問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~   作:biwanosin

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前話の注意事項、そのままだ!
マジでそのつもりで読めよ!いいな!!


年末短編 魔王ジャンヌ・ダルク 後編

 この拘束を破り、魔女らしく暴虐を尽くしてやろう。そう決心したタイミングで、私は箱庭に召喚された。それなりに多くのギフトを与えられたため、ギフトの回収と言う名目の下、私に啓示を与えた内の一人、ミカエルの下へ、だ。歴史上私の死体は確認されているのだが、黒焦げになったものを観測されたうえ、その後灰となるまで燃やされている。背丈や性別辺りさえ同じなら、問題はなかった。

 しかし、だ。彼らにとって、この私の存在はイレギュラーでしかなかった。オルレアンの乙女、聖処女。そう呼ばれる少女は、どの少女もその名に相応しい、場合によってはその名ですら不足してしまうほどの聖人であったという。

 

 馬鹿々々しい。請われたからそうしただけの機械が、誠実な人間であるものか。

 

 

 

 ========

 

 

 

 さて、どうしたものか、と。クソマズいお茶会が終わってから完全に暇になり、とりあえずということでベッドに横になって天井を眺める。

 

「…………」

 

 真っ白な天井。私一人に与えられた、私だけの空間。それにしては主が勝手に侵入してきそうな気配がなくはないのだが、まあ向こうの言を信じるのであればこの部屋の鍵は二本とも私の手元にある。本当に一人になりたいときは鍵を閉めてしまえばいいだろう。

 

「…………」

 

 ゴロン、と寝返りを打って、壁側を見る。何もないまっさらな壁。誰も使っていない部屋だと聞いていたのだが、それにしては本当に綺麗だ。誰も使っていない部屋を定期的に掃除するだけの余裕が、このコミュニティにはあるのだろう。もしかするとそうではなく、ただそういった細かいところまで几帳面な人が担当している、と言うだけなのかもしれないが。

 

「…………」

 

 ゴロン、と逆側へ寝返りを打つ。そこには、元からこの部屋に置いてあった衣装棚や姿見に始まり、主にご主人様が買ってきた食器棚をはじめとする諸々のティーセット関連。お古だと言って持ってきた道具各種はやはりどう見ても使用感がなく、だとすれば一回目か二回目辺りで侍女頭に見つかり、以降まるで使っていないのだろう。さっき私が使ったが、まだまだきれいだ。

 

「…………」

 

 ゴロン、と視線を天井に戻す。本当にこれが、私一人に与えられた空間。私一人をとらえるための場所ではなく、いつでも自由に出ることができ、自由に戻ってくることが出来る、そんな空間。隷属と言う首輪こそかかっているが、それも主は行使してこようと言う気配はない。その気になればいつでもこの身を好きにできるだろう権限を、完全に放棄している。

 

「…………」

 

 あるいは、私に異性としての魅力がないのだろうか?権限を行使されても困るが、だからと言ってまるで何もしてこないのもそれはそれで腹立たしい。だなんて、この年頃の女はそんなことを考えるのかな?

 

「…………」

 

 ふむ、だとすればと。自分の体を見下ろし、それでは足りないと姿見の前へ移動する。そこに映る自分の顔と、見下ろして映る自分の体形。さて、それは女性的魅力に欠けるものだろうか?そうではないと信じたい。誰か目的の相手がいるわけではないが、まあ自分にそれがある方がいいのは間違いない。

 

「…………」

 

 再び、自分の城を見渡す。決して広くはなく、しかし狭くはなく。自身をとらえる檻ではなく、帰ってくることのできない一時の幻でもない。自分に与えられた、自分のための空間。

 不思議な感覚だ。この感情は果たして、何と名付けられるべきものなのだろうか?

 

「…………」

 

 分からない。ふんわりとした回答は浮かんでくるものの、はっきりとした回答は浮かんでこない。こういった感覚は初めてだ。初めてなので……

 

「……よし」

 

 ひとまず、部屋を出た。ポケットから鍵を取り出して、刺して、ガチャリ。

 ようやくちょっと、自分の部屋だという実感がわいてきた。

 

 

 

 ========

 

 

 

 お前が聞いたそれは人間の怨嗟の声だ。それでも、それを壊れたものとして受け入れるのか。彼はそう、私に問うた。当たり前だと、私は返した。ミカエルから頼まれたことは完遂したのだから、それ以上を聞く義理もない。魔女であれと願われたのだ、私はその通りに、魔女となるだけのこと。

 ありがたいことに、私は死後、復権裁判および列福、列聖によって聖人としての霊格を与えられている。より厳密に言えば、与えなければ歴史が歪んでしまうが故に、魔女となろうとしている私にも与えられた。死後獲得するはずだった霊格を、死なずに獲得したわけだ。まあそのせいで何もせずに解放できず面倒が増えた面もあるわけなのだが。

 問答の結果、私の存在は表には出さず、魔王の烙印だけ押して放り出すと宣言された。

 

 箱庭に住まう住人、それに向ける何らかの試練にはなるだろう。とかなんとか言われましても。

 

 

 

 ========

 

 

 

「ふぅ……」

 

 チャポン、と。自分が今使っている湯船に対して、水音がする。私のこと自体はコミュニティ内に広まっていたらしく、偶然通りがかった子供にお風呂はどこにあるのかと聞いたら、素直に教えてくれた。長い金髪で、とても大人びた口調の少女。きっと将来は美人になるに違いない。そんな感情を胸に、再び口から吐息が漏れる。

 はじめは、案内された先にあるのが大浴場なるものであることに困惑した。お湯に肩まで沈む、と言うその感覚が意味不明だったのだ。人間を茹でてどうするのか、と。しかしどう考えてもそう言う用途のためにあるものだったため、指先で何度も確認してから湯船に入った。熱いなぁ、と感じていたのは……さて、どのタイミングまでだっただろうか?全身がお湯に包まれる感覚、と言うのは思いのほか気持ちがよいものだった。

 

「はふぅ……」

 

 聞けばここに使っている水もかなり良いものらしい。水路を流れる水が分岐し、ギフトによって適温となって浴室へ届く。気まぐれで来たにもかかわらず適温の湯が満ちていたということは、もしかすると常に流しっぱなしなのかもしれない。

 

「ふひぃ……」

 

 お湯を流しっぱなし。それはつまり、水を常に流しっぱなし、使い捨て状態である、ということだ。誰も入っていない時間帯など、浄水が湯になり捨てられることとなる。無駄にもほどがある。逆に言えば、それだけ裕福なコミュニティということか、はたまた水を無限に獲得できるギフトを保有しているということか……

 

「にゃふぅ……」

 

 その二択なら、是非後者であってほしい。そのギフトが珍しくもなんともない凡庸なものであるのなら話は別だが、そうでなければ水を売ることでいくらでも富を獲得することができる。水がなくても生きていけるような生物はほとんど存在しない。生存に必要不可欠であるものを抑える、と言うのはそれだけで価値がある。

 

「にゃひぃ……」

 

 こうしてみるとやはり、このコミュニティは良物件の可能性が高い。まだコミュニティの方針は聞いていないため確証は持てないのだが、こういったいわゆる無駄の部分に資金を避けるだけの余裕があり、メンバー全員がこれといって苦の無い生活を送れている。

 

「……くらくらする」

 

 考えてみれば、気持ちいいとはいえずっと汗をかいていたのだ。このまま入り続けるのはよくないだろう。湯船の縁に腰をかけ、足だけを中に。程よく上記の立ち込める空間は、それでも十分に気持ちよかった。

 さて、しかし良物件であればあるほどに我が主の待遇が謎になる。ここまで色々とみた感じ、あれでそれなりの立場にある様子だった。あんな何を考えているのか分からない、上からの指令を無視して突っ走るような奴が、だ。どれだけ優秀であろうとも、自分勝手な行動をとるものはそれだけで価値がない。問題だけを大きくし続ける害悪だ。そんなものに立場や権限を与えるだろうか?

 

「うーむ……」

 

 では、あれがそれでも立場を獲得できるだけの理由とは何だろう?立場を与えてもいいと、あるいは立場を与えるしかないと考えるだけのルール。例外が許されないだけのそれ。……となれば、コミュニティの方針に関わる何か?そうだったとして、その方針は?

 

「……そう言えば、私の調査に来た、んだったか」

 

 異常が見られた。だから調査によこした。私の下に来た経緯は、どうやらそう言ったものらしい。つまり、そう言った偵察的な部分を担っているコミュニティだろうか?

 

「無いな」

 

 そんなわけがない。そうだとしたら、あれだけの戦力を持つ人間は必要ないしあんな性格のやつがいるはずもない。神霊を従えていることにも説明がつかない。それだけの戦力を持ち、クセのある人間がいることに疑問が無いのは、むしろ……

 

「魔王討伐、あるいはそれに近しいことを掲げている?」

 

 荒唐無稽だ。私みたいな意味不明なのもいるかもしれないが、そも魔王と言うモノは天災と変わりない。それを討伐する、と言う方針を立てるコミュニティなどあるとは考えにくい。考えにくいのだが……もしそうだとしたら、あれが立場を持っていることにも納得がいく。強大なギフト持ちに対してはともかく、一騎当千の戦力だ。

 

「いやまあ、あれが演技の類、ってこともあるのか」

 

 あるいは、演技などではなく二つの顔を持っているだけなのか。まあここまでの広げに広げた妄想が真実である可能性よりはよっぽどありえるのだが……それならそれで、私の偵察を依頼された以上スイッチを切り替えて偵察だけを行ったはずなのだ。

 

「……うん、分からん」

 

 分からないものは分からない。分からない以上どうすればいいのかも分からないので、困るがどうしようもない。と言うわけで。

 

「分かるまで、そう時間もかからないだろう」

 

 自画自賛じみてしまうが、私の保有する恩恵(ギフト)も一騎当千の戦力と並んで遜色のないモノだ。単騎で万軍を打ち破る戦力に対して、万軍を召喚するギフト。境界門(アストラルゲート)による召喚ではないが、元から保有していた使い魔のような兵に、自身へ忠誠を誓って死んでいった、あるいは後に死んだ者のコピーを召喚出来る。

 勿論、人間でしかない以上百パーセントの活躍を保証できるものではないが、何かしらの形で戦闘が発生するコミュニティにおいてならば、確実に評価される。大丈夫、問題ない。

 

「…………なんて」

 

 そう考えていれば、まあ、普通だろう。普通なはずだ。普通だよね?

 

 

 

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 さて、そうして魔王として野に放たれたわけなのだが。ぶっちゃけ何かやることがあるというわけでもない。何かあった時のための戦力は与えられたギフトによって、私兵(死兵)を召喚した。中には生前の既知であるところのジル=ド=レェだとかもいたのだけど、まあ大した問題ではない。色々と面倒事を押し付けられる、という利点を得たくらいだ。さてどうするかなぁ、なんて考えながら契約書類の文面を書き換えていく。

 

 単純極まりないゲームくらいなら、私でも作れる。

 

 

 

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「なーにをやってるのかね、俺の従者は」

「……さすがに、何も言い返せない。申し訳ない」

「それは俺じゃなく、風呂場からの救出を行ったガキ共に言ってやれ。湯船に頭から突っ込んで意識失ってる様子なんざ、ぱっと見死んでるようにしか見えん」

 

 さて、彼が言うことはごもっともとしか返せない。むしろその状態で意識を失い、よく溺死していなかったものだ。

 

「ああいった空間が初めてで、どれくらい大丈夫なのかも読めず……」

「それでも自分の体調がおかしいかどうかくらい分かるだろ」

「いや、全くもってその通り……」

 

 ベッドの上に横になる少女の額へ、男が固く絞った濡れタオルを載せる。傍らには水分もある辺り、従者の看病をしていると考えていいだろう。

 

「ちょっとまずいと思って、体は湯船から出したんだ」

「じゃあなんで湯船の中に頭突っ込んでたんだよ」

「縁に腰かけて足だけ入れていた」

「それで前のめりに、ってか。何だそのギャグ」

 

 何なら一回警戒した分、ずっと湯船の中で気絶したよりも馬鹿々々しい。それが分かっているのか、本当に何も言えないらしい。あるいは、体に残っている不調がまだそれなり以上に大きいのか。

 

「はぁ……そんなに気に行ったのか、大浴場?」

「いや、それもあるが……ちょっと考えごとを、な」

「考えごと?」

「ああ。今後どうするのかとか、大丈夫なのかとか……そう言った諸々を。従属する奴隷の立場として、おかしいだろうか?」

「うんにゃ、その理由ならおかしくはないな」

 

 まるで同意しているようには見えない様子で返しつつ、グラスに水を注ぐ。体を起こさせて、支えつつ渡す。少女は渡されたそれを、ゆっくりと、コクコク飲んでいく。

 

「はぁ……まあそういうことにしといて、だ。何か言った気がしないでもないが、ウチは本人の能力と功績を平等に評価する方だよ。だからなんだかんだジャンヌ・ダルク(お前)っていう戦力を保有することになった俺の評価は上がったし、まだカタログスペックしかないのにお前にも評価は与えられてる」

「……与えられてるのか」

「立場は一番下くらいからだけどな。まあそれは、しばらく働いてりゃ解消されるだろ。俺としてもその段階になって、裏切りなんかの可能性が否定できるようなら隷属の契約は解消してもいい」

 

 少女は信じられないものを見る目で男を見る。せっかく魔王のギフトゲームをクリアし、それによって魔王自身と言うギフトを獲得して。ついでにその獲得によって自身のコミュニティ内での評価も獲得できたというのにそれを手放してもいいと言う。

 

「何を考えているのですか?」

「何を、って程のことは考えてねえよ。別にお前が俺の従者としてだろうがそうじゃなかろうが、コミュニティ単位での戦力に差はない。だったらどっちでもいいだろ」

 

 そう言われたらそうなのかもしれないが、それでもやはり違和感はなくならない。奇妙なやつだ、なんて考える。もういっそ、彼については考えるだけ無駄なのだろう。

 

「さて、それだけ話せるならもうついてなくてもいいだろ」

「ああ、大丈夫なはず」

「だったら大人しく休んどけ。俺は晩飯食いながら色々と話進めてくるから」

 

 と、椅子から立ち上がって扉へ向かっていく。お礼を言おうかと悩んでいる間にはもう、部屋を出ていた。さてこの調子では明日どうなっているのかと、そんなことを考えながら少女は目を閉じた。

 

 

 

 

 ========

 

 

 

 まあだからと言って何かしていたか、と言われると別にそうでもなかった。確かに魔女としてやっていくことには決めたし、魔王の烙印も獲得したから順風満帆ではあったのだけど。じゃあ魔女として何をやるべきなのだろうか、と考えるとこれと言って思いつかない。貰ったままのギフトはまあ箱庭が回収するくらいには強いものなのだが、だからと言ってこれ一つで蹂躙できるかと言われるとまあ無理だろう。聖人としての霊格獲得でギフトも増えたりしたが、まあ、うん。無理だ。

 と言うわけで、一応と召喚しておいた従僕達。その中でもジル=ド=レェのようなそれなりに頭の働く面々に聞いたところ、「貴女の心、その赴くままに」みたいなことを言われた。

 

 自我へ介入することはできないギフトなのだけど、つまりこいつ等素で言ってやがるのか。マジか。

 

 

 

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「おっ、ちゃんと起きれたか。ってことは体調は大丈夫そうだな」

「………………」

 

 早い時間に寝たためか、早い時間に目が覚めて。空腹を感じたから何かあったりしないかと食堂に向かったらエプロンをしてフライパンを操る主がいた。……目の前の光景が何なのか、私にも理解できない。

 

「それで、なんで食堂に来たんだ?喉でも乾いたか?」

「あー……空腹を感じて」

「なんだなんだ、大食いキャラだったのか?……って、そうか。昨日のが足りなかったのか。大した量なかったし、腹にたまらなさそうだったし」

 

 自分で納得した様子を見せつつ、調理していたモノを大皿に移す。そのまま隣のフライパンの中身を取り出して新たに何かを置き、さらに隣にある大鍋の中身を掬って味見をする。どう見ても量が一人で処理できる量ではないので、大変信じがたいことなのだが……コミュニティのメンバー分の朝食を作っているようだ。

 

「……もしかして、だが。私が勘違いしていただけで、実は雑用係程度の立場だったのか?」

 

 もういっそ、そうであってくれた方が納得できるのだが。

 

「いんや、昨日もちょろっと言った気がするけど、このコミュニティではそれなりの立場を貰ってるよ。これでも最強戦力その2なんでね」

 

 と言いつつギフトカードから何匹かの魚を取り出し、包丁でもって切り分けていく。大した時間もかけず、馴れた手つきで解体されていくそれ。達人というレベルにあるのかまでは私には判断できないが、少なくともプロと比べても遜色ないのではないか。

 

「それにしては、雑用になれている様子だが」

「元々いた家で色々と、な。おかげさまで和食だけに絞ればプロと勝負できるくらいになった」

 

 なるほど、そういうことならその手つきについては納得するよしよう。だが問題はそこだけではない。

 

「だからって、何故朝食を?趣味でやっているのかもしれないが、そうやって下の仕事を上が奪うのは組織としてよくないだろう」

「ハッ、料理が趣味?んなわけあるか、俺は最低限食える味ならそれでいい、って派閥だ。こんな技術、磨くだけ無駄なモンだろ」

 

 何故それだけ料理が出来て、その結論に至るのか。

 

「じゃあ、何故?」

「昨日の夜、金糸雀と将棋で簡易的なギフトゲームをして負けた。これはその結果だよ」

「つまり、勝者がその権利でもって敗者に対して朝食を準備するよう要求した、と?」

「そういうこった。まあ確かに、暇つぶし程度のゲームに対してならこれくらいが妥当なんだろ」

 

 これだけの大人数で構成されるコミュニティだ、全員分の朝食を準備するとなると仕事量はそれなりに大きなものになる。だが、それだけだ。本人が料理を得意としている以上その負荷もある程度下がるのだし、妥当と言えば妥当なのかもしれない。

 などと考えていたら、目の前に二つの器と一つの小皿が。米が盛られた器と、茶色のスープが入った器と、野菜が乗った小皿。

 

「これは?」

「朝食はまだできてないしお前の分も準備する予定だから、それまでの繋ぎだ。さっき温めたメシに味噌汁、漬物……繋ぎならそれで十分だろ」

 

 因みに朝食は炊き立てご飯と同じみそ汁、焼き鮭、卵焼き、漬物なーといって背を向けて調理に戻る主。空腹なのは事実だしもらえるのなら貰っておこう、ということでテキトーなテーブルへ移動して、スプーンを持って。さてどうしようかと考えてからスープ……味噌汁へ、スプーンを入れる。掬って、口へ。

 

「……美味しい」

「そいつはよかった。朝食に出すときはもうちょい手を加えてる予定だから、楽しみにしとけ」

 

 今でこれだけ美味しいものにさらに手を加えると言われては、楽しみにならない方がおかしいだろう。その時間を待ち遠しく思いながら、米を口へ。さて次はどうするかと考えて、まだ手を付けていなかった野菜を。コリコリッとした歯ごたえに知っている野菜とは違う味。馴れるまでは毎回驚きそうだが‥…うん、美味しいのは間違いない。

 

「なるほど、勝利報酬として要求するのもよくわかる」

「この程度で分かられるのもなんだか悔しいけど……ま、ありがとな」

 

 米が温めたものから炊き立てのものに代わり。味噌汁にはさらなる一手が加えられて。今ここにはない品目が追加される。今でも十二分に美味なものがさらに美味に、さらに豪華になる。あぁなるほど、これは勝利報酬としてぜひ手にしたいものだ。

 

「なあ我が主。従者としての提案なのだが、今すぐにでもプレイヤーをやめてコックへ転身すべきでは?」

「ふざけんな、出来るってだけで好きじゃねえんだよこんなの」

「だがこれをさらに開花させていかず、有効活用することもなく埋もれさせるのはどうなんだ?」

 

 冗談交じりに、しかし3割くらいは本気でそう言うと。

 

「知らねぇよ、そんなもん。才能があるからってそれを世のために生かすことは義務でもなんでもない。才能を持つ者に課せられる義務は『その才能を悪用しないこと』だけで、生かそうが無駄遣いしようがそれは本人の自由ってもんだろ」

 

 などと、思いのほか真剣な口調で言葉が返ってきた。料理程度のことでそれを言ってくるとは思えないので何か、有るのだろう。何があるのかは分からないが……もしかすると、出てきたという家に関係しているのかもしれない。

 そうであるのなら、あまり首を突っ込まないのが正しいのだろう。そう判断してそれ以上言葉を発することはなく、軽食を終えた。

 

 

 

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 さてどうしたものか、と。割と本気でそう悩み始めてしばらくたった時のこと。とりあえず完成したっぽいし、と言う理由で真っ黒な契約書類を何枚か張り付けておいたのだが、どうやらそれを見たらしいヤツがゲームに挑戦してきた。

 はっきり言おう。まるで意味が分からない、と言うのが本音であった。自分が現在魔王と呼ばれる天災になっていることくらい、さすがの私も把握している。それに挑む、と言うその行為がもはや意味が分からない。討伐体単位で来たならまだ分かるが、1人である。単騎駆けである。もう本当に意味が分からない。まあでも挑まれたし、ということで。従僕達が向かっていくのは止めなかった。

 

 最近ただのバカ説が出てきたけど、まあそれでも優秀なやつらだし、大丈夫でしょう。

 

 

 

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 炊き立てのご飯、味噌汁、焼いた魚、卵焼き、漬物からなる朝食を満足いくまで楽しませてもらって。それからすぐ、私は主と共にいた。

 

「それではこれより、お前の本拠における仕事を案内していく!」

「それもお前がするのか」

「同じ抗議を金糸雀にしたら、『お前のせいで組んでた予定が崩れたから、しばらく仕事ない』って言われてな。ヒマだから担当することにした」

 

 酷すぎる理由が返ってきてしまった。と言うかそうか、偵察の結果を待って私への対処を予定していたのか。普通に殺されてた可能性を考えると恐ろしいものがあるな。

 

「つーわけでまずはここ、昨日も来た農園周辺」

「ここでは何を?」

「必要に応じて全部だな」

 

 雑すぎるだろ、コイツ。

 

「まあココ、ホントに色々と育ててるからお前の経験が生きるところもあるだろ。大枠の担当はいるし、そうじゃなくても仕事の割り振りは丁寧に行われるし、これといった問題はないだろ」

「役割の分担はしっかりと行われている、と。当然ではあるが、その辺りの諸々がしっかりしているんだな」

「まあ、この手の生産ラインが死ぬと土台から崩れるしな。ある程度の規模を獲得した段階で、こっちも揃えていくさ」

 

 揃うまでの間はゲームで勝ってその報酬で獲得する、買うという手段もあるのだろう。しかし、それではどうにも非効率的にすぎない。大所帯になればなおさらだ。で、こうなった、と。

 

「こっちでも財源を立てていけるだろ」

「その気になれば立てていけると思うぞ。まあでも、コミュニティの設立理由的な部分を考えるとそれはやれないだろうなぁ」

 

 そう言って足を進める主の姿。やはり何か明確な、それも変えることがありえない目標が存在しているが故のコミュニティなのだろう。彼が参加しているのはそれに賛同しているが故か、言っていた敗北からの契約か、もっと大きな理由があるのか。

 

「そんでもって、農園関連の道具はここの倉庫に入ってる。必要に応じて持っていくように」

「服装なんかは?さすがにこれでやるわけにはいかないだろ」

「まあそれでやってくれても付与してあるギフトで酷いことにはならないだろうけど……」

 

 メイド服一つにどれだけ金をかけてるんだ、このコミュニティは。

 

「まあ、うん。ヒラヒラしてるし怪我の元か。明日までには準備させておくから、あとで採寸に行ってきてくれ」

「どこに?」

「あの部屋。今日なら多分部屋にいるはずだから、俺の名前を出して農園作業用の服、って言ってくれれば」

 

 そう言って指された部屋をしっかりと記憶しておく。あとで、と言うのがどれくらいの時間になるかはわからないが、今日中には訪問することにしよう。

 

「で、次。隣の倉庫に入っているのが外掃除関連の道具です」

「掃除もするのか」

「まあ、うん。しばらくやってもらってこれを選任するのがいいな、ってなればそっちに行くけど、それまでは色々と試す方針で」

 

 となるとまだまだ覚えることはありそうだ。と言うか、本当に無駄に広いから場所を覚えるだけでも一苦労だろ、これ。生活しながら順に覚えていくしかないか。

 

「さて、そんな感じで外で確実にやる仕事の場所はこんなところだ。次は屋敷の中について諸々案内していくから、戻るぞ」

「……先に屋敷の中を案内した方が早かったんじゃないか?」

「台所が確実に仕事中だっただろうからなぁ。順番的にこうなっちまうんだよ」

 

 あー……まあ確かに、仕事をしているところに邪魔するのは申し訳ない。この主がそんなことを気にするとはまるで思わなかったが、そういうことならば仕方ない。

 

「それにこの後は生活範囲の案内をしつつ届け物をする予定だから、荷物持ちだすのは後にしたかったし」

「それ、ギフトカードに入らなかったのか?」

 

 その手があったか、という表情をされてしまった。どうしよう、ホントにどうしてもこの主の評価を固定できない。と言うかギフトカードの存在すら忘れてるとか、どうしたらいいんだコレ。

 

 

 

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 ごまかしようがないからはっきり言ってしまおう。驚愕した。何せそれなり以上に強い、あの戦争を勝ち抜いたやつらだ。そうでなかったとしても数の暴力を行うには十二分極まる数であったし、その勝利はほとんど疑っていなかった。強いて言えばそれすら覆すだけのギフトの存在だけは怖かったのだが、しばらくその立ち振る舞いを観察した結果それは無いと判断できた。にもかかわらず、あれはまた一人斬り殺した。

 

 単騎でもって万軍を打ち砕く。そんなバケモノが実在するのだと、初めて知った。

 

 

 

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「いやー……疲れた」

「それにしては終始楽しそうにしていたようだが?」

「人付き合い、ってもんがあるだろ。もし仮にヘットヘトに疲れてたとしても、それを出しちゃいけない場はあるんだよ」

 

 そんな似合わないことを言ってベンチに腰を下ろす。少女は見ていられなくなり、手に持っていた飲み物を渡した。

 

「おー、サンキュ。貰っていいのか?」

「一応は従者、それくらいはするべきでは?」

「なるほど、言われてみればその通りだ」

 

 そう言って受け取り、ゴクリゴクリと喉の奥へ飲み物を流し込んでいく。それなりに飲んで落ち着いたのか、ふーと息を漏らして姿勢を正した。場所がちょっと広くなり、少女が十二分に座れるだけのスペース。躊躇うことなく、そこに腰を下ろす。

 

「とまあ、あの辺りが俺が個人的に付き合いのある相手だから。今後はオマエも関わっていくと思う」

「まあ確かに、関わりが深い相手には見えたな」

「好きで付き合いのある相手もいれば、お互いに都合があって付き合いがある相手もいるけどな。まぁそれでも、友好的なヤツだけだ」

 

 つまり、友好的ではないつながりもある、ということだろう。本当にお互いを利用しているだけの、隙あらば潰してしまおうと考えるような。あるいは、非合法的手段を行う類の集団が。

 

「それにしても、なんだってあれだけの数のコミュニティと個人的付き合いを?交渉事なんかが必要なら、コミュニティに任せてしまった方が楽じゃないのか?」

「あー、それは確実に楽なんだけどな。中にはそうもいかない相手もいるし、そもそも俺個人としては得があるけどコミュニティにとっては得が無い相手もいるというか……」

 

 本当に個人的な付き合いらしい。コミュニティに所属する者としてホントにそれでいいのだろうか。

 

「あ、そうだそうだ。今の内にこれ渡しとく」

 

 と、話を切り替える意味もあったのだろう。あたかも今思い出したかのように懐へ手を伸ばし、手のひらサイズのカードを取り出す。

 

「ギフトカードか」

「ああ、ギフトカード。今後コミュニティでやっていくには必須なものだから、今の内にな」

 

 そう言ってギフトカードを渡す。既に記されているのは名前、旗印、保有ギフトのみ。何かを入れて渡したというわけではないようだ。

 

「なんだか今更感があるが、良いのか?」

「と言うと?」

「元魔王で入ったばかりの者にここまで与えて、だ。警戒心がなさ過ぎるように思うが」

「俺の隷属下にあるんだ、どうせ何もできねぇだろ」

「そういうことにしたいなら、隷属の契約を使って縛ったらどうだ?」

「あらら、言われちまった」

「誤魔化さないでいただけると」

 

 と、改めて強い口調で言う。彼女にとってそれなりに気になることなのだろう。そして。

 

「……うん?それ、本気で聞いてたのか?冗談じゃなく?」

 

 それが心底以外であったかの様子で、そう聞き返す。

 

「そこまで意外か?あのギフトゲーム、あれで正解だったのに?」

「……むしろ意外に思うのが普通だろう?」

「いや、それは……うん?」

 

 何かが引っ掛かる様子で首を傾げ、体の向きを変えて少女の瞳を見る。黒い瞳で見たかと思えば茶に代わり、朱に染まり、蒼に満ちて、黒に戻り。

 

「あー……あー。なるほど、そう言う感じだったのか。それは知らなんだ」

「うん?」

「いや、何でもない。どうにもお前が自分のことを勘違いしてるっぽい、ってことを理解しただけだ」

 

 そう言って改めて姿勢を戻し、少女の方を見ることもなく話を続ける。

 

「俺がお前の扱いをこうしてるのは、必要ないからだよ。少なくとも今のお前に、こっちを裏切るだけの理由がない」

「論理的思考から理由がないというのは、さすがにバカの思考では?」

「あぁ、それはホントにバカの思考だな。損得勘定でないと切り捨てるのは、感情って要素を無視する無意味極まりない思考だ」

 

 さて、ではどのような理由からその結論を出しているのか。その答えを告げるために、少女の頭に手を乗せる。

 

「俺がお前に対して何一つ警戒してないのは、復讐を成した抜け殻がそんなことを考えられるはずもないからだ」

「……抜け殻?」

「あぁ、抜け殻だ。さあ、しっかりと思い出せ。その生涯のハイライトを。そしてその終わりに訪れた感情を」

 

 言葉と共に、意識は深く落ちていく。

 

 

 

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 気が付けば、自らの軍勢は全滅していた。元々召喚していたモノも、数が減ったために追加で召喚したモノも、一切の差別なく。すべて平等に一刀両断されていた。私の目も節穴だったのだろう。その手に持っていた剣は、間違いなく業物でしかない。人間を、馬をあれだけ一刀両断にして血脂に鈍ることもなく、骨によって欠けることもない剣なんてそれだけで武器として強すぎる。まあそれでも、全て殺されたのは事実だ。

 

 主催者として、求道者として。私は、問いを投げかけた。

 

 

 

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「問いましょう、我が軍勢を打ち破りし戦士に。我が問いの答えは」

 

 言葉と共に剣を抜き、地面へと突き刺す。問いかけられた側は手に持つ剣……日本刀を鞘へしまい、契約書類(ギアスロール)を取り出す。

 

『ギフトゲーム名“La Pucelle Le doute”

 

 ・プレイヤー参加条件

   ・以下の条件を満たす者

     1:参加を望む者

     2:主催者から参加を望まれた者

 

 ・プレイヤー側 勝利条件

   ・主催者側軍勢の壊滅

   ・主催者の心を述べよ

 

 ・ホストマスター側 勝利条件

   ・参加者の殺害

 

宣誓 上記と我が心に従い、ホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

                “ジャンヌ・ダルク”印』

 

 ここで問われているのは勝利条件の片割れ、「主催者の心を述べよ」のことだろう。勿論、このどちらかを満たせば参加者側の勝利である以上無視してもいい程度の物だ。にもかかわらず、男は刀をおさめた。それはすなわち、その問いに答える意志がある、ということだ。

 さて、ここまで情報の無い中から心などと言う、存在するのかすら怪しい不確定な要素をどう答えるつもりなのか。そもそも、何に対しての心なのかすら分かっていない。トドメにその答える対象は救国の聖処女、ジャンヌダルクだ。

 

 もし仮にその心を読む対象がただの人間であれば、まだ簡単だったかもしれない。ただの人間であればその思考もまた普通のものであり、読むことも容易いだろう。

 しかし、今回の対象は英雄であり、その中でも聖人と呼ばれるに至った、極めつけのキチガイである。自らの欲のためにその生涯を生き英雄と呼ばれるに至った種類の英雄ではなく、その他の何かのために自らを斬り捨てた聖人と呼ばれる種類の英雄。どこからどう考えても人間の思考はしておらず、キチガイのそれでしかない。そんな人間の感情を、果たしてどう答えるのか……

 

「すっきりした」

 

 されど、そんなことは何でもないと言わんばかりに。何のためらいもなく、一瞬でその言葉を口にする。同時に、拳を全力で鳩尾に叩きこむ。少女の口から空気が漏れ、意識は闇に沈んだ。

 

 と、見せられるそんな光景。早送りのように、ハイライトのように、ほんの短い時間での生涯の振り返り。しかし、少女はなぜそれが答えとなったのかを、未だに理解していない。

 

『さて、お前が何にスッキリしたのか。それは言ってしまえば、召喚した軍勢の全滅だ』

 

 そんなところへ、男の声が響いてくる。

 

『さて、どうやらお前は自分に感情が無いと考えている様子だが、それは正確じゃない』

 

 前からでもなく、後ろからでもなく。右からでも左からでもない。一体どこから聞こえているのか分からないのに、だからと言って空間全体に響いているわけでもなく。ただ音だけが、不確かに伝わってくる。

 

『確かに、基本的な感情は気迫を通り越して消滅してるんだろう。だがそれでも、全て消滅しているわけじゃない』

 

 そしてその声は、そうであるが故に。ただ音だけが直接届いているが故に。その感情を、どこまでも揺さぶっていく。

 

『まぁ何とも、ジャンヌ・ダルクって名前には似合わないもんだが……少なくとも一つ、大きすぎる感情がある』

 

 大きすぎる感情。それは、生まれ持ったものなのだろう。その人間の根幹的部分を構成している感情。環境がどうとか関係なく、何がどうなろうが変わることのない、そんなもの。では、それは何なのか。

 

『それは、破滅、滅びへの喜びだ』

 

 そして。それははっきりと、告げられた。

 

『そうは言っても、自分の滅びではない。望むのは、自分へと重荷を背負わせたモノなどの滅びだ』

 

 より簡潔に言ってしまえば、自分へとモノを押し付けた存在の滅びを。そう言ってしまえばある種、自然なものかもしれない。唐突に言われたとしてもだからどうした、当然だろ、と返してもよいような感情。

 されどそれは。少なくとも、聖女と呼ばれる人間が持っていてはいけない感情であり。

 ないと思っていた立場にしてみれば、衝撃的でしかない感情だ。

 

 

 

 ========

 

 

 

 心地よかった。馬鹿々々しかった。おもしろかった。最高の喜劇だった。ああそうだ、確かに彼の言うとおりだ!

 私みたいなガキに軍の指揮を任せやがったフランス軍に壊滅を!

 私みたいな無知に国の行く末を望みやがったフランスに滅亡を!

 そして、生まれと名前で救国の聖女としての運命を決めてくれやがった三匹のクズに死をも生ぬるい破滅を!!

 私が生まれもったギフト、代償の霊格。人間の持つ基本構造、優先度の低いものから順に削除することで魂に空き容量を作り出し、疑似的な霊格を生みだすモノ。場合によっては容量を生みだし、本来身に余るほどのギフトすらも受け入れられるようにするソレ。まさに急造の英雄を作るためにあるようなギフトは、救国の聖女となるために、というクソのようなお題目の下押し付けられたギフトは、私から次々と感情を奪っていった。何一つ残っていないだろう、と言うレベルで感情が消失し、それでは軍からの信頼を獲得できないからとそれまでの自分を模倣し続けて。もう自分の感情なんて何一つないのだろうと思っていたのだけれど、どうやらまだ感情は残っていたらしい。なるほど、私は魔女になるべくしてなったのか!

 

 あぁ、この黒い感情は、この上なく心地いい!!

 

 

 

 ========

 

 

 

「おーおー、何とまぁすっきりした顔をしちゃって。これは無駄踏んだかな?」

 

 そんなネガティブなことを言いながらも面白そうな笑みを浮かべる男。その眼前には確かに、妙にすっきりとした表情と邪悪な笑みの混在した顔つきをしている。

 

「さて、まあ仕方ないから隷属の契約を介して命令な。俺やコミュニティに対する反乱に値する行動をすべて禁止する」

「別にわざわざ言わなくても大丈夫ですよ?ここまでスッキリできるとは思ってなかったので、その恩返しくらいは考えます」

「ハッ、むしろだからこそ怖いんだろうが」

 

 なるほど、道理である。自身と言う矮小な存在に期待し押し付けてきた存在の滅びを望み、滅んだのなら心の底から歓喜する性質の持ち主だ。どう信頼しろと言うのか。

 

「さて、と。それにしても、これ自覚させちゃったせいで聖女ってより魔女とか、そっちになりそうだなぁ」

「そうでも無いと思いますよ?皆様からしたら残念なことに、私はすでに聖人としての霊格を預かっている上に後見人もいない状態です。もし仮に一万人虐殺、とかやってもこの霊格がぶれることはないですよ?」

 

 なんて酷い詐欺だろうか。

 

「それで?私のご主人様は、今後どのようになさるつもりで?」

「それを聞いてどうするつもりで?」

「いえ、ただ知っての通り感情がロクにないモノですから。何かこう、面白そうに装えるものが欲しくて」

「あー、なるほどなるほど。んー……」

 

 などとしばらく考えて。

 

「俺、オマエ以外にも3人単独で魔王ブッ飛ばして隷属させてるんだけどさ」

「もしかしなくてもおバカなのですか?」

「結構色んな人に言われるんだよなぁ、それ」

 

 誰であっても言うだろう、これは。

 

「まあそうやって個人的な戦力増やしたり個人的な繋がりを増やしてるのにも、それなりに理由があるわけだ」

「あるんですか」

「あるんですよ。ってか、口調それで行くのか?」

「あ、はい。どうするかなー、って悩んだんですけどこのコミュニティではこれが一番しっくりきそうなので」

 

 感情が薄い女は、自分の口調すらどうでもよかったらしい。

 

「まあそれならそれでいいや。んで目的だけど……元々いた家を滅ぼす、ってのが目的だ」

 

 しれっと一族を滅ぼそうとたくらんでいやがる。

 

「芦屋っつー日本出身のちっせーコミュニティなんだけどな。まあウザくて家出したわけだ」

「古い家と言うモノは何やら様々な面倒事があるとか」

「まあその辺の諸々だ。おまけで、なんか生まれつき一族の諸々を継ぐのにちょうどいい素質があるとかで更に面倒だったわけだ」

 

 きっとこれが、食堂での話につながるのだろう。

 

「とまあそんな感じで、元々は家出したらそれで終わりのつもりだったんだけどな。コミュニティに所属して生活困りそうにないし、個人的な戦力を揃えて正式なゲームの下勝てば滅ぼせる状況を準備して。そうしたら大手を振って滅ぼす予定だ」

 

 とまあ、そんな野望を告げられて。仮にも秩序側に立ちそうなコミュニティに所属しているにもかかわらず普通のコミュニティを滅ぼそう、などと画策している様子には。

 

「それ、とっても最高ですね。全力で付き合いますよ」

 

 救国の聖女は、心の底から笑うのであった。

 




ふぅ……さて、改めまして。
新年明けましておめでとうございます。
あいも変わらずこのようなスタンスでやっていくような
もうマジで自分の書きたいだけで行動するような1年になると思われます。
というか投稿頻度は卒論の追い込みとかその後は卒業旅行行って就職して、なので
さらに下がることと思います。
VTuberも面白い人多くて見るのに時間取ってるしね。
とまあそんなわけで。そんな私でもよければ、また1年間、どうぞよろしくお願いいたします
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