原作10巻の裏話的な妄想
ナザリック地下大墳墓9階層、至高の41人の一人にしてまとめ役であるモモンガことアインズ・ウール・ゴウンその人の部屋のベッドに蠢くものがある。
守護者統括アルベドである。
元々彼女は10階層の玉座の間が待機場所であり創造主の意向により個人的な部屋を持っておらず、アルベドのアイテムなども10階層に隠されていた。
そのためアインズが使われていない部屋をアルベド用にとあてがったのだがアルベドは用意された部屋を立ち入り禁止としてしまい、アインズの部屋に入り浸っていた。
そして主がいつベッドを使ってもいいように自分の香りで包んで差し上げようと励んでいた。
アインズは魔導国建国後、エ・ランテルの都市長宅に居を構えたためナザリックを不在にしがちであり、当然アルベドによるアインズの私室使用頻度は増した。その結果何が起きたのか……
◇◇◇
それはアインズが久しぶりにナザリックに戻った時のことである。
歯を磨こうと洗面台へ向かったのだが
───コップが2つある。
───歯ブラシが2つある。
「うん?……増えてる?メイドの誰かが置いていったのか?」
メイドに聞いてみると自分は知らないと言う。
ぱっと見、お揃いの品になっているのがわかる。
腑に落ちないがメイドの誰かが置いていったのだろうと、この時は深く気にしなかった。
◇◇◇
次の異変を感じたのはそれからしばらく経った頃のこと
───何着か服をいただければと思います。
アルベドがリ・エスティーゼ王国へ赴いた際に着替える服が欲しいというので自室の衣裳部屋に探しに来たのだが、部屋の一角が異彩を放っていることに気づいた。
「何だあれ?」
近づいてみるとアルベドが作った子供用の服であることが分かる。
「裁縫が趣味だったか?何か作ってるのは知っていたがここに置いていたのか」
見ればかなりの量がある、赤ん坊から成人くらいまでだろうか、生まれてもいないのにいくらなんでも気が早すぎるだろう。罪悪感を感じてしまうが今は着替えの服を探しに来たのだ、見なかったことにしようと視線を変えてみたら妙なものを見つけた。
「これは……」
男女用の服が数種類ある。
「これもアルベドが作ったのか?」
こちらも結構な量があるが手にとって───ゾッとした。
───服に
───ハートマークが
───描かれてる
「う、……これは俗に言う『ペアルック』……か?」
背中を汗が流れた。(背中もなければ汗も出ないが)
「まてまてまて、ちょっとまて。まさかオレが着るの?!」
すべての服にハートマークがあしらってあるわけではないが何時の間に作ったのか数が多い。謹慎を言い渡したことがあったがアレか?あのときか?
ハムスケに乗ったときも結構な恥ずかしさのある羞恥プレイだったが、これはヤバイ。恥ずかしさのヤバさが違う。
「骨のまま着るんだよな……」
仮にこのペアルックを着て二人並んで歩く姿を想像する。
「うおぉぉ……これはキツイ……」
頭を抱えてしまう。
そういえばとユニフォームの提案をした時のことを思い出す。
───度を越して下等な発想
───このような愚劣な提案
などと辛辣な返しを受けたがこっちはいいのか?それとも自分たち二人だけで着たかったのか?だから猛反対されたのか?などと考えるが答えは出ない。
精神安定化は働いているがダメージは大きく未だに引きずってしまう、見なかったことにしようと服を適当に見繕って部屋を後にした。
しかし事態は更に深刻化することとなる。
◇◇◇
アインズはアルベドが王国に出立するのを見送り、ナザリックへと戻ってきた。
アインザックを帝国へ連れ出す計画のために必要になりそうなアイテムを取りに来たのだ。
部屋の使用者がいなくなったため気持ちスッキリした気がする。ナザリックや国の運営のための中核が留守にしたことは心配であるが、しばらく静かに過ごせそうだと内心ほっとした部分もあり複雑である。
ふと、机の上に本?を見つける。
「アルバム?こんなのあったか?あぁ、アルベドの物かな」
なんだかんだ慌しかったので忘れていったのだろう。
「タブラさんの写真かな?」
開いてみると支配者のポーズをとったアインズが写っている。
「………」
「まぁ……うん……」
心の中でタブラさんにごめんなさいをする。
ペラペラとページをめくっていく、最初こそタブラさんに申し訳ない気持ちだったのだが、支配者然としたアインズの姿をこれでもかと撮った数々に内心感嘆していった。
「お、これとかカッコいいな」
自画自賛である。
次第にここはこうしたほうがいいなとか注釈を入れる始末だったのだが途中から内容が変わった。
そこに写ってるのはアインズとアルベドのツーショットである。
「……こんな写真撮ったかな」
よく見ると合成写真のようだ。
というか、今更ながら気づいたがどうやって撮ったという俯瞰視点のものがあったのを気づく。
「アルベドがカメラ持って写真撮ってたとか、そんな姿見たことないよな。ってことは誰か別のNPCが撮ってる?」
しかし、自分がいる場においてそんな行為を行ってる者は見たことがない。
アルベドと繋がりのあるNPCときてそこでようやく気づく。
「あー!ニグレドか!」
ニグレドは情報収集能力に特化したアルベドの姉だ。
戦闘など有事の際は遠隔視の鏡で監視させており、そのときのスクリーンショットだと思うが、見れば何時撮ったんだというものが大半を占めているわけで……
「あいつ、姉に何をさせてるんだ……」
ページをめくっていく。
最初こそ雑なコラージュだったのだが、段々慣れてきたのか、次第に精巧になっていき、見開きのパノラマで一大スペクタルの超大作のようなものが出来てきた。
「少しくらい一緒に撮ってやればよかったかな……」
更にページをめくっていくと
───恍惚とした表情で四つん這いになったアルベドが背中にアインズを乗せてる姿が写っている。
「…………」
そっと閉じた。
シャルティアに罰を与えるという名目で四つん這いにさせて座ったことがあるが「ご褒美です!」と言っていたのを思い出す。
「アルベド……」
なんかもう見なきゃよかった知らなきゃよかったと後悔するが後の祭りであった。
自分の記憶も魔法で消せたかな……などと考えていると
「ん?」
背表紙に何か書かれている。
【モモンガ様写真集 第三巻】
そんなタイトルが書かれていた。
◇◇◇
アルベドが王国から帰って来た。
アルベドとデミウルゴス不在の時に帝国の属国化などの問題を引っさげて待っていたとあって気が気ではなかったのだが、いつものように深読みされて済むだけであった。
ほっとしつつも益々吊り上っていく己の評価に胃が痛い思いである。
「一度、ペスに診てもらおうかな……」
現実世界なら間違いなくストレスで倒れているだろう。アンデッドの体に感謝しつつも真綿で首を締め付けられてるいるような状態は依然続いており、いっそ真実を全て明かし楽になりたいという思いであった。
しかし、NPC達の忠誠心は限界突破しており、ガッカリさせたくないという思いもあるため結局堂々巡りであった。
「とりあいずこの問題は後回しにしよう……」
そうして部屋にやって来た。次なる一手、ドワーフ王国へ赴くための準備である。
……のだが、部屋がおかしいことに気づく。
部屋を見回すと、さりげなくお揃いの品が置かれているのが目に付き、言い知れないものが背中に圧し掛かる。
(なんだろう、王国からのお土産とかじゃないよなこれは……)
そのとき「あっ!」と思い出す。いつか見た洗面台での歯磨き用品だ、あれもアルベドが置いたのだろう。
この部屋を生活拠点にしているのは知ってはいたが、今更ながら許可を与えたとはいえこんなところにまで侵食しているとは思いもしなかった。……というか自室を与えたのに何でここを拠点にするの?
そうしてアインズは目撃する。
ベッドの上に YES NO と書かれた2つの枕を
一瞬、頭が真っ白になったがすぐに引き戻された。
猛烈にヤバイ予感がする……
というかマズイ、下手すると今夜にでも貞操の危機を迎えかねない。すでに一度襲われており、謹慎を言い渡してからしばらくは表面上は何事もなかったのだがどうやら水面下ではアプローチを変えて虎視眈々と狙っていたらしい。
このままでは既成事実を作るため、こちらの想像も出来ないような搦め手で迫ってくるかもしれない。
頭痛がする、胃が痛い、幻肢痛がこれまでにないくらい訴えてくる。
設定改変の負い目から強く言い出せず、未だに問題を後回しにし続けた結果がコレであった。しかも現在進行形なため行き着く先がどうなるか皆目見当付かず、そのための答えがいざとなったら超位魔法《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》で何とかできないかなという現実逃避であったのだが、いつのまにか外堀をせっせと埋められており気づいたら包囲されていた我が部屋である。
「どうしよう、どうすればいい……」
何が最善かと全力で頭を回転させる、これまでも何度かあったが、今まで以上にかつてないほど頭を回転させている。こちらの世界に来てからアインズの頭は回りっぱなしである。
しかし不意に思考を遮るものがあった。
───足音が聞こえる
人の気配だ、誰かが部屋に近づいてきてる。
(メイドか?)
「はぁ……お風呂に入って洗ったけれどまだ触れられた感覚が残ってる気がするわ」
(やばい!アルベドか!えーっとえーと……)
慌てて不可視化の魔法を自身に唱え隠れる。別に隠れなくてもよかった気もするが、全身にデンジャー!デンジャー!とレッドアラートが鳴り響いたため本能的に隠れてしまったので仕方なしである。
不可視化の魔法を発動しているがドキドキしながら身を隠し様子を伺う。
(壁だ、壁になるんだ……)
ありもしない心臓がバックンバックンと鳴る幻聴が聞こえる。
「全くあの忌々しい糞人間め!あー、やっぱり殺しておけばよかったかしら……」
「けどこんなに早く帝国の属国化がなされた以上、わざわざ首の挿げ替えのために時間をかけるわけにもいかないし我慢するしかないわね」
「そうだわ……せっかくだしアインズ様に慰めて頂きましょう、そうよ!今夜にでも!!」
(……ぇ?)
「あぁ……とうとう初めてを迎えることが出来るのね……」
(……は?)
「あの玉体に抱かれて一晩中愛を囁かれたりとかしちゃって……くふー!」
(まてまてまて!何でそうなる!おかしいだろ!いつの間にそんなことになってるの?!)
「シャルティアには悪いけどキスがOKならこれはもう最後まで行っちゃってもOKってことよね。あー、モモンガさまぁ!」
(アレかあああああぁ!)
あの時はこれくらいならいいかなと応じたが、いくらなんでも飛躍しすぎじゃないか?!
「くぅううふぅううう!はぁはぁ……そうと決まれば入念に体を洗っておかなくては!」
興奮した足取りで足音は過ぎ去っていった。
「ど、ど、どうしよう……」
30代で童貞の魔法使い(リアル魔法使いだが)の自分にはハードルが高すぎる。しかもオーバーロード、骨、骨なのだ。
「どーいうプレイだ……」
サキュバスと悪魔的な超パワーとかでナニが生えたりするのか?それとも精を吸い取るとか精神的なものか?
アホなこと考えてるなと自分で突っ込むが大真面目である。
アインズ的には挨拶代わりの頬にキスが、アルベド的には(頬に)キス=抱くのOKとかぶっ飛びすぎだろう。
アレはそういうつもりじゃなかったんだよと弁明すればいい気もするが
───じゃあどういうつもりだったのですか
───誤解ってなんですか
───責任は取ってくれるのですか
───認知してくれないのですか
などとおかしな流れを想像してしまう……
「ほんっとにもう、なんでこうなるの……」
自ら蒔いた種だが、花が咲いたらラフレシアだったとか想定外にも程がある。
そしてアインズは決断する───
◇◇◇
「ドワーフの国へ今すぐ?」
「そうだ、すぐに準備してくれ」
アウラとシャルティアを連れて行くとはすでに通達してあったが色々準備もあるだろうと時間を置いての出発と聞いていた二人には突然の変更であった。
「また急ですね。何かあったのですか?」
「あったというか、これから起きるというか……と、とにかくすぐに出立したい」
二人とも不思議がっているが主と一緒に遠出できるとあれば予定が早まっただけで断る理由はない。
(とりあいずドワーフの国へ行って様子を見よう、道中良い案が浮かぶかもしれないし……うん、そうしよう……)
時間が解決してくれるどころか更なる問題の発生になりかねないのだが、その日のうちにアウラとシャルティアを連れ、半ば逃げるように旅立った。
後日、誤解を解こうとに苦心するのだが、旅立つ様は夜逃げをするようであったという───
カメラマンと化したニグレド「目線こっちにお願いしマース」
ドルオタと化したアルベド「キャー、モモンガさまー!」
ルベド「」