試作の試作   作:かのえ


原作:艦隊これくしょん
タグ:執筆断念供養
「艦娘たちの憂鬱」は本当はこんな感じで書こうかなと思ってたっていうただそれだけ

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途中までしか書けてない


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 この鎮守府に提督と共に着任した駆逐艦『電』は最近悩みを抱えていた。同室である暁型四隻のうち二隻に対してその悩みを口にするのはどうもな、と思ってしまうために電は容姿も瓜二つな姉妹艦の『雷』に相談することとした。

 この雷という艦は電と同じく幼い容姿をしているのだが、その包容力というか母性はこの鎮守府でもトップに食い込んでくるほど。色々な艦から頼られ相談される彼女に声をかけたのは姉妹艦だからという理由以上にそういうところが大きい。

 

「なーに、電」

「あの、ちょっとお話したいのです」

「わかったわ」

 

 雷はここに最初期に着任した古株なのと、常に提督にひっついて秘書艦をしている電の相談をよく受けることから鎮守府のことをよく知っている。さて、最近特に鎮守府には問題が無かったはずだけれどどうしたのだろうかと思いつつ、電に連れられて自室へと入った。

 今は同型艦の『暁』『Верный(響)』共に出撃しているために部屋はちょっぴり寂しい。近くにあったクッションにぽすんと雷が腰掛けると電は彼女の正面に体育座りになる。

 

「で、今日はどうしたの?」

「あの、雷ちゃん。最近電たちって最前線に出ること少なくないですか?」

 

 彼女の悩みはこれだった。姉二人は改装の結果、ただの駆逐艦とは一線を画した存在となっている。

 

「けれど私たち駆逐艦の仕事って裏方の輸送や護衛任務をやってなんぼよ」

「それでも、お姉ちゃんたちだけが前線で戦って、電はそれを見るしかできないなんて……」

 

 電は優しい性格だ。自分たちのこなしている任務も当然危険が伴ってはいるのだが、最前線のそれこそ凶悪な敵がわんさか湧いてくる海域に何度も何度も出撃していく姉たちの姿を見て何も思わないはずがない。けれども、もし姉の代わりに自分が出たとして足手まといになってしまう可能性があるのだって分かる。

 だがそうは言ってもだ、『前』に大きな戦果を上げたのは優れた艦だけではない。旧型艦ながら大立ち回りを演じたりした船だっているのだから。

 

「それに『今』の戦いは『前』とは違うのです」

「そんなこと、赤城や加賀の前で言っちゃだめよ」

 

 電の言う通り『前』とは違う。敵は人ではないし、戦いといっても実際はほとんどが一方的なものだ。スズメバチ駆除みたいなもので、よほどのことが無い限り命に関わる事態は起きない。ここで言う『よほど』というのは強い敵が跋扈する最前線である。

 電たち艦娘がやっているのは基本的には日本近海に現れた深海棲艦というものの駆除であり、戦争なんて大掛かりなものではない。深海棲艦らが出現した当時は違ったのであるがここ最近ではニュースにも滅多にならない、ありふれた日常になっている。

 

 だが雷が口にした『赤城』や『加賀』といった艦はこういった勝利が当然の実情に対して慢心することを嫌う。なぜそうなのかは彼女らの『前』のことが大きく関わってくるのだが。

 

「それに、雷からすれば電のそれは贅沢な悩みよ。私だってもーっと司令官に頼ってほしいのに、頼られるのはいつも電たちじゃない」

「それは……」

 

 ねえ電、と雷は両腕を組む。彼女のそういった姿は堂に入っていて心なしか電の背筋がぴんと伸びた。自分と良く似た目が電をじっと見つめる。

 

「司令官は言っていたわ。私たちは四肢で、資材は食べ物。そして電たちは頭脳よ」

 

 食べ物が、栄養が無いのなら鍛えられた力を充分に発揮することはできないし、脳が無ければその力の方向をしっかりと決めて使うことは出来ない。艦隊という力を完璧に使いこなすのには資材を集めてくる遠征組の力に、電たちといった方向性を決める者の力がなければならないと言っているのだ。

 

「だから雷たちはみんな最前線で戦ってるのよ」

「そう、かな」

 

 どこか話を逸らされた気がした電であったが、確かに雷の言うとおりだと思いもした。艦隊の頭脳でありたいと言いながら実際は拳で語り合うことしか出来ない船だっているのだ。適材適所、という言葉が頭をよぎる。適所があまりないかも! という幻聴が聞こえた気がするがふるふると頭を振ってそれを払いのける。提督だってどう使えるか試行錯誤中なのだ。

 

「けど電に不満があるのなら司令官に言ってみるのもいいかもね。確かに電の言うとおり、船の性能差が絶対的に局面を左右する機会なんてそんな無いんだから」

 

 それに、と続ける。

 

「電だって司令官に直談判するつもりだったでしょう? 相談ってのは大体する前から本人ではどうするか決まっているものなのよ」

 

 まあこれは司令官の受け売りなんだけど、と照れ笑いする雷にやっぱりお姉ちゃんはすごいなと電は感心した。この姉には全てお見通しのようだった。

 雷は電に話があると言われた時に鎮守府には問題が無いはずだとは思い、そして最近提督に何か話しかけようとしてる様子がよく見られた電自身のことについての相談かなと思っていた。何か提督に言いたいけれども言い出せない、だから相談して後押ししてもらいたがってるのかも、と頭で考えながら雷は会話をしていた。

 

(背の高い女性も素敵でいいけれども、小さくても素晴らしい女性っているのです)

 

 電はそう姉への尊敬を深めながら脳裏にそういった女性たちを思い浮かべる。目の前の雷に夕雲や浦風といった駆逐艦。空母の鳳翔に軽巡の神通。

 そしてふと思う。

 

(あれ、背の高い女性の方がポンコツっぽいのです……)

 

 続けて思い浮かべてしまったのは多くの戦艦に重巡。彼女らの尊厳のために名前ではなくその姿だけ脳裏に思い描いた。

 いいや、その中でも素敵な女性はたくさんいる。長身の女性になるという夢は間違いなんかじゃないと電は思い直し、胸元に両手をもっていってふんすと気合を入れる。その姿はまるでポンコツっぽい某鉄血宰相の名を冠した戦艦を小さくした、電と同型艦の長女のようでいて、まだ素敵なレディには程遠いなと次女に言われかねない姿であった。

 電が立ち上がり、提督のもとへと向かおうとするとほぼ同時に、部屋の扉から控えめなノックの音が響く。

 

「あの、神通です……」

 

 その『前』の逸話から誰もからクレイジーな艦娘と思われている『神通』の突然の訪問に二人は顔を見合わせた。扉を開くとそこには何やら紙袋を持った川内型二番艦の姿があった。

 普段は凛と小柄なのになぜか背が高く見えるような美しい立ち姿でいながら海上では誰よりも苛烈に戦う彼女が今のようにシュンとして縮こまっているという、見慣れない者ならば驚く光景ではあるがもはや日常風景である。神通が何かを言い出す前に雷と電は慌てて応対する。

 

「神通さん、那珂さんに前のライブすごく楽しかったですって伝えておいてほしいのです!」

「電の言うとおりなんだから! 雷も那珂ちゃんみたいにキラキラしたいわ!」

 

 上(姉)と下(妹)の不始末に追われる姿を見て、中間管理職って大変そうだなあという感想を雷と電は抱いた。彼女とは比べ物にならない規模で対応に追われる中間管理職が近くにいるというのに、だ。

 

 提督の苦労艦娘知らずである。そしてまたその逆も言えるが。

 ちなみに先のライブでは提督、最前を確保しサイリウムを振り回していたようである。隣に同じくサイリウムを振り回していたのは夜ということで凄まじくハイテンションになった『川内』であった。

 結局のところ川内型三姉妹はそれぞれに振り切れている部分があるのでやはり姉妹って似るのだなあといった目で見られている。

 

 しばらくの間、神通に謝罪させまいと色々と姉妹艦を褒め殺すことで話をそらそうとする雷と電であった。

 

 

 

2

 

 もし『神通』という軍艦についてそちらに明るい人間に問いかけたのなら、皆一様にしてその戦いぶりや危険極まりない訓練について口にする。彼女に対するそういう評価は間違いではなく、確かに激しく戦った日本軍艦の一隻なのだ。

 

(なんだけど、ねぇ)

 

 どこをどう見てもすこし引っ込み思案で物静かそうな美少女である目の前の神通は武闘派になんぞ見えやしないと陽炎型駆逐艦ネームシップ『陽炎』は心のなかでつぶやく。儚そうに見えるが殺る時には殺る、なるほどこれが大和撫子なのか、というのが近しい人達の神通への印象であった。

 同じ造船所でつくられた面子も大井や熊野、秋津洲だったりと「カワサキか……」なんて言葉が提督から漏れたとか漏れなかったりだとかしたらしい(他の造船所も多数建造しているために濃いのは絶対いるが)。そんな彼は今、スピード狂いの露出狂駆逐艦を後ろに乗せ、某カワサキのバイクでツーリングに出掛けている。

 妹の9番艦『天津風』が妹分であるその駆逐艦に「バイクは危ないんだからちゃんと上着を着なさい!」と悪戦苦闘している光景はなんともまあ微笑ましいものだったと陽炎は回想する。

 

「あの二人をどうにかしたいの……」

「あー、うん。神通さんの言いたいことは分かりました」

 

 駆逐艦は必然的に彼女らより大型艦と比べると姉妹数が多くなる。多くの妹達をまとめ上げるそのネームシップは一目置かれることが多い。特に、陽炎型というこれもまたアクの強い連中をまとめている陽炎はなおさらだ。ツンデレ系、不思議系、小動物系などなど阿武隈なら確実に言うことを聞かせられない彼女らをまとめられるのは提督に陽炎だけ。

 そんな彼女に問題児の扱いの極意を伝授してもらおうと神通はいま頭を下げているのだった。

 

「とは言っても、特別なことしているわけじゃないんですけれど。それにほら、川内さんや那珂ちゃんもしっかりしてるですし」

「……しっかりしているのなら夜の苦情や勧誘お断りの話がもう無くなってるはずなの」

 

 川内のはしゃぎっぷりはそれはもうひどいもので、彼女が騒いでいない夜は皆無と言っていいだろう。那珂はアイドル活動に誘ったりダンス訓練に連れて行こうとしたりといった光景が多々見られる。

 神通にとって救いであり頭痛の種であるのは、それらに対する苦情は全て直接本人に述べられているということだ。そしてそのことが、皆が自分に気を使っているということの証拠であるのが心苦しい。

 

「いいじゃないですか、陸にいる間くらい。それにほら、暁型四姉妹なんて那珂ちゃんのライブとかすごい楽しみにしてますよ。江風なんて時雨や川内さんと一緒に夜戦にでかけたりするくらいですし」

 

 元四水戦のメンバーなんて那珂を相当慕っている。元二水戦が神通に対するそれと同じくらいに。現在アイドルを自称している那珂だが、なんだかんだ武闘派なのだ。ちなみに川内に対する尊敬はそういった戦闘の面ではない。彼女は地味に女子力が高いので、そういったところで尊敬しているのがちらほら見かけられる。白雪や綾波などが主にひっついている。

 

「それに考えてみてください。夜戦夜戦言わない川内さんにアイドルじゃない那珂ちゃんを」

「……二人じゃない、ですね」

「『らしさ』ってやつですよ。せっかくあたしたちは心と体があるんですから」


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