問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~   作:biwanosin

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はい、喧嘩第二話目です。まだこの話は平和な方です。
・・・うん、まだ平和です。



では、本編へどうぞ!


兄妹喧嘩 ②

「さて、と・・・準備運動はこれくらいでいいか?」

「まあ、うん。そうだね。・・・これくらいでいいんじゃないか、な!」

 

鍔迫り合いをしていた二人はその言葉と同時に後ろへ飛び、湖札は袖から大量の白い霧を出してそれを鬼の群れへと変える。

一輝はそれを確認すると、蚩尤の持つ鍛冶の力を用いて次々と剣を作り出し、それを鬼に向けて放つ。

鬼の軍勢と剣の嵐がぶつかり合い、互いに互いの数を減らしていく中、双方の将はその様子に目もくれず互いを見ている。いや、むしろ一瞬でも目を離せば敗北するがために目を離すことができないのかもしれない。

その状態がしばらく続き、鬼の軍勢が剣の嵐に押され始めてきたところで、湖札が動いた。

 

「式神武装、“(きゅう)”」

 

手持ちの式神すべてを用いて和弓を作り出し、遠距離から次々と矢を放つ。放たれた矢は本来矢が出すようなものではないスピードで鬼や剣にあたることなく一輝の元まで飛んだが、一輝はなんてことはないかのように剣で切り落とす。

そのまま湖札が放った矢を一輝がすべて切り落とすというやり取りが繰り広げられたが、しびれを切らせた一輝がマシンガンを作り出し、それを構えた。

この状況でただのマシンガンかと侮るなかれ。仮にもこれは一柱の鍛冶神の力で造られた伸造の武具。威力一つとっても既存の全てより高く、逆に反動は既存の全てより低い。そして弾は作り出す限り無限という、キチガイスペックである。

 そんな無茶苦茶な代物を一輝は構え、大雑把な狙いだけを付けて引き金を引く。もちろんそんな状態で放たれた弾は全てが湖札に届いたわけではないが、数を打てばその何割かは狙った場所にあたる。当たらなかった弾も、鬼にあたりそれを消し去っているため、無駄にはならない。

一輝はそうして放ちまくった弾が湖札まで届きつつも、しかしその全てが湖札がギフトカードより取り出した刀によって切り落とされているのを見て・・・現状を維持しつつ、湖札に向けて走り出した。

 

「ちょ、マシンガン撃ちながら走るってなにそれ!?」

「距離詰めるにはそれしかないだろ!ってか、逃げんな!」

「この状況で!?」

 

一輝が近づくのに対して、湖札は刀で弾をはじきながら後ろに跳ぶようにしてはなれる。

その中で湖札は鬼を作り出したりもしているのだが、その全ては数の暴力によってあえなく散った。

 

「ってか、距離詰めねえと俺が不利なままなんだよ!」

「だからこそ距離をとってるの!兄さん剣術と体術以外は、よくて達人レベルだし!」

「お前だって剣は俺と変わらねえだろ!」

「だからってわざわざ距離を詰めさせるか!」

 

今の会話に対して違和感を感じるかもしれないが、この二人は一切ふざけていない。達人クラス、というのは人の中では超上位であるが故に・・・所詮は、人の領域である、と。だからこそ、可能な限り相手を人の領域で押しとどめ、自分はその外側にまで到達した技術を用いると、この二人の会話はそういうことだ。

 

「それにしても、やっぱり鍛冶神の力は厄介だなぁ・・・応用がきくし」

「まあ、確かにそれはあるな、うん」

「だから・・・やっぱりまずは、それを奪おう」

 

湖札はそういうと和弓を構え、正確に狙いをつけて・・・たった一本の矢で、マシンガンを破壊した。

 

「・・・マジか」

 

まさか一本だけで完全に破壊されるとは思っていなかったのか少しの間一輝の行動が停止したが、鬼が近づいているのに気付いてすぐに立て直す。

再び蚩尤の力を用いて二振りの短め剣を作り、それを両手に握って鬼を切る。湖札がいる限り無限に湧いて出るそれを相手し続けるのはバカらしい話なので、自分の周りからいなくなったところで、

 

「ああ、八面の君よ。八の首を持ち、その猛威を振るった蛇の王よ。祖は人々に忘れられてもなお、その力衰えることなかれ!」

 

それは、とある蛇を召還する言霊。ヤマタノオロチの原型でありながら、しかし人々に忘れ去られてしまった、蛇の言霊。

 

「今ここに顕現せよ、八面王!」

 

名の通り、八つの顔を持つ大蛇の化け物。一輝は自ら召喚したそれに乗り、

 

「鬼どもを蹴散らせ、食い散らせ!」

 

とても単純な、しかし効果的な命令を下す。そして、八面王もまたその命令に従って鬼をその巨体で蹴散らしつつ、食らっていく。そうして大量の鬼が消えていく中、湖札はさらに距離をとって鬼を作り出しつつ・・・言霊の矢を構えた。

 

「軍神の一柱、鍛冶神蚩尤。それは中国神話に登場する、牛の頭と多六本の腕を持つ姿で語られる神の名です」

「あ、ヤベ」

 

湖札が言霊を宿すのを聞いた一輝はあせるが、それで八面王の動きが速くなるわけではない。さてどうしたものかと考えた結果・・・降らせることのできる範囲に剣の雨を降らせる。

八面王には、鱗の硬さゆえに刺さることがない。しかし鬼には、十分に刺さる。一輝はその方法で少しでも急ごうとしているのだ。だが、

 

「我が百鬼より来たれ、アオアンドン」

 

湖札がそれを見てもなお、鬼だけで済ませるはずもない。湖札は何のためらいもなく、今自分が出すことのできる最大の戦力を投下した。

 

「汝は語られることで顕現する。百の物語を媒介として、新たなる一となったもの。故に我は、百の中の一を求める。・・・ヤマタノオロチ!」

 

湖札の言霊に従い、鬼女は八つ首の蛇となった。そしてそのまま、八面王へと向かう。

伝承としては互角になる二匹の蛇。それらはそのまま互いを食い千切らんと襲い掛かり、結果として一輝の行動は阻害される。

一輝はその状況からどうにか抜け出せないかと考えを巡らせるが・・・

 

「彼の神の周りは霧が立ち込めた、全ての兵器を作り出したなど多くの逸話を持つこの神は、六人の兄弟と共に天下を横行し、また(あやかし)を従えていた、悪側の存在でした」

 

当然ながら、湖札はそんなこと気にもしないで言霊を矢に込めていく。言霊を込められている矢はより一層輝きを増し、言霊の対象である一輝はその輝きに寒気を覚えた。

 

「そしてそこまでの力を持っていたためか、その神は日本へと輸入・・・日本の神に取り込まれます」

「・・・うん?」

 

一輝はここで違和感を覚えた。このまま中国神話の蚩尤を語っていくのかと思えば、急にベクトルが変わったのだ。当然といえば当然かもしれない。

 

「その神の名は、兵主神(ひょうすべのかみ)。名前こそ変わり日本の神社にも祀られるようになりましたが、この神の性質は、ほぼ完全に蚩尤のものを受け継いでいます」

 

湖札はここで、矢を放った。放たれた矢は当然のように一輝の元まで向かい、その胸を貫く。攻撃のための矢ではないそれは一輝を傷つけることはなかったが・・・

 

「・・・書き換えとか、そんなんありかよ」

「実際、打ち消すよりはこっちのほうが楽なんだよね。・・・まあ、この方法じゃ殺すことはできないし、数日もすれば戻っちゃうんだけど」

 

現時点ではそこまでの不便はないので驚いているだけの一輝だが、湖札が再び弓を引き、矢をつがえたことで顔をしかめる。まだ、終わらなかった。

 

「一度で消さなかったってことは・・・なるほど、それが狙いか」

「バレちゃった?」

「ああ。さすがにそれはこまるから、止めたいんだけど」

「止めさせないよ、絶対に。・・・兵主神は、そうして日本で新たに信仰を集める」

 

湖札が何を狙っているのかを理解した一輝だが、しかし現状は悪化する一方だ今この場は、完全に湖札の優位にある。

 

「・・・オイ、八面王。どうにかして全力で取っ組み合え」

 

一輝はもうそこまで余裕がないことを悟り、八面王に対して簡潔な命令を出した。それができるかどうかも怪しく、できたとしてもうまくいくかはわからない賭けであるが、このままやられないためにはこれしかない。

 

「神という存在に対して寛容である日本だからこそ、他の国の神も受け入れられた。しかし、それも永遠に続いたわけではない。歴史の中で日本には、外国を徹底的に排除しようとする時期が存在する」

「・・・まだだ」

 

新たな言霊が矢に込められていく中、一輝はじっとその時を待つ。その足元の八面王は、ヤマタノオロチの首の一つに噛みつき、自らの首の一つがヤマタノオロチに噛みつかれている。距離も縮まったまま離れないので、互いに互いを押しつぶさんとしている体勢だ。

 

「その時期に排除の対象となったものには、他国から輸入した神も含まれた。多くの神がその存在を消され、あるいは書き換えられていく中・・・兵主神もまた、その対象となる」

「そのまま抑えてろ、八面王!」

 

湖札の言霊がまとめに入ってきたこの時、一輝は動いた。互いに互いの首を抑え、そして押し負けまいと踏ん張っている八面王とヤマタノオロチ。相手に負けないために全力を使わざるを得ない二匹の蛇の上を、一輝は走る。この状況では、ヤマタノオロチは一輝を足止めすることができない。

まだ消えていない鍛冶の力で刀を一振り作り出すと、横に切り払う構えをとり、さらに速度を上げていく。

 

「そうして変化の対象となってしまった神は、その身をある妖怪へと落とすこととなる。そもそも鍛冶の力というのは山にすむ天狗や川にすむ河童という妖怪が持つとされていたため・・・彼が持つこととなったのも、これらの妖怪の名」

「一閃!」

 

どうにか湖札の元まで間に合った一輝はその勢いのまま刀を払うが、湖札は異様なほどに体をそらせてそれを回避。そして、

 

「その妖怪の名はひょうすべ。後に河童が秋になると山に登るため変化する姿とされた、河童を茶色にし、体毛をもった姿の、ただの妖怪!」

 

そして湖札の矢は、外すことのない至近距離から放たれた。

 




こんな感じになりました。さて、次回辺りからちょっと物騒になるのかな?



では、感想、意見、誤字脱字など待ってます。cafeでまったりとしているbiwanoshinでした。
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