/ 帰り道
真夏の暑い日の夜の道を凛は歩いていた。
夜といってもまだ薄暗い感じで一人でも帰れるくらいの明るさはある。
凛は今3年生。つまりは受験生で今日は真姫ちゃんの家で勉強をしていた。
いつもだったらかよちんも一緒なんだけど今日は用事が入っていたので凛と真姫ちゃんとのマンツーマンだった。
すっごい厳しかったにゃ・・・・。
でも勉強が苦手な凛にもわかりやすく教えてくれる二人には頭が上がらない。
今度ラーメンでも奢ってあげよう。
空を見上げると星が瞬いている。
薄暗い夜空ではっきりとは見えないけどそこにあるのは分かる。
凛ちゃん、星はね自分の命を燃やして今を生きてるんよ。
ほうき星は本当にその一瞬だけ強く輝いてそのまま消えていくんや。
ふと希ちゃんの言葉を思い出す。
希ちゃんと天体観測をやっていた時に教えてもらった言葉だ。
星は生まれた時から死ぬまでずっと光り輝き続ける。
その中でも今を輝くほうき星はその瞬間精一杯輝くから記憶に残る。
そんな事を言っていた希ちゃんは凄く寂しそうで。
その表情は凛の頭の片隅にずっと残っていた。
思い出したら星を見に行きたくなっちゃった。
そうだ、今夜は星を見に行こう。
そう思いつくと心が軽やかになり家に向かう足取りが自然と早くなる。
うー、テンション上がるにゃー!
/ 追憶
希ちゃんとはよく星を見に行っていた。
きっかけはμ‘sの夏休みの合宿の時。
夜の練習の時いなくなっていた希ちゃんを探しに行ったときに屋上で一緒に眺めていたことが始まり。
その日以降凛は星に興味を持って希ちゃんと月に1度の間隔で天体観測をしていた。
希ちゃんは意外と星の事に詳しくて凛に色々教えてくれた。
星座にまつわる伝説、星の名前、星の種類。
その中で一番印象に残っているのが星の寿命の話。
今思えば希ちゃんは悩んでいたのかもしれない。
希ちゃんは音ノ木坂学院を卒業した後神道を学ぶため大学へ進んだ。
そこで同じ道を学ぶ1人の男性に出会った。
いつか写真を見せてもらったことがあった。落ち着いた優しそうな人だった。
希ちゃんもその人も意気投合して付き合うことになった。
その時と同じ頃に凛との時間が取れなくなってきてしまい段々と間隔があいてきた。
そして去年の8月。
それ以降希ちゃんと会わなくなった。
/ 真夜中の思い出
真夜中の午前2時。凛はこっそりと家を出る。
スマホで天気を確認する。よかった、雨は降らないみたい。
リュックサックの中身を確認した後背負って望遠鏡を右手に担ぎ、速足で目的地へと駆ける。
踏切を渡って長い坂道を進んでいくと広い原っぱが見えてきた。
ここはよく希ちゃんと一緒に星を眺めに来たお気に入りの場所。
丘で少し高くなっている場所に向かい、そこにビニールシートを敷き担いできた天体望遠鏡を組み立てる。
この望遠鏡は真姫ちゃんからもらったもの。凛が天体観測をしている事を教えたら快く渡してくれた。
使い方もちゃんと教えてもらって今でも大切に使っている。
組み立て終わり、一息つく為にリュックサックから食べ物とペットボトル、魔法瓶を取り出す。
取り出した食べ物はもちろんラーメン!一緒に持ってきた魔法瓶からお湯を注ぎお箸で蓋を押さえる。
スポーツドリンクを飲みながら希ちゃんといた頃を思い出す。
希ちゃんはいつも約束する時間よりほんの少しだけ遅れてきていた。
凛はいつも軽い荷物なのに対して希ちゃんは結構な荷物を持って来てたなぁ。
一度だけそんなに荷物必要なの、って聞いてみたことがあったけど。
「備えあれば憂いなしってゆうやん♪」
て返されたっけ。
ただその荷物に助けられたこともよくあった。
予報外れの雨が降った時は傘を貸してくれたりとか。
その日たまたま夜食を忘れちゃった時に希ちゃんが多めにお弁当作ってくれてたりとか。
何でわかるのって聞いたら希ちゃん曰く。
「スピリチュアルやね♪」
スピリチュアル凄いにゃ。その時思わず声に出しちゃっていた。
そろそろ三分経ったので蓋を外してラーメンを啜る。
小腹にラーメンが染み渡る。
おいしいにゃ~♡
そういえば希ちゃんがいた時は星を見つけることでよく遊んだっけ。
お目当ての星を見つけた後図鑑に載っている咄嗟に指差した星を探したり。
逆に何もないところにあるであろう星を見つけようと躍起になったり。
ある時大きな尾を引いたほうき星を見つけたことがあってその時に星の寿命の話を聞いた。
「イマ」を生きるほうき星。
きっと希ちゃんは何かと重ねていたかもしれない。
それは凛にはわからないけどきっと大切な事。
それがきっかけで凛と会うのをやめたんだと思う。
でも凛は止めなかった。
希ちゃんに会えなくなるのは少しだけ寂しいけど、それでも希ちゃんが自分で決めたことだったらと思えば凛は受け入れた。
ラーメンを食べ終え満腹感に浸る体に気合を入れて立ち上がる。
見上げれば満天の星空。澄み渡った夜空は天体観測には最高の状態だ。
希ちゃんには希ちゃんの追いかける「イマ」があって。
凛には凛の追いかける「イマ」がある。
実は今日何を見つけるかはもう決まっている。
運任せになっちゃうけどなんだか見つけられる予感がするから。
/ またふたりで
「だーれだ?」
突然望遠鏡を覗き込もうとした凛の目の前が真っ暗になり耳元で呟かれた。
あまりの出来ごとだったので咄嗟に体を捻り海未ちゃん直伝の肘鉄を後ろにいる相手に当て、前に飛び距離をとる。
そして構えて相手を見据える。
「ぐふっ、やるなあ凛二等兵・・・・。いちち・・」
そこにいたのは希ちゃんだった。
「希ちゃん?!」
「久しぶりやね・・。しかしすごい体捌きや。思わず海未ちゃんが変装してるかと思ったわ」
「一人で出歩くのは危険だからって海未ちゃんが護身術を教えてくれたんだ。ってその話は置いといてどうしてここに?!!」
警戒を解いて希ちゃんを見る。髪形が変わっているけど優しい雰囲気はそのままだ。
いや、前より胸が大きくなっている気がする。
なんだか大人の魅力を感じるにゃ・・。
「ウチ凛ちゃんに謝りたくってな。カード使ったらここにおるって出たから来てみたんや」
希ちゃんはタロットカードを指に挟み微笑んだ。
いや希ちゃんスピリチュアルすぎるよ。凛天体観測の事もこの場所に来る事も誰にも言ってないんだよ?
「実は神道学が忙しくなってな。他の行事も重なってなかなか時間が取れなくなったんや。でも連絡は入れようと思ったんやけど連絡しても音沙汰ないし」
「・・希ちゃん、凛の携帯変わったの知ってる?」
「えっ」
しばしの沈黙。凛ちょっとした不注意で携帯壊しちゃって、それで新しいアドレスをμ'sのメンバー全員に一斉に送ったはずなんだけど。
希ちゃんは携帯の履歴を確認しているらしく画面を凝視していた。
「本当にすいませんでした!!」
凛が送ったアドレスを確認したや否や希ちゃんは間髪入れずその場で土下座していた。
気のせいか様になっている気がした。
「気にしないでよ!それに凛も連絡しなかったのも悪いし、おあいこだよ!」
「凛ちゃん…!ほんとにゴメンな?」
希ちゃんは申し訳なさそうに立ち上がる。
「大丈夫だよ。凛は彼氏さんとの時間を大切にしてるのかなって思ってなかなか連絡出来なかったし」
「そうやったん。確かにあの人と過ごす時間も増えてきてるよ」
希ちゃんは思い出すように目を閉じる。
「あの人に諭されたんよ。僕との時間を大切にしてくれているのは凄く嬉しい。ても君の大切な友人との時間はもっと大事にしなくちゃ駄目だって。だから」
希ちゃんは凛に近づいてきて凛の右手を取る。
その顔は輝くような笑顔で、掴んだ手は凄く暖かくてとても優しい。
「さぁ凛ちゃん。始めよう」
凛はちょっとびっくりしたけど力強く頷く。
また希ちゃんと星を見られる。
同じ場所で同じものが一緒に観られるとわかると凄くうれしい気持ちになった。
「ねぇ希ちゃん」
「なに?」
「凛ね、今日何を見つけるかもう決めてるんだ」
「奇遇やね、ウチもや」
おそらく答えは一緒だと感じた。それは希ちゃんも同じみたい。
お互い顔を見合わせながら笑顔で答え合わせをする。
「「ほうき星!!」」
「ラブライブ!」×「BUMP OF CHICKEN」
星空凛「天体観測」 了
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