問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~ 作:biwanosin
妹の日にあやかって投稿したのであるな。湖札の過去編である。
・・・コラボは、もう少し待って・・・我慢できなかったの・・・
「う~ん、最近こういうの多いなぁ・・・発情期なのかな?」
湖札が箱庭に来るよりも前の、とある時期の話。実力を評価され、かつ後継者以外、つまり長男長女以外が特別に国からの全面援助を受け世界中を好きに旅をして修行する制度。陰陽術師や退魔師としての才能だけでなく勉強面でも大きな才能が求められるその制度をフルに使って長期旅行を楽しみながら修行をしていた時期の話だ。
このころはまだ十三のころで、それに対してと言うのはどうかと思うのだが、湖札はそこそこの頻度でナンパを受けていたのだ。言ってしまえば人間以外の種族もヒトとして暮らしているのだから年齢的な概念がずれていることも当然ある。だが、そうと分かっていても湖札視点で見てみれば嫌になっても仕方ないだろう。そして、それがピークに達したからなのだろうか。ふと、彼女はこんなことを考えた。
「あ、そうだ。ド砂漠に行けば人いないよね!」
考えてしまったのだ、こんなぶっ飛んだことを。というか頭おかしいんじゃねえかな、ということを。
普通の人物であれば、この時点でかなり多くの障害があるしそのためにやめる人物がほとんどだろう。人がいない地域であるということはつまりそれだけいまだに敵対する異形がいるということであるし、移動するための費用もかかる。そもそも人間が普通に生きていられる環境ではない。というか生きていくために必要な荷物は多すぎるレベルだ。夜とか凍え死ねるし。なのだが・・・
「異形はまあ、いざとなれば死ぬ気で矢作って撃てばなんとかなるよね!」
こうして一つ目の障害はぶっ壊れた。
「お金についても日本が全面負担してくれるし、そもそも旅の間にかなり殺したからたくさんある!」
二つ目の障害は、そもそも障害でもなんでもなかった。
「荷物は一切問題なし!」
三つめの障害もまた、空間倉庫のせいで障害でもなんでもなかった。
つまりまあ、ようするに、だ。これらの一般的に障害とされているものはその全てが何でもなくなってしまったし、そもそもマジで何でもないし、で。彼女はそこへと向かうことに決めたのだ。ナンパ避けのために。ナンパ避けのために。
やはり、彼女は立派に一輝の妹である。
で、マジで即断即決してそのまま大量の水と寒さをしのげるだけのかなりしっかりとしたテント、大量の食糧、その他諸々必要になるものを確保し空間倉庫に放り込み、その身一つで飛行機に乗り込んで、来ましたでっかい砂漠。気軽にいけちゃうとか、砂漠も身近ニナッタナー。
「うわあっつ。やめとけばよかった・・・」
殴りたい、この子。
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「ふぅ、やっぱり異形はちょっと強めだな~。自然発生してすぐじゃないし、それなりに死んだ時より成長してるのかな?」
と、あの後。クッソ暑いしそこはストレスだけどさすがに何もしないで帰ると国がうるさいから、という理由でひとまず砂漠を一、二週間ほど練り歩くことに決めた湖札。水行符を体に貼りつけて少し呪力を流して自分の周りの温度を下げることで暑さ避けを、薄く結界を張ることで日光避けを、麦わら帽子をかぶることで眩しさ避けを行い、麦わら帽子ならと白ワンピを着て歩き回っている。ついでに出会った異形とバトルをして、普段に比べたら強かったためにちょっと満足していたり。
その魂は自動的に湖札の中に封印され、残った死体は火行符を貼りつけて一気に燃やし尽くす。
「よし、これで全部かな。これだけ派手に殺せばしばらくは来ないだろうし・・・お昼ご飯にしよーっと」
つい先ほどまで大量の死体を積み上げていたとは思えない気軽さで空間倉庫を開け、分厚すぎるシートを地面に敷いて倉庫の中から食料を取り出す。最終的には日持ちするものを食べていくことになるが、まだ初日。普通の食事にありつけるというわけだ。
「さ、いっただっきまー・・・うん?」
と、手を合わせて今まさに食べだそうとした瞬間。分厚いベーコンが用いられたBLTサンドの上にポツン、と水滴が落ちてきた。
「・・・砂漠で、水滴・・・?というか、雨?」
当然のことだが、別に砂漠で雨が降らないというわけではない。むしろ思いっきり降って流れに呑まれて溺死する例もあるほどだ。だがまあ、砂漠の定義的にもそれは少ないものだし、大丈夫かなーなんて油断していると・・・
「あ、ちょ、うわ!?」
ザ・土砂降りである。今まさにお昼ご飯と言うタイミングで降りまくった雨。BLTサンドはもうだめになってしまったし、しかも運の悪いことに傘などの雨具は先日ダメにしてしまったばかり。まさか砂漠で雨にあうなんていう運の悪い目に会うとは思っていなかったために買いなおしてもおらず、まあ、つまり・・・
「雨のバカァーーーーーーーーーーーーー!」
思いっきり雨に降られながら、彼女は全力で走り出した。そんな砂漠で走ったところで何かあるとも思えないのだが・・・幸運なことに、すぐそばに一つの神殿が存在する。
まあ神殿とか言うくらいだし、基本立ち入り禁止ってのが言うまでもない常識なんだけど・・・そんなことを気にするようでは、一輝の妹とか名乗れないのである。何のためらいもなく入り口にかけられていた封印をぶち壊し、中に入って雨宿りを開始する。
「あー、もー・・・せっかくの帽子にワンピがぁ・・・着替えないと・・・」
とにかく逃げこんでから、彼女は倉庫からタオルを取り出してふきつつ着替えを引っ張り出す。こういう時お兄ちゃんみたいに倉庫が複数あると分けて入れられるのになーとか考えながら目的のものを引っ張り出して、ひとまず脱ぐ。まだ上の下着はつけていないためにパンツ一枚になって、そこもグッショリになっているのを見てそれも脱ぐ。
まとめて放ってから水行符を取り出して一通り体を流して、体を拭いて水気を取っていく。
「・・・今更だけど、ここ誰かいたりしないよね?入り口結構厳重に封印されてたし、誰かいた形跡もないから大丈夫だとは思うんだけど・・・」
自分が全裸でいるという不安感からか、ふとそんなことを考えてしまう。一度浮かんだ不安感はそうそう拭えるものではないのだが、かといってすぐに分ることでもない。さてどうしたものかと考えて・・・とりあえず、早く着替えることにした。
髪はいったん放置して、下着をつけ、いざ服を着ようとしたところで・・・パキン、と。何かが割れるような乾いた音が。
「・・・うん?」
「お、なんか半裸の女がいるぞ」
「目が覚めたと思ったらいるな」
「盗賊的にはありがたい。ヤるか」
順番に、ワニに乗って手に猛禽を止まらせた老人、ユニコーン、蛇を首に回した青年、と言った見た目をした三人組。ぱっと見では二人目とか人間の味方をしてくれそうなものなのだが、そうであればこんな発言は生まれていない。
「ふむ、まあアリだな。幼くはあるが」
「ならさっそくだけど人間の姿になろうかな」
「よし、やるかのう。あ、終わったらこやつらの餌にしよう」
と、そんなことを言いながらユニコーンがショタい男の子の姿になり、三人そろってゲスい笑みを浮かべている。そんな視線を向けられ、今更ながら人間と比べればはるか上位に存在する気配、そもそもの存在としての格の高さを隠そうともしない、全てを畏怖させんとするその気配の前で・・・怖いほど冷静に、動きやすいジーンズをはき、ラフなTシャツを着て、靴下と靴を履く。抵抗があることを面白がっているのかそんな様子を手を出さずに見ている三人だが、湖札はそんな三人のことを見もしないで倉庫の中に手を突っ込み、なじみのあるものを取り出す。
それは、刀であった。湖札の慎重と比べればまだまだ不釣り合いで、チグハグになってしまうそれ。鞘ごとそれをベルトに刺して、それから呪符のホルスターを取り出して太ももに括りつける。これにて準備完了。
そしてそれから、それまで伏せていた
「「「・・・あれ、これ油断したら死ぬやつじゃね?」」」
「死ねええええええええええええええええええええええ!というか死んでえええええええええええええええ!」
これが、後に湖札が一輝との決戦前にほんの少しだけ語ったお話の始まり。あまりの気迫に相対した三体の悪魔がそろって一瞬ひるんだほどのその戦い。普通に敵三体が強かったために途中で恥ずかしさを一度忘れ全力に全力をかさね、最終的に言霊の弓で射抜いた戦いの始まりである。
・・・なお、後日談というか何と言うか、なのだが。
この後湖札は三体をぶっ殺したのだがあまりに全力であったために、そしてそもそも入り口の封印を力技でぶち壊したために神殿の管理者が急行。勝手に入ったこととかをしこたま怒られたのち、償いとして提示された内容が『バアル討伐の手伝い』。今回の一件の大元である大雨の原因が誰であるのかを知った湖札が参加を即答し、大規模討伐体に参加したのは、また別の話なのである。
妹大好きな自分が、妹の日に何もしないなんて、そんなわけがないよね!