ギフトゲーム名“神明裁判”

 

   ・参加者側プレイヤー一覧

     ゲームマスターが今裁くべきだと認識する悪全て(常時変動)。

 

   ・主催者側プレイヤー一覧

     ゲームマスターが裁くものと認識するもの全て(常時変動)。

 

 

   ・主催者側 勝利条件

     ・全ての参加者の殺害

 

   ・参加者側 勝利条件

     ・ゲームマスター、鬼道一輝の殺害。

     ・ゲームマスター、蚩尤の殺害。

 

 

   ・備考

     このゲームは、ゲームマスターが蚩尤の主催者権限を失うと同時に、勝敗をつけず、強制終了するものとする。

     参加者側プレイヤーは、ゲームマスターが定める範囲(常時変動。ただし、縮小することはない)の外に出ることを禁ず。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りとホストマスターの名の下に、勝者が絶対的正義であることを、ここに宣言します。

             “鬼道一輝(しゆう)”印』

 

 

「さあ始めようか。絶対悪(あく)外道(あく)による、神々の裁判を!」

 

そして、すぐそばの草むらを睨みつけ・・・そこにいたアジ=ダカーハの分身体三体を作り出した剣で貫き、その命を奪った。




こんな感じになりました。
いや~、ようやく本編を再開できましたよ。
とりあえず、最新刊のところまでは進もうと思います。
あの感じですと、そこまではやっても問題なさそうですし。

再開できる日をどれだけ待ったことか・・・いやもうホント。
でも、これでようやく本編再開できました!
そして、一輝に対してやりたかったことも出来ました!
一輝の主催者権限の発動、それに一輝の二回目のパワーアップ!
この話を書くのを、どれだけ待ち望んだことか・・・
まあ、そんな変なテンションだったこともあってこの文字量なのですが。
元々は、平均が三千文字くらいだし、再開したときにはその三倍は書こうかな~、とか考えていたんですよ。
で、実際にその場面に直面してみたら・・・『一万三千二百六十三文字』でしたよ。
その場のテンション、って怖いんですねぇ・・・

とりあえず、今月は『問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~』と残り二つの問題児シリーズ原作、『箱庭に流れる旋律』『検索失敗の異世界録』をメインに更新していこうと思います。


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