問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~ 作:biwanosin
では、本編へどうぞ!
突然、異世界のノーネームの人間を名乗って本拠に侵入し呑気に茶を飲んでいた一輝。そしてそれに付き従う形で本拠に侵入し、和菓子にはまりにはまったアジ君こと、アジ=ダカーハ。
そんなもうわけのわからない二人が突然現れてしまったコミュニティ“百鬼夜行”の本拠では、今・・・
「いよっしゃー、宴会じゃー!呑むぞテメエら!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!』
盛大な宴会が開かれていた。
・・・いや、うん。もちろんわかっている。補足をしておこう。
数多く存在している“箱庭”の世界。その中の一つである今回一輝が訪れた世界には、“百鬼夜行”という大妖怪ぬらりひょんの収める傭兵コミュニティが存在する。そんなコミュニティなのだが、
『実害が出るまでは放置。しかし、手を出して来たり害となったのなら潰す』という考えを全員が共有しているがため、今回一輝とアジ君が勝手に本拠の中にいたことに対して何か言ったものもいなかった。それどころか、手練れである彼らがその侵入に気付けなかったことと見た目ただの人間のガキである一輝が人類最終試練、絶対悪“アジ=ダカーハ”を討伐し従わせているという話がコミュニティ中に広まるや否や、大騒ぎムードに。
総大将の妻でもあるサトリがこの話を肯定したがために疑う者もおらず、あとは大騒ぎが好きな連中によって宴会が開かれた、という流れだ。当然ながら、二日連続の宴会であることを気にする者はいない。
酒は酌み交わされ、大量に作られた料理は運び込まれては消え、運び込まれては消えを繰り返す。時折放たれる妖術はご愛嬌。
「いやー、それにしても賑やかなコミュニティだな。どんちゃん騒ぎもここまで来るといっそ感心だ」
「そう言いながらこの空気になじんでるお前も中々だけどな」
俺の勝ち、と怪力自慢の妖怪と腕相撲をして圧勝した一輝に、悟は声をかけた。声をかけられた一輝はそちらを向き、見もせずにまた一人敗者に変える。
「おう、悟。いいコミュニティだな、ここは」
「行く場所がなかったり追い出されたり暴れるのが好きだったり、そんなやつらの集まりだけどな」
「なるほど、俺がなじめるわけだ」
一輝はそう言うと最後の一人に勝利して、腕をプラプラさせながら飲み物を口に含む。悟はその中に注がれているものを見て、
「なんでジュースなんて飲んでんだ?お前。こんなに酒があるってのに」
「どうしてもだめなんだよな、酒。後々面倒にしかならない酔い方するから」
『次は飲み比べで勝負だ!』
飽きもせず一輝に勝負を挑む妖怪たちを見て悟は軽いため息をつくが、
「いいのか?俺、酔うと
「はいお前ら解散かいさーん。さすがにここでアジ=ダカーハの力を使われちゃたまったもんじゃねえ」
掌返しの早いこと早いこと。とはいえ、さすがにそれがシャレにならないことはわかっているのか妖怪たちも一瞬停止してから再び騒ぎ始める。
「ったく、酒に弱いのかと思ったら迷惑なもんだな」
「そういわれてもなぁ。ってか、事実弱いぞ?」
「今あなたが言っている『弱い』はどれだけ周りに被害を出すものなのかしら?」
きっぱりとそう言ったのはこんな時でも悟の腕に抱かれている、座敷童(?)の紅葉だ。憑りついている悟に対してのキツイ物言いやら天運食ったりやら、なんとも座敷童らしくないと自分は思っていたり。
「ここら一体が平らになる程度じゃないか?」
「それは程度とは言わないニャ」
続いて呆れながら近づいてきたのは、猫又の夏歩。夏の散歩中に出会ったから夏歩という、なんだか適当感にあふれる名づけ方をされた少女である。
「程度だろ。アイツが本気で暴れたら下層の生物が全部消えるんだぞ?」
「ついでに、相方の方も無茶苦茶出来るしな・・・」
一輝と悟がそう言ってみる先では、二人の人(?)物がどんどん酒を消費し、料理を喰らいながら語り合っている。
一人は、死体のように白い肌に青みを帯びた
もう一人は、褐色の肌にオールバックにまとめられた黒髪。今このときは優しさを持っている切れ長の鋭さを持つ目は、一度睨み付けたのなら問答無用で恐怖に包むが出来るだろう。そんな貌で長身の彼は執事服を纏っており、それがより一層彼に知的な印象を持たせる。一輝の従える者の中で誰が最強かと問われたのなら、十人中八人は彼であると答えるであろう、元“絶対悪”の
・・・互いの最強戦力が酒を飲みかわしながら談笑している。蛍が軽く絡みに行き、アジさんがそれにある程度対応しつつも本気では対応しないといういい感じの酒の飲み方をしている。なんだか穏やかそうなのに、たった二人なのに、料理と酒の減り方が他のテーブルより圧倒的に早い。
「・・・若、何ですかあのテーブルは」
「ウチの感覚じゃなくても、だいぶおかしくない~?」
そちらを見て絶句しているのは、吹雪と粉雪。双子の雪女である。見分ける方法は、右目を隠しているのが吹雪で、左目を隠しているのが粉雪。そっくりなのも困ったものである。
「あー・・・まあ、暴れることはないだろうし気にしなくていいだろ、蛍は。そっちのやつは大丈夫なのか?」
「問題ない問題ない。なにせアジさんは最強種だからな。酒で酔うことはねえよ。もしそうなったとしても強制的に俺の中に戻せばいいんだし」
「・・・なあ、それどうなってるんだ?」
ふと、悟が気になったことを一輝に尋ねる。そうじゃなくともアジ=ダカーハが従っているのだから、気になることは多いだろう。
「それ、ってーと・・・こんな感じの?」
一輝は確認のためにギフトを発動し、檻の中から強すぎず、この状況で騒ぎ楽しめそうな妖怪を召還する。そいつらは状況を見ると、そのままどんちゃん騒ぎに合流していった。
「そう、それ。妖怪を召還して使役するとか、さっきはぬらりひょんの力が宿った帽子つかってたし、なんなんだ?」
「と、言われてもなー・・・説明めんどうだから、ざっくりでいいか?」
「ああ、問題ない」
「先祖がぬらりひょんと契約して、殺したり契約したりした妖怪を封印して使役できるようになった」
本当にざっくりだが、十分な説明になっている。これで済んでしまうあたり、彼の持つギフトは単純なものなのかもしれない。
そして、その説明を聞いた者たちは軽い警戒態勢をとるが、
「・・・あ、別に何かするつもりはないぞ?ってか、箱庭でその方向性でやっていけるわけないだろ」
「あ、そりゃそうか」
一輝の一言でそれはとかれた。まさに彼の言うとおり、そんなことをしていようものなら一瞬で討伐リスト入りだ。
「んじゃこっちからも聞かせてもらうけどな、お前はここではどういう立場なんだ?最初はそこそこの立場かと思ってたんだが、なんかそういう扱いしてないやつもいるし」
「そればっかりは、ウチのコミュニティだからなぁ・・・どうしようもねえよ」
つまり、一応何かしらの立場のようなものはある、ということだろうと一輝は察した。
「そんニャこと、わざわざ説明するようなことでもないニャ・・・」
「こちらは若様。要するに、総大将の息子であり、百鬼夜行の後継者にございます」
さすがに分るだろと言わんばかりの夏歩の言葉を補足したのは、両目を隠すように包帯を巻いた、スーツ姿の女性。伏目と呼ばれている、百目の妖怪だ。
一輝はそれを聞いてやはりと納得し、そして彼の周りにいるのが女性ばかりであるのを認識して、
「・・・オマエ、ハーレムでも作る気なのか?」
「オイ待て、ちょっと待て」
自分からナンパとかもする(しかし、自分から行くと失敗しまくったり、一定以上まで来るとヘタレる)悟だが、さすがにこれには待ったをかけた。というか、一輝がネタを見つけたといわんばかりの笑みを浮かべているので、反射的に待ったをかけた。
要するに、悟の中に流れるサトリの血が、彼に訴えたのだ。直感的に『これは危険だ』と。
「いえいえ、確かに若様の現状を見ればそのように思われても仕方ないのですが」
「伏目?気のせいか俺にはお前に追い打ちをかけられたように感じるんだけどな?」
「ですが、貴方もまた大差はないかと」
「・・・・・・うん?」
悟の言葉をさらっと無視した伏目の言葉に、一輝が首をかしげる。その時頭に浮かんだのは、これまでに一輝が他の箱庭に行った中の一つ。あの問題児の性別が入れ替わってしまっている世界で、その問題児の持つギフトによって彼の人生を知られた時のことだ。
まさか、そんなはずは・・・と、そこで一輝は百目がどのような妖怪なのかを思い出し、そして。
「五人ものベクトルの異なる美女、美少女を隷属させ、自らのメイドとしている・・・その中の一人には告白までされ、その返事をしていない。いかがでしょう?」
「思いっきり全部暴露したな!いっそ清々しいぞオイ!!」
全てぶちまけられ、机を叩いて身を乗り出す一輝。だが、伏目は何でもないように酒を飲んでいる。余談だが、この場に一輝以外に酒を飲んでいないものはいません。
「・・・ま、それは悟も大差ないんじゃない?」
「・・・は?そういう評価?」
そして、一輝をそのネタでいじろうとした悟は腕の紅葉にそういわれてしまい、何も言えなくなるのだった。
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「向うは妙に騒がしいわね・・・」
「我がマスターはああいうやつだからな。もう仕方ないと考えるべきだろう」
乗り込んで参加してこようかと悩みだした青行燈を、アジさんが酒を注ぐことで止める。これ以上危険物を増やしてしまえば酒の勢いでバトルが始まりかねないという彼の判断は、一切間違っていないだろう。事実、このコミュニティにはつい前夜に騒ぎを起こしているという前科があるのだから。
「ふぅん、我がマスター、ねぇ・・・あんた、いつもそう呼んでるの?」
「そうでもないな。マスターと呼ぶこともあれば主と呼ぶこともあるし、一輝と呼ぶこともある」
「また色々とごちゃごちゃしてるわね・・・私と違って別に性格が一定しないわけじゃないでしょうに」
「・・・ふむ、この世界の青行燈とは、そう言う存在なのだな」
たったこれだけの会話でアジさんはこの世界の青行燈・・・すなわち、蛍という妖怪のことをあらかた理解した。
「どこまで理解したのかは知らないけど、こっちの質問に答えなさいよ」
「おっと、それはすまないな」
「素直に謝られると、それはそれでなんだか、ね・・・こっちのアンタと戦った身としては、どうにも違和感しかないわ」
「つまり、この世界の私も私とそこまで変わらないというわけだな」
少し笑いをもらした彼は、目の前の酒を瓶ごと掴んで一気に飲み干す。なんだか無茶苦茶しているように見えるかもしれないが、彼はこれで龍なのだ。この程度の酒で何か起こるわけもない。それは蛍もなのか、彼女も似たようなことをたまにしているのだが。
その証拠に、二人の周囲には大量の酒瓶が並んでおり、目の前の机の上にもそれはもう大量に準備されている。一体どこから経費が出ているのだろうか?
「因みにだが、私の呼び方がバラバラなのは作者がいまだ迷っているからだ」
「え、それ言っちゃっていいことなの?観測者の目とかあるのよ?」
「気にするな、今更だ。なにせ、私の扱いをこうしてしまったことで原作がどうしようもなくなり、後悔しているほどだからな」
ああ、うん。アジさんは間違いなく自分の敵ですね、これは。何の容赦もなく自分の弱いところを攻めてきやがるぜ。いいぞ別に、原作や絶対悪なんてみんなが忘れるような魔改造を施してやる。
《仕返しの仕方がセコくはないか?》
そして、さらっと一輝や湖札と同じことをしてきやがって・・・!それがいったいどれだけの
《どうせお前とコラボをする作者など限られているだろうに》
はいはいそうですね、コンチクショウ!
「何やってるのよ?」
「いや、なんでもない。それより、もっと飲まないか?お前という存在には興味がある。私の知っている青行燈とはだいぶ違うようなのでな」
「まあ、そりゃそうでしょうよ。なんせ私はしじ・・・って、これはまだ言っちゃダメなやつか」
よくわからないが、蛍は自分で勝手に何かもんどうをし、
「というか、アジ=ダカーハ。話すのはいいけど、一つ条件よ」
「ふむ、なんだ?」
「その、お前とか青行燈とか、その呼び方を変えなさい。私には蛍って名前があるのよ」
「それは失礼した。だが、私もこの姿の時はアジさんと名付けられていてね。そちらで読んでもらってもいいかな?」
そう言ってニヤリとしたアジさん。蛍はそんな彼を見て一瞬ポカンとしたと思うと、声をあげて笑った。
「アハハハハハハハハハ!あ、あんた。本当にこっちのアジ=ダカーハとは違うわね!」
「まあ、一輝と本気の殺し合いをして神託を与えあい、変わった面はあるのかもしれないな」
アジさんもまたそう言いながら肩を震わせ、当然のように手刀で酒瓶二つの口を切り開けると、片方を蛍に渡す。
「では、互いのことを語るとしようか、蛍」
「ええ、そうね。私としても語るような内容が増えるのはいいことよ、アジさん」
二人はそのまま乾杯でもするかのようなかたちで一升瓶をぶつけ、飲み始めた。
こんな感じになりました。基本悟にべったりな蛍なのですが、今回はアジ=ダカーハへの興味が強かった、ということで一つお願いします。
では、感想、意見、誤字脱字待ってます。