問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~   作:biwanosin

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注意!今回、コラボについてギフトゲームからコラボ終了まで一気にばーん!って投稿しました。なので、最新話からここへ飛んで来た方は、一度目次に戻って『カーニヴァル ①』から読んでください

あと、投稿ミスで『カーニヴァル ①』がない時間帯が存在してしまいました。誠に申し訳ございません。


別れ

ギフトゲームが終了し、全てのプレイヤーが鳥居から外へと排出される。全員がそろい、彼らの前には一人の老人が膝をついている。

 

「負けは負け、このサトゥルヌス、ここに隷属を」

「スレイブ」

「イエス、マイロード」

 

そして、隷属を誓おうとした彼の首は、次の瞬間には体から離れていた。単純明快に、一輝によって首を落とされ、絶命する。好みにもあわずに檻への立ち入りを拒否し、そのままその魂は消え去った。神霊であると考えれば再び箱庭に招待される可能性もあるが、倒されるべくして倒されたかれは、現れない可能性の方が高いだろう。

が、そんなことを考えている者は、この場には一人もいなかった。

 

「・・・一輝、今、何で殺した。」

「ゲームは面白かったが、本人がここまで面白みがないとは思わなかった。ぶっちゃけつまらん」

「そんな理由で、殺したと?」

「そうだけど?」

 

再び、その手がふるわれた。夜子もまた不愉快極まりないゲームを組まれ、その影響で殺したいと思うほどにはこのゲームをしくんだ魔王のことが憎くはなっていた。だが、しかし。そうだとしても。一輝のような理由で殺すことを是とできる程ではない。

だから彼女は平手を放ち、一輝はそれを容易に手で受ける。

 

「・・・お前は、最低だよ」

「そこまで壊れてるやつに言われるとは、だいぶ意外だね」

「だから!」

「黙れよ」

 

瞬間、一輝は本気で殺気を放つ。そしてそれは、夜子の放てるものとは度合いが異なった。

当然だろう。二人が命がけの戦いの中に身を投じた時期は、全く異なる。夜子は命がかかる戦いの世界に来たのは箱庭に来てからであり、そのスペック故に本当に命をかけなければならなくなったのはもう少し後だ。

だが、一輝は違う。生まれたときからその世界に生きることは決まっており、実際に4か5の時にはもう妖怪の命を奪い始めていた。最初のうちはまず負けない相手であったが、少し経てばそれも変わってくる。そして、人生の転機が訪れたのもそのほんの少し後だ。

単純に、生きてきた世界の違いだ。

 

「・・・んじゃ、俺は先に帰る。今日一日は部屋にでもこもってるから、好きに過ごしな」

 

さすがに空気を読み、一輝は頭をかきながら本拠の方向へ戻る。スレイブは無言で当然のようについていき、ヤシロと湖札はあきれ顔でその後を追う。その場に残されたのは表情を怒りで固めた夜子と、そのノーネームの仲間、そして十六夜の六名。

 

「あー・・・まあ、ああいうやつなんだよ」

「ああいうやつって、お前はそれでいいのかよ。お前も俺なら・・・同じ考えは、あるだろ」

「あー、まあ、あるんだろうな。けど、一輝の力は俺より圧倒的に上だ」

「だからってあきらめるようなタマかよ」

「仕方ねえだろ、俺はあいつには一生勝てない。そう思っちまったんだから」

 

夜子と十六夜は、同一の存在であり、全く別の人間だ。そして、既に二人とも原点とも大きく離れている。

例えば夜子は、それを精神性の異常として。

例えば十六夜は、圧倒的敗北として。

だからこそ、夜子が認められないことも十六夜は認められる。

 

「・・・あー、クソッ!」

 

そんな事実に今気づいて、近くの木を殴る。簡単にへし折れた。

 

「落ち着いて、夜子ちゃん」

「これが落ち着いて」

「落ち着いて」

 

と、蛟劉に肩をつかまれ、視線を合わされることでどうにか落ち着く。

 

「・・・なあ、どうするべきだと思う?」

「せやなぁ・・・」

「ぶっころせ」

「黙れクソ鳥」

「うっせえクソヘビ」

 

今にも殴り合いの喧嘩が始まりそうな雰囲気が出来上がった。ほっとかれた夜子は憂さ晴らしにフェンリルでも弄ってやろうかとか考えだし、真哉はどう止めたものかと考えだし、十六夜はこの場を今すぐに出も逃げようと考えだし、フェンリルは巻き込まれる前に無関係だと主張する方法を考えだし。

 

「・・・あ、そうだ」

 

夜子はひとまず、目の前の状況を参考にしようと決意した。

 

 

 

 ========

 

 

 

「で?なんだかこのままけんか別れコース!って感じになってたところで部屋に突撃してきて外に連れ出したいとは何だって?」

「殴り合いのけんかしに来た」

「野蛮人かよ」

 

そして、その日の夜。誰も外にいない時間帯を狙って一輝の部屋に突撃し、連れだし、少し開けた場所での会話がこれである。

 

「はぁ・・・その意図は?」

「ひとまず、オマエの考えを変えるのは無理だとわかった」

「まあ、そらそうだ」

「そして、俺の考えを変えるのも無理だとわかってた」

「ガンコそうだよなー、オマエ」

「失礼な」

 

お互いにガンコである。

 

「はぁ・・・ま、いいか。来いよ。一発だけ付き合ってやる」

「一発で足りるのか?」

「何言ってんだ、こちとら単独でアジ=ダカーハ倒してんだぞ?そうそう負けるかってんだ」

 

そう言って、一輝は構える。夜子もそれにこたえるように構えた。

ぶっちゃけると、夜子のこの行動に深い意味は無い。言いたいこととかそれはもう無限に近いくらいにあるが、お互いに譲らない時は本当に譲らないと、彼氏との件ではっきり分かっている。であれば、それをゆがめるのに必要となるのは・・・圧倒的力、それによる勝利だけだ。

そんな野蛮な考えの下、二人は同時に地を蹴り・・・

 

 

 

 ========

 

 

 

「ん?ここは・・・もしかして、戻ってきたんかな?」

「っぽいな」

 

と、夜子と蛟劉の二人がいるのは、元の世界。散歩中にくぐった鳥居の合ったあたりだ。

 

「なら、よかったんやけど・・・って、その頬どうしたん!?」

「ん?あー・・・一輝と殴り合いして、くらった」

「はぁ!?」

 

何言ってんだコイツ、という目で蛟劉は夜子を見る。この場に真哉と可もいたなら、もっと騒ぎになっていただろう。そんな彼らはご都合主義で本拠へ直送されました。

 

「ちょ、え、なんで!?」

「や、考え変えてくれそうにねえし、だったらブッ倒そうかと思って・・・一方的に喰らった」

 

と、そう言いながら無茶苦茶腫れた頬を手で抑える。そうして触れただけでかなりの痛みがあった

 

「はぁ・・・次はブッ飛ばす」

「そ、そか・・・アジ=ダカーハに単独で勝てるだけの力をえるわけか・・・」

「ああ」

「マジかぁ・・・」

 

自分のギフトゲームの難易度が上がったことを蛟劉は実感して・・・それでも負けるわけにはいかないと、己のエゴを強化した。

 

 

 

 ========

 

 

 

「ふむ・・・ま、さすがにあれを喰らうことはないな」

 

と、夜子の意図もほとんど分かっていないまま、一輝は殴った手をぶらぶらとふる。相手の攻撃はしっかり避けたので、完全に無傷である。

 

「さて、どうしたもんか・・・あのわけ分からん喧嘩は面白かったし・・・ふむ・・・」

 

そして考えるのは、ゲーム中に試してみたことだ。憤慨し、その上で己を押し込んでクリアへと向かった姿勢は、一輝的にはマイナスだ。それしかないと分かっていて、その上でそれを拒否するような狂い方。それが見れるかと期待していただけに、それがなかったことは一輝としてはない。

だが、その後は面白かった。まさか自分が意図をつかめないような行動を取ってくるとは、完全に思っていなかったのでこの上なく面白い。

というわけで、色々考えた結果。

 

「・・・ま、保留でいいか」

 

と、投げ槍にも聞こえる判断を下す。

しかしこれはそう単純なものでもなく。次会った時の行動がつまらなければためらいなく殺し、面白ければ友人として自分にできる最大限の協力をしてやろう、と。そしてもし一輝が思いよらないような面白い出来事と一緒に来てくれれば、そのときは遊びに弄り倒すこれまで通りの関係でいるだけ。

 

「さーて、帰って寝るか―」

 

 

 

 ========

 

 

 

これが、わたくしの描く一輝と夜子との物語。

二人はともに歪んでおり、壊れている破綻者だ。

だがしかし、その方向性が全く異なり。

それ故に、その思いは非日常においては衝突する。

そんな二人の次の出会いがどうなるのか。何を生むのか。どんな関係へと変化するのか。

片方が命を落とすかもしれない。予想がつかないほどに友情を得るかもしれない。全く想定外の何かが生まれるかもしれない。

ただ一つ定まっているのは、殺し合いから始まるという一点のみ。

その結果がどうなるのか・・・さて、それが紡がれる未来は来るのでしょうか?

 




以上でコラボ終了です。最初の予定ではもっとドロドロして一切すっきりする要素のない形での終わりにしようとしていたのですが、「いやさすがにねえよ」ととあるリアルの方の知り合いに言われてしまって血涙を飲む思いで断念。そしてこうなりました。・・・あれ、あんまりすっきりする終わりにはなってねえな、結局。
とはいえ、自分が『一輝と夜子ちゃんがであったらどうなるんだろうなー』と考えた結果『一回殺し合うことにはなるな、最終的に』という結論になってしまったので仕方ないです。絶対分かり合う日はこないですもん、この二人。というか大概の『主人公』を名乗る立場になる人とはわかり合えませんもん、一輝が。・・・なんだ、全部一輝が悪いのか。

さて、コラボに関して言うこととしては特にありません。一番大切な言葉はまだ残っていますけど、それは後書きの最後にするべきでしょう。
というわけで、絶対必要ないですけどギフトゲームに関する解説でも。文面からの謎解きは存在しないんですけどね。


まず、もののけ姫コンビの『ヘンゼルとグレーテル』について。これは簡単ですね。
魔女の家へとたどり着いた二人の兄妹。そこでお菓子をふるまわれるというパターンのもので考えると、魔女がやってきたことから考えてもそのお菓子の材料は『これまで似迷い込んだ子供たち』です。ですので、それを食べてしまった二人が人喰い、それを提供した魔女自身は補助したもの、そして自分も食べているので人喰い扱いとなり、この三人の殺害がクリア条件になります。
他のパターンとして最後に『魔女をかまどに放り込んで殺し、お菓子になっていた子供が全員元に戻り、かまどから出てきたクッキーをみんなで食べる』というストーリもあり、こちらであれば最終的にその場にいる子供全員を殺す流れになるのですが、今回は別のもの。判断基準は『二人がお菓子を口にした時点でループした』という点です。ここでループしたということはつまり、今回行われる人喰いはこの時点で終わっているということ。この後に起こることはなく、殺す必要があるのは三人となるためです。
あ、うん。これホントに解説いらねえな。

次に、???コンビの挑んだうりこひめとあまのじゃく。こっちはホントにほとんど解説いらないですね。なんせ、あまのじゃくがうりこひめを殺して料理して自分はうりこひめに化けて老夫婦に食わせただけですもの。老夫婦とあまのじゃくを殺して終わりです。これ以上の解説すら必要なし!楽でいいね!

次は苦労弟子コンビの挑んだカチカチ山について。タヌキがババアを殺して婆汁にして爺に食わせた伝承です。瓜子姫以上に知ってる人が多いよねこれ絶対。というわけで終了。

家族コンビが挑んだあぶくたった。これは子供の遊びの一つとかわらべ歌とかの一種です。遊ぶ中でまず最初に出てくる歌とか、その部分。調べてくださるとどんな歌なのか分かると思われます。絶対簡単に出てくる。
その中のストーリーはざっくりと本編中で出てきたように、
人を喰らう鬼がいた。村人たちは何とかそれを倒し、調理して村の皆で食った。食べきれずにそれを残して置いたところ、夜になったら戸を叩く音がする。何かと思っていたらそれが中に入ってきた。するとそれはただれた、部分部分のない鬼ではないか。そして村人たちはその鍋から出てきた、復活した鬼に食われた。
という伝承です。子供のやる遊びじゃねえよ普通にこええよ。
これに対して、鬼を『山の中にすんでいる自分たちとは異なる人たち』や『山賊』、『異国人』などであるという解釈を行ったものが今回のゲームのものになりますね。普通に鬼と会話ができたというタイプのものもありますので、どうせゲームの条件にはあうのですが。
というわけで、会話が可能な種であったために鬼を喰らった村人が全員人喰いにカテゴリされ、また鬼自身も文字通り人を喰らっていたために人喰いとなります。

最後、主人公コンビが挑んだ一年生になったら。これについても知っている人は知ってる、歌に関する解釈を今回のゲームの題材としました。
本編中でも言っていたように、この歌には一点おかしな点があります。そこまで細かく考える必要は絶対ないですし、昔の百なんて百鬼夜行みたいに「結構多い数」のことをざっくりと指す言葉なんですけど、「友達百人」できて、「百人で山を登る」という形に一人減っているという点から生まれた解釈の一つですね。
昔であれば、子供がそこまでの年に馴れたこと自体が一つの奇跡のようなものです。ですので、それを祝ったり神へと感謝をささげたこと自体はおかしなものではないでしょう。山が神聖視されることもあるので、山を登ったこと自体もおかしくはありません。
そして、食糧難であったために足が悪い子供が間引かれた、というのも時には会ったことでしょう。そんな事実から作り出された解釈が、「いなくなった一人は足が悪く、働き手になれないために間引かれた子供だ。そして、その子供は切り刻まれ、山を登った先で食べたという『おにぎり』になった」というもの。お米すらなかなか食べれなかった時代でしょうし、子供たちの中でおにぎりというものが『美味しいもの』と漠然ととらえられていたとしてもおかしくはないだろう、ということですね。

そしてついでに、今回のゲームの主催者についても簡単な説明をば。
本人が名乗っていたように、その名前は『サトゥルヌス』。ローマ神話に登場する神様で、ギリシア神話のクロノスに相当する神様ですね。クロノスの方が知っている人が多いでしょうか、自分の子に殺されるという予言を恐れ、自身の子を五人喰らった、とされる伝承から『人喰い』を総べるものとして今回のコミュニティのリーダーとして、主催者権限の持ち主として出すことにしました。
その中でも『フランシスコ・デ・ゴヤ』の描いた『我が子を食らうサトゥルヌス』という絵が主軸に持ってこられた存在である、と考えていただけると私の考えているキャラクターに近づくでしょうか。修正される前、オリジナルの絵では陰嚢が勃起していたとされるこの神を『自身の子を食らうことに興奮する異常性癖者』って考えました。・・・ちょっと話の内容があれな方向になってるかもしれないのですが、説明なのです。申し訳ない。
そして、その性癖に嫌悪を抱きながら、同時に自身がそう言ったものであると認め、そんな己を抑えられるものを求めていたのが、作中で出したサトゥルヌスです。
ですから彼のゲームはクリアするだけであれば簡単なものであり、しかし心理的にそれが難しくなってくるようなものを揃えています。一切の罪のない百人の子供を殺す『一年生になったら』、ただ村にとって自分たちを喰らいに来る災害を殺しそれを糧とした『あぶくたった』、自身の愛する妻をそうとは知らずに食わされてしまった『カチカチ山』、血が繋がっておらずとも自分たちの愛した娘をそうとは知らずに喰わされてしまった『うりこひめとあまのじゃく』、無垢な子供がただお菓子を食べただけである『ヘンゼルとグレーテル』。これらを本当に、ゲームのシステムまで解き明かし、クリアした者たちであれば、そんな自分のために他者を殺せるものであれば、己が仲間になったとしてもあるいは受け入れられるだろうし、必要とあれば殺すだろう、と。それ故に作られた『心理的にクリアが難しくなる』ゲームです。
そして、一輝はこのゲームを作ったものが『心理的障害を作っておき、クリアしてきたモノにその事実を伝えて絶望するのを楽しもうとしていた』というようなものであれば、仲間に引き入れるつもりでした。自身の趣味のために一貫して行っているその行為そのものがガッツリしていたためです。そして、そのことが悪であると分かっていて自身を攻めてそれでもなおやめないような圧倒的破綻者であっても、それはそれでありです。
ですが、その意味が全く分かっていないような根本からズレている者、そして今回のサトゥルヌスのような罰を欲している物であれば、すぐに殺そう、と。そのため、さっくり殺したわけですね。

と、以上が今回のギフトゲームの題材というか、元となったお話というか、になりますね。あー、長かった!三千文字超えたじゃねえか本編でしっかり押さえろよ俺!

と、マジで長くなりましたが。最後に一番重要なことを。ここまでの長ったらしい後書きより大切だからね!なんなら本編より大切だからね!



オシロイバナ様、キャラクターを貸してくださり、またこうして自由に書かせてくださり、ありがとうございました。
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